空き家問題を考える ~無造作にアイデアを実施するのはNG~

今、色々なところで取り上げられている空き家問題。既に2013年10月の調査で全国に約820万戸、全体の13.1%の空き家があるという状態である。

なぜ、空き家が増えているかというと、根本的な理由は簡単である。

人口減少が始まり(増加が止まり)、核家族化による世帯数の増加にも歯止めが掛かっているのに新築の供給が多いというのが最大の原因だ。新築の供給を抑制すれば簡単に問題が解決できそうだが、景気刺激策などの理由から、むしろ住宅エコポイントの復活など新築の供給を煽っているのが現状である。

さて、この空き家問題だが現在、早急な取組が必要な問題は、空き家となっていて、再利用不可能にも関わらず放置されていて危険な建物が問題となっている。人里離れた集落で既にその集落に誰も住んでいないで廃墟になっている空き家や、高度経済成長期に開発された別荘地などの空き家は人がそもそもいないので、放火や空き巣、また、そこで子供が遊んでけがをするという心配は少ないだろう。

しかし、このような廃墟となっている空き家はなにも人里離れた場所にあるとは限らない。東京23区の駅近の住宅地にもかなりの数が存在する。これは、『固定資産税の減税の問題が大きい』とか『解体費を相続人が負担しないから』など、様々な理由が上げられているが決定的な理由が存在する訳でもなく、複合的な要素が大きいのだろう。

そして、最近ではこの様な廃墟となった空き家を取り壊せる条例を定める特定行政庁が増えている。

しかし、ここで疑問に思うことだが、何故、わざわざ条例を作っているのだろうということだ。条例など作らずとも建築基準法第10条を適用して除去の命令を出してしまえばよいだろうと考えた。そこで、既に条例を定めている東京都墨田区に問合せをしてみたところ、建築基準法第10条では

前略~損傷、腐食その他の劣化が進み、そのまま放置すれば著しく保安上危険となり、又は著しく衛生上有害となるおそれがあると認める場合においては、当該建築物又はその敷地の所有者、管理者又は占有者に対して、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用中止、使用制限その他保安上又は衛生上必要な措置をとることを勧告することができる。

となっている。この「そのまま放置すれば著しく保安上危険となり」の部分が「衛生上有害となるおそれがある」の「おそれ」に掛かっていないと受け取れるとの解釈があるらしい。文面からすれば、「そのまま放置すれば」とあるので未来を予測しているので「おそれ」に掛かっていなければ日本語として成立しなくなるはずだが、この部分の取り扱いがナーバスな問題ということである。

そこで、ここに一言付け加え、「そのまま放置すれば著しく保安上危険となる『おそれがある』、・・・」と条例にはしているとのことである。

実はこの建築基準法第10条にはもっと大きな欠点がある。

それは憲法第29条の財産権の問題で、他人に迷惑を掛けている状態にない個人の財産を国家がそれを侵してはならないとあり、憲法第98条で憲法は他の法律よりも優先するとあるので、その空き家が他人に迷惑を掛けているかの判定が難しい。建築基準法では他人に迷惑を掛ける様な状況を定めていない。

そこで、条例では、他人に迷惑を掛けると考えられるガイドラインを策定している。

では、このガイドラインに抵触したら、なんでも壊せるかというと、そうでもなく、出来うる限り、所有者に取り壊す許可を貰ってから壊しているとのことである。

ゆえに、条例を作ったからと言って速やかに廃墟となっている空き家を取り壊せるということではないらしい。

さて、廃墟となっている空き家に関しては権利関係を整理して、解体費を差し引いた価格で不動産市場に流通させれば良いと思う人もいるかもしれないが、実際には廃墟となっている空き家というのは、その権利関係が滅茶苦茶になっていることが多い。つまり、住んでいた人が亡くなり、相続が発生しているのにそこに相続人がいない訳である。私も何度か、この手の空き家を売却して貰えないか、相続人を探そうとしたが、登記情報を取り寄せてみると、相続人が10人ぐらいいて、さらにその10人のうち、2人が既に他界していて、さらなる相続が発生しているのに登記されていないということもあったし、登記情報に記載されている所有者は一人だけど既に昭和の時代に他界していたという事例もあった。一番、多いのは登記情報では所有者の住所が、当該物件つまり、廃墟になっていて、所有者と連絡が取れないということだ。

こんな権利関係が面倒な空き家を不動産市場で流通させるなど、現行法では不可能である。

しかし、この様な廃墟とまでは言えない、再利用可能な空き家の方が多数、存在しているのが事実である。しっかりした、統計データはないのだが、空き家の理由が明確で再利用可能が確実と考えられている住宅は、2008年の段階で65.5%あった。残りの34.5%の中にも長期不在や別荘などの空き家が含まれており再利用可能なものもあったと考えられる。とすると、少なくとも70%以上の空き家が再利用可能と考えられる。

もちろん、この空き家が手つかずの状態で、そのうち時間の経過とともに廃墟になっていく可能性は十分にある。それに目を付けたのが空き家ビジネスである。

一番、多く最近話題になっているのが、某不動会社が主催し、若手の建築家が、お洒落なリフォームを提案し、所有者を説得してリフォームをして賃貸にだしているという手法である。

しかし、この実態を調べてみるとかなり杜撰な実態が見えてくる。若い建築家は建築基準法のことなど度外視で、構造の安全なども床下や天井裏を懐中電灯でちょっと見て、

「これ、全然、使えますよ!」

などと言って、細かい検査など一切していない。それどころか、その物件を調べてみると完了検査が出されていない物件も多数ある。というよりも、殆どの物件が完了検査を受けていなかった。それにも関わらず、体裁だけを整えて賃貸に出しているのである。この不動産会社がそれを重要事項説明の時に説明していたかどうかは不明であるがかなりグレーな手法であることは間違いない。

