店舗に掛かる費用の基礎知識

店舗にかかる費用例でご紹介した様に店舗に掛かる費用として、

などが、掛かることをご紹介しました。

ここでは、それぞれが、どんな意味があって、どれくらい掛かるのが常識的なのかを掲載します。

保証金(敷金)
アパートやマンションを借りたことのある方ならば、「敷金」という言葉は、聞いたことがあると思います。
敷金と保証金は原則として同じです。

ただ、敷金と保証金では、もともとの意味は若干違います。

敷金は、賃借人が、退去する際に原状回復を行わなかったり、もしくは、賃借人なりには原状回復を行ったつもりだが、賃貸人からしてみると、原状回復が足りないと考えて、清掃したり、壊れた箇所を直したりした場合に発生した費用の賃借人負担分を予め預かっておくためのものです。
それに対して、保証金とは、賃借人が賃料を滞納した時に、保証金から、滞納分を負担させるためのものです。しかし、保証金を預けてあるからといって、賃料を滞納して良いわけではなく、預けてある保証金が足りなくなるので、いずれにしろ、その物件の賃貸を続けるのであれば、賃料を払わなければなりません。

また、注意しなければならないのは、保証金には、よく「償却分」というものがあります。例えば、保証金を10ヶ月預けても、解約時に2ヶ月を償却すると、契約書に書かれているケースがあります。この場合、保証金は解約時に最大で8ヶ月しか返ってこないことになります。これは、関西地方などに見られる「敷引き」と同じと考えてよいでしょう。

では、保証金は「いくらぐらい」掛かるのが普通かというと、実は地域や物件によって様々で、一概には言えないのが現実です。『賃料相場』のコーナーで自分の借りたいエリアの賃料や保証金の平均を見ていただければ参考になると思います。
東京の主な商業エリアの場合は、1ヶ月分の家賃の6~20ヶ月というところが多いようです。
※バブルの頃、東京の主要商業エリアなどで100ヶ月~200ヶ月の保証金を求めるケースがありましたが、最近は、そこまで保証金を求めてくるケースは殆ど、ありません。

もちろん、東京圏や大阪、名古屋、福岡、仙台の主要商業エリアを除く、地方都市の場合には、保証金が6ヶ月以下の物件も沢山あります。
これは需要の多いエリアであれば、保証金も多くなり、逆に供給過多で物件が余っている様なエリアであれば保証金が少ないという傾向があります。また、周辺相場よりも賃料は若干高めだが、保証金は少ないというケースも見受けられます。

礼金
礼金も殆どのエリアにあるものです。ただし、保証金(敷金)のコーナーでも書いたとおり、エリアによって「敷引き」など呼び方が変わる場合もあります。礼金という呼び方は概ね関東地方が主流です。

礼金とは、物件を借りた際に、オーナーに支払う「謝礼」という意味です。(元来の意味は後述します。)ですから、保証金(敷金)と違い、解約時に返ってくるということは、ありません。

礼金は「いくらぐらい」掛かるかというと、やはり地域や物件によって違います。北海道の様に、礼金というシステムそのものが、あまり一般的でないエリアもあります。
一般的には0ヶ月~3ヶ月ぐらいが多いようです。(特に1ヶ月というのが多い。)
0ヶ月(礼金が無い)の物件というのはお得な様ですが、礼金があるのが当たり前のエリアで、礼金を取っていないということは下記の様な理由が考えられます。

1.人気が無い物件、訳ありの物件
2.礼金分、家賃を高めに設定している

不動産オーナーだって、もらえる物は、貰いたいのが人間心理です。それにも関わらず、礼金が設定されていない場合は、「お得な物件だ」と喜ぶ前に、「なぜ、礼金が設定されていないのか?」と疑って掛かるべきです。

では礼金の元来の意味とは、色々な説があります。その中でも代表的なものを紹介します。
学生が、都会に単身で出ることに対して親は心配するものです。昔の大家さん(賃貸人)というのは、自分のアパートの管理を自分でするのが普通でした。そして、賃借人の面倒をよく見たものです。賃借人が病気になれば、大家さんが食事を持っていってあげたりと、まるで親の代わりに面倒を見てくれる様な大家さんもいました。その行為に対する謝礼として、予め親が大家さんに渡した金銭が『礼金』になったのです。

ですから、店舗物件やオフィスなどに、礼金があるのはおかしな話です。また、住居系の物件で、「管理会社がある程度の面倒を見てくれている」「警備会社が何かあれば来てくれる」という物件もありますが、その場合でもちゃんと「管理費」や「共益費」などと言って、別途に取られるケースが殆どですから、礼金の本来の意味は失われているのです。

それにも関わらず、礼金を取るのは、仲介業者の事情があるからです。

宅建業法に定められる仲介手数料というのは、貸主、借主双方から、最大で「賃料の1ヶ月」と定まっています。ところが、それでは仲介業者の商売が成り立たないケースがあります。そこで、仲介業者は『広告宣伝費』などという名目で、賃貸人にから、手数料を貰おうとします。もちろん、賃貸人は払いたくありません。そこで、仲介業者は、賃貸人に
「賃借人から、礼金という名目で、貰ってくるので、それで支払ってください。」
と言う訳です。

賃借人からしてみれば、理不尽な話ですが、商習慣や現在の不動産の流通システムを考えると仕方がない部分もあります。ただし、現在、あちこちで、礼金や更新料に関しては訴訟が行われており、高裁判決も事例によって分かれている状態です。

