空から降ってきたもの

立退きや、地上げをやっていると、様々な人に会います。基本的には「会って良かった。」「自分の人生の糧になった」ということは殆ど有りません。なにせ、こっちからは、「そこから、出て行ってください。」「あなたのその土地を売ってください。」という話を持ちかけるわけですから、自分の為になる話を聞けるということは殆どありません。(稀にはありますが・・・)もっとも、為になる説教を拝聴しに行っているわけではないので、仕事が成立すれば、別の意味で十分に自分の為にはなっています。

 

むしろ、会いたくない人という方が多いかもしれません。しかし、そこは仕事なので・・・。

 

立退きの仕事を何軒かこなして、少しは、この仕事に慣れてきた頃でした。

 

私はあるマンションの立退きをしていました。そのマンションは7階建てです。4階部分までは1階と同じ大きさで建っているのですが、5階からは斜線なりに後退しているので、7階からは6階、6階からは5階、5階からは4階のベランダ(ルーフバルコニー)が覗き込める様な構造になっていました。

 

すでに、立退きは殆ど終わり、6階の一部屋と7階の一部屋を残すのみでした。

 

もっともここからが大変なのです。

 

賃貸マンションや賃貸アパートの場合、最初に下記の様なお手紙を居住者に出します。

 

本建物は老朽化の為に建直すことになりました。大変、ご迷惑をお掛けしますが、平成○○年○月○日までに退居して頂くようご協力お願いします。

 

尚、お預かりしています敷金につきましては、今回は本建物取り壊しの為、満額お返しいたします。

 

この場合、管理会社名義か家主名義で行います。

 

と、このお手紙の時点で結構な人が退去に同意してくれます。理由は四つあります。

 

・ 借家法を理解していないので、家主に出て行けと言われた時点で断れない。

 

・ 『建物老朽化』は住んでいる人にとっても心理的に不安になります。

 

・ 建物を傷つけて、「明らかに敷金が返ってこない」、もしくは「預け入れ敷金以外にも取られるかな?」と思っている居住者にとってみればラッキーな話です。

 

・ また、ワンルームなどで多いのですが、そもそも、長期間住もうと考えていない居住者もいます。

 

この様な人は立ち退き費用すら殆ど掛からずに出て行ってくれます。

 

学生や低所得者が多い共同住宅では意外にあっさりと終ることが多いです。(借家法を知らないか、知っていても戦う術を知らない為。)

 

しかし、最後の方まで残っている方と言うのは、それなりに交渉が私からみれば苦戦しているから残っている方です。立退きというのは100戸のマンションの99戸が出て行ってくれても、最後の1戸が退居してくれなければなんの意味もありません。だから、最後が踏ん張りどころなんです。

 

というわけで、あと2戸だからと言って気は抜けません。

 

私は6階の一室の方(Nさん)と立退きの交渉をしていました。

 

Nさんは某一部上場企業の法務部の課長さんです。独身ですが、家賃25万の2LDKに住めるだけの財力はあります。知識もありました。

 

それ故に最初は苦戦したのですが、やはり知識のある方なので、時間を掛けて交渉することでやっと着地点が見えたころでした。Nさんは、仕事でいつも遅いので、打ち合わせはいつも夜になってしまいます。その日はNさんの部屋で打ち合わせになりました。

 

あらかた、その日の打合せが終わった頃に、上の階からドタドタと走るような、そして、なにやら大声が聞こえました。

 

もっとも、かなり堅牢なマンションでその足音も声も気にはなりませんでしたが・・・

 

「7階の方はなんか騒いでいるみたいですね。」

 

「そうなんですよ。以前から、奥さんのヒステリックな叫び声とか聞こえるんですよね。」

 

「では、Nさんがここにお住まいの間、ご迷惑お掛けしました。あせる

 

「もっとも、私も殆ど寝に帰っているみたいなもんで、あまり気にしていませんでした。かお

 

と、話をしていたその時でした。

 

Nさんのバルコニーに何かが落下するのが窓越しに見えました。。

 

Nさんが干していた、シーツ?ごと、バルコニーの床に何かが落ちました。

 

Nさんと私は顔を見合わせて、バルコニーに向かいました。

 

その時、私はぞっとしました。何故なら、シーツに包まった物体が動いているんです。

 

もう、頭の中では上の階の人が暴れて、バルコニーに落ちたと思いました。

 

Nさんt私は恐る恐るですが急いでそのシーツを剥がすと・・・

 

なんと、中から出てきたのは犬です。

 

しかも、グレート・ビレニーズです。(超大型犬で重さは40㎏以上ある大きな犬です。)シーツに一度、引っかかったせいか、どこも怪我はしてなさそうです。しかし、さすがに犬も興奮していて、物凄い顔で睨まれました。

 

『な・・・なんで、犬が空から・・・』

 

一応、管理者で大家でもある私は慌てて、7階に行きました。

 

「あ・・・あの、お宅様では犬を飼っていますか?」

 

「だから、なによ!むかっ

 

奥様は相当、ヒステリックになっています。

 

「いえ・・・6階の御宅に犬が落ちてきまして・・・」

 

「言う事聞かないから、ベランダから投げたのよ!むかっ

 

 

『グリーンピースに言いつけてやる!パンチ!

 

と言いたいのを必死に押さえて・・・

 

「いえ、まず、6階の方にご迷惑なになりますので、犬と言わず、物を投げるのは・・・」

 

「うるさいわねぇむかっ、管理会社の人でしょ。いつも、マンションをうろうろしているから知ってるわよ!」

 

『そりゃ、立退き交渉で毎日来ているよ。』

 

と、言い出しそうだったんですが

名刺を出して・・

 

「管理会社でもありますが、所有者でもあります。」

 

と、言ったところで相手も少し、バツが悪くなった様です。

 

「ごめんなさいね。もう、投げないわよ!むかっ

 

「いえ、それはそうなんですけど・・・」

 

「何か、まだ用事があるの!?

 

「はい、当マンションはペットの飼育は禁止しております。賃貸借契約書にそれは明記させて頂いておるはずです。」

 

「じゃあ・・・、捨てて来いって言うの?プンプン

 

「いえ、そういう意味ではありません。」

 

「解ったわよ!他に用事がないなら帰ってください」

 

「解りました。」

 

と言うよう、ビックリする様な人でした。

 

もっとも、この契約違反を理由に私がその方に立退きを迫ったのは言うまででもありません。しかし、犬の大きさには、相当、驚きました。

 

と、またもやどうでもいい話ですが・。。

 

 

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