空き家を安く借りて老人介護施設にしているケースも多数、見受けられる。それも無届け老人介護施設で建築基準法の用途変更どころか、なんの申請もしていないで勝手に使っているというケースもある。さらには、特定行政庁がこの様な無届け老人介護施設を斡旋しているという実態もある。

他にもつい最近まで問題になっていた脱法ハウスとして利用されている場合もある。これに関しても国土交通省から、新しいガイドラインが出ているにも関わらず、一切、お構いなしで使われているものもある。同様に用途変更を行わずに簡易宿泊施設として使われているものもある。

いずれの事例でも事故や事件が発生している。

この様な脱法に近い空き家利用に歯止めを掛けなければならないこともあり、誤った空き家利用をもう少し詳しく紹介し、本来、どの様な手続きを行い利用しなければならないかを今後、連載していきたいと考えている。

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借りた物件の用途変更が出来ないのは誰の責任?

連載シリーズ 【 借りた物件の用途変更が出来ないのは誰の責任? 】 第 18 話 / (全 18 話)

このお問合せが最近、非常に多くなっています。

誰の責任であっても、用途変更に向かって進捗して頂かないと当社の出番がないので、当社は無料相談で終わってしまうのですが、あまりにこの問合せが多いので、こちらに書いておきます。

まず、用途変更が出来ない理由は大別すると二つあります。

1.建物が完了検査を受けていないため用途変更の確認申請を受け付けてもらえなかった。

2.都市計画の用途制限※に抵触して、その場所で当初予定していた事業が出来なかった。

※第一種低層住宅地域では、「有床診療所」はできますが「病院」はできません。有床診療所とは、入院患者が20人未満です。

しかし、1のケースでの問合せは殆どありません。2のケースが99%以上を占めます。

そして、不動産の賃貸借契約に登場する関係者は・・・

A.賃貸人(大家さん)

B.賃借人(借りる人)

C.宅地建物取引業者(不動産屋・仲介業者)・・・(以下、「業者」といいます。)

AとCが兼ねている場合、AはCと同じ責任を負うことになります。

一番、多いのが、

「業者は悪くないのでしょうか?プロだから、業者は悪いですよね?」

というお問合せです。

実は、業者が責任を負わなければいけないケースは限られます。

例えば、完了検査を受けていない100㎡以上ある建物で、確認申請時に物販店として申請していた物件を飲食店にしようとした場合・・・

・ 業者が広告で飲食店可と広告を出していた。・・・宅地建物取引業法(以下、「業法」と言います)33条違反

・ 業者が重要事項説明で飲食店可能であると説明した。・・・・業法第35条及び第47条違反

・ 業者が契約書に飲食店として使って良い旨を記載した。・・・業法第37条及び第47条違反

となります。しかし、業法に違反しているからと言って、即座に業者が責任をとって、損害賠償をしてくれるという訳ではありません。業者は業法違反により、行政処分を受けるかもしれませんが、賃借人や賃貸人に迷惑を掛けたことによる損害賠償請求は、民法の「不法行為」によって、被害を被ったことを立証して、裁判を行う必要性があります。(示談になれば、裁判は行わなくて良いです。)

ここで、このブログを読んでいる業者の方は、気を付けなければいけない点に気が付いたと思われます。

『仲介する建物が完了検査を受けていない場合、もしくはそれの確認をしていない場合は、不用意に「飲食可」などとマイソクに書くと業法違反になる。』

ということです。

では、賃借人が取りうる対抗手段は何があるかというと・・・

契約の白紙解除となります。飲食店をする目的で建物を借りているのに、それが出来ないとなれば、当然に契約の目的を達することができないので、民法570条は賃貸借にも準用される判例があるので、隠れたる瑕疵にあたり、民法第566条が準用されるので、契約は白紙解除となります。白紙解除なので、敷金礼金などは全て返済されますし、業者は仲介手数料も返さなければなりません。

しかし、賃借人が既にお店のオープン日を広告宣伝していた、もしくは前のお店の賃貸借契約の解除予告などをして営業が出来なくなったことについてまでは、保証される訳ではありません。

この場合は状況に応じて、貸主に「債務不履行」、業者に「不法行為」で訴訟をするなどして損害賠償請求をするしかありません。

この様な事態になった場合、損害賠償の金額にもよりますが、ケースによっては『建築基準法適合調査』を行い、『建築基準法適合判定』で回避されるもしくは、被害を最小限に抑えることができる場合もあります。

『建築基準法適合判定』については、まずはリデベにお問合せ下さい。

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検査済証が無くて融資(ローン)が受けられない場合の救済方法

以前は、検査済証が無くても簡単に融資を受けられましたが、最近では、検査済証が無いと言うだけで、融資を受けつけてくれない金融機関が多くなってきています。

ここでは検査済証が無くても、融資が受けられる方法を書きます。

 

Point 検査済証とは

検査済証とは、建物の工事が完了してから未使用の状態で4日以内に、工事完了届を行政機関等に提出し、提出後、1週間以内に建物を検査してもらい、確認申請許可通りに建物が建てられていることが確認された建物に発行されるものです。

検査済証がない建物について『手続き上の問題があるだけで、直ちに違反建築(違法建築)とは言えない。』と言う方がいますが、違反建築(違法建築)とは、一般的に建築基準法に抵触している建物のことを言います。完了検査を受けていないということは、建築基準法第7条に抵触しているので違反建築(違法建築)であり、罰則規定もあります。

 

まったく、融資が受けられないかというと、平成26年12月現在では、金融機関によっては受けられるケースもあるようです。ただし、やはり融資条件などは厳しくなっています。

以前は、検査済証が無くても融資が受けられたのに、なぜ現在は融資が受けられないかというと、平成2年以降、減りつつはあったものの、完了検査を受けないで建物を使用してしまうケースが後を絶たなかったために、平成15年頃に国土交通省から、各金融機関に対して検査済証の無い建物への融資を控えるお達しが出たのが最大の理由です。

ちなみに、完了検査を受け、検査済証が発行される前に建物を使用してしまうと、原則、完了検査は受けられなくなります。

特に、大手金融機関になればなるほど、コンプライアンスが厳しくなっているので融資を受けることが難しいのが現状です。ただ、小さな信用金庫だと、登記さえしてあれば融資を受け付けてくれる事例もありますが、今後は無くなると考えられます。

 

検査済証が無くても融資が受けられる方法とは?

