【地上げ】~境界確認~後編
昨日は設計事務所との打合せでした。
この不景気に超大プロジェクトの計画を設計事務所と打合せしてきました。
58坪の店舗兼住宅・・・・・・・・・・・・
というわけで、前回の続きです。
さて、程なく、Aさんは帰ってきました。
書類を一式もって来ました。
Bの土地の謄本類も一式揃っています。
Aさんの土地との境界以外の方の印鑑も既に押されています。ちゃんと印鑑証明もついていました。
「ん?・・・なんでAさんの弟さんの印鑑証明が添付されてないんですかね?」
「だって、弟は印鑑登録してないもん・・・」
(はっ?弟さん・・・何歳でしたっけ・・・・)
と、言いたいのを抑えて・・・
「へ~、そうなんですか」
『・・・・・』
(ひらめいた!)
「あ、Aの土地の謄本ありますか」
「あるわけないじゃない・・・」
(さすがに今回は準備悪いなぁとは思わず・・・)
「じゃあ、ちょっとパソコンで取りますね。」
「・・・いやらしいわねぇ・・・・」
(って、別にあんたの謄本見てもいやらしくないだろ!)
と、声を大にして言いたいのを抑えて・・・
「Aの土地はAさん、お一人の名義になってますね!」
「当然じゃない!」
「じゃあ、弟さんに代理委任状渡しました?」
「弟がハンコウ押したのを知ったのだって昨日なのに、委任状なんか渡すわけないじゃない!」
『勝った』
心の中で雄叫び!
「じゃあ、この家屋調査士に電話させてもらっていいですか?」
「いいけど、無駄じゃないの?」
(じゃあ、頼むな!)
と・・・怒鳴りたいのを抑えて、家屋調査士のY氏に電話しました。
「おたく、Aさんの土地とBの土地の筆界確認した家屋調査士のYさんですか?」
「ええ、うちがやらさせて貰いましたが・・・。なにか?」
「AとBの土地の境界確認は無効じゃないですか?Aの土地の所有者はAさんであって、Aさんの弟にはなんの権利もないですよ。」
「ええ、ただAの土地の謄本見たら、Aさんは海外にお住まいなので親類の方に代理でハンコウを貰いました。」
「あのさぁ・・・Yさんもプロでしょ?海外に住んでるから、代わりって通用するんですか?代わりなら代理委任状が必要でしょ。」
「・・・・。いや、じゃあ、Aさんの弟さんが私にまるで権利者のごとく、押印したということはAさんの弟さんの詐欺行為ですよね。」
『釣れた!』
心の中でガッツポーズ!
「じゃあさぁ・・・この弟さんからハンコウ貰ったって言ってるけど、印鑑証明どうした?他の境界にはご丁寧に印鑑証明が全部揃ってるけど、ここだけ何故か印鑑証明がないですね?」
「あ、Aさんの弟さんが実印持ってないって言ってたんですよ」
「本当にAさんの弟が押印したって証拠出して下さいよ。」
「・・・・」
『チェックメイト』
心の中で静かに一言!
「Yさんの立場も解らないでもない。しかし、焦りすぎたかな・・・。でも、心配しなくていいよ。あなたの依頼主が怒らない様にしてあげるよ。ただ、二つ、頼みがあるんだけど・・・。Yさんが請け負った、Bの土地の所有者から、今、この土地売買の話が進んでいる金額を教えてもらってよ。それと、Bの土地の所有者の電話番号を今すぐに教えて。」
すぐに、家屋調査士から電話が掛かってきました。値段もご丁寧に調べてくれました。
私はすぐに、Bの土地の所有者に電話しました。
「Bの土地の件なんですけどね。話が二つあるんですよ。まず、AとBの土地の境界確認については無効です。Aの土地の所有者は押印してません。それと、AとBの境界確認が出来てない状態で○○○○万円でBの土地を買いたいと言っている方がいるんですけどどうですか?」
※この金額は当然ですが先に進んでいた話に上乗せしています。
Bの土地の所有者はさすがに突然の電話で驚いたのでしょう。
「どちらから、この土地の売買の話を聞いたんですか?」
「家屋調査士のYさんとは旧知の仲でして、たまたま、話を聞いたんですよ。」
Bの土地の所有者は結構、話の解る方でした。AとBの境界の確認が取れていないことをちょっと説明したらわかってくれました。
こちらもAとBの境界が確認できてなければ現況有姿で売れないということは必死に境界確認をしていることから想定済みです。
また、Bの土地の所有者には、この家屋調査士Y氏のおかげでもっと高い金額で売れたと思わせることでY氏の面子も保ちました。Bの土地の所有者もちょっとでも高く売りたかったのでしょう。喜んで乗ってくれました。
しかし、その先に話が進んでいた方との契約が3日後だったというのは、後から知った話でした。本当にギリギリセーフでした。
みなさんも、実印を気軽に押さない様に注意してください。
実印を持ってなくても・・・
事業再生ADR
みなさんは事業再生ADRという言葉をご存知ですか?
