既存不適格と違法建築 建築後の分筆

カテゴリ:ブログ 不動産投資
連載シリーズ 【 既存不適格と違法建築 建築後の分筆 】 第 15 話 / (全 18 話)

前回までの話で、すでに話が見えた方もいるかもしれません。

この物件は、私が買おうと考えていた物件と隣の物件が一つの土地に存在していたということです。

ここで注意しなければならないことがあります。

不動産を専門とされている方は、二つの土地と聞くと

「分筆された二つの土地(筆)」

と考える方が多いと思います。しかし、建築の世界では分筆されていない土地に二つの建物を建てても、それぞれ別の土地に建っていると考える場合もあるし、一つの土地に二つの建物が建っていると考えることもできます。これは、建てる側が自由に選択できます。

例えば、都市計画で容積率100%建蔽率50%で500㎡の土地に1階50㎡、2階50㎡の建物を建てると建蔽率で10%、容積率も20%しか使っていません。その土地にもう一つ同じ建物を建てたとしても建蔽率も容積率もクリアできます。

後から建てた建物を先に建てられた建物の増築としても構いませんし、不動産的に分筆しなくても、建築的に土地を半分にして、後から建てる建物を新築としても、接道など建築基準法の要件を満たしていれば、新築として申請するのは申請者(建築主)の自由です。

今回、私の買おうとした物件(以下、「建物C」と言います。)と隣地の容積率をオーバーしていると考えられた建物(以下、「建物D」と言います。)は二つの建物一体で建築基準法をクリアしているものでした。

まず、建物Cが存在しています。その建物は、まったく容積率を消化していません。そこで、建物Cが建っている土地の空いている部分に建物Dを建てます。そして、建物Cと建物Dの建っている土地を分筆します。

ここで問題なのは、その分筆をすること自体が建築基準法には全く抵触していないということです。

土地を分筆するのは、土地の所有者の自由であり、それによって、建物Cと建物Dが別の筆の土地に建っていることとなっても、建築基準法の観点から見ると、未だに同一の土地の上に二つの建物が建っているに過ぎません。

極論を書くと10m×10m=100㎡の土地があって、それが100筆の土地に分筆されていても、それを1団の土地とみなして、その100個の土地の境をまたいで建物を建てることは全く問題がありません。

つまり、建物Cと建物Dが建っている土地を分筆するところまでは、その土地の所有者の自由ということになります。

しかし、問題はその後です。

その分筆した建物C及びその建物Cが建っている土地を別の人に譲渡して、建物Cを解体し、その土地に新所有者が新しい建物を容積率上限で建てたとすると、建物Cと建物Dの平均容積率は必然的に容積率オーバーとなります。

普通に考えると、建物Cを壊して新しい建物を建てようとするときに、建物Cが建っている土地の面積を利用して、建物Dが建っているから建物Cが建っている土地の容積率は建物Dが容積率を使っている分は使えないと考えるのが普通です。

しかし、二つの観点から、建物Cのたっている土地に都市計画で定められた容積率の新しい建物を建てることができます。

1.単純に建物Cの建物が建っていた土地の隣の建物が容積率を使用していることに、新しい土地の所有者、新しい建物の設計者、そして確認申請を受理する行政機関(もしくは、代行する民間機関)が、気づかなかった。

2.新しい土地の所有者、新しい建物の設計者は気づいていたが、隣地のことを無視して自己の土地の容積率を消化しきって、確認申請を出した。受理側も気づいたが、財産権等の問題から、行政は新しい土地の所有者に、容積率の使用制限を掛けられないという考え方もできます。

私が買おうとしている時点では、建物Dは、建築基準法違反にはなりません。しかし、建物Cの建っている土地に容積率を消化しきった新しい建物を建てた時点で建物Dは違法建築物になります。

もし、建物Dを違法建築にしないためには、建物Dの所有者Aが、建物Cとその土地を売却するときに、

「〇〇区△△町一丁目200番1(建物Cが建っている土地、以下「本物件」という)に新しく建てる建物の延べ床面積は、建物Dの延べ床面積と合わせ、〇〇区△△町一丁目200番2の土地と本物件の面積をあわせ、その容積率を超えてはならない。また、本物件を転売する際には、転売人にも継承されるものとする。」

などという、特記事項を付けなければなりません。

はっきり言って買う人はいなくなるでしょう。

私はこの物件を買うことを断念しました。

何故なら、私はこの事実を知ってしまったからです。仮に知らなかったとしても、私の所属していた会社が

「あの会社が新しい建物を建てたから、隣地の建物が違法建築になった・・・。Canny

と言われても困ります。

ただし、建物Dの所有者以外が建物Cを壊して新しい建物を作ること自体は、上記の通り、法律には抵触しません。

これは建築基準法第8条によるものです。

第八条  建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。

つまり、建物Dの所有者が〇〇区△△町一丁目200番1の土地と建物Cを売却し、建物Cが解体され、〇〇区△△町一丁目200番1の土地の容積率を消化しきった建物を建てられた時点で、建築基準法第8条に抵触することになります。

なぜなら、建物Dは、建築基準法が守られた建物にならなくなるからです。

そして、私は〇〇区△△町一丁目200番1と建物Cを買いませんでしたが、ほどなくして、別の新興系不動産会社が買いました。そして、案の定、私が当初、考えていた建物とほぼ同じものを作りました。

次回はその顛末(最終章)です。

・既存建物を買うときに違法建築物かどうかを判断するのは、なかなか難しいものです。ですから、既存建物を買う前に是非、リデベにご相談ください。

・違法建築物を既に買ってしまって、お困りの方もリデベにご相談ください。(場合によっては、違法建築を解消できます。)

・既存不適格建物に関して、不安をお持ちの方もリデベにご相談ください。

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