別に違法なことをするわけでもなく、特別な裏技を使う訳でもありません。

『建築基準法適合状況調査』

というのを行い、それによって建築基準法に適合していることが確認できると、

『建築基準法適合状況調査報告書』

の全ての箇所が適合になれば、検査済証とは違いますが、同等の効力を発揮します。

では、どの様な流れで行われるかと言うと『建築基準法適合状況調査の流れ』(←をクリック)を見てください。

検査済証が無くて融資や住宅ローンが受けられなくてお困りの方は是非、リデベにご連絡ください。

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違法建築と欠陥住宅 ~不法行為で戦う~

連載シリーズ 【 違法建築と欠陥住宅 ~不法行為で戦う~ 】 第 3 話 / (全 3 話)

前回までで、欠陥住宅とはどの様な状態かの確認をしました。

ここで、ハウスメーカーなどの施工会社の意志確認を再度しておきましょう。施工会社がこちらの要望を受け入れてくれて、建物の瑕疵を直してくれれば、施工会社と争うことはありません。また、直してくれない場合、こちら側が過剰な若しくは無理な修繕依頼を

していないかを常識的な専門家に見てもらう必要性があります。(前回にも書いた、欠陥住宅で争いを起こして商売にしているような建築士はダメです。)

そこで、明らかに施工会社側に瑕疵はあると判定された場合について書きます。

 

★解決に向かって戦略を立てる

そこで相手方に対し、何を持って戦うのかを明確にしていかなければなりません。前回も書きましたが、

1.建築基準法及び関連法規をもって戦う(民法709条)

2.瑕疵担保責任を持って戦う(民法566条及び570条)

3.債務不履行をもって戦う(民法415条)

この3つのどのパターンに当てはまるかを整理しておかなければなりません。『欠陥住宅問題』は、この3つの問題のどれかに当てはまることが殆どです。(ただし。中古物件の購入や、建物が自己の居住用でない場合などは違う問題も発生します。)

1.建築基準法及び関連法規をもって戦う(民法709条)

不法行為を持って戦う。

例えば、当社に相談がもっとも多いのは

「検査済証がない」

という問題です。今まで、何の疑問にも思っていなかったが、いざ増築をしようと思ったら、検査済証がなくて、増築が出来なかった・・・。などという問題です。検査済証が無いということは、検査済証を紛失したか、完了検査を受けていないということになります。紛失しただけなら、面倒ですが、あまり問題にはなりません。しかし、完了検査を受けていないとなると、これは立派な建築基準法違反です。

建築基準法第七条  

建築主は、第六条第一項の規定による工事を完了したときは、国土交通省令で定めるところにより、建築主事の検査を申請しなければならない。

 前項の規定による申請は、第六条第一項の規定による工事が完了した日から四日以内に建築主事に到達するように、しなければならない。

つまり、建築基準法に抵触しているわけですから、これは不法行為になると考えられます。この話をすると、途端に

「その施工会社や設計事務所を不法行為で訴えましょう!」

とか

「その施工会社や設計事務所を特定行政庁に告発しましょう!」

と言いだす方がいます。しかし、条文をよく読んでみれば解ると思いますが、完了検査の申請は「建築主」がしなければならない。と、なっています。そんなこと、知っている一般の方はいないです。ですから、当然、施工会社や設計事務所が黙っていると完了検査を受けないなんてことになります。実際に建築主によって完了検査の申請をするかというと、施工会社や設計事務所の建築士が代理で行うのが一般的です。では、一般的でないことをしたから、相手が悪いかと言うと、一般的でないことをしたから、即座に民法に抵触しているという論理が通用するわけがありません。

※ 実際のところ当社では、工務店(設計施工一括請負の設計事務所登録をしている工務店)が完了検査の申請を怠り、施主は完了検査を受けなければならないことを知らずに、工務店から引き渡された時点でテナントに貸して、テナントが内装工事を始めてしまったというケースで、その設計事務所に「不法行為」を弁護士経由で指摘してもらったことがあります。これは、建築基準法第7条に違反したのではなく、建築士法第18条に抵触しているという理由です。ただし、これはその他のもっと重大な問題があった中の一つであり、このこと単体をもって、相手方に勝てるとまでは言えません。

建築士法 第十八条  

建築士は、設計を行う場合においては、設計に係る建築物が法令又は条例の定める建築物に関する基準に適合するようにしなければならない。

 建築士は、設計を行う場合においては、設計の委託者に対し、設計の内容に関して適切な説明を行うように努めなければならない。

 建築士は、工事監理を行う場合において、工事が設計図書のとおりに実施されていないと認めるときは、直ちに、工事施工者に対して、その旨を指摘し、当該工事を設計図書のとおりに実施するよう求め、当該工事施工者がこれに従わないときは、その旨を建築主に報告しなければならない。

 

また、最近の建物で、完了検査は受けていなくとも、確認申請を出さないで工事をするということは殆どありません。(最近、私の知人の工務店で確認申請を出さずに工事をやって、特定行政庁から、物凄く怒られていた人がいましたが・・・)確認申請を出して、確認申請許可証があるということは、計画そのものは合法だったと考えられるので、図面通りに建物が作られているのであれば、不法行為は問えないことになります。

