用途変更の必要性

連載シリーズ 【 用途変更の必要性 】 第 16 話 / (全 16 話)

 一般の方の考え方からすると、「自分の建物なのだから、自分が自由に使っていいだろう」と思う方が多いかもしれません。

 第一種低層住居専用地域だから、単独で飲食店はできないとか、第一種住居地域だから、風俗店はできないなどという、用途制限については御存じの方も多いと思います。もっとも、これすら、守られていないケースも多いのが実態です。

 

 しかし、建物と言うのは、余程、気の利いた建物出ない限り、新築時の用途を目標に建てられています。その最大の原因は、新築時のコストです。建物が、後で何にでも使えるように汎用性の高いものしようとすると、とんでもないコストがかかってしまします。

 

 建物は用途によって、大きく違うのは防火避難規定、つまり、避難経路や防火に関する設備が違います。また、構造的にも床の積載荷重などが用途によって変わってきます。

 例えば、自分が初めて行く、飲食店で火災が発生したとします。自分が入ってきた入口以外の避難扉に冷静に避難できるでしょうか?

 自分が住んでいるマンションならば、避難経路は概ね解っているかもしれませんが、初めて泊まったホテルで自分が入ってきた、入口以外の避難経路を把握できているでしょうか?

 また、通常の寄宿舎(社宅)を老人ホームに変更した時に、健常者は簡単に避難できても避難弱者は、簡単に避難することはできません。

 事務所ビルを倉庫に変更した場合に、事務所ビルで想定されている床の積載荷重と重いものを置く、倉庫では、そもそも床がその重さに耐えられないケースも考えられます。

 この様に、建物の用途を変えるのであれば、その変える用途に合わせて、建物の避難経路の確保や、防火設備の補充、床の補強などが必要になってくるケースが考えられるのです。

 

 以前の記事にも書いていますが、令和元年6月25日より、用途変更の確認申請を100㎡から200㎡に緩和しました。これは、当時の空き家問題を解決するために少しでも手続きを軽くすることが目標で、違反建築をして良いと言うものではありません。

 用途変更のために建築基準法に準じて建物を改造するということは意外に容易ではなく、用途変更の確認申請が無くなったことで、建築士が入らずにインテリアコーディネーターや、そのまま施工会社さんに依頼したり、中にはホームビルドでやってしまうというケースも見受けられます。そして、その殆どが違反状態になっているのが現状です。

 特に、この防火避難規定に違反すると、建築基準法第98条の罰則規定があり、3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金(法人は1億円)という重い刑罰がまっています。また、罰金を払えば、直さなくていいというものではなく、建築基準法に則した形に直さなければなりません。そして、それが出来なければ、使用禁止や除去(解体)という厳しい行政処分がまっています。ちなみに違反建築には時効はなく、違反状態が続く限り、これを是正する義務はついて回ります。また、建築士などを使わないで自分で行った場合には、行った人が全ての責任を背負うことになります。また、設計業務は面積に関わらず、建築士の独占業務ですから、インテリアコーディネーターや建築士を持っていない施工業者が設計することも違反です。

また、この様な状態で、事故があり死傷者が出た場合は業務上過失致死傷などの刑事罰もあり、さらには民事で、その損害賠償が請求されるという、とんでもないことが発生します。

当社では、200㎡未満であっても、軽々に考えずに必ず、一級建築士に相談することをお勧めしています。

 

 人が事業を始めたりするときというのは、火災や震災などの事故をあまり考えていなかったりします。最近では老人ホームや入院患者のいる病院にはスプリンクラー設備を付けることが法整備されてきましたが、これもこの10年の話で、10年前まではスプリンクラー設備のない施設がたくさんありました。怖いことですが、そういう施設でも非常用電源や自家発電機は、法律上求められていないので、停電などがあって、復旧に時間が掛かると、生命維持装置などの医療器具のバッテリーが切れると使用ができなくなってしまいます。小さな老人ホームや有床診療所などでは、その様な機能が設置されているかを確認するべきでしょう。

 その他にも、自分が普段利用したことのない施設を利用する場合は、避難経路の位置などの確認、また、地下室の飲食店やカラオケ点を利用する場合は機械排煙設備の有無などの確認をするべきですが、一般の方にこれを確認するのは難しいことから、安全が確認できない建物の使用は避けることをお勧めします。