民事再生や会社更生はよく聞くので、よく知っていると思います。
民事再生について・・・『民事再生法-Wikipedeia』
会社更生法について・・・『会社更生法-Wikipedia』
我々の不動産・建設業界というのは毎日、どこかの会社が倒産しないかが気になる業界です。というのも、単なる野次馬根性でチェックしているだけではなくて、それが取引先だったりするからです。
その会社に債権があれば当然ですが大騒ぎです。
しかし、債権が無くても重要な取引先を失えば自分達にもダメージがあるからです。
この2年間の間に多くの同業者が倒産していきました。
よく、帝国データか東京商工リサーチをそのままコピペして1行だけ自分の感想というブログを見ます。本当に取引先だったりして、ショックを受けているブログもあれば、単なる野次馬まで色々あります。まぁ、著作権の問題を置いておけば、みんながそれだけ関心を持っているんだなぁ・・・と思います。
私はそのブログで倒産情報をチェックすることはないですが、帝国データや東京商工リサーチの倒産情報は夕方に必ずチェックしています。
そこに取引先の名前が出ると
「やっぱり・・・」
と思うこともあれば
「ええええ~~~~」
と驚くこともあります。
その様な倒産情報は破産、民事再生、会社更生など、いずれも裁判所が絡んでくる倒産情報です。
しかし、実質上の倒産にも関わらず、そこに情報が出てこないことがあります。
それが『事業再生ADR』です。
今年になってコスモスイニシアが初めて事業再生ADRを申請したことで有名になりました。
つい先日は日本エスコンが、やはり事業再生ADRを申請しました。
では事業再生ADRについて簡単に説明すると
会社更生や民事再生と違って、裁判所ではなく民間の第三者(企業再生のプロ)が介入するということが決定的に違います。
その他に、この申請した後の債権は申請する前の債権より優先権があるため、申請後に融資を受けやすいとか独立行政法人中小企業基盤整備機構の保証を受けているのでやはり、融資が受けやすいなどのメリットがあります。
詳しくは経済産業省:こちらのサイトから条文がPDFで見ることができます。
しかし、自力再建が出来なくて、一部の債権を放棄させていることは事実で、実質上の倒産です。
スキームと裁判所介入か民間介入かという違いだけと言っても良いでしょう。
結局、これで再生できなければ、民事再生なり会社更生なりに移行していくわけです。
今後、この手法の再生が多くなるかもしれませんが、取引している会社は要注意です。
まだまだ累卵之危にある会社もありますが、倒産の噂のあった、不動産屋がだいぶ無くなってきました。ゼネコンの方が実質的な体力(有利子負債が少ないなど)があることもありますが、一般管理費が多いので仕事量が減って真綿でクビを締められるかのごとく消えていくでしょう。
不動産屋は即死でゼネコンは苦しみ喘いで死ぬという感じでしょうか・・・
景況感が回復基調にあるというニュースもありますが、本当に早く回復してくれればいいなぁと思います。
日経平均大幅安でも・・・
前場終値303円26銭安
【地上げ】~境界確認~前編
日本社会に於いて、印鑑は大変重要な役割を果たします。実印と印鑑証明・・・これさえ揃えばということが多々あります。
今回はそんな印鑑に纏わる話です。
去年の暮れに私にAさんがやってきました。Aさんは都内のある地主さん(おばさん)です。
(その時、Aさんは悠々自適に海外で暮らしていました。今もですけど・・・)
「相澤さん、ちょっと聞いてよ!」
「どうしました?」
(この人、ヒステリックだから関わりたくないんだよなぁ・・・)
「ほら、私が以前から欲しがっていた、Bの土地あったでしょ!」
「あ~、2通り沿いの駐車場の土地ですか?」
「そうそう、あの土地、売りに出たのよ!」
「良かったじゃないですか?」
(どう見ても、怒っているので、この発言は火に油を注いでいます。)
と、私は現地も見て解っているのですが、皆さんには解りにくいと思うのでまたまた絵を描いてみました。
Aさんが欲しがっていたと地はBの土地です。2の道路に20mぐらい面しています。奥行きは6mほどで2の道路(『2通り』と呼びます。)から直接入るような月極の駐車場でした。AさんはAの土地の所有者です。1の道路はAさん名義の私道で幅員は4m、2通りは幅員22mの公道です。この場所の用途地域は商業(容積率500%)です。
Aさんの土地は1の道路にしか接道してないですから、容積率は240%です。しかし、Bの土地が手に入れば、2通りに面する事になるので容積率は500%となります。面積当りの資産価値は一気に倍以上になるから欲しいに決まってます。
また、Bの土地は奥行きが6m程度しかありませんから、大したものが建ちません。しかし、Aさんは自分の土地と合わせれば、100坪を超えます。これならば色々なものが検討できますから、Aさんは他の購入検討者よりもBの土地の評価は高く考えられるので、価格勝負になればAさんが圧倒的に有利です。
※ここで一般の方に道路幅員と容積率の関係を簡単に説明します。
道路幅員が12m未満の場合、その場所の用途が住居系の場合は
道路幅員×0.4×100=容積率
同じく商業系の場合は
道路幅員×0.6×100=容積率
になります。ただし、都市計画で定められる容積率を超えることはできません。
「それが良くないのよ!Bの土地が売りに出たと聞いたのは昨日、日本に帰ってきてからなのよ!」
「しかし、日本に帰ってきてすぐによく、Bの土地が売りに出てるという話を聞きましたね?どなたから聞いたんですか?」
(少し、落ち着かせるために、やんわりと、話を逸らします。)
「それが、私の弟からなのよ!」
(Aさんの弟さんはAの土地から、程近いAさん所有のマンションに住んでいます。)
「弟さんは、Bの土地が売りに出ているとよく、知っていましたね。」
「それがねBの土地の所有者が売却するに当って、境界を確定したかったみたいなの。私の気持ちも知らないで、その書類に弟が勝手にハンコウを押しちゃったのよ。それで弟がその書類の複写を私に持ってきたわけ!それで、その家屋調査士に電話をしたら、売りに出てると解ったわけ!」
「じゃあ、買えばいいじゃないですか!」
(買えないから、私のところに来た事はもうわかってるんですが・・・)