では、どのような場面が不法行為に当てはまるかというと、

① 虚偽の説明により、確認申請図面を作成させられた。

② 完了検査後に確認申請図面とは違う工事を行った。

③ 完了検査で検査官が、気が付かないような部分で、設計図書に基づく性能が無いものを使った。

④ 完了検査で検査官が、気が付かないような部分で、設計図書通りに作られていなかった。

③と④は、どちらも確認申請書通りに作られていないことになりますから、完全な不法行為です。ただし、設計図書では、床は水平だが、僅かに傾いていたら、即座に不法行為かと言うと、それは施工誤差の範囲の場合もあります。ただし、欠陥住宅でもっとも多いのは③と④だと考えられます。この場合、その事象が、故意か過失かよりも、不法行為に該当するほどの瑕疵かどうかを客観的に示す必要性があります。主や所有者の主観論で

「これは重大な瑕疵だ!大変、危険だ!」

と大騒ぎしても、何と対比して重大な瑕疵なのか、何と対比して危険なのかが、解らなければ、相手方も納得しないし、裁判になっても裁判官も解らないということになります。つまり、皆が納得できる客観的データを提出しなければ、単なるモンスタークレーマーと見られてしまう場合もあります。

簡単に違法建築と一言で言っても、本当に建築基準法やその関連法規に基づいて違法建築になっているかを調査しなければなりません。

また、違法建築だからと言って、その建物すべてを建て直させるというのも至難の業です。

民法第六百三十五条  仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができないときは、注文者は、契約の解除をすることができる。ただし、建物その他の土地の工作物については、この限りでない。

これについて、最高裁第三小法廷2002年9月24日判決で、建替えなければ、注文者の目的を達成できないほどの場合は、その建替え費用を負担するとなったが、そこまでの状況は極めて異例のケースと考えられます。

この様に、確認申請を受領していないとか、完了検査を受領していないなどという場合などの明らかな建築基準法違反の場合は、戦いやすいのですが、細かい技術論で戦い始めると意外と時間も掛かり、面倒なことになることが多いと言えます。

勝てるかもしれないけど、勝った実感が湧かないというパターンかもしれません。

 

では、次回は『2.瑕疵担保責任をもって戦う(民法566条及び570条)』の戦い方について書きたいと考えています。

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違法建築と欠陥住宅 ~欠陥住宅問題が起こったら何をすべきか?~

前回、欠陥住宅とは、どのようなものかの定義が曖昧だということは書きましたが、基本的には、客観的判断材料となる資料と証拠が必要であることを書きました。

しかし、『欠陥住宅問題』に直面した時に、冷静に対応できない方が多くいます。

重大な構造的問題からクロスのわずかなシワも同じように捉えて、「あれもダメ、これもダメ」と大騒ぎしだす人がいます。そして、

「役所(検査機関)も適切な検査をしていないから、役所も悪い!」

と、設計事務所、施工会社、市役所、県庁、国土交通省とあちこちに怒鳴り込む人がいます。

構造的重大な問題もクロスの貼り方も問題なのは、よくわかります。検査機関がちゃんと検査をしていれば、この様な問題にならなかったという、お気持ちも理解できなくはありません。

 『欠陥住宅問題』に直面したときに考えなければならないことは、自分が何をしたいのかを明確にすることです。自分が何をしたいか・・・通常は『欠陥住宅問題を解決』することになると考えられます。

ところが、ここで的確な戦略を立てないと、『欠陥住宅問題』は泥沼化するだけになってしまいます。例えば、見た目で解りやすい施工不良を捉えて、施工会社のアフターサービス担当に大騒ぎをしてみたり、自分で天井点検口や床下点検口から、構造を見て、わずかな施工不良を役所(調査機関)の見落としだと、役所に行って大騒ぎをする人がいます。そして、施工会社や役所(調査機関)に建築基準法等や何らかの技術的指針を示して反論されると、「建築基準法が悪い」

とまで言いだす人がいます。欠陥住宅問題に直面した人の中で、もっとも勝てない、そして解決できないパターンです。仮に勝ったとしても、事件屋みたいな人にいっぱいお金を搾取されているだけのパターンを多く見ます。(弁護士費用や調査した建築士に支払う費用と損害賠償の割合が合わない。)

施工会社の手抜き工事、役所(調査機関)の見落とし、建築基準法等の矛盾点、どれも存在するのは建築士であれば、多かれ少なかれ、知っていることです。

例えば、雨漏りがあったとします。施工会社との信頼関係が完全に成立していると、施工会社に電話をして、その施工会社がすぐに来てくれて、雨漏りを修理してくれれば、それで終わりです。実は『雨漏りをした家』なので、欠陥住宅と言えば欠陥住宅なので、ここで解決してしまった方は、自分が欠陥住宅に住んでいるとさえ思わず、

「うちを建ててくれた施工会社は対応も良くて・・・」

と思っていることが多かったりします。実際に私がハウスメーカーに勤めていた時に雨漏りがあったけど、たまたま、その近くの現場にいた監督がクレームから1時間程で、雨漏りの家に到着。腕のいい現場監督ですぐに原因を解明。業者をその日に手配して終了。後日、改めて放水試験(わざと水を掛けて雨漏りしないかをする試験)をして問題解決でした。

その結果、そのお客様は、数か月後に別のお客様を紹介してくれました。時々、こういうお客様にも

「ハウスメーカーなんかに騙されちゃダメですよ!損害賠償請求しましょう!!」

などと煽る業者がいるのも事実です。そして、調査費用を稼ぐという商売をしている建築士がいたりします。(「〇〇件以上の訴訟をした。」「〇〇件以上の勝訴を得た!」などと宣伝している建築士は、弁護士法に抵触しているので注意しましょう。建築士は弁護士ではありません。)

