建築基準法適合状況調査の流れ(検査済証の無い建物を適法化する方法)
本内容は2014年12月6日に掲載されたものの修正版です。
① 確認済証の副本と確認申請時の図面の有無を確認する。
副本と図面がある場合は②へ進む。無い場合は③へ進む
② 一般木造住宅2階建て200㎡未満の建物以外の場合は構造計算書の有無を確認する。
構造計算書が無い場合は④に進む。
一般木造住宅2階建て200㎡未満の建物、もしくは構造計算書がある場合は⑤に進む。
③ 建築士事務所(出来れば一級建築士事務所)に依頼して、現況図面の作成を依頼し、現況図面作成後に④に進む。
④ 現況図面をもとに構造計算を実施する。
⑤ ①の確認申請時の図面もしくは③で作成した現況図面が、建物が建てられた時点の建築基準法に適合しているかを一級建築士に確認してもらう。
この時点で、建築基準法に大きく違反しており、是正するのに建て直す方が、経済的に有利な場合には、建築基準法適合調査を中止する。
概ね建築基準法に適合している、もしくは軽度の違反(建て直すよりも是正する方が遥かに経済的に有利な違反)がある程度である場合には、⑥に進む。
⑥ 依頼した建築士に『建築基準法適合調査』を第三者機関に依頼してもらう。
この時点で依頼された建築は特定行政庁との協議を行い、第三者機関に議事録で報告を行う。⑦に進む。
⑦ 第三者機関が『建築基準法適合調査』を行い、『建築基準法適合調査報告書』のドラフトを作成する。
不適合箇所が無ければ、『建築基準法適合判定合格状況調査報告書』が発行されます。
不適合箇所がある場合は⑧に進みます。
⑧ 依頼した建築士に不適合箇所についての是正方法等を第三者機関と協議して貰い、不適合箇所を是正する工事を行う。その是正箇所を依頼した建築士に写真などを取って貰い、第三者機関に報告してもらう。是正完了を第三者機関が認めてもらえば『建築基準法適合判定状況調査報告書』が貰えます。
建築基準法適合判定状況調査報告書は、不適合でも貰えますが、報告書の中に『不適合』箇所の指摘が残ったままになると、その効力がありません。 この場合は違反建築物である証明書にしかなりませんので注意が必要です。
ただし、『建築基準法適合調査』が出来るようになったのは、平成26年7月2日の国土交通省発表のガイドラインからで、すべての建築士事務所が引き受けてくれる訳ではありません。
価格については、建物の規模、築年数、構造、確認済証の副本の有無、確認申請時の図面の有無、建築基準法の技術的指針への違反の程度によって大きく異なります。
まずは、株式会社リデベにお気軽にお電話下さい。
03-5389-6082
営業時間 平日午前10時~12時 午後13時~18時半となります。
なお、ご相談に御来社する際には、必ずお電話で予約を取ってください。
「民泊」、建築基準法や消防法に注意が必要
本内容は2016年4月13日に掲載されたものの修正版です。
平成28年4月1日に旅館業法施行令の一部が改正され、通称「民泊」と言われるサービス(以下、「民泊」と言う)の中でも小規模なものが出来るようになった。今までは客室が全体として33㎡以上あることや玄関帳場もしくはフロントの設置が必要であったが、10人未満の民泊を行う場合に限り、一定の規制が緩和された。しかし、建築基準法や消防法までが緩和された訳ではない。また、当然だが区分所有のマンションなどでは、管理規約などが優先されることは言うまでもない。今回は、民泊を行うにあたり、旅館業法の他に建築基準法や消防法の規制を受けるということを書いているが、その他にも各自治体などの条例等の規制を受ける場合がある(殆どの自治体で何らかの条例がある)ので、保健所の他に各自治体や消防署には必ず事前協議に行くべきだろう。
さて、下記表を見てもらいたい。今回の法改正は民泊に対して、旅館業法の一部が緩和されただけであり、建築基準法や消防法が緩和された訳では無い。旅館業法が緩和されても、安全性が排除されてよい訳ではない。
まず、建築基準法についてだが、「200㎡以下なら、用途変更の確認申請を出さなくてよい」から、建築基準法について、何ら確認をしなくてよいと考える傾向にあるが、200㎡未満の場合、確認申請を出さなくて良いだけで、当然だが建築基準法は守らなければならない。用途地域によっては、民泊が出来ないエリアもある。下記表のように分譲マンションの一室で民泊を行うことによって、建物全体の容積率がオーバーすることになれば、そのマンションそのものが違反建築になり、他の区分所有者の権利を侵害することにもなる。
さらに、防火地域外にある3階建て以上の木造(鉄骨造の一部を含む)の場合、耐火構造になっていない可能性が高く、その場合は、かなり大がかりな工事を必要とするため現実的には難しいことを覚えておきたい。
民泊を行う場合でも消防法についても特に注意を払わなければならない。2015年5月17日未明に神奈川県川崎市で起こった簡易宿所の火災により、消防法、建築基準法違反により大参事になることが浮き彫りになった。以降、消防署も簡易宿所に関して、以前にも増して注意を払っている。そこで、住宅を民泊にする場合に設置しなければならないものがある。