「私だってそう思ったわよ。それで家屋調査士に誰に電話をすれば良いか聞いたら、仲介業者を教えてくれたの。それで電話したら、『もう他の方と話が進んでいて・・・』と言って私には売れないって言うのよ!」
「はぁ・・・」
(それで、どうしろと・・・)
「なんとかならない!」
(私じゃなく、売主にでも相談してくれ・・・)
と言いたいところを抑えて・・・
「とりあえず、筆界確認書の複写を見せていただけますか?」
「じゃあ、家に取りに行ってくるわ!」
(準備悪いなぁ・・・)
もっともAさんの家はここから、徒歩15分です。
・
・
・
・
・
今日はこれから打合せに行かなくてはならないのでこの話は明日に続きます。
中途半端だけど・・・
【地上げ】~接道~
『立退き屋』だとか『地上げ屋』と聞いて、良いイメージを持つ人はいないと思います。私もまったく、良いイメージがしません。会ってみると、やはり、あまり良いイメージの人はいません。私は自分では普通のイメージの人だと思っています。が、社員からは
「オールバックにしないでください!怖いからというより、一緒に歩いてると自分も仲間だと思われるのが嫌だから!」
と言われます。
設計の仕事をしているときにも同じ身なりだったんですけど、やっていることと身なりが重なるとあまり良いイメージにはならないのでしょう。ちなみに、立退きの話の時にも書きましたが、地主さんを脅したり、不法占拠をして地上げをする人もいないことはないですが、今どき、そんな地上げをする人って、かなり古い人です。
もちろん、私はそんな地上げの仕方はしません。格好悪いですし・・・。すぐに逮捕されちゃうし・・・。
さて、色々な地上げをしてきましたが、今回は後始末の話です。しかも、私が地上げに失敗した数少ない話です。
ちょうど、3年ほど前の話です。梅雨の季節でやはり、雨の降る日でした。
私の知り合いの分譲住宅業会社に勤めるM氏から電話がありました。
「もしもし・・・あのさぁ、前から買おうと思っていた、○○町の土地!やっと買えたよ!」
「良かったじゃないっすか」
(ん?自慢話かな?)と思いつつ、社交辞令でそう言うと・・・
「それが困ったことになったんだよ。」
さて、私はこのM氏とは前から知り合いで、今回のこの物件のことは前から聞いていました。
話が解りにくいので、まずは下の絵を見てください。
事前に見せてもらっていた、公図を簡単に絵にすると、下の絵の様になります。
※公図・・・土地の境界や建物の位置を示すものです。一団の土地の様に見えても実際には何区画にも分かれている土地だったりするのですが、それが公図を見れば解ります。ちなみにこの区画の単位は『筆』です。
M氏はAの土地を買いました。面積は250坪ぐらいの土地です。
目的は宅地を分割して分譲住宅を作って売る予定で購入しています。
Aの土地はBとCの土地の所有者でもあるJさんです。
BにはJさんの子供夫婦が住んでいますが土地はJさんのものです。CにはJさんが住んでいます。Aの土地はJさんとJさんの子供夫婦が庭として使っていました。M氏はBとCの土地も売却して欲しかったのですが、それはどうしてもJさんが嫌だということで買えませんでした。
D~Hはそれぞれ、Dさん~Hさんが持っていました。
1~4はアスファルト敷きの道路状になっています。
1と4は幅員が8m、2と3は幅員が6mでした。
この絵だけだとなんの問題もないかと思われます。
「どうしたんですか?」
「接道してないんだよ・・・」
「はぁ?そんなこと、ちゃんと重説に書いてあったでしょ。」
「俺、Jさんから直接買ってるんだよ。仲介はさんでないから、重説ないんだよ」
M氏はこの業界で30年近くはやってるベテランです。たしかにM氏はいい土地を見つけて、直接、所有者に交渉してきます。だから、安く買えるというのがM氏の持論でした。
「ということは、2の土地は一見、道路に見えるけど道路じゃないんですか?二項道路でもないんですか?」
※二項道路・・・幅員4、未満の道路でも建築基準法施行前からある道路で行政から認められている道路のこと。建築基準法42条2項に定められる。この場合、すでに6mあるので私が「二項道路」というのは間違いで、「私道」と聞くのが正解である。
「そうなんだよ。3の土地も2の土地もHさんのものだったんだよ。」
たしかに業者が個人から、買うのに重説なんか作りません。
(それにしても隣接地の謄本上げて、役所に行って道路状況を調べるの当たり前だろ!)
と、言いたいところを抑えて・・・
「じゃあ、Hさんに2の土地を売ってもらう様に交渉してきたら?」
「それがさぁ、Hさんの土地にはアパートが建っていて、謄本に出ているHさんの所に行ってもHさんいないんだよ。それで、困って相澤に電話したわけだ。」
「じゃあ、とりあえず謄本送ってください。」
FAXされてきた謄本を見ると・・・たしかに2はHさんの土地でした。○○町の役所の道路課に行ってみると、たしかに2の土地は道路でもなんでもありません。ちなみに3の謄本を取り寄せると、やはりHさんの土地で役所では道路にはなっていませんでした。
Mさんが既にやったことですが2の土地の謄本に書かれてあるHさんの住所△△町に行ってみました。
普通に家が建っています。表札はHさんとは全く関係のない名前です。
とりあえず、無駄と思いながらも、その家を尋ねると
「ここは借家なんだよね。でも、貸主はHという名前じゃないよ。」
(じゃあ、誰だ・・・)
事務所にもどってパソコンで、△△町のHさんの土地の謄本を取ってみてやっと解りました。
Hさんは平成元年に亡くなっていました。そして、HさんからHさんの子供?と思われる人に登記され、Kさんに売却されています。あの手この手で調べて、Hさんは相続人がご子息しかいないことまでは解りました。
○○町の土地はHさんの名義のまま、相続による名義変更が行われていなかっただけなんです。
そこで、△△町のHさんの相続人の登記されている住所を見ると・・・・
『ハンガリー国ブダベスト市』
諦めました。
私はM氏にその旨を伝えました。
「どうしよう・・・」
「その、住所に手紙でも書いてみてはどうですかね?」
「日本語でいいかなぁ・・・」
「日本人だから、たぶん大丈夫じゃないですか?」
(どうせ、ハンガーリ語なんか書けないだろ!)