ところが、ここで施工会社と所有者(もしくは施主)が対応を間違えると『欠陥住宅問題』に発展していきます。

『欠陥住宅問題』に直面すると、何もかもすべてが悪いのではないかと疑心暗鬼になってしまうことが多くあります。夢のマイホームですから、お気持ちはよくわかります。しかし、五月雨式に問題点を相手にぶつけたり、相手の対応が悪いから、即座に特定行政庁に駆け込んだりするのは、得策ではありません。

まずは、施工会社に対して、どの様な対応をしてもらうかを考えなければなりません。

その為には、何をもって相手に瑕疵を認めさせるかを考えなければならないのです。相手がいつまでも認めなければ、ことの次第によっては裁判になることだってあります。施工中や完成直後のトラブルだと工事費を支払わないことになりますが、相手が請求権を持って訴訟をしてくることも十分に考えられます。

※当社では、すべてではありませんが裁判になる前に問題解決することが殆どです。

時々、自分が欠陥住宅問題に直面した時に、そのハウスメーカーや施工会社の全ての建物が、欠陥であったり、認定工法そのものに瑕疵があるなどと騒ぎ出す人がいます。そして、ハウスメーカー不要論やゼネコン不要論を持ち出す人すらいます。そもそも、ゼネコン不要論は、欠陥住宅から来るものではありません。

しかし、大手のハウスメーカーは日本の住宅産業や建築技術に大きく貢献し、多くの識者が集まって、研究開発をしているのも事実です。

ただ、建物と言うのは、どんなに工業化をしても、すべてが工業化できるわけではなく、結果として現場で多くの人力によって作業されています。人のすることですから、精度の限界や人的ミスも絶対に出ないとは言えません。

ですから、まずは冷静に、自分が何をしたいのかを明確にして、適切な建築士に相談されることをお勧めします。

次回は欠陥住宅問題に直面したときの戦略の立て方を書きます。

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違法建築と欠陥住宅 ~欠陥住宅とは何か~

連載シリーズ 【 違法建築と欠陥住宅 ~欠陥住宅とは何か~ 】 第 1 話 / (全 3 話)

私は、ニュースと野球以外は、あまりテレビを見ません。建築系の番組であっても、「大改造!!劇的ビフォーアフター」も見ませんし、バラエティー番組やワイドショー番組で取り上げられる欠陥住宅を大袈裟に煽るような番組も殆どみません。(メディアの関係者から大袈裟に演出していると聞いて以来、見なくなりました。)ですから、私の見聞で飛び込んでくるのは、ニュースの特集などで、取り上げられる欠陥住宅や、大型マンションでの施工不良での話と、欠陥住宅についての話は、実体験で知っているものです。

ただ、実体験として、「欠陥住宅」だと、私に訴えてきた人の殆どが、訴えてきた人の主観論に基づくもので、客観的には、それが欠陥住宅かどうかを判断するのが、極めて難しいケースが殆どです。私の判断基準が客観的判断というわけでもありません。もちろん、他の建築士の判断であっても、それ客観的判断とは言えません。

以前にも書きましたが、「違法建築」という法律用語はありません。もちろん、「欠陥住宅」などという法律用語はありません。建築士は建築基準法とその関連法規(以下、「建築基準法等」といいます)に基づいた、資格権者ですから、自分の経験値などで

「これは、欠陥住宅!」

などと法的根拠のないことは、国家資格権者である以上、軽々しく言っては、なりません。もし、そういうことを軽々しく言う建築士に出会ったら、「事件屋みたいな人」だと思って相手にしないことです。

 

1.明らかに欠陥住宅と言えるケース

① 建築基準法等が守られていない

② 設計請負契約が守られていない

③ 建築請負契約が守られていない

この3点が主な内容になってきます。特に①の「建築基準法等が守られていない」というのは、そこに違法性が存在しているので、証拠が確定しているので、不法行為確定です。②の「設計契約が守られていない」や③の「建築請負契約が守られていない」というのは、図面通りに施工されていないとか、工期が契約期間内に終わらなかったということが多く、欠陥住宅とまでは言えない場合が多いかです。

 

2.瑕疵担保責任をもって欠陥住宅を訴える

平成11年6月以前の建物なら、民法566条1項及び570条をもって、もしくはそれ以降であれば、住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下、「品確法」と書きます)第95条を持って欠陥住宅として戦うことが可能です。

民法

第五百六十六条  

売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。

 前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。

 前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。

第五百七十条  売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第五百六十六条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。

品確法

第九十五条  新築住宅の売買契約においては、売主は、買主に引き渡した時(当該新築住宅が住宅新築請負契約に基づき請負人から当該売主に引き渡されたものである場合にあっては、その引渡しの時)から十年間、住宅の構造耐力上主要な部分等の隠れた瑕疵について、民法第五百七十条 において準用する同法第五百六十六条第一項 並びに同法第六百三十四条第一項 及び第二項 前段に規定する担保の責任を負う。この場合において、同条第一項 及び第二項 前段中「注文者」とあるのは「買主」と、同条第一項 中「請負人」とあるのは「売主」とする。

 前項の規定に反する特約で買主に不利なものは、無効とする。

 第一項の場合における民法第五百六十六条第三項 の規定の適用については、同項 中「前二項」とあるのは「住宅の品質確保の促進等に関する法律第九十五条第一項」と、「又は」とあるのは「、瑕疵修補又は」とする。

 

と、法律的条文では、難しく書かれているのですが、瑕疵担保期間内であれば売主に責任があるということになります。問題は、この「瑕疵」をどの様に考えるかです。1で書いたように建築基準法等に抵触しているような問題が発生していれば、これは完全に「瑕疵」と言えます。しかし、