下記表の通りであるが、300㎡を超える様な民泊の場合、宿泊人数が10人を超える可能性が高いので、改正前の旅館業法が適用される。注意を払わなければならないのは、宿泊者が10人未満であっても、民泊になる部分が建物の10%を超えると、消防法に於いては、「特定防火対象物を含む複合用途防火対象物」とみなされる。例えば、もともとマンションの住人が50人未満の場合、防火管理者が設置されていないが、民泊を行った場合、マンションの住人と民泊の収容人員の合計が30人を超えると防火管理者が必要となる。また、民泊を営んでいるフロア以外にも誘導灯が必要になる。誘導灯は専用回路などの配線工事も必要になってくるので注意が必要だ。専用住宅を利用して民泊にして、30人以上の収容人員がある場合には、2階以上(避難階より上階)には避難器具が必要になってくる。
民泊をする部分が300㎡を超えると、改正された旅館業法ではなくなるが、旅館業法で定める玄関帳場やフロント以外にも、全ての住宅部分の居室に自動火災報知器(全ての火災報知器が連動しているもの)が必要になってくるなど、さらに厳しい規制もある。
この様な規制があるのだが、報道発表などで旅館業法の改正になった部分だけを見てしまうと、民泊が簡単にできる様になったと勘違いし、一戸建てや共同住宅の空室を使ってすぐにでも民泊が出来るように感じるが、実際には旅館業法により、小規模な簡易宿所が出来る様になっただけで、何でも民泊が出来るという訳ではない。
そして、旅館業法の緩和により、仮に旅館業法の許可が受けられる様な物件であっても、建築基準法や消防法によって民泊が出来ない物件を、「民泊可能」などと書いて、不動産の広告を行うと宅地建物取引業法32条の「誇大広告」や同法47条の「不実のことを告げる行為」に抵触する可能性があるので宅地建物取引業者も注意が必要である。
表
旅館業法 | 宿泊数10人未満(新基準) | 宿泊者数10人以上 | ||||
・3.3㎡/人以上・玄関帳場・フロント不要(※1) | ・客室の合計が33㎡以上・玄関帳場・フロント必要 | |||||
建築基準法 | 民泊部分が200㎡未満 | 民泊部分が200㎡以上 | ||||
確認申請の手続きが不要(一部行政機関は必要な場合有) | 確認申請の手続きが必要(※2) | |||||
【民泊にする場合の共通事項】(確認申請の要否に関わらず厳守)・第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域・第一種中高層住居専用地域・第二種中高層住居専用地域では設営不可。・第一種住居専用地域では3000㎡以上は設営不可・300㎡以上の場合は準耐火構造(木造建物の場合注意) | ||||||
【専用住宅を民泊にする場合】(確認申請の要否に関わらず厳守)・建物が3階建て以上の場合、耐火構造にしなければならない。防火地域以外の木造建物や鉄骨系の建物の場合、多額の費用が掛かる場合が多い。 | ||||||
【共同住宅を民泊にする場合】(確認申請の要否に関わらず厳守)平成9年9月1日以降に確認申請を行っている場合、民泊にした部分の面積の割合に応じて、共有部分の面積が容積率対象面積になるため容積率オーバーになる可能性がある。 | ||||||
消防法 | 建物全体の10%以上 | 300㎡以上 | 建物全てを民泊にする | 左記の全てに該当しない(※3) | ||
防火管理者 | 収容人員が30人を超えたら必要 | |||||
消化器 | 150㎡以上で必要 | |||||
避難器具 | 収容人員が30人を超えたら避難階より上階は必要(※4) | |||||
自動火災警報装置設備 | 民泊部分は設置。建物全体が300㎡以上であれば、その他の居室も設置。(※5) | 左記に該当 | ||||
消防機関へ通報する火災報知設備 | 建物全体が500㎡以上で設置。(※6) | 左記に該当 | ||||
誘導灯等 | 全階の階段部分(設置必要箇所) | 民泊を設置する階のみ | ||||
※1 代替設備を設け、善良の風俗を保持出来る処置、事故などの緊急時に迅速に対応の為の設備※2区分所有の共同住宅等で、区分所有者Aと区分所有者Bがそれぞれ簡易宿所を営もうとする場合、各々の合計が100㎡を超えると確認申請が必要となる。(一部の行政区は緩和規定等あり)※3 例えば、延床面積が500㎡のマンションの30㎡部分だけを民泊として、簡易宿所にするのであれば、①~③のどれにも当てはまらない。※4 既存建物が共同住宅ならばもともと設置してあるが、専用住宅の場合は新たに設置が必要。※5 既存建物が共同住宅として、500㎡以上あるのであれば、もともと自動火災警報装置設置の義務がある。民泊以外の部分の住人の許可をとって自動火災警報装置を各居室に設置するのは困難である。
※6 既存建物が共同住宅として、1000㎡以上あるのであれば、もともと消防機関へ通報する火災報知設備の義務がある。 |
エステティックサロンは用途変更が必要か?