M氏はHさんのご子息に手紙を出しました。
・
・
・
・
・
M氏は今でも返事を待っているそうです。
Mさんに返事が来なくても・・・
【住宅】これからの住宅市場を考える。
今日は土曜日なので、ちょっと、まじめな考察を書いてみます。
(先週の土曜日に何を書いてたかを突っ込まないでください。)
一昨年ぐらいまでの景気はどこに行ったのか?というぐらい落ち込んだ景気ですが、これは住宅市場や不動産市場、建設市場に限った話ではありません。住宅も景気が良くなれば、また売れるようになってくることは間違いないのですが、もう少し、マクロ的に考えてみようと思います。
私は自分のサイト
のプロフィールにもあるように、あるハウスメーカーで商品開発をしていたことがあります。
もう、10年近く前の話になります。商品開発は必ず市場調査をしたりするのですが、私たちが開発する商品は今年売れる商品の開発ではありません。女性の水着が常に来年以降のもののデザイン開発をしているのと一緒です。住宅の新商品のサイクルは水着の様に毎年毎年変わるものではないので、そのスパンはかなり長いものとなります。
当時(ちょうど2000年頃)、日本の住宅市場は賃貸住宅、マンション、分譲住宅、注文住宅を合わせて110万戸+αぐらいを生産していました。最近は姉歯問題などもあって100万戸を割っているのが現状です。当時の私が姉歯建築士が登場することは、まったく予期できなかったのですが、2010年頃には100万戸割れというのは予想していました。ちなみに2030年には50~70万戸(約半減)と予想していました。
実はこれ、景気のアップダウンはまったく無視して算出しています。
簡単に言うと、住宅取得世帯数と住宅寿命からはじき出した数字なんです。この数字を見たときに、「当然だろうなぁ」と思われる方も多いと思いますが・・・大変なことなんです。
現在、100万戸を割ったわけなんですが、これによって、どれだけの建設会社が倒産しているのでしょう。
実際には住宅市場だけの問題ではありません。公共事業の圧縮、リーマンショックによる金融機関からの融資制限など複数の要因が重なっているのは事実です。しかし、住宅市場の占める建設業界の割合というのはとてつもなく大きいことは間違いがありません。
しかも、このエコブームです。エコブームじゃなくても二酸化炭素排出制限のある中で近い将来に、
『築○○年未満の建物を解体、再開発する場合は知事の許可を取らなくてはならない。知事は相当の理由が無い限りは許可してはならない』
などという法律ができるかもしれません。(できる様な気がします。)出来た方が自然だし、そのものには反対はしません。
不動産業界も再開発があまり行われなくなれば、大きな利益を上げることはできません。当然です。建築業界と不動産業界というのは表裏一体です。
行政も200年住宅などと意気込んでいますが、建築基準法で200年住宅にすることを強制するか、200年住宅にすることで上がった分のコストに対して、融資などの優遇制度が上回らない限り、なかなか上手くいかないでしょう。太陽光発電が伸び悩んだのと同じ結果になる様な気がします。国や識者と言われる人たちの理想は消費者の財布の中身をちゃんと考えてないことが殆どです。
ここで、業界として考えなければならないことは、中古住宅市場です。
既に私がブログで書かなくても中古市場の重要性に関してはGoogleで『中古住宅』で検索してもらえればいくらでも出てきます。中古住宅とリフォーム市場。ここに活路を求めることになるのでしょう。
しかし、ゼネコンもハウスメーカーも物凄く古い体質の会社が多いのが実態です。これだけ、公共事業依存度が高く、その上、未だに賄賂と談合を繰り返す業界です。企業統合もできない。方針転換もできない。下請けに押し付けることでしか利益を上げられない体質。今日の借金を返す為に受注を続ける。そして、体力勝負の上にバタバタと倒れていくのでしょう。恐竜が滅びる様に・・・。
そして、不動産業界も再開発ではない市場に行かないといけません。この体質をどこかで改めないと同じようにバタバタと倒れることになります。
仮に前述の様に中古住宅やリフォームに活路を求めたとしても今までの様な売上げを上げることができる市場ではなくなります。やはり、相当数の出遅れ組みが消えていくことにはなるのでしょう。
10年も前に考えていたことですが改めて考え直して行こうと思っています。
こんな、内容だけど、
【違法建築】~『時効』ですよ!~
さて、前回はちょっと、まじめなことも考えているということをアピールしてみたんですが、読者のみなさんの期待に沿えてなさそうなので、今日も2回目の更新をしてみます。
みなさんは違法建築と聞いてどんな物を想像しますか?