「床がちょっと傾いている」

「歩くと床がミシミシ言う」

「外壁にヒビが入った」

「雨漏りがして、壁紙に染みができた」

などという、問題をよく耳にします。例えば床が傾いている時に、どれくらい傾斜していると欠陥住宅になるかというと、明文化されたものはありません。

例えば、床の傾きに於いて品確法の「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」(平成12年7月19日建設省告示1653号)というものがあります。それを見ると、

3/1000未満の勾配・・・構造体力上主要な部分に瑕疵が存在する可能性=低い

3/1000以上6/1000未満・・・構造体力上主要な部分に瑕疵が存在する可能性=一定程度存在する。

6/1000以上・・・構造体力上主要な部分に瑕疵が存在する可能性=高い。

と、書かれています。そして、この話が先走って、「6/1000以上の傾きがあるから欠陥住宅」だとか、当然ですが所有者の目線からみれば、「一定程度存在する。」でも、十分に怖いですから、「3/1000の傾斜があるから欠陥住宅」だと、騒ぎ出す人もいます。

重要なのはこの技術的基準は、上記の傾斜があるから、直ちに構造に瑕疵があると言っている訳ではありません。また、測定の仕方も「凹凸の少ない仕上げによる壁又は柱の表面と、その面と垂直な鉛直面との交差する線(2m程度以上の長さのものに限る。)の鉛直線に対する角度をいう。」となっています。

そして何よりも、この基準を持ち込んで欠陥住宅と言えるかの大きなポイントは

 

平成12年7月19日建設省告示1653

第2  適用範囲

この基準は、住宅に発生した不具合である事象で、次に掲げる要件に該当するもの(以下「不具合事象」という。)について通用する。

1,建設住宅性能評価書が交付された住宅で、指定住宅紛争処理機関に対してあっせん、調停又は仲裁の申請が行われた紛争に係るものにおいて発見された事象であること。

2,当該住宅を新築する建設工事の完了の日から起算して10年以内に発生した事象であること。

3,通常予測できない自然現象の発生、居住者の不適切な使用その他特別な事由の存しない通常の状態において発生した事象であること。

 

つまり、品確法が施行された後で、「建設住宅性能評価書」が発行されている住宅でのみ、品確法によって保護される基準ですから、品確法施工以前の家や以降でも「建設住宅性能評価書」を取得していない家では、訴訟にまで発展したら、材料としては弱いと言えます。

とすると、瑕疵として認められるかどうかも問題です。瑕疵と認定されれば、戦い方もあります。もし、新築住宅を買おうと若しくは作ろうとするならば、その工務店の社内基準を聞いておくと良いでしょう。もしくは、建築基準法等で定められていない項目については、どういうレベルで作るということをあらかじめ確約を取っておくことが大事です。

一番簡単な方法としては、品確法の「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」(平成12年7月19日建設省告示1653号)のどのレベルで作ってくれるのかをあらかじめ確認すると良いでしょう。

 

3.債務不履行による欠陥住宅

契約図面通りに作られていないなどと言うのは、完全に証拠がある債務不履行です。

しかし、着工後に施主の希望や、現場での収まりの問題で、契約図面から変更されたり、追加削除されたりするものもあります。通常は、設計変更を頼まれた設計者がそれを図面化したり、もしくは施工会社に伝達後、あとで設計者が図面を直したりして、すぐに双方が合意したことを確認するために図面に印鑑を押すなどの作業をするのですが、施主と設計者と施行者の信頼関係が成り立っている間は、その類の契約行為が疎かになりやすいのが実態で、後で「言った、言わない」の問題になり、債務不履行を主張しにくくなります。

また、2で書いたように、品確法の「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」(平成12年7月19日建設省告示1653号)のどのレベルで作ってくれるのかをあらかじめ、文章化して合意しておけば、さらに問題は少なくなるはずです。

 

欠陥住宅問題に発展しているケースで一番多いのは「プロに任せたから、こんなことになると思わなかった。」というパターンと、他人に煽られて疑心暗鬼になるパターンです。

例えば、大手のデベロッパーが、施工会社(ゼネコンやハウスメーカー)から引き渡しを受ける時には、マンションであれ戸建て分譲であれ、ちゃんと自社のコンプライアンスを持っていてチェックしています。それでも、時々、大きな問題に発生するような瑕疵が出てくるわけです。

個人で大手デベロッパーのような自社基準を作ることはできませんが、2や3に書いたことぐらいが、出来れば大きな問題に発展することは少なくなるはずです。

次回は、それでも欠陥住宅問題が起こってしまったら、どうするべきなのかを書きます。

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連帯保証人が亡くなった場合~家賃滞納対策~

連載シリーズ 【 連帯保証人が亡くなった場合~家賃滞納対策~ 】 第 14 話 / (全 14 話)

先日、このような質問がありました。

Q.「賃借人が家賃を7ヶ月滞納しているが、自己破産宣告をするようなのですが、家賃の回収はできるでしょうか?」

弊社「連帯保証人はいらっしゃいますか?」

Q.「契約時にはいたんですけど、既に亡くなっていまして・・・」

弊社「賃借人と連帯保証人は、どのような関係ですか?」

Q.「親子です。」

弊社「連帯保証人の家族構成はどうなっているか、解りますか?」

Q.「奥様がご健在で、賃借人の他に子供が2人います。」

弊社「では、一般的に考えれば5/6は回収できますね。」

という、やりとりでした。

簡単な話ですが連帯保証債務も法定相続されます。つまり、この場合、連帯保証人が亡くなった時点で、法定相続により、妻帯者が健在なら、妻帯者が50%を相続します。そして、残りの50%を子供たちが相続することになります。

ただし、子供のうちの一人は自己破産宣告をするということは、ここからは回収不可能です。つまり、賃借人からは回収できないので1/6は諦めなければなりません。したがって、5/6だけが回収できるということになるわけです。