本内容は2016年9月25日に掲載されたものの修正版です。
掲題の問合せが非常に増えている。そして、色々な見解があるので少し整理しておこうと思う。
その前に長い文章を読むのが面倒だという人の為に結論から書いておこう。
1.一般的に下記の施設・施術をしなければ、エステティックサロンはサービス店舗に該当するため、特殊建築物に該当しないので、用途変更の確認申請は不要。
2.医師等が施術を行い、入院施設を有している場合は、有床診療所となり、特殊建築物になり200㎡を超える場合は用途変更の確認申請が必要となる。
3.浴室、サウナ、岩盤浴、泥風呂などを有している場合は、公衆浴場となり、特殊建築物になり200㎡を超える場合は用途変更の確認申請が必要となる。(ただし、主たる部分が明らかに別の用途、例えばフィットネスジムなどの浴室で不可分の関係にあり、公衆浴場法が適用されないような場合には不要となる。公衆浴場法は保健所の管轄なので事前協議が必要)
※用途変更の確認申請が必要無くても各種法律は守らなければならない。
そもそも、エステティックサロンの定義が難しいが、総務省の日本標準産業分類2002年(平成14年)3月第11回改訂によって、分類番号8292(現在7892)として、独立したサービス業と定義された。
しかし、その定義も曖昧で、「手技又は化粧品・機器等を用いて、人の皮膚を美化し、体型を整えるなどの指導又は施術を行う事業所をいう。」となる。
と言う訳で、エステと聞いて、不埒なことを頭に思い浮かべた方は、それを含まないので、その話題は以下に出てこないので期待しないで欲しい。
エステティックサロンの実態だが、色々なサービスが行われている。その色々な内容の全てを把握している訳ではないが、定義にもあるように
・ 皮膚の美化
・ 体型を整える
この2点が目的であると考えて良いだろう。健康の増進を進めるスポーツジムはエステティックサロンに該当しないが、ダイエットを目的として、スポーツ器具を使っている場合は、エステティックサロンに該当するという曖昧な話になる。
通常のエステティックサロンは建築基準法(以下「法」という)で言う特殊建築物に該当せず、「サービス店舗」という部類に分類されるので用途変更の確認申請は不要であると解される。しかし、サービス内容の実態によっては、必要となる場合がある。
皮膚の美化が目的で、皮膚科の医師が薬事法による薬を使う施術や、体型を整える為に美容整形と言われる形成手術を行うのであれば、これは診療所になる。入院施設を伴わない診療所は、やはりサービス店舗と同じ扱いで良いのだが、それによって入院施設を伴うのであれば、有床診療所(20床以上なら病院)となり、特殊建築物になる。つまり、有床診療所にするならば、法87条の用途変更に該当し、200㎡を超えるならば、法6条により確認申請が必要となる。
ここまでは、異論の無いところであろう。
問題は他のサービスの場合である。
先日、ある特定行政庁に当社のスタッフが「韓国式ヨモギ蒸し」を施術する施設が特殊建築物に該当するかを問い合わせたところ、「エステティックサロンであり「サービス店舗」ではないか。」という回答がきた。
そもそも、「韓国式ヨモギ蒸し」がどんなものかも解らなかったであろうことは容易に想像がつく。実際に私も今回の件で初めて知った。
どんなものかを、簡単に言えば、穴の空いた椅子の下に、蒸し器を置き、その蒸し器にヨモギを入れて、人はその椅子に座り、首から下の体をその椅子ごと、ポンチョの様なものを被せる。そうすると、ヨモギ成分の蒸気がポンチョの中に充満するという形式のスチームサウナである。効能などは詳しくは解らない。
では、これが特殊建築物に該当するかどうかを検討する。
前記の説明の通りで「蒸し器を使うスチームサウナ」であれば、当然に公衆浴場に該当するかを検討しなければならない。
ちなみに、法別表1(4)より、建築基準法施行令(以下「令」という)115条の3の三に公衆浴場は特殊建築物と定義されている。
さて、建築基準法で言うところの公衆浴場とはどんなものかというと、これについて先人が疑問に思い、ちゃんと建設省(現在の国土交通省)に問合せをした記録が残っている。
昭和34年住指発第126号
公衆浴場の解釈
昭和34年12月14日
建設省住宅局建築指導課長から兵庫県土木建築部長宛
(照会)
一 法別表第3(い)項第6号(現別表第2(い)項第7号に相当)の公衆浴場とは、公衆浴場法第1条にいう公衆浴場と解するが、特殊浴場(ヘルスセンター、温泉会館又はトルコ温泉等)も公衆浴場と解してよろしいか。
二 法別表第3(い)項第6号(現別表第2(い)項第7号に相当)の公衆浴場に附属する休憩室、娯楽室又は遊興を伴わない軽飲食店を併設したものは、同項第8号(現同項第10号に相当)の附属するものと解してよろしいか。
三 法別表第3(い)項第8号(現別表第2(い)項第10号に相当)の附属するものとは、本家と同一むね又は別むねの如何にかかわらず、一構えの敷地内のものは、附属するものと解してよろしいか。
(回答)
一 法別表第3(い)項第6号(現別表第2(い)項第7号に相当)の公衆浴場とは、公衆浴場法第1条第1項に規定する公衆浴場をいう。ただし、お尋ねのような場合には、公衆浴場に同表(い)項各号に該当しない各種の施設が併設される場合が多いが、これら各種の施設については、法第50条第1項(現第48条第1項)の許可が必要であるから念のため。
二 併設される部分の用途、規模、使用状況等により具体的な事例について判断すべきであるが、通常、ヘルスセンター等における大規模なものは、法別表第3(い)項第8号(現別表第2(い)項第10号に相当)に該当しないものと解される。
三 同一棟であるか、別棟であるかは、「附属するもの」か否かの別に、直接の関係はない。
(注) 特殊浴場については、昭和45年の法改正により、法別表第2(い)項第7号で「個室付浴場業」が除外され、立法的に解決された。
トルコ温泉は現在のソープランドに該当します。
というわけで、公衆浴場法第1条第1項に該当するものが、法でも公衆浴場になるわけだ。では、公衆浴場法第1条第1項とは
第一条 この法律で「公衆浴場」とは、温湯、潮湯又は温泉その他を使用して、公衆を入浴させる施設をいう。
ここで「その他を使用して」と「入浴」という言葉の定義が難しいのだが、これについては、公衆浴場法を所管する厚生労働省が回答している。
公衆浴場法概要(抄)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/seikatsu-eisei/seikatsu-eisei04/04.html
公衆浴場法(昭和23年7月法律第139号)
1 定義
公衆浴場は、「温湯、潮湯又は温泉その他を使用して、公衆を入浴させる施設」と定義されているが、これらの営業を行う場合には公衆浴場法に基づき都道府県知事の許可を得なければならない。
2 適用