前家賃
前家賃とは、契約した月の次の家賃を予め支払うものです。

例えば、7月1日から、物件を借りる契約を6月15日にしたとしましょう。
そして、賃料の支払日は前の月の月末までと定められていたとします。当然ですが、6月15日の段階で、礼金、保証金、仲介手数料などの諸費用は6月15日の段階で支払います。(厳密には、保証金などは引渡し時、つまり「鍵を渡されたとき」で良い事になります。)住居系、特にワンルームのアパートやマンションの場合は賃料そのものが安いため、敷金、礼金、それに仲介手数料などを不動産会社に現金で持っていて契約するケースもありますが、店舗などとなると金額も多くなるので銀行振り込みが殆どになります。

その際に、6月15日に振り込んで、6月30日にまた振り込むのでは、振り込む方も面倒ですし、振り込まれる方も確認するのが面倒なので、前家賃として、契約時にまとめて支払ってもらうのが普通です。

直近の日に2度も振込みが発生するのが面倒というのが理由ですから、例えば建設中の物件で、入居が数ヵ月後になる様な場合では、前家賃が発生しないのが一般的です。

仲介手数料
これは、賃貸人に入るものではなく、不動産会社に支払うためのものです。物件の紹介料や契約書や重要事項説明書を作成してもらったり、契約に立ち会ってもらったりする為に発生する費用と考えて良いでしょう。

その為、不動産会社を介さずに、賃貸人から直接物件を紹介してもらったり、不動産会社を介さずに契約をすれば、仲介手数料は掛からない場合が殆どです。

※賃貸人が不動産会社と専属選任の媒介契約を締結している物件の場合は、不動産会社を介さずに契約をしても、仲介手数料は掛かります。

さて、「中抜き」という言葉をご存知でしょうか?

これは、仲介業者に物件を紹介してもらっておいて、その物件の所有者を調べて、直接、所有者と契約を締結するという行為のことを言います。完全に発覚して、証拠があれば、仲介業者が所有者や賃借人を訴えることも出来ますが、所有者と賃借人が手を握ってしまえば、証拠を完全に押さえることは極めて難しくなります。(それでも訴えられて所有者が負けたケースもあります。)

これが賃貸住宅であったり、「中抜き」をして不動産を借りたあとに二度と店舗を借りないという覚悟ができていれば別の話ですが、「別の場所に店舗を移転したい」「いつかは2号店、3号店と増やしていきたい」と考えている場合は「中抜き」はしない方が賢明です。

不動産業者は星の数程あります。しかし、店舗物件で良い物件を扱っている業者というのは、実際には限られています。そして、その業者同士の連絡というのがある狭い業界です。その為、一度、「あのテナントは中抜きをするから要注意!」などと業界で噂になってしまうと、なかなか良い物件を紹介して貰えなくなるからです。

これは、所有者の方も同じです。所有者にテナントを紹介したら、知らない間にそのテナントと契約していたということもあります。当然、その所有者が中抜きをするという噂が広がれば、その所有者に良いテナントを紹介しようとは、思わなくなります。

ですから、貸しビル業を生業にしている普通の賃貸人は、余程、この業界に入って日が浅いとかの常識がない方で無い限り、業者を大事にするのが普通です。

良い仲介業者を探すことも、良い店舗を探すコツと言って良いでしょう。

保険料
住居系でも同じですが、火災保険等に加入することが条件の物件というのが沢山あります。
もちろん、賃貸人が火災保険加入を義務付けていない場合もありますので一概には言えませんし、賃貸条件や業態などによっても変わってきます。

また、賃貸人が義務付けていない場合でも、不特定多数のお客さんが出入りする様な場合、内装にお金を掛ける場合等は保険に加入することをお勧めします。

内装費用
内装費用は、造り込めば造り込む程費用が掛かります。
高級クラブなどのでかなりゴージャスに造り込みたい場合などで60坪に3億円の内装費を掛けたなどという事例もあります。

逆に居抜き物件(前のテナントが造作をそのまま残して出て行った物件)などは、そのまま内装が使えるというケースもあります。
ですから、業態や出店するに当たっての方針で内装費用は大きく変わってしまいます。

ここで最近、流行っている居抜き物件の注意点について書いておきます。
最近、居抜き物件ばかりを狙って出店をしている方もいます。色々な問題点やリスクを十分に把握していれば良いのですが、そうでないと、後々問題になることがあります。

では、その最大の問題点ですが、前のテナントがそのまま残して行った内装とは、いったい誰のものでしょうか?

普通の方は
「前のテナントが残していったんだから、所有者のもの」
と思うかもしれませんが、そうでない場合もよくあります。

大手の外食チェーン店が撤退した場所などは、その外食チェーン店と所有者の間で、その内装等について、しっかりとした取り決めをした上で撤退しているので問題は殆ど発生しません。
しかし、小さな店舗で、前の賃借人も個人経営だったりすると、それが曖昧だったりします。
極論、前の賃借人が夜逃げ同然で出て行った物件だったりすれば、尚更です。

後々になって、前の賃借人が所有権を主張してきたり、前の賃借人の債権者が突如として現れたりというケースもあります。ですから、居抜き物件の場合には、その内装の所有権などをしっかり確認し、自分に被害が及ばないような賃貸借契約が重要になってきます。

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