最大の問題は、連帯保証人の相続人の連絡先がすべて解るかということになります。

通常の賃貸借契約の場合、連帯保証人の保証能力が喪失した場合、別の連帯保証人を付けなければならないとなっていることが多いと考えられます。

このことから、相続人の連絡先を賃借人から聞き出せば良いだけの話です。賃借人から、してみれば、家賃を滞納して、自己破産をして、その請求が親兄弟に行くというのは、恥ずかしいことかもしれません。故に、それを言いたがらないかもしれませんが、それならば賃借人本人が返すしかありません。貸主としてみれば、当然の権利を行使しているわけですから、そこは強引にでも聞き出すべきでしょう。

また、目に見える財産、金銭、有価証券、不動産や、借用書のある借金(金融機関の借金)などというものに関しては、相続人は理解していることが多いのですが、連帯保証債務というものについての相続を理解していない人が多いのが一般的です。そのため、請求しても

「なんで、自分が兄弟の家賃滞納を支払わなければならないんだ!」

と、拒絶してくる場合が多いです。

そこで、民法896条を説明した上で、連帯保証人としての地位を相続している旨を説明して請求することをお勧めします。

第八百九十六条  相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

もっとも、このような事態に陥って、お困りの場合、なかなか契約当事者でない人(連帯保証人の相続人)との交渉は難しいかもしれません。

その場合は、弊社に一度、お電話でご相談ください。

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確認済証や検査済証が無い場合に増築や用途変更の方法

連載シリーズ 【 確認済証や検査済証が無い場合に増築や用途変更の方法 】 第 2 話 / (全 6 話)

先日(平成26年5月17日)の記事、『違法建築と既存不適格 検査済証が無いと増築や用途変更はできないか?』で、

Q.検査済証が無くても増築や用途変更はできるか?

A.原則的にはできません。

と書きましたが、出来る可能性が出てきました。というのは、特別に建築基準法や関連法規が変わったわけではないのですが、平成26年7月2日に国土交通省より、

『検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合調査のためのガイドライン』なるものが発行されました。

これにより、下記のような建物でも、増築や用途変更ができる可能性が出てきました。

1. 検査済証がない建物(建築当時の建築基準法の技術的指針を遵守していること)

2. 確認済証がない建物(建築当時の建築基準法の技術的指針を遵守していること)

3. 確認済証取得時の図面が無い建物

今までだと1と3でも、木造2階建て200㎡未満の建物以外は、増築や用途変更が不可能2の場合だとすべて不可能と法的に解釈されていました。(建築基準法を棒読みすると、「出来ない」とは書いていませんが、出来るための条件を整えることが不可能と解釈されていた。)

ただ、この状況では、日本の既存建築ストックが有効活用されず、さらには耐震化なども進まないことから、1~3のような状況にある建物でも、「合法的に」増築・改築・大規模な修繕・大規模な改修が出来るようになりました。また、このように建物をいじる為だけではなく、「建築基準法適合調査」に合格することで「検査済証」があるのと同等と評価されることで、今まで金融機関が融資の判断基準にしていた検査済証の有無も変わってくると考えられます。

ただ、ここで注意しなければ、ならないことがあります。

① その建物が建てられた当時の法律に適合していること

② 今後は、違法増築等に対して厳しく対処してくると考えられること

この2点には注意が必要です。

特に②です。そもそも、検査済証が取得されていない建物は平成11年の段階で約50%あったと考えられています。その後、民間機関に確認申請業務が移行され、かなり改善されました。つまり、完了検査を受領しないことに対して、行政期間が甘かったという判断もできます。それにも関わらず、増築もダメ、大規模な修繕や模様替えもダメとも言いきれず、黙認していた観もあります。

しかし、このガイドラインが出てきたことによって、物理的には、検査済証が無くても、合法的に増築等が出来るようになったので、今後は違法増築等に対して、行政機関が黙認することもなくなってくると考えられます。

検査済証が無い場合であっても、確認申請済証や確認申請図面、構造計算書がある場合で確認申請図面通りに建物が建っている場合には比較的に容易に適合調査ができると考えられますが、確認申請図面が無い場合や確認申請図面通りに建物が建っていない場合などは、まずは現況図面の作成を行い、新築時の建築基準法の技術的指針に適合しているかのチェックが必要となります。

建物の図面というのは、建っていない建物の図面を作成するよりも、建っている建物の図面を復元する方がはるかに大変ですし、現在の法律に適合している図面を描くより、新築時の法律に適合しているかのチェックの方が大変です。

ですから、確認申請図面が無い場合には新築時並みの設計費用が掛かってしまうことにはなりますが、それにより、増築が可能になったり、財産価値が回復するのであれば、一考の余地があると考えられます。

 

確認申請済証や検査済証がなくてお困りの方は

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保証会社が滞納家賃を保証したら、家賃は滞納してないことになるか?

タイトルの件ですが、これは非常に難しい問題でしたが、ついに大阪高裁判決を最高裁が棄却したことで結論がでました。

Q.家賃滞納をしたことで保証会社が貸主に家賃を支払ってくれました。後日、家賃を保証会社に支払いましたが、貸主より、賃料未払いによる契約解除、明け渡しを求められました。保証会社が家賃を支払ってくれているし、それを保証会社に返したから、賃料未払いには該当しないのではないのでしょうか?