公衆浴場法の適用を受ける公衆浴場は、一般公衆浴場とその他の公衆浴場がある。
(1) 一般公衆浴場
地域住民の日常生活において保健衛生上必要なものとして利用される施設で、物価統制令(昭和21年3月勅令第118号)によって入浴料金が統制されているいわゆる「銭湯」の他、老人福祉センター等の浴場がある。
(2) その他の公衆浴場
保養・休養を目的としたヘルスセンター・健康ランド型のもの、ゴルフ場やアスレチックジム等スポーツ施設に併設されるもの、工場等に設けられた福利厚生のための浴場、サウナ、個室付き公衆浴場、移動入浴車、エステティックサロンの泥風呂等がある。
他法令に基づき設置され衛生措置の講じられているものは公衆浴場法の適用外とされており、労働安全衛生法による作業場に設けられた浴場や労働基準法による事業附属寄宿舎、旅館業法の適用を受ける宿泊施設の浴場が該当する。また、専ら他法令、条例等に基づき運営され衛生措置の講じられている、病院や老人保健施設のデイ・ケアとして使用する浴場、国や自治体によって寝たきり老人等を対象に入浴介助を伴った入浴サービスに使用される浴場は許可の対象外となる。
なお、遊泳プールに付帯する採暖室・採暖槽は浴場ではない。また、もらい湯等は業(反復継続の意思と社会性を持って行われること)として行われていないものは対象にはならない。
つまり、サウナやエステティックサロンの泥風呂等は、立派な公衆浴場なのである。よって、エステティックサロンで美容が目的であっても、「蒸し器を使うスチームサウナ」等を使うのであれば、その建物は特殊建築物と解釈できる。
ここで危険なのは、建築士が事前相談などで、特定行政庁の建築課などに問合せをして、今回の様に
「特殊建築物でありませんね」
などと、ロクに調べることもなく安易に回答してくる行政官の言葉を信じると大変なことになりかねない。
「韓国式ヨモギ蒸し」が特殊建築物に該当しないというならば、前述の法の構成からすれば、公衆浴場法に基づく、営業許可も不要ということになりかねない。
知事(保健所のある市や特別区は市長もしくは区長)の許可が必要なのに、無認可営業を行うと営業停止や罰金刑が待っている訳だが、建築士では責任が取り切れないような問題だし、ミスリードをした行政官も簡単には責任を取らないだろう。
事業者の方は、より詳しい建築士に確認するか、保健所、役所、消防署など関係各所の全てに確認すべきであろう。行政庁は基本的に自分の部署の法律以外は詳しくないが、事業者は全ての法律を守らなければならないことに注意が必要だ。
用途変更の確認申請を出さないといけない業種(用途)とは?
本内容は2015年1月28日に掲載されたものの修正版です。
用途変更に掛かる費用については、変更後の用途によって違います。それぞれ用途別に価格設定しておりますので、下記のそれぞれから選択して、参照してください。(直接、当社にお問合せ頂いても構いません。)
飲食店・物販店・遊技場等への用途変更は『用途変更の設計費用について~飲食店・物販店・遊技場など~(平成28年より)』を参照して下さい。
老人介護施設・児童福祉施設等への用途変更は『用途変更の設計費用について~老人介護施設・児童福祉施設など~(平成28年より)』を参照して下さい。
簡易宿泊所・旅館・ホテル等への用途変更は『用途変更の設計費用について~旅館・ホテルなど~(平成28年度より)』を参照して下さい。
その他の用途については、直接、当社にお問合せ下さい。
用途変更について、
「マンションの各部屋を事務所で使おうと思うのだが用途変更は必要ですか?」
「コンビニが退去して、その部分を事務所で使おうと考えているが用途変更は必要ですか?」
と言うような、質問を受けますが、いずれの場合も、事務所が特殊建築物ではないので、用途変更をする必要性がありません。また、同一グループ同士の場合は、用途変更の必要性が無い場合もあります。(当社では同一グループに該当した事例がありません。公共事業や風俗店の場合だとある可能性があります。)
下記に該当する用途で建物を利用しようとする場合に、その前に利用していた用途が、これから利用している用途と違った場合で当該用途部分が100㎡(現在は200㎡)を超える場合に用途変更の確認申請が必要となります。
例えば物販店の裏にあるバックヤードや事務所を除いた純粋な売り場面積が100(現在は200)㎡未満であっても、バックヤードや事務所が、物販店に明らかに従属している場合は、建築基準法においては、バックヤードや事務所の面積も含みます。
用途変更の確認申請が必要な用途(業態)(下記、太文字が該当用途)
カテゴリー1
グループA
劇場・映画館・演芸場
グループB
観覧場
グループC
公会堂・集会場(※1)
※1 結婚式場・披露宴会場・セレモニーホールはこのカテゴリーになります。
グループAの中の用途同士、グループCの中の用途同士は用途変更の確認申請の必要はない。
Ex.1 劇場→映画館 確認申請不要
Ex.2 セレモニーホール→披露宴会場 確認申請不要
Ex.3 演芸場→集会場 確認申請必要
カテゴリー2
グループD
病院
グループE
ホテル・旅館
グループF
共同住宅
グループG
寄宿舎(※2)・下宿
グループH
有床診療所・助産所・身体障害者社会参加支援施設(補装具制作施設及び視聴覚障害者情報提供施設除く)・婦人保護施設・老人福祉施設・有料老人ホーム・母子保護施設・福祉ホーム・障害福祉サービス事業・身体障害者更正援護施設・精神障害者社会復帰施設・知的障害者援護施設
※2 社員寮・グループホーム・シェアハウスはこのカテゴリーになります。
グループEの中の用途同士、グループGの用途同士、グループHの用途同士は、用途変更の確認申請が不要です。
Ex.4 ホテルや旅館を買い取って、無届け老人介護施設を営業しようとしている方がいます。介護報酬は、そのホテルに介護者が引越してきた形態を取り、訪問介護報酬を得ているケースが多いようですが、この場合、建築基準法の観点から、ホテルを寄宿舎に用途変更する必要性があります。
カテゴリー3
グループI
学校
グループJ
博物館・美術館・図書館
グループK
体育館・ボーリング場・スキー場・スケート場・水泳場・ゴルフ練習場・バッティング練習場・その他スポーツの練習場
グループJの中の用途同士、グループKの中の用途同士であれば、用途変更の確認申請は不要です。
カテゴリー4
グループL
百貨店・マーケット・物品販売業を営む店舗
グループM
展示場
グループN
キャバレー・カフェー(※3)・ナイトクラブ・バー
グループO
ダンスホール
グループP
遊技場(※4)
グループQ
公衆浴場
グループR
待合(※5)・料理店(※6)
グループS
飲食店(※6)
※3 昔で言う特殊喫茶、今風に言うとキャバクラ・ホストクラブがこのカテゴリーになります。
※4 パチンコ店、ゲームセンターはこのカテゴリーになります。