まぁ、最近は姉歯建築士やヒューザーで有名になった、耐震偽装を思いつく方が多いかと思います。
しかし、この世の中には違法建築物だらけなんです。
統計は取っていませんが経験則的に見ると
1位 違法増築
2位 検査済み証無取得
3位 用途違反(飲食店をやってはいけない場所でやっている・・・等)
などが多いでしょうか・・・
特に、違法増築はそこら中にあります。ちょっと、古い街中の雑居ビルの屋上を見てみてください。屋上にそのビルとはどう見てもにつかわしくない建物が乗っていることがありませんか?その殆どが違法建築です。
※防火地域以外の場所では10㎡未満の増築は一定条件下で無許可で出来ます。
不動産売買の仕事をしているとこの違法建築によく当ります。住宅情報館の質問にも多く寄せられています。
今回はそんな違法建築の話です。
まだ、景気が良かった6年ぐらい前、大手不動産仲介会社N氏から電話です。
(N氏についてはこちら
を参照してください。)
この頃のN氏はそこそこ経験を積んでかなり色々なことが解るようになっています。もちろん、この時には宅地建物取引主任になっていました。
「相澤さん、品川区に良い物件があるんですよ~。」
間髪いれずに
「山手線○○駅徒歩5分の6階建ての賃貸マンションなんですけど、総戸数は1DKが46戸2LDKが6戸、空室は3戸です。現況利回りはNETで14%、満室なら15%を超えます。家賃は周辺相場と比較してもかなり安いです。だから、家賃の下落リスクは低いです。」
※当時はまだ利回り5%以下での収益物件の取引なんてほとんどありません。東京都心部で5%以下の利回りで収益不動産が取引されるようになるのにはここから2年ぐらいの時間がかかります。
物件を入手した後に景気が悪くなったりして家賃が下がると物件の価値が下がります。N氏はそれを言いたいわけです。
「個人の方が所有で昭和57年築です。」
ここでN氏のテンションが下がったのは建物が古かったからでしょう。
「ん?昭和57年か~。微妙に旧耐震だったりする?」
(※旧耐震・・・新耐震基準は昭和56年6月1日に施行されたものです。昭和56年6月1日以降に確認申請が取得されている物件(もちろん、その確認申請に基づいて完了検査が行われていること)については、新耐震基準を満たしていることになります。)
今回の物件は完成が昭和57年ということは、確認申請が昭和56年6月1日より前の可能性があります。
「う~ん。謄本には昭和57年11月新築と書いてあるので大丈夫じゃないっすか?」
「そっか~。6階建てなら施工に1年は掛からないだろうから、新耐震かな・・・」
「ですよね~。最近、僕もいろんなことがわかる様になってきたんっすよ!」
「一応、検済のコピー取り寄せてくれる?」
「あっ、そこなんですけどね、この建物、検済を取得してないんですよ!」
「げっ・・・」
「確認はあるんですけどねぇ・・・」
(※確認・・・確認申請済証のこと。建物は原則として確認申請をしないと建てられません。ただし、一定条件下では必要がありません。詳しくはこちら・・・『建築確認申請』Wikipedia
)
(※検済・・・検査済証のこと。確認申請に基づいて、ちゃんと建物が建てられているかを行政機関(最近では民間の建築検査機関でも行われています。)が竣工時に検査し、その検査内容に問題がなければ発行される証書です。)
「図面はある?」
「ありますよ!メールしまっしょっか?」
「うん。とりあえず、物件概要と図面をメールして。」
N氏は仕事が速いです。N氏が知識をカバーしてここまで来たのはこのスピードです。
物件概要と図面のPDFが1分で来ました・・・速いです。
こうなることをちゃんと考えて電話しながら、メールを用意していたに違いありません。
さて、PDFを開いてみると・・・
物件概要に地図、公図、謄本、それに設計事務所の書いた図面、建築確認申請(受領印付き)があります。
物件概要はN氏が電話で言った通りのことが書いてありました。謄本を確認すると物件概要と相違ありません。というわけで早速、図面の確認をすると・・・N氏の決定的なミスに気が付きました。
すぐにN氏に電話します。
「お~い、6階の図面が添付されてないぞ!」
「いや、6階の図面がないんですよ。」
「なんで!!!」
「確認見ました?」
(ん?)
建築確認申請というファイルを開くと・・・
『5階建てで申請してるっ・・・・』
「あのさぁ、これ、新耐震も旧耐震もないじゃん!普通に違法建築だろ!」
「あっ、でも昭和57年築ですから、もう築20年以上ですよね。」
「だから、なんだよ」
「時効ですよ、じ・こ・う!」
「へ?」
「だって、殺人だって15年で時効ですよ!違法建築も20年経てば時効でしょ。」
※当時は殺人事件の場合の時効は15年でした。
(絶句・・・)
この後、私がN氏に向かって時効について、長々と説教したのは言うまでもありません。
※違法建築に時効はありません。時効というのは犯罪の証拠が時間とともに立証が難しくなるから存在するのですが、違法建築は建物が無くならない限り、その立証はできますから・・・。
「洗面所の電気が点かないのよ!」
私は不動産屋でもありますが、そもそもは建築屋です。しかも、住宅の専門家です。
というわけで、今日は住宅の仕事をしていた時の話です。
住宅業界というのはそもそもクレーム産業です。建物というのは自動車やパソコンの様に工場で画一されたものを大量生産をしているわけではありません。個々の部品は工場生産でも、それを組み立てるのは現場で作ります。
故にどうしても、クレームが発生します。その代表が雨漏りです。『8時だョ!全員集合』(古っ!)のコントの様な大雨の日に、家中に洗面器や鍋を置いてしずくを受けるという雨漏りはありませんが、ちょっと壁紙にシミができるという様な雨漏りは日常茶飯事です。
経験的に言うと15軒に1軒ぐらいの割合でありました。まじめにやっていても、クレームというのはなかなかなくなりません。だから、その対応を丁寧にすることが大事です。
今回は雨漏りではなく、電燈の話です。
私の席の電話が鳴りました。出ると、アフターメンテナンス部のクレーム担当Sです。
「おう、相澤か?あのさぁ、A団地って設計したの相澤だろ?相澤の設計したA団地3号棟の方から、洗面所のダウンライトの電気が点かないというクレームなんだけど、思い当たる節はある?」
A団地はたしかに私が3年ほど前に設計した団地です。しかし、その方が入居されてから、もう2年以上は経っていました。
「う~ん、ちょっと図面を見てから折り返すよ。」
と応えて電話を切り、図面を引き出してきました。その頃の私は年間に何十棟も設計してますから、3年も前に設計した建物の配線系統まではまったく覚えていません。
図面を見ると、トイレや浴室と系統は一緒です。
(あれ?洗面所だけなのかぁ?そもそも洗面台に付いてる電燈は点くのかな?)