A.賃料未払いの事実は消えず、賃貸借契約の解除を認める。

賃借人の主張に理由はなく、保証会社による代理弁済があっても賃料等の不払いの事実は消えず、賃貸借契約の債務不履行の有無を判断するにあたり、保証会社の代位弁済の事実を考慮することは相当でない。よって賃料不払いに基づく賃貸借契約の解除を認める

大阪高裁2013年11月22日 2014年6月26日最高裁上告棄却

この判決は、不動産業界でも多少の波紋を呼ぶこととなりました。正直、私も驚きました。

この質問は、当社にもかなり来るのですが、これについては、弁護士に聞いても意見が分かれていました。考え方は二つあります。一つは、今回の大阪高裁の判決です。もう一つは

『保証会社に対して、契約時に保証料を支払っているのは、賃借人である場合が多く、とすると、保証会社は賃借人から、賃料未払い時に代位弁済を依頼されている訳だから、債務不履行は代位弁済によって解消される。』

という、借主側に立った意見もありました。たしかに、私も保証会社に保証料を支払っているのは賃借人なので、

「この意見の方が正しいのではないかな・・・。」

と、考えていました。ただ、そうなると、保証会社がいつまで、保証すれば良いのか?という問題も出てきますし、代位弁済をする期間(保証期間)を短くして、リスクを回避しつつ、家賃滞納が始まった瞬間に契約解除(立退き)にもっていくという、賃借人にも賃貸人にとっても良くない悪循環が始まります。

旧借地借家法もそうですが、賃借人有利のものが多く、今までの判例も圧倒的に賃借人有利の判例が多かったと思います。これは、日本の多くの土地が一部の地主によって占有されていた時代に弱者である賃借人を保護するためのものでした。しかし、ここにきて、「賃借人=弱者」という構図が解消されてきているものと考えられます。

ただ、今回の判例の一番のポイントは、

「保証会社による代理弁済があっても賃料等の不払いの事実は消えず」

という部分です。では、これが保証会社でなくて、連帯保証人ならどうなるかと言えば、やはり同じことになると考えられます。しかし、そうなると、ちょっと怖いことが起こる可能性があります。例えば、ある住居を大学生が借りていて、親が保証人になっていたとします。

「家賃が払えないから、お父さん、代わりに家賃を払って!」

と学生が父親に泣きつきました。

「しょうがないなぁ、今回はお父さんが払っておいてあげるよ。」

と、お父さんが自分の口座から、振り込んでしまいました。

その大学生は、普段から、ゴミの出し方が汚いとか、夜中に酔っ払って帰ってきたりして、貸主は心良く思っていませんでした。(もっと言うならば、生理的に受け付けなかったなどの理由かもしれません。)

そこで、貸主は、お父さん名義で振り込まれている事実をもってして、

「連帯保証人が支払ったことは代位弁済であり、賃料不払いの事実は消えない!」

と言って明け渡しを求めることができるということになりかねません。という訳で、もし、家賃が支払えなくて他人に泣きつくにしても、自分(借家人)名義で振り込んでもらうか、借家人以外に支払って貰った場合は、賃貸人に『賃料として受け取った』という、受領書を貰っておかないと、突然、立退きを迫られることになりかねないということになります。

今回の判決を勝ち取った弁護士は、これで明け渡しがやり易くなったかもしれませんが、今後は、賃料の支払い方等について、契約時にしっかりと説明をしてあげないと、本当の弱者を誰も守ってくれないことになるかもしれません。

心ある仲介業者の皆さんが多いことを祈ります。

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賃貸物件の所有者変更(オーナーチェンジ)の借主への通知

 

時々、質問をされるのですが、

「賃貸物件の所有者変更(オーナーチェンジ)をした場合、借主や連帯保証人の承諾を取る必要がありますか?」

という質問をうけます。解答は

「承諾を取る必要はありません。ただし、通知は出しておいた方が良いでしょう。」

となります。

以前、私がアセットマネージャーをやっていた時に、賃貸物件の売買の際に、同じ仕事に携わった地方銀行出身のアセットマネージャーが

「もし、賃借人に貸主変更を拒絶されて賃料の支払いを拒絶したり、連帯保証人が貸主変更を拒絶した場合に連帯保証人がいなくなると困るから、賃貸人と連帯保証人から承諾を取ろう」

と言いだしました。その賃貸物件、122世帯の賃貸マンションですから、その承諾を取っていたらいつになるやら・・・というような話です。しかし、実際には、賃借人や連帯保証人に所有者変更を拒絶する権利は有していません。

実際に判例もちゃんとあります。

大判昭和6年5月29日新聞329号18頁等(要旨)

賃貸不動産の所有者に変更があった場合、特約がない限り、賃借人・新所有者間に、従来の賃貸借関係がそのまま移転・存続する。

このことから、所有者が変わっても賃貸関係がそのまま新所有者に移るので、その賃貸関係を借主側が拒絶することは出来ないのです。

もっとも、地方銀行出身のアセットマネージャーは、私がこの判例をもって説明しても、納得していませんでした。まぁ、今まで自分がアセットマネージャーとして余程、自信があったのに、判例まで持ち出されて否定されたので悔しかったのだとは思います。ですから、私は、

「取引までの時間が無いから、今回は通知を出すだけにしよう」

と言って納得してもらいました。

この判例だけを見ると、通知すら出す必要性が無いように感じますが、法的には必要は無いのですが実務レベルで問題が発生します。

それは、借主が貸主の変更を知らないと、旧貸主に家賃を払い続けてしまうからです。

また、新貸主からだけの通知だと、新手の詐欺と思われてしまう可能性もあるので(実際にありました。)、少なくとも、新貸主と旧貸主の連名で、その通知を出します。さらに所有者変更になった登記情報か、新貸主、旧貸主の印鑑証明の複写を同封する方が良いでしょう。

貸主が変更になった物件の借主から、下記のような質問がありました。いずれも、新貸主より、

「今まで、家賃は手渡しだったのに、振り込みに変わった。振込手数料は借主負担と言われた。」

「ペット可ということで入居したのに、猫を飼っていることを理由に退去を迫られた。」

「飲食店可ということで、ラーメン店をやっているが物販店しか認めないと言われた。」

などという質問ですが、上記の判例の通りで、『従来の賃貸借関係がそのまま移転・存続する。』となるので、いずれも新貸主の主張は通らないことは、注意が必要です。

 

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