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検査済証のある違反建築

連載シリーズ 【 検査済証のある違反建築 】 第 4 話 / (全 4 話)

 平成30年4月1日より前までは、その建物の検査済証の有無は、宅地建物取引士(以下。「宅建士」という)に説明義務がなく、その有無については自分で調べる必要がありました。(その当時でも、宅建士に調べてくれと言えば調べてくれる人もいたし、気の利いた宅建士だと、予め調べていた人もいました。)

 ただ、検査済証があるから、直ちに違反建築でないということではありません。

 よく、重要事項説明書を見ると、検査済証があって、建蔽率、容積率、接道義務違反などがされてないから、違反性はないかの如く説明されていますが、実際に調べてみると、違反建築になっているケースはよくあります。

 圧倒的に多いのは、検査済証発行後(完了検査後)にその建物のなんらかの改造を行っているケースです。

 ただし、この場合は是正が可能です。検査済証が発行された時点の状態に戻せばいいだけです。(簡単に言っている様に見えますが、実はこれが大変だったりもします。)

 

 今回、問題にしたいのは、検査済証が発行後、建物を何も改造などをしていないのに、違反建築の状態にある建物がこの世には存在するということです。

これの理由は簡単です。

・ 確認申請時の図面にそもそも違反があったが、それを建築主事や確認検査員(以下、「検査員」という)が見落とした。

・ 施工業者が確認申請図通りに作らなかったが、それが隠ぺい部分などで、工事監理者(建築士)や完了検査を行う検査員が、気が付くことが出来なかった。

 

 後者に関しては、確認申請図通りに是正すればよいのですが、例えばコンクリートの強度が規定の強度が無かった、そもそも鉄筋コンクリート造の鉄筋の本数が確認申請図よりも少なかったなど、構造に関する部分だったりすると、確認申請図通りに是正するのは、至難の業です。

 もっと、悪質なのは確認申請図がすでに違反状態にあり、それが建築主事や確認検査員によって見落とされているケースです。

 自分が見た中で、どうすることも出来ない、もしくは莫大な費用をかけて是正をしたケースを紹介します。

 事例1

 道路斜線の斜線角度が、そもそも虚偽図面だった。

 つまり、道路斜線の角度が、設計した建築士により詐称された図面だったこと(高さ制限に抵触していたこと)に、検査員が、気が付かなかった。

 事例2

 設計というのは真北を北として設計しなければならないが、磁北で設計されていた。これにより、北側斜線や高度斜線が抵触することになり、建物の高さ制限が抵触していた。

 

 この様な場合、そのまま建物を使っている分には、誰もきがつかないし、売買する時であっても、建築士によるエンジニアリングレポート(遵法性調査)等をしない限りは気が付きません。

 問題は、増築、大規模な模様替え、大規模な修繕、用途変更などの、その建物を利用して新たな確認申請をしようとするときに、違反建築には新たな確認申請が出せないという問題が発生します。

 しかし、建物の高さ制限がオーバーしている時に建物の高さを下げるということが、きわめて難しいことです。パラペットを少し切るぐらいで何とかなるなら、すごく大変ですが出来なくもないです。しかし、建物の屋上部分のスラブやその下の梁を削らなければならなくなると、もはや、構造そのものが成立しなくなる恐れがあります。

 

 この類の事態が発生する建物というのは、概ね平成18年より前の建物に多いと感じます。(平成23年築の建物でも問題があったことはあります。)つまり、有名なA建築士による構造偽装事件以降、検査が厳格化され、見落としが激減したことが理由と考えられます。

 ただ、検査済証があるにも関わらず、さらに確認申請図通りに建てられているのに違反建築だった場合に、結局、その建物所有者が責任を取らなくてはならないという事態に陥ることがあります。

 基本的に確認申請図が間違っているならば、設計した建築士や見落とした検査員に責任があり、確認申請図通りに施工していなければ、施工会社や見落とした検査員に責任があります。そして、その過失割合に応じて損害賠償請求となるのですが、問題は時効です。

