旧里帰農令

カテゴリ:ブログ 政治経済

さて、昨日の棄捐令の続きです。

寛政の改革がなぜ起こり、どの様な政策が行われたかと言うことについては昨日のブログの通りなのですが、昨日のブログに書かなかった、もう一つの政策があります。

それが、本日のタイトルである、『旧里帰農令』(きゅう・り・き・のう・れい)です。

18世紀後半の江戸の町の人口は約100万人でした。

現在が東京都だけで約1300万人ですから10%以下です。

もっとも今の東京都と江戸では全然範囲が違います。当時の江戸というのは、今で言うところの、千代田区、中央区、港区、台東区、文京区、墨田区、江東区それに新宿区と品川区の一部ぐらいです。しかも、中央区や江東区は明治以降に埋め立てられた土地もいっぱいあります。流行の湾岸エリアのタワーマンション等は江戸時代には海だった場所です。

しかし、それでも江戸の町は世界でも最大級の町でした。

ですから、地方からしてみれば、江戸に行けば仕事がある!と思うのは当然だったかもしれません。しかも、江戸では、その頃、徳川吉宗による享保の改革の成功、田沼意次による重商主義で割りと江戸の町は景気が良くなり(増税などで地方は疲弊していた)、余計に江戸の町には人が集まっていました。

ところが、昨日のブログにあるとおり、天明の大飢饉が発生します。

それにより、地方経済は当然ながら、江戸の景気も相当に悪化します。

とにかく、当時の日本は鎖国していますから、食糧危機が起これば、即座に人命に響きます。また、江戸には浮浪者が溢れ、その浮浪者は犯罪予備軍と考えられていました。

また、食糧危機ですから、食料を作る人手、つまり農民を増やさなければなりません。そして、浮浪者=非生産者を減らすことで、需要を喚起し、経済の建て直しをしようと考えました。

そこで、松平定信は江戸に出稼ぎというよりも、移住してきた地方出身者に地元に帰って、農業をするようにという法令を出します。これが『旧里帰農令』です。

実際に専制政治下において、強制的にUターンをさせる訳ですから江戸に出てきた人は帰らざるえません。しかし、地方に帰っても即座に農地がある訳でもなく、基本的には小作として農民に戻った人が大半でした。江戸で浮浪者をやっているぐらいなら、仕事を求めて、Uターンしたということもありました。これにより、一時的に失業者は減りましたし、江戸の浮浪者も減ったことは事実です。

ところが、その後、天明の大飢饉がある程度、落ち着くと、再び江戸にその人達は戻ってきました。理由は簡単です。農業という仕事が元々、嫌で江戸に来ていた人です。その人が江戸の便利で都会的な生活を一度、味わって、江戸に仕事があれば戻りたくなるのは必然です。

また、農業自体が大変にリスクのある仕事だということもありました。農家の収入は農作物です。農作物の最大のリスクは天候です。その地方に天候災害があれば、その地域の農家はアウトです。

それに対して、都会では各地方から農作物が入ってきますから、お金さえあれば、一箇所の農地がアウトになっても大勢に影響はないというメリットもありました。

当時の農業のメリットは失業しない。デメリットは失業はしないが食うに困る。ということでした。これは現代でも変わらないかもしれません。

実は、これは理由は違えど、現在の状況に似ています。

実際に私も農業ビジネスについて、真剣に考えたことがあります。しかし、農業を本当に知っている多くの方から「農業を舐めてる」と怒られました。それは私が農業が出来ないと言う事ではなく、農業の根底に抱える問題を把握していないからでした。

景気が悪くなると、農業ビジネスというのは流行ります。また、今の日本は食料自給率が低いということもあって、尚更に農業ビジネスが着目されているのも事実です。

しかし、今の世は、江戸時代の様に鎖国している訳ではありません。高い関税で鎖国に近いことはしているかもしれませんが、実際には農作物も外国との競争化に置かれています。

たしかに、外国の農産物は危険という風潮が最近はあります。特に中国製の食品は危険という、風潮が一時高まりました。しかし、中国だって、一気に国際化しているし、自国民だって食の安全は考えるでしょうから、その内に安価で安全な農作物を作ってくるでしょう。

その時に、高いブランド農作物に頼っていると日本の農業そのものが成立するとは考えられません。もちろん、その全てを否定する訳ではありませんが、GMがトヨタに負け、ユニクロ、ニトリがその業界で圧勝している様に、一般的な生活に於いては安価に勝るものはありません。

その事を考えれば日本の農業はどの様にして、安価で大量生産を出来る様になるかを考えないといけないのでしょう。

単に寛政の改革で行われた旧里帰農令を行っている様では・・・。

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