茶番劇  ~予告編~

※ 登場人物、会社名は全て仮名です。また物件所在地等もすべて実際の場所とは異なります。

今、一つの不動産取引が終了しようとしています。

あまりに話が長いので、現在書いている、『リストラ』終了後、掲題のタイトルで書いていこうと思っています。

ただ、想定をしていなかった終わり方をしそうです。

ざっくりと書くと、この不景気もあって、今回の取引は債務超過の案件で、しかも、抵当権は3番までついており、1番抵当だけで抵当設定額の半値でしか売れそうもない案件の任売でした。

しかも、居抜き案件です。

債権者交渉もテナントとの立退き交渉も大揉めでした。

ちなみに買主さんはしっかりした会社なのでなんの問題もありません。

『最終的には債権者交渉で崩れるかな・・・』

と思っていたのですが・・・

たった今、売主の部長に債権者との交渉の状況の確認と本日の打合せのアポイントを取ろうと思い電話をしました。

「布山部長、債権者の件、動きありました・・・?」

「いや、何も無いと言うか・・・、何もできないんだよね・・・。」

布山部長の口振りは明らかに、なにか言い難そうな感じです。

「あっ、すいません。今、お電話まずかったですかね?」

「まずくもないんだが・・・」

『何なんだ・・・。この歯切れの悪さは・・・』

と、思ったものの、電話をすること自体はまずくないと言っているので、そのまま話を続けました。債権者との交渉は売主の会社の社長と弁護士が債権者とやっています。

「金本社長は、今日は、もう来てらっしゃいますか?」

金本社長は、普段は昼過ぎにならないと出社してきません。電話した時間は11時50分ですから、普段だと着ていないのですが・・・

「今日は来ているよ。」

「では、お話になられましたか?」

「いや、話せる状況に無いんだよ。」

「会議中か来客中ですか?」

「まぁ・・・。来客中といえば、来客中なんだが・・・」

「では、社長の来客が終った頃に伺おうかと思っているのですが、何時ごろに終りますかね?」

「今日は無理だと思うよ・・・。」

「しかし、決裁も近いですし、契約を解除するにしても急いだ方が・・・。」

さっきから、布山部長の歯切れの悪さがどうも、気になります。普段から、布山部長は考えてから口に出す人なので、条件反射的に物を言う人ではありませんが、それにしても・・・。

「解っているんだが、特殊なお客さんが来ていてね・・・」

『特殊な客ってなんだ?』

とは思ったものの、自分に関係なければ失礼なので聞かないのですが、急ぎということもあるし、この状況で引き下がる訳にもいかないので、

「え?失礼ですがお客さんって、どなたですか?」

「国税・・・」

「へ?査察ですか?何したんですか?」

もともと、この会社の所有する不動産には、財務省等の差押は入っているものの、国税が来るまでには至ってないはずです。

「いや、僕が出社した時には・・・既に来ていたから・・・」

という感じでした。

まだ、理由は解りませんが、国税の査察が入るって・・・

・ 税金滞納による差押(普通は口座凍結とかの方が先だと思う。)

・ 脱税(結構、巨額な場合。うちの顧問会計士曰く、1億円以上・・・)脱税の場合は令状有。

これくらいしか、思いつきません。

後者なら、取引が成就しないのは確定、前者でも相当に無理がありそうです。

では、『茶番劇』をお待ち下さい。(連載予定日:未定)

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