※5 酒以外の料理は主に仕出しでまかなう貸席型の業態
※6 料理店は料亭、飲食店は喫茶店や通常の飲食店になります。
グループLの中の用途同士、グループNの中の用途同士、グループRの中の用途同士は用途変更の確認申請は不要です。
カテゴリー5
グループT
倉庫
カテゴリー6
グループU
自動車車庫
グループV
自動車修理工場
グループW
映画スタジオ(※7)・テレビスタジオ
※7 イターネット動画の撮影やDVDシネマの撮影場所はこのカテゴリーになります。
Point1 用途変更の確認申請を出さないと
建築基準法第99条により、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金となります。建築基準法第104条二により法人の場合は、さらに法人に対して同額の罰金が付されます。
Point2 用途変更をする際に、確認申請を出さないだけでなく、用途によって耐火構造などの技術的な部分に抵触すると
建築基準法第98条により、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金となります。建築基準法第104条一により法人の場合は、さらに法人に対して1億円以下の罰金となります。
Point3 用途変更の確認申請は建築士でないとできない
時々、行政書士事務所が確認申請を請負う宣伝を見かけますが、建築士法第21条により、用途変更を含む確認申請業務は建築士でないとできません。
用途変更に掛かる費用については、変更後の用途によって違います。それぞれ用途別に価格設定しておりますので、下記のそれぞれから選択して、参照してください。(直接、当社にお問合せ頂いても構いません。)
飲食店・物販店・遊技場等への用途変更は『用途変更の設計費用について~飲食店・物販店・遊技場など~(平成28年より)』を参照して下さい。
老人介護施設・児童福祉施設等への用途変更は『用途変更の設計費用について~老人介護施設・児童福祉施設など~(平成28年より)』を参照して下さい。
簡易宿泊所・旅館・ホテル等への用途変更は『用途変更の設計費用について~旅館・ホテルなど~(平成28年度より)』を参照して下さい。
その他の用途については、直接、当社にお問合せ下さい。
用途変更については、お気軽にリデベまで、ご相談ください。
違反建築物に使用停止、除去の命令を出せない理由(2022年9月21日更新)
下記の記事を2014年12月20日に書きましたが、昨今の行政の対応や、私の書き方が悪かったこともあり更新します。
赤字部分が加筆になります。
掲題の問合せを時々受けます。
この問合せで、こちらから聞き返すことがあります。お問合せをしてきた方をAさんとします。
私「Aさんは、その違反建築の為に何か損害を被っていますか?」
この質問で多くの回答は、
1 建物が少し傾いているから怖い。
2 隣地の建物の一部(多くの場合、換気扇のフードやエアコンの室外機)が越境している。
というもので更には、
3 うちの建物は建築士の人に目一杯の高さで設計してもらったのに隣の建物がうちの建物より高いのはおかしい!
という、回答もありました。
さて、この回答、いずれも、その建物が違反建築と即座に言えるものではありません。ただし、1の場合は、違反建築ではなくても隣地に倒壊したら危険な場合は建築基準法(以下、「法」といいます)10条で、特定行政庁が除去、使用禁止、是正などの命令を出すことはできるのですが、しかし、私は今までこれを見たことがありません。1の場合、建てられた当時の建築基準法は、守っているが劣化によって傾いてしまったかもしれません。2の場合は法に違反しているというよりも、民法の権利関係の問題になります。
しかし、完全に法に違反していても、特定行政庁は、是正命令は出せますが、除去や使用禁止の命令をだせないのが実態です。
法第9条では
特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反した建築物又は建築物の敷地については、当該建築物の建築主、当該建築物に関する工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者又は当該建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者に対して、当該工事の施工の停止を命じ、又は、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。
法第10条では
特定行政庁は、第六条第一項第一号に掲げる建築物その他政令で定める建築物の敷地、構造又は建築設備(いずれも第三条第二項の規定により第二章の規定又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の適用を受けないものに限る。)について、損傷、腐食その他の劣化が進み、そのまま放置すれば著しく保安上危険となり、又は著しく衛生上有害となるおそれがあると認める場合においては、当該建築物又はその敷地の所有者、管理者又は占有者に対して、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用中止、使用制限その他保安上又は衛生上必要な措置をとることを勧告することができる。
とあるので、違反建築やあまりに建物が劣化している場合は特定行政庁の命令で除去命令や使用禁止にできるはずなのですが、これを出せないのには、法的な理由があります。特定行政庁の担当者に
私「違反建築物、若しくは激しく劣化した建物に対して、除去命令とか使用停止命令って出しますか?」
と聞くと
担当者「法9条命令、法10条命令は出しますよ。」
と言います。
私「では、〇〇町〇丁目○番〇号にある、この建物ですが、台帳記録では、完了検査も受けていません。さらに、この建物、すでに柱の一部が腐食して、壁の一部が倒壊し、屋根が傾いている状態で、近隣の方が迷惑しています。ですから、法9条、法10条のどちらでも構わないので、何らかの行政命令を出して頂けませんか?」
と聞くと
担当者「検討します・・・。」
で、大体、何もしてくれません。親切な担当者だと現地まで見に行って、なんとか所有者に注意してくれたりはしますが、除去命令や使用禁止命令というのは私のしる限りでは見たことがありません。
最近は除去命令や使用禁止命令が出るようになってきました。これの理由には大別すると3種類に分けられます。
1.公共性が高く、不特定多数の第三者が利用する建物の場合で、著しく危険性が認められる場合。
2.その建物が倒壊などをした場合に所有者以外にも害は及ぶ可能性が高い、もしくは緊急輸送道路などを塞いでしまう場合。
3.市街化調整区域などで、都市計画法第53条の許可を得ずに建てた建物で、インフラ設備などが整っていない場所に勝手に建築された建物
などで、是正が困難な場合、もしくは是正勧告を無視した場合などには除去・使用禁止命令が出されます。
