福山市の火災について

昨日、極めて不幸な事故がありました。福山市のホテル火災です。

さて、このホテルですがメディアの情報によると再三の行政指導にも関わらず、消防法を遵守していなかったのことでした。

私は建築の設計管理や工事監理に携わっています。もちろん、建築完了検査時、つまり、私の目の及ぶ限りでは建築基準法は遵守させています。しかし、建築完了検査後に建築主が法令違反の建物に改築もしくは改造するということは往々にしてあります。

今回、福山のホテルに泊まって亡くなった人にとって不幸だったことはなんでしょうか?

私は思います。

そのホテルの安全性が客観的に解らなかったことだと思います。私は、出張で日本全国に行きます。もちろん、その場所のホテルも利用します。私と同じ様なビジネスマンの方も多いと思います。

私は、宿泊する際にホテルのドア貼られている、避難口までの経路、自分の部屋にスプリングクラーがあるかなどを必ず確認します。

おそらく、殆どの方がそんなことをしていないと思います。
ホテルに入った際に窓の開閉ができるかの確認をしていますか?

これは私が建築の専門家であり、もし、ホテルなどで火災が発生した際にどういう事態になるかを知っているからとる行動ですが、余程の建築の専門家で無い限り、火災リスクを考慮することはないと思います。

さて、そこで今回の福山のホテル火災で思ったことがあります。

このホテルの防火設備は、建築当時の基準は概ね満たしていたそうです。ただし、現行の法律は満たしていなかったという状況です。

この様な建物を「既存不適格」といいます。現行の法律を満たしていない訳ですから、違法の様に感じますが、建築物というのは建てられた時の法律を満たしていれば、何ら罪に問われることはありません。それが、どんなに人命に影響を与えようとしてもです。

これは、建物所有者の財産権を守るためのものです。法律が変った瞬間に建物を改善しろと言われても、建物の改善には莫大な費用が掛かります。それをやっていないからと言って、その建築物の所有者を罪に問うのは極めて難しい話です。

と・・・書くと「甘い!」と思われるかもしれませんが、あなたが住んでいる部屋に火災報知機は付いていますか?

あなたの部屋が、最近に建てられたりしたものであれば当然に付いていると思いますが、あなたの実家の部屋には付いていますか?

現在の日本の消防法では全ての居室に火災報知機の設置が義務付けられていますが、あなたは守っていますか?あなたのご両親の部屋には火災報知機が付いていますか?

今回は7名の方の命が失われました。

全ての既存不適格の建物を一気に改善しろというのは、経済的事情を勘案すれば無理だということは、わかります。

しかし、その建物の安全性が良くわからずに亡くなられた方は極めて不幸なことだと思います。
今回、福山市もこのホテルの火災に対する安全性に懸案事項があったことは把握していた様です。

とするならば、この建物は火災が発生した時に危険な建物だということを、しっかりアピールし利用者に告知するべきだったと思います。

安いけどリスクのある建物だということを、建築のプロで無い方に明示できるシステムを作るべきではないでしょうか?

現在の法律では、既存不適格の建物の使用を差し止めることは実体経済を考慮すれば不可能です。(そもそも、わが国の建築基準法が「行当たりばったり」なのがいけないのですが・・・。)
しかし、その状況を建物利用者に明示することはできる筈です。
今回、命を落とされた方のご冥福をお祈りします。

追記:建築基準法については、既存不適格については合法扱いとなります。しかし、消防法の一部、例えば、火災報知機の設置、不燃材の使用等は、遡及適用(現行の法律に是正する)となります。今回のホテルは、この遡及適用部分については違法でした。

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