 違反している図面で確認申請を行う、確認申請図通りに施工しない、そしてそれを検査員が見落とすという行為はいずれも不法行為に該当します。

 しかし、不法行為は不法行為が行われた時から起算して20年で時効となります。(民法第724条第2項)

 つまり、確認済証発行後20年経った建物や検査済証発行後20年経つと、違反建築の原因が、建築士、施工会社、さらには検査員(もしくは行政)であったとしても、その者に対して、損害賠償ができなくなります。

 しかし、建物の違反状態は継続している為に、その違反の是正義務が所有者になるということになります。

 築20年以上経っている建物(特に事業用建物の場合)を所有していて売却をしようとしたり、購入したりする場合には、建築士による遵法性調査をすることをお勧めします。

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フィットネスジムは用途変更の確認申請が必要なのか?

連載シリーズ 【 フィットネスジムは用途変更の確認申請が必要なのか? 】 第 15 話 / (全 16 話)

 当社に相談がある中で、用途変更の確認申請の必要性の有無で一番、難しいのがこの質問です。

 

 結論から言うと、下記の要件によって回答が変わります。

 1.どの様な経営形態になるのか?

 2.その店舗のみの会員制か?

 3.どの程度の収容人員があるのか?

 

 この辺りによって、行政判断が変わるので、この3点と営業する行政区を聞いて、行政相談をしてからのご回答になることが多いです。(既に当社で何度もやっているエリアは即答できます。)

 

 実は行政も結構、悩んだりします。これには悩む理由が存在しています。

 

 もともと、建築基準法、同施行令、施行規則、告示にスポーツジム、フィットネスジム等という単語は出てきません。

 ※厳密には令和6年1月9日国土交通省告示8号「建築士事務所の開設者がその業務に関して請求することのできる報酬の基準」に「スポーツジム」を設計した場合の設計費の算出基準として登場します。

 

 ところが、日本建築行政会議編集、一般財団法人建築行政情報センターが発行している「建築確認のための基準総則集団規定の適用事例」という本に非常にややこしいことが書いてあることが、フィットネスジム等をどう取り扱ってよいか解らなくなることとしています。

この本の

第1章基準総則 1用語の定義

(2)特殊建築物 スポーツの練習場

フィットネスクラブ等(令第130条の3題6の「学習塾、華道教室、囲碁教室その他これらに類する施設」として判断されるものを除く。)

とあり、

第2章集団規定 2用途規制

(4)学習塾等  学習塾、華道教室、囲碁教室その他これらに類する施設

◆「学習塾、華道教室、囲碁教室その他これらに類する施設」の例

〇フィットネスクラブ、アスレッチクラブ 〇ヨガ教室、ホットヨガ

とあります。

 これだけを読むと、フィットネスクラブは「学習塾、華道教室、囲碁教室その他これらに類する施設」であり、それ以外に判断される基準がわからないことになってしまいます。

 

 結局、これを元に各行政庁が、独自の基準を作って、この場合は必要、この場合は不要と判断しているケースが多いです。

 全ての行政区に確認をしている訳ではないですが、全般的には既存建物の一部を利用して、フィットネスクラブ等をやる場合には、「学習塾、華道教室、囲碁教室その他これらに類する施設」と判断しているケースが多いです。

「学習塾、華道教室、囲碁教室その他これらに類する施設」はそもそも、サービス店舗になり、特殊建築物には該当しません。その為、事務所などと同じ扱いになります。

 特殊建築物の中で「スポーツの練習場」だけは、事務所等と比較して緩和される項目があります。

 厳しくなるのは3階以上の階に設ける場合、建物が耐火構造であること、2000㎡以上にするならば、建物を準耐火構造であることという規制が掛かります。

緩和されるのは、排煙設備が不要になることです。(排煙窓が不要になる。)

 

多くのフィットネスクラブは、更衣室、シャワーやサウナ等を設けています。シャワー室などの水廻はどうしても、建物の外周部、既存排水口の近くに持ってこないと最初の設備投資費用が上がってしまいます。しかし、建物の外周部に排煙窓があるために、それが中々できないということで、チェーン店などで遵法性を重視している企業は、何としても「スポーツの練習場」にしようとします。

 