これは、憲法第29条と憲法第98条の問題があるからです。特定行政庁の担当者は解ってないかもしれませんが、特定行政庁の上司はちゃんと解っています。
憲法第29条
財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
憲法第98条
この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
ちょっと解説すると、憲法第29条で、「財産権に対する国による制約は原則として許されないとしながらも、他人を侵害することとなる場合や、 経済的な弱者を守るためなどの社会的な事情から、合理的な規制を受けることがあること」と規定していることから、その違反建築物が他人に直接的な被害を与えていないと特定行政庁(国)によって、その財産を侵害することが難しいことになります。
ただし、私有財産権も他人の権利を侵害してまでは成立はしない。ということは念頭にいれておいて下さい。
これは、法第9条や法第10条と相反しています。
しかし、憲法第98条で憲法に反する法律は効力を有しないとあるので、法第9条や法第10条が憲法に反している可能性があり、財産権が確立してしまった、つまり完成した建物に対して、簡単に除去や使用禁止命令を出せない訳です。因みに、財産権が確立していない建築中の建物には法第9条命令で工事中止命令が簡単に出ます。また、憲法第29条は他人を侵害する場合は、この限りではないので、明らかに危険な場合は、法第9条、法第10条の命令を出せそうな感じもするのですが、この線引きが難しく、もし安直に認めると、この世から、除去、使用禁止にしなければならない建物が沢山でてしまいます。
ただし、明らかに第三者に迷惑が掛かる可能性があり、昨今の災害などで同様の建築物が事故の対象になっているような建物の場合は、是正が出来ないような状況だと、使用禁止・除去命令が出るようになってきました。
また、市街化調整区域などで、特にインフラ設備が整っていないところに、勝手に排水をするなどをするなどの物件は環境破壊など、やはり第三者に迷惑を掛けることになるので、何らかの処置ができないと、使用禁止・除去命令が出ます。
しかし、除去や使用禁止の命令が出ないからと言って、違反建築をしてよいという訳ではありません。最終的に最も損害を被るのは所有者です。違反建築や明らかにメンテナンスを怠り劣化してしまった建物は法第9条、法第10条に抵触していることになり、財産価値が大きく毀損することになります。もし、建物を売ろうと思っても買い手が付きにくいとか、貸そうと思ってもなかなか借り手が付かないということになりかねません。
ですから、このような状況に陥った場合は、なるべく早めにこの状況を是正することをお勧めします。現在は、「建築基準法適合判定」※というものがあり、費用と時間はかかりますが、多くの場合で財産価値を復旧させることができます。
※建築基準法適合調査の流れ(検査済証の無い建物を適法化する方法)
「建築基準法適合判定」については、リデベまでお気軽にご相談ください。
放課後等デイサービスの開設については建築士に相談を
放課後デイサービスの設計について、最近、事業者の認識が間違っているケースが見受けられます。放課後デイサービスは下記の点は厳守しなければなりません。
・児童福祉法
・建築基準法
・消防法
・高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)
この、法律にはそれぞれ国の定める法律の他に都道府県、さらには市区町村の定める条例や規則があるので注意しなければなりません。
事業者は、児童福祉法に関する法令については、営業許可や補助金の関係から、行政の担当窓口と相談されているケースが殆どで、ここについては殆どの事業者が守っています。
また、消防法に関しては、消防検査の定期検査に義務などから、多くの事業者が事前相談をしっかりされています。
しかし、建築基準法の用途変更に関して、特に用途変更の必要性が法改正により200㎡以上になってから、多くの事業者が、建築基準法の確認を怠り、また、それに付随して発生するバリアフリー法を守ってないケースが見受けられます。また、勘違いをされている事業者が多くいることが、確認されています。
まず、大前提として、「200㎡以下であっても法律は遵守しなければならない。」ということです。
では、遵守されていないかの事例を紹介します。
・そもそも、放課後デイサービス等の事業をやってはいけない場所でやっている。
・採光や換気が十分に足りていない建物を使用している。
・排煙設備がない建物を使っている。
・防火区画などが守られていない。
・耐火性能などが守られていない。
・バリアフリー法に関する、地域で定められている条例を守っていない。
・200㎡以上あるにも関わらず、申請する部分を200㎡未満にしている。
一部の行政では、建物の設計などについて建築士に確認しないと、そもそも事業の申請そのものを受け付けていない行政もありますが、多くの行政では、法令を遵守していることを前提に事業許可を出しています。
そのことから、建築士に相談しないで事業所を開設されたり、また、確認申請が不要なため、なるべくコストを押さえるために、法令を遵守しないことにより、前記したような、建築基準法を違反しているケースが散見されています。
しかし、法改正により用途変更の確認申請が200㎡以上になっても、200㎡未満の事業所も開設後3年を目処に後日、調査が入り、違反している場合には是正を求められることがあります。(令和3年11月現在、コロナ禍もあり、遅れている様です。)
※小規模建築物を対象とした医療・福祉施設、宿泊施設、集客施設等を所管する関係部局との連携について(https://www.mlit.go.jp/common/001294996.pdf)
開設後に是正となると、費用も開業時よりも多くのコストを要しますし、何よりも是正工事をしている期間は休業を余儀なくされます。また、悪質な場合には罰則規定があることも注意が必要です。
当社で相談を受けたケースの中では、そもそも是正が出来なくて閉設を余儀なくされたものもあります。
このことから、まず、開設する場所を決定(物件の賃貸借契約の締結や購入)前に、その場所で開設することが出来るか、出来るとして費用が予算内に収まっているかなどを事前に建築士、できれば、福祉施設の設計の経験のある一級建築士事務所に相談してください。
当社では、放課後デイサービスをはじめ、有料老人ホーム、老人デイサービスセンター、認可保育所、企業主導型認可外保育所などの多くの福祉施設の設計を行っておりますので、お気軽にご相談ください。
業務エリアは基本的に日本全国です。(電話及びメールでの相談は全国一律無料)
検査済証が無くてお困りの方へ(融資実行・用途変更や増築も出来る場合あり!)