などと、考えていると、またSから電話です。
「相澤さぁ、まだ解らないの?A団地3号棟の方から、なんとかしてくれって何度も電話があるんだよね!この方、結構ヒステリックなんだよ!」
「あのさぁ・・・洗面所のダウンライト以外に点かない場所はないのかなぁ?」
「いや、洗面所のダウンライトだけだって言ってるぞ」
私はひらめきました。
「あのさぁ、電球1個を持ってA団地の3号棟にいってくれる?」
「へ?どこが悪いの」
「たぶん、電球を換えれば直ると思う。」
Sも解ったみたいでした。
「球切れか・・・?」
Sが行くとやっぱりそうでした。
A団地3号棟の方はSに向かって言ったそうです。
「おたくはたった2年で切れる電球を使っているのっ!」
(まだ、LED電球が登場する10年も前の話です。)
中にはこういうお客さんもいます。
仲介業者(ブローカー)
本日、二度目の更新です。
いつも、昔話ばかりを書いています。そもそもは『Dr.相澤の住宅情報館』
の更新をなぜ怠っていたかということを書き始めたことから、昔話ばかりになってしまいました。
あまり、昔話ばかり書いても仕方ないので今日は最近あったことを書きます。
久しく連絡の無かった不動産会社Bの担当者Gから連絡がありました。
「相澤さん、お忙しいですか?ちょっとお願いがありまして・・・。」
「どんなお願い?」
口調からしてロクなお願いではなさそうです。
「実はある物件の購入をうちのお客さんが検討してくれていたんです。その物件の情報は不動産屋1というところからの情報なんです。それで、うちのお客さんはその物件の購入申込書を用意したんです。不動産屋1は物元じゃないみたいなんですよ。とりあえず、購入申込書を不動産屋1に渡そうとしたら・・・突然、不動産会社1と連絡が取れなくなっちゃったんです。相澤さんのお力でなんとか、この物件繋がりませんかね?」
不動産屋以外の方にはよく解らない話です。
しかし、この先にGが何を言いたいかを悟った私はいつになく冷たいです。
「謄本とって、売主のところに行ってきたら?」
「いや~、不動産屋1の先に物元がいるわけですし、もし不動産屋1と物元の間に別のブローカーがいたりすると・・・。もし、そのブローカーや物元がうちの会社と仲の良い会社だと山越しと思われかねないから、売主に直接会いに行けないんですよ。」
不動産屋以外の方にとっては尚更解りにくい話になっていると思います。
「じゃあ、諦めれば?」
「いやいや、買主さんから、購入申込までもらっちゃったんですよ!。今更、売主どころか物元にも繋がらないなんて言えないですよ!うちの会社の面子が・・・助けてください」
(こうなるだろうなぁ・・・と思ったから冷たかったんだよ!)
と言いたいところを抑えて・・・
「わかった、わかった、じゃあ私が売主のところに行ってくるよ。」
とここまでの話が解り難いと思うので絵にしてみました。
と、こんな感じです。
今回のGは左から二番目の客付け業者で不動産会社Bの社員です。
買主は購入申込書を出そうとした。
不動産屋1から情報が不動産屋Bに行くわけですが不動産屋1と連絡がつかなくなった。
『そんなことあるの?』と思われる方が多いと思います。
これがよくあることなんです。上の図の不動産屋1,2,3のことを不動産業界ではブローカーと言います。そもそもの意味から言えば仲介業者はみんなブローカーなんですが、『自分では物元も客付けもしないで不動産屋に情報を流すだけの業者』のことをブローカーと言っています。ところが、この人たちは出所のはっきりしないまま情報を流すだけなので、売主に辿り着けなくなることがあります。
そして、不動産屋Bが売主のところに直接行った場合、不動産屋2,3、Aが仲の良い会社で山越になっても困る。売主は謄本で解っているが不動産屋2,3、Aが解らない。不動産屋1も自分が山越されることを警戒しているので不動産屋A、2,3のことはなかなか教えてくれません。
(山越・・・紹介して貰った不動産屋を通さないで直接、売主のところに行くこと。買主が直接行けば、仲介手数料を払わなくて済むし、仲介業者が行けば仲介手数料の分け前が増える。しかし、山越をするような業者とは仕事をしても商売にならないので、そんな噂が広がるとみんなが情報を入れてくれなくなる。)
そこで、ここには一切、登場していない私が売主のところに行くわけです。
すでに不動産屋1は消えているので、私が売主のところに行って、不動産屋Bと買主を紹介しても、不動産屋A、2,3に対して言い訳ができます。表向きの理屈ではこうなんですが、実際には不動産屋Bの担当者Gが人見知りで「こんにちは~」と売主を尋ねられないという問題もあるかもしれません。
しかし、私にとっては上手くいけば、不動産屋A、2、3の代わりに物元業者になれるわけですから話としてはおいしい訳です。上手くいけばですが・・・。(売主に会えてもこういう怪しい話はなかなか上手くいきません。)
で、行ってきました。
売主さんの名前はKさんです。
私が売主さんの家の住所を頼りに近くまで行くと、道路の掃除をしている人がいます。
私はその人に声をかけました。
「すいません。この辺にKさんという方の御宅はありませんかね?」
「ん?私がKだけど・・・」
(らっき~~~~)
事情を話すと・・・
「その物件の件は不動産屋Aに任せてるから、そこと話してくれ・・・」
(ガクッ・・・)
不動産屋Aの担当者と連絡先を教えてもらいました。
(もっとも、不動産屋Aは私も良く知っている会社でしたが・・・)
不動産屋Aの担当者と不動産屋Bの担当者を直接会わせて、私の仕事は完了です。
あとは、不動産屋AとBが上手く話を進めてくれることを祈るだけです。
この結果はまだ出てません。
物元や売主に繋がらなくて困っている方がいたらご一報頂ければ場所によってはお手伝いします。
【経緯】外伝7【立退き】
さて、昨日の話の続きです。
私はRさんとUさんの関係を聞かなくてはなりません。いくら、Uさんが連帯保証人でも、Uさんが家賃を払っていて、この部屋に住んでいるので、そこの関係だけはちゃんと確認しなければなりません。
聞くのイヤだなぁ・・・と思いつつも仕事だし・・・止むを得ず切り出しました。
「あの・・・Rさんと正式にはどんな関係はなんでしょうか・・・?」
「あ~ん?奥さんみたいなもんだって言っただろ。」
「いえ、『みたい』ではなく、『正式』にはどんな関係なんでしょうか?」
「あんたには関係ないんじゃい」
(って、「じゃい」ってどこの方言なんじゃい)
と、どうでも良いことを思いつつ・・・
「いえ、さすがにご家族や血縁でもない方にいろいろなお話をする訳にもいかない訳でして・・・」
と言うと、意外に素直に答えてくれました。
「俺はRの雇用主じゃい」
(あれ?Rさんってそう言えば職業が書いてなかったな・・・)
「あの、どういう、お仕事なんでしょうか?」
「聞きたいんかい?じゃあ、教えてやろう。Rはな、ジャパユキなんじゃい。」
「『じゃ・ぱ・ゆ・き』・・・」(懐かしい、響き・・・)
(はい、そこの貴方、『ジャパユキ』と聞いて解る方!アラフォー+αですよ)
ジャパユキが解らない方はこちらを参照してください。→『ジャパゆきさん』Wikipedia
(って・・・ぜんぜん、奥さんじゃないじゃん!)
