【開発案件】角地

カテゴリ:ブログ 不動産開発

今日も不動産・建設・住宅業界はネタに乏しい1日ですので、ちょっと過去の話を・・・

平成17年ごろの東京のマンションや収益不動産向けの開発用地で入札物件じゃないものは、本当に早い者勝ちという時代でした。悠長に構えていると、満額ですぐに他の人が手をあげてしまうという状況でした。

本来なら・・・

どんなプランが入るのか?


そのプランは法的にクリアできているのか?


収支はどうなるのか?


土地に瑕疵はないのか?(土壌汚染や境界確定など)


近隣トラブルはないか?

などなどを十分に検討した上で購入に向かって動き出さなければならないのですが、その価格が高い場合にはゆっくり検討して、差値をして・・・ということになるのですが、値段が割安な場合は上記のプロセスが如何に早く検討できるかが勝負になってくるケースが多々ありました。

『好景気だったなぁ・・・しょぼん

と感傷に浸ると話がずれていくので本題です。

その平成17年の話です。

その頃の私は大量の物件資料を捌き、その中で目ぼしいものを見に現場に行って帰ってきて、良かったものは即座にボリュームプランを依頼したり、設計事務所の手が空いてない場合は自分でプランを作ったりと、そんな毎日でした。

その日は、ちょうど、梅雨があけて、暑い日だったので今日みたいな日でした。朝から物件を5~6ヶ所、建設中の現場の視察を3ヶ所こなして、汗だくで会社に戻ってきたのは19時に近い時間でした。

すると、当時、自分の部署の責任者だったF部長が私に・・・

※F部長について詳しくはこちら

「お~い、相澤、良い土地の情報があるんだよ~」

このF部長がこういう言い方をした時はろくなことはありません。でも上司ですから・・・

「え・・・どんな土地ですか?」

「この物件概要を見てくれよ。隣にほぼ同じ大きさの土地があって、新築の賃マンが建ったんだけど、竣工1ヶ月経ってないのに満室なんだ。この土地の値段なら、収支はバッチリ合うんだ!得意げ

※賃マン・・・賃貸マンションのこと

私は面倒なのでろくに物件概要を見ないで・・・

「良かったじゃないですか!ニコニコ

「だろ!もう購入申込してさぁ。そうしたら、相手から来週にでも契約しましょうって返事が来てさぁ!やっぱ、時間勝負だよな!得意げ

「え?土壌は調べたんですか?かお

「一応、うちでも調べるけど、所有者はうちの取引先のN社でそこの土壌調査レポートがあって、しかもF2までやってあるから大丈夫だろ。ニコニコ

※F2・・・実際にその土地をボーリングして土のサンプルを取って汚染がないかを確認すること。ちなみにF1は過去にその土地やその周辺の利用状況から、土壌汚染の有無の可能性を調べること。F1よりもF2の方が当然だが精度は高い。

『じゃあ、なんでN社が自分のところでやらないんだろう・・・』

とは思ったものの・・・

「あっ、そうなんですか・・・シラー

「まぁ、N社はうちの大事なお客さんでもあるからな!出回る前に物件情報をくれたんだけど、早い返事ができて良かった。ニコニコ

「でも、N社だと、今から何か問題が見つかっても撤回できないですね・・・シラー

「なんでそんなネガティブなこと言うんだよ。まぁ、概要をちゃんと見てくれよ。得意げ

と言われたので自分の仕事を置いて、とりあえずそちらの物件概要を見ました。たしかに隣地にN社が既に作った賃貸マンションがあります。そのレントロールも付いています。F部長の言うとおり満室稼動です。

※レントロール・・・その物件の賃貸状況の詳細が書いてある資料

また、この場所は都市計画上の用途は近隣商業地域ですが、商店街からはちょっと距離があり、どちらかというとマンション用地です。

都市計画

近隣商業地域

建蔽率 60%

容積率 300%

日影・高度制限は無し

防火地域

次に敷地測量図を見て唖然としました。敷地測量図はこんな感じです。

(サムネイルになっています。クリックすると拡大します。)

オレンジ色の部分は隣地でN社がマンションを建てたところで、水色が今回の対象地です。

『Dr.相澤の住宅情報館』の館長のブログ

「F部長!この土地には隣のマンションと同じものは建たないですよ」

「なんでだよ!むかっ同じ大きさで、しかも角地だぞ!むかっ角地緩和だってあるだろ!むかっ

『角地緩和はしってるのか・・・』

と思いつつ・・・

「いや、角地があだになっているんですよ。」

「なんで・・・?汗

たしかにF部長の言うように、角地緩和というものがあります。角地の場合、建蔽率が10%緩和されます。さらにこの土地が防火地域であるので、耐火建築物を作れば建蔽率はさらに10%緩和されます。

しかし、この水色の土地の場合、西側の4m道路の道路斜線がまともに当ります。道路斜線には『回り込み』というルールがあって、この土地の場合、8m道路の2倍の16mまで(上図の赤の点線)はその4m道路も8mと考えて良いとルールにはなっていますが8mの道路斜線は掛かります。また、16mより離れたところは、4m道路として考えなければなりません。

オレンジの土地の場合は北側の前面道路だけを考えればよく、道路と敷地の境界ギリギリに建物を建築したと想定すると、道路幅員8m×道路斜線の傾斜率1.5=12mとなり、12mの高さの部分から建物が北側に後退しだすことになります。

この、条件は水色の部分にも言えますが、水色の土地の場合、赤の点線の部分までは4m道路からも同じように道路と敷地の境界線上の高さ12mのラインから、建物が後退しはじめ、赤の点線より南側は4m×1.5=6mの高さから後退しはじめます。

実際には道路から建物を離します。オレンジの土地の建物は道路から2mほど離しているので7階までは垂直に建っていて、8階部分だけがちょっと後退していました。ちなみにオレンジの土地の東西は80cmほどしか開いていません。

水色の土地の場合は同じように8階まで作ろうとすると、4m道路側も道路から2m離さないといけません。仮にそれをしても赤い点線より南側に関して言えば、道路から建物までを4m以上離さないといけません。

つまり、同じ高さの建物を建てたとしても1フロア辺りの面積は消化できません。そこで、9階部分にさらに後退して上を載せるのですが9階部分を載せても9階に2部屋しかとれず、隣地と同じように容積が消化できないということです。

ちなみに天空率を使っても道路の幅員は広がらないのでこの場合はあまり効果がありません。

※もっとも・・・西側も道路に面しているので、西向きに部屋を作れるというメリットはあります。

このことをF部長に説明すると・・・

「どうしよう・・・汗

「知りません!パンチ!

結局、取引先ということもあり、面子もあって撤回もできずにそのままの購入条件でこの土地を買うことになりました。

しかし、その頃は地価上昇局面だったのでそのミスが十分に帳消しになるような値段でこのマンションは売却できたので事なきを得ました。

開発用地の購入を検討する場合はちゃんと計画を建てないと怖いことになります。特に高容積率のエリアで道路が2方向以上に面している場合などは要注意です。

ボリュームだけ頼まれると困るけど・・・

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