まずは、建物のあるエリアの所轄の行政庁に問い合わせて「建築確認台帳」で検査済証が発行されているかの有無を確認してください。
「検査済証がなくてもあきらめないでください!」
検査済証がなくても融資を受ける方法はあります。
検査済証がなくても増築・用途変更を行う方法はあります。
1.検査済証とは?
検査済証とは、まず、建物を建てる前に、建築基準法やその他の関連法令に合致しているかどうかを図面にします。そして、その図面通りに建てられているということを、行政や国土交通省指定の民間確認検査機関が検査して、合格したものに発行されます。
2.検査済証はいつ発行されるのか?
検査済証は、建物が出来てから4日以内に検査の申請をして、申請到達後7日以内に検査を受けなければなりません。また、この間、建物の使用もできません。(引越しなどで家具を入れるのも使用とみなされます。)したがって、建物を利用して、しばらくしてから、検査済証が無いからと言って、検査を依頼することはできません。
3.検査済証がなくて金融機関から融資が受けられない場合
平成30年4月1日より、不動産売買の際、重要事項説明書に検査済証の有無の記載が義務付けとなりました。それ以前から、各金融機関とも検査済証の無い建物に対しての融資が大変、厳しくなり、場合によっては融資が実行されないことが増えてきました。
そこで、平成26年7月2日に発表された「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」(国土交通省)というものがありますが、これはハードルが高く、特に建物を利用している状況では、なかなか検査ができなかったりします。また、このガイドラインはそもそも、検査済証のない建物の増築や用途変更を可能にするために策定されたもののため、かなり厳しい検査をするので、かなりの費用が掛かります。しかし、金融機関はそこまでのものを求めていないことが多く、当社から、遵法性を明らかにした証明書でも、融資実行がされたことは多数あります。この証明書については金融機関の求めてくる内容によって異なるので、一概にいくらで出来るとは言えませんが、木造1戸建てであれば、税別50万円~(平均税別100万円前後)で出来ます。
4.検査済証がなくて用途変更や増築ができない場合
前述の通り、検査済証が無いとガイドラインを利用して調査をするか、建築基準法第12条5項による調査を必要とします。ただし、法第12条5項の調査は、行政が提出を求めないと行うことができません。したがって、基本的にはガイドラインになる場合が多くなります。(当社では、ガイドラインの検査も法第12条5項の検査もどちらも経験があります。)
このガイドラインに従った構造の調査の場合、破壊検査(建物の一部を壊して、鉄骨や鉄筋の接合部を露出させる)や非破壊検査(建物の構造をレントゲンで撮る)などの調査をするので、建物の規模によりますが、最低でも税別200万円~となります。
5.検査によって違反箇所が発見された場合
検査済証のない建物の多くは、当社の経験によると、検査を受けない何らかの理由が存在することが多く、その殆どが建築基準法に違反していることが多いです。違反箇所は是正するしかありません。しかし、場合によっては、物理的に是正ができない、もしくは是正をすることが経済的に困難なケースもあります。
6.新築時の図面があるかどうかが鍵
当社に依頼される場合で新築時の図面が全くないというケースがあります。後日、不動産会社が作った様な間取り図は、建築図面ではないので殆ど役には立ちません。この場合、図面の復元が必要になりますが、地中杭など再現が、かなり困難な図面もあります。建築図面が全くない状態からでも、用途変更や増築を行った実績はありますが、費用も時間も図面がある場合よりも掛かります。
7.まずはお手元にある資料を揃えてお電話ください。
前述の通り、実際の調査となると、かなりの費用が掛かります。そこで、お手元にある資料を揃えて、お電話でご相談ください。お電話での相談は無料で行っております。
そこで、可能性がある場合には予備調査(現地調査・行政調査・約10万円~)を行い、実際に調査に掛かる費用などのお見積り及び工程表を作成させて頂きます。
200㎡未満の用途変更について
令和元年6月25日より、建築基準法の改正により、200㎡未満の用途を変更する場合「確認申請の手続き」が不要となりました。
1.手続き不要でも法律遵守は義務
手続が不要になっただけで、建築基準法及び関連法令を守らなくて良いという訳ではありません。これは、改正前の100㎡未満の用途を変更する場合「確認申請の手続き」が不要だった時と何も変わってはいません。
もともと、用途変更をする場合には、用途変更をする建物に対して、現行法に合わせなければいけないのは、用途を変更する部分の「室内の環境」「バリアフリー」「防火」「耐火」「消火」「避難経路」などのことが大部分でした。ところが、これが建築士でないとなかなか理解が難しいところだったのですが、用途変更の手続きが200㎡以上になったことで、200㎡未満であれば、好き勝手にやっても良いと勘違いされるだろうというのは、法改正前から予想がされていたことでした。
用途変更の際に法律を守らなければならない部分で特に「防火」「耐火」「消火」「避難経路」は、火災や天災の際に即座に命に関わることです。
2.手続不要の建物に対するチェック体制
前述のため法改正前後から、特に消防署の検査(※1)等が厳しくなりました。
また、変更した用途によっては、国土交通省住宅局から各行政に対して法改正時に、消防署や保健所などに用途の変更が行われた建物の存在を建築当局(※2)報告する通達があり、建築当局は用途の変更が行われた建物に対して、用途によっては、3年後を目途に建築基準法が守られているかの報告(※3)を建築主に求めるように通達がでています。(※4)
東京都の様に用途変更の工事着手前に「防火対象物の工事計画の届出等」(※5)を出さなければならない行政区の場合には、工事着手前に違反状態にあれば、消防署や消防署の指導で建築当局に指示を仰ぎに行くこともできますが、そうでないと事前にチェックする機関がどこにもないことになる(※6)ので、用途変更の工事完了後に消防検査の時点で違反を指摘されて、違反箇所を是正したり、使用を開始してから違反を指摘され是正するようなことになると施工者も大きな費用負担が発生したり、建築主も営業開始を延期したり、営業をしていれば営業を停止しなければならない場合も発生します。場合によっては、使用そのものが出来ないというようなことすら発生します。(「違反を指摘された事例」を参照してください。)