でも関係が解れば良いだけです。だって、こちらは、これからもRさんに幸せにここに住んで頂く事が目的ではありません。立ち退いて貰うのが目的です。まぁ、一応、雇用関係ということもあるみたいですが、UさんがRさんを見捨てるとも考えにくい雇用関係だろうと思いました。だって、UさんにとってRさんは大事な稼ぎ手と思われたからです。それと、Uさんみたいな方は話が早いんです。この時は解っていなかったんですが経験を重ねるうちに住んでいる場所に愛着が無い方というのは金銭的に解決がしやすいんです。Rさんは長いこと住んでいるので愛着はあるかもしれませんがUさんがここに愛着があるとは考えにくい状況です。
しかも、Uさんは私が切り出さなくてもちゃんと解っていました。
「で、いくらくれるんじゃい」
「えっ」
「だから、立退き料、いくらくれるんじゃい」
この頃の私はまだ立ち退き初心者です。もじもじ、していると・・・
「条件は2つじゃい。Rの次の住む場所を探すことと家賃の10倍じゃい。」
(らっきーーーーー)
家賃の10倍の立退き料って高いと思うか安いと思うかはそれぞれだと思います。プロの方からすれば普通と思われるでしょうし、素人の方からすれば、高い!と思うとおもいます。もっとも月額家賃にもよりますが、今回は十分予算内でした。読者の方には立退き料の考え方が解らないと思われますのでここで立ち退き料の考え方をちょっと書いておきます。
・ 引越し代:家賃の1ヶ月分
10万円の部屋の引越し代は概ね10万円と考えます。もちろん実際にはその人の荷物の量によります。
・ 次の住まいの初期費用:家賃の6か月分
現在の住まいの家賃が10万円なのに次の住まいの家賃が30万円ということはその人の収入が突然増えるわけもないので、概ね同じぐらいの家賃と考えます。そうすると、敷金2ヶ月礼金2ヶ月(関東の場合は礼金があります。関西だと敷引きです。もちろん、物件によってはこれがゼロで済む場合もありますし、4ヶ月以上掛かる場合もありますが住居系の場合にはこれぐらいで考えておきます。)仲介手数料1ヶ月。それに火災保険だの鍵交換費用などで1ヶ月ぐらい(実際には5万ぐらいでしょうが面倒くさいので1ヶ月としちゃいます。)
・ 迷惑料:1ヶ月~
実際に、引っ越すと知り合いに住所変更のお知らせをしたり、金融機関や免許証の住所変更など、面倒な手続きがあります。その他にも最近では次の住まいでプロバイダーとの再契約やケーブルテレビの加入など人によってはやらなくてはいけないことが沢山あります。もちろん、精神的な保証という意味合いもあります。
と考えれば概ね8ヶ月ぐらいは掛かります。
しかし、住居系の賃借人は賃貸人から「老朽化の為、立て直しますから、退居してください」と言われると、借家法をよく解っていないことがあり、慌てて次の部屋を探して、出ていってくれる方もいます。私の経験から言うと3割ぐらいの方は立退き料を支払わないで済みます。また、7割以上の人が上記の内訳以内で退居してくれます。
問題は残りの3割の人です。
この人たちはかなりゴネます。不動産屋や法律関係にちょっと詳しい知り合いがいたりして入れ知恵をされると、その入れ知恵をされたところから、さらに多目に請求してきます。不動産屋や法律関係に詳しい人の場合はあまり法外なことは言ってこないことが多いです。
実際にはこちらは、全員に退居してもらわなければならないですから、なんとしても出てもらわなければなりません。実際には上記の様な理屈が通じない相手もたくさんいます。その場合は大変になります。
時々、立退きを実際にやったことの無い不動産鑑定士や弁護士が杓子定規にバカな立退き費用を算出したりしますが、私は(やれるもんなら、それでやってみろ)と思います。
さて話を戻すとRさんの場合は金銭的には十分に予算内だったわけです。(しかもSさんの立退き料ゼロだったし・・・)詳しくはこちらから
問題はRさんの次の住まい。職業(本当のことを言えるわけもない)、本当に就労ビザを持っているのか?(あとで解りますが持っていません)、フィリピン人、連帯保証人がUさん(血縁じゃない上に普通の人じゃない)
部屋を探すのは相当、大変でした。
私がなかなか部屋を探せないでいると上司が・・・
「入管行って、チクッてこい!」
この上司、意気込みで土地を買えちゃう上司(詳しくはこちら
)なんで言うことは極めて短絡的です。
・ Uさんが仮に一緒に逮捕されても、仲間になにをされるか解らない。
・ こちらが立退きを目的として居住者を入国管理局に引渡したことがマスコミにでも取り上げられたらただじゃすまない。(一応、上場会社でしたし・・・)
さすがに上司には、このことを言って理解してもらいました。
その後、3ヶ月ぐらい掛かって、なんとか部屋を見つけることができました。
このマンションは他にも立退きで苦労することはあるのですが、ネタとして話せることはこんな感じです。
ちなみにこのマンションはすでに解体されてありません。本当は再開発しようとしたのですが、更地の段階でどうしても売ってくれという不動産デベロッパーが出てきたので売却してしまいました。そのデベロッパーは既に休眠状態ですが・・・。
このテーマでのこのマンションはこれぐらいで終わりにします。
【経緯】外伝6【立退き】
今日は以前書いた、あまり話が通じないRさんの話です。
賃貸管理をしていると、色々な人や事件に遭遇します。(後日、少しずつ書いていきます。)
Rさんに至っては前のオーナーが契約したんですけど、私の本心は
「よく、この内容で契約したよな・・・」
と言うような方でした。
まずは毎度同じの契約書及び添付書類による賃借人の属性チェックです。
名前:Rさん
性別:女性
年齢:30代
同居人:無し
連帯保証人:Uさん
家賃の遅延履歴:無し
本物件他の居住者からのクレーム履歴:無し
と、ここまで読んでいる方は問題無い様に感じると思います。
しかし、私はすでに『あたた・・・っ』と思っていました。
Rさんの契約書に添付されている身分証明書はパスポートのコピー!