では、本当に「学習塾、華道教室、囲碁教室その他これらに類する施設」に該当するフィットネスジムとは、どんな感じなのかを説明しておきます。

1.コーチやトレーナーなどが常駐していて、全ての利用者が、その指導を受けている。

2.その店舗だけの会員制であり、不特定多数の人が出入りしない。

Point!チェーン店の会員だと世界中24時間どこでも使える様な施設は、学習塾等には該当しません。

 つまり、今流行りの好きな時に行って、勝手に施設の道具を利用して、その会社の会員になっておけば、どこの施設でも利用可能というのは、「スポーツの練習場」に該当し、200㎡を超える場合には用途変更の確認申請が必要となります。また、その建物が非耐火構造や準耐火構造の場合は、3階以上にその施設を設けることが出来ないということになります。

 

フィットネスジム、フィットネスクラブなどを開設することを検討している方は、一度、当社にご相談するか、行政庁にご相談することをお勧めします。

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違反建築を告発したい場合

連載シリーズ 【 違反建築を告発したい場合 】 第 3 話 / (全 4 話)

 当社の様に違反建築を是正し、建物の調査をしている会社のスタッフから見ると、この世の建物は、違反だらけに見えます。しかし、我々でも、それが違反建築なのか、既存不適格(建てられた当時の法律には適合していた)なのかの判別というのは、なかなか難しいものです。

 しかし、明らかに違反しているなという建物もあるのですが、では、それを毎回、告発しているのかと言うと、それによってお困りの方からの依頼でもない限り、告発することはありません。

理由は

・あまりに多すぎて、告発しきれない

・告発する手続きが容易ではない

・告発するメリットが当社にない

とこのあたりが主たる理由です。建築士は、建築士法第21条の3によって、違反建築の指示や相談をしてはいけない規定はありますが、違反建築を告発しなければならない規定はありません。

 

 しかし、自分に直接被害が及ぶ様な場合、その違反を告発したいと思う方はいると思います。

例えば

・借りた建物が明らかに違反状態にあり、事業を行っていくのに支障がある場合

・建物を貸したら、借主が勝手に違反建築になる造作をしてしまった場合

・隣の建物が違反建築で、自分の生活を脅かす様な場合

・同じマンションの住人が勝手に共有部分に違法増築をしてしまった場合

などなど、色々とあると思います。

 

 行政に相談に行けば、相応の相談に乗ってくれる可能性は高いのですが、諸事情があって行政も簡単には動けないことが多く、実際には正式な手続きを踏襲しないと行政は行動を起こしにくいのが実態です。

 実は建築士に相談しても、この正式な手続きを知っている建築士はほとんどいません。

なぜなら、手続きの方法が、建築基準法や建築士法と全く関係ない法律によって定められているからです。

 

法律根拠は下記(※1)に記しますが

違反建築を告発することは誰でもできます。

ただし、次のことを明記して書面で提出しなければなりません。

① 申請する人の氏名(法人なら法人名)及び住所もしくは住んでいる場所(必須)

② 法令に違反する事実の内容(必須)

③ これに関して求める行政処分もしくは行政指導の内容(必須)

④ これに関して求める行政処分もしくは行政処分の法律根拠(必須)

⑤ これに関して求める行政処分もしくは行政処分がされるべきであると思料する理由(必須)

⑥ その他参考となる事項

となります。

法律上は誰でも、告発できるのですが、告発するために記載する内容が、建築士以外の方では書くことが難しいという問題があります。

 特に、違反建築である法律根拠、例えば建築基準法の第何条に違反しているのか、また具体的にその条項に対して、どの様に違反しているかなどかなどは、相当に建築基準法に精通していないと書ききれないと思います。

 おそらく、建蔽率オーバーや容積率オーバーでさえ、厳密な計算は、建築士でないと難しいはずです。容積率の対象になる部分はどこなのか、建築面積の対象になる部分はどこなのか、などは不動産登記簿等からは判別できません。

 また、建築士法で「建築物の調査及び鑑定」は建築士の独占業務とされています。そのことからも、違反建築である行政処分や行政指導となる法律根拠を調べるとなると、建築士以外の方では難易度が高いことが窺えます。

 

当社では、違反建築を告発したい方のご相談をお受けしております。ご 503 Service Unavailable

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