(国籍・・・フィリピン人じゃん!)
別にフィリピン人だから悪いというわけではありません。しかし、ここに住んで既に12年が経過しています。ビジネスでちゃんと日本に来ている方で12年も日本にいれば一般的には日本語がちゃんとしゃべれるはずです。
(日本人の方と結婚されたのかしら・・・)
と思いつつ、Rさんの部屋にも
『近所まできましたので~。』
作戦で行くと、あっさり・・・ドアが開きました。ちょっと、セクスィな格好をしていましたが、仕事モードなのでそんなことは気にせず、名刺を渡して、一気に用件を言うと、Rさんは部屋に戻っていって携帯電話を持ってきて、どこかに電話を始めました。何を言っているかは解らないのですが、時々、日本語らしき言葉も・・・どうも
「すぐにきて~」
と言っている様です。しばし、待っているとRさんはその携帯を私に渡しました。電話の相手が誰だかも解らない私は耳に当てるだけで、こちらから話すことはできませんが、私が電話を持っていることを教える意味で
「もしもし・・・・」
というと。結構、太いというかドスのきいた声で
「何の用事じゃいっだいたい、お前は誰じゃい」
(いや、じゃいじゃいって言われても、あんたこそ誰じゃい)
と言いたい気持ちを抑えて・・・勇気が無いだけですが・・・
「Rさんのお住まいのマンションの新オーナーになった会社のものです。所有者変更のご挨拶と契約書の賃貸人の部分を変更したいと思いまして、やってきました。」
と精一杯丁寧に言ったつもりでした。
「ほんまかいあんたが新オーナーの会社の社員って証明できるんか」
(って、いいから、あんたは誰なんじゃい)
と言いたいところを必死に抑えて・・・
「はい、とりあえず、今、Rさんに名刺を渡したのですが・・・」
「Rに換わってくれ」
と言われたので携帯をRさんに・・・なにやら、ひそひそ話して・・・携帯は私にまた戻ってきました。
「おう、どうやら本当みたいだな。Rじゃ話にならんから、俺が会ってやる。」
さすがに誰だか解らない人が会うと言われても・・・勇気を振り絞って
「あの・・・どちら様でしょうか・・・」
「Uだよ、U」
(あっ、たしか連帯保証人の方・・・)
会う日を約束したのですが、私はもう一つ確認しなければならないことがあります。
Uさんの身分証明書(運転免許証)のコピーは契約の時に添付されていたのですがコピーが粗い為、顔写真は確認できません。本当に会う人がUさんなのかを確認しなければなりません。
「すいませんが、本当にUさんかを確認しなければならないんで、お手数ですが身分証明書、あっ、免許証を持ってきていただけませんか?」
「ねーよ」
(無いって、契約の時には・・・)
「免許取消し中だよ」
(取消しの場合は○○中とは言わないだろ)
と心の中で突っ込みつつ・・・
「他に何か身分証明書はありませんか?例えばパスポートとか・・・」
「おう、住民票なら取ってくぞ」
(住民票取るのに身分証明書がいるだろ)
と言いたかったのですが持ってくるというので
「それで結構です。」
3日後にRさんの部屋で会うことになりました。
そして、Rさん、Uさんと会う日になりました。ちょっと、Uさんの声に萎縮していた私ですが・・・。勇気を振り絞って、会いに行きました。心の中では
(Rさんはきっと、Uさんの奥さんなんだろう)
と、思いつつ・・・。
さて、Rさんのお部屋に入るとUさんは既に待っていました。
(げっ、声のまんまの風貌・・・)
私が萎縮しているのを相手に悟られてもまずいかと思いつつ、杓子定規に名刺を出して簡単な挨拶をして、UさんにRさんとの関係を聞きました。
「失礼ですがRさんはUさんの奥さんでしょうか?」
「おう、だいたい、そんなもんじゃい」
(やっぱり、そうだったんだ。私の勘も立派じゃい)
と思いつつ次の作業に・・・
「すいませんが、住民票を見せていただいて宜しいですか?」
「おう、これじゃい」
役所の封筒に入っているままの住民票を手渡されたので早速、開けて確認すると、間違いなくUさんです。目を住民票の下の方にずらすと
妻○○(漢字)
長女○○(漢字)
長男○○(漢字)
(Uさん、今、Rさんが奥さんだって言ったじゃないですか・・・)
もう一回、関係を聞かなくてはならなくなりました。
もう、RさんとUさんの関係に気が付いている方もいらっしゃると思いますが・・・
この話は次回に続きます。