3.手続き不要の建物に対する建築主の対策
当社では、どんな面積であっても、建築基準法及び関連法令などが自分で判断できない場合には、用途変更に詳しい建築士などに事前に相談をして、必要であれば、その建築士に図面や書類を作って貰うことを推奨しています。
消防検査の時点で違反が発覚したり、使用開始後に違反が発覚したりすると、使用開始が遅れたり、違反が改善されるまで建物が使用できなくなったり、場合によっては違反の是正そのものが出来ないなど、経済的損失は計り知れないものになります。
4.手続きが不要になったことで変わったこと
そもそも、用途変更の確認申請手続きが200㎡以上になったことは、不動産(特に空き家)の流動性を高めるためです。用途変更の確認申請手続きで問題だったのは
① 確認済証が発行されるまで工事が着手できない。
② 新築時の建築図面が無いと、その復元が必要。
③ 検査済証(建築基準法第7条第5項)が無いと、手続きが煩雑になるか、場合によっては用途変更ができない。
この3点が緩和されたことでこれにより、確認済証が無くても、出来るところから工事を始められ、用途を変更する部分以外のフロアの図面などが不要(立面図や断面図は必要)となり、検査済証がなくても、その建物の遵法性や安全性を確認できれば、用途の変更が出来る様になりました。
しかし、その建物の遵法性や安全性の確認、用途を変更した場合に守らなくてはいけない法律を怠ってよいという訳ではありません。
5.手続不要の用途変更の設計依頼を受けた建築士の方
建築士の方は委任状、確認申請書の1面~6面と新築時の図面、工事完了届以外の書類は用意しておかなければならないことを注意してください。(法第12条5項報告を求められた時に後から用意するのは至難の業です。)
また、手続が不要なだけに確認してくれる機関がありません。(※6)したがって、建築基準法に抵触した場合、建築士がすべての責任を担うということを十分に心掛ける必要性があります。
※1:各行政の火災予防条例に定める「防火対象物使用開始届」に対する検査。
※2:その用途の変更を行おうとする建物を所管する特定行政庁における「建築指導課」等
※3:「建築基準法第12条5項報告」違反建築もしくはその可能性があるものに対して行政は建築主等に報告を求めることができます。その際には、その部分の遵法性等を証明する書類が必要となってくるため、用途変更の確認申請とほぼ同様な書類や図面を報告書に添付する必要が発生します。
※4:国土交通省住宅局建築指導課長発、令和元年6月24日国住指第661号(http://www.mlit.go.jp/common/001294996.pdf)
※5:東京都の火災予防条例第56条第1項に基づく届出で、建築基準法の確認申請に必要な図面以上の図面などが求められます。
※6:用途変更の確認申請の手続きが無い場合、細部の規定を質問すれば、その規定は教えてくれますが、行政も民間確認検査機関も図面をまるごとチェックはしてくれません。
用途変更が200㎡からになります。
令和元年5月23現在、まだ法律が施行されていませんが、令和元年6月中には、法律が施行されることが確定している建築基準法改正があります。それは
「用途変更の確認申請義務が100㎡以上だったものが200㎡以上になる。」
ということです。
これは、現在の日本の空き家が物凄く増えていることに対してストック住宅をより活用しやすくしようとしている為のものですが、用途変更の多くはビルの一部だったり、していて空き家の戸建てをすることは少ないのですが、実はこの法律改正には大きな罠があります。
用途変更の確認申請手続きは確かに200㎡未満の建物について行わなくてよくなりますが、建築基準法を守らなくて良いということではありません。
当社にお問い合わせがあるときに
「自転車は免許不要で乗れますが、もちろん法定速度は守らなくちゃいけないし、飲酒運転をすれば、道路交通法違反で、捕まって処分されるのと同じで、確認申請が不要でも、違反建築が、ばれれば、是正処置を求められます。」
これは100㎡以下の時も同じだったのですが、当社には用途変更の手続きが不要だからということで、建築士等に確認をしないで、自分で適当にデザインを考案して、内装工事業者に施工して貰ったけど、違反建築を指摘されて是正を求められているという相談が月に数件はやってきます。
違反建築をしていると、こんな手紙が突然おくられてきます。もう、この手紙が来たら、元通りに戻すか、建築士に依頼して是正してもらうしか方法がありません。
ここで大変なのは違反建築を是正するのが、意外に大変ということです。
例えば1時間準耐火構造で作らなければならないところを、普通の壁で作っちゃいました・・・。みたいなことになると、内装工事で作った間仕切り壁から全部やり直し、みたいなことになって、作り直すためには、営業を何週間もとめてやり直さなければならないし、解体が発生するので、当初の工事費を上回ることになることも平気であります。
また、そもそも、その場所でやってはいけない事業をやっていたりすると、是正というより、辞めるか移転を余儀なくされるというケースも多々あります。
そして、これを放置すると、突然、次のような看板を建物の前に貼られてしまうことになります。
こうなって、しまうと、少なくとも是正しないで使用すると本当に逮捕されたりします。
違反建築は以外とばれます。ばれるケースは
・ 建築指導課監察係(行政によって呼び方が違います。)のパトロール
・ 消防署の検査で、消防署員が気が付いて、行政に通報
・ 一般の方からの通報
これは、自分の感じていることですが、最近は消防署の検査で消防署員が行政に通報するケースが増えています。最近の消防署の方は、かなり、建築基準法を勉強していて、完了検査で国土交通省指定民間確認検査機関(通称「民間」)が見落としって行ったことを指摘されたりということもあります。
ここまでのことを整理すると、今回の法改正での
メリット
・ 完了検査を受けていない(検査済証が発行されていない)物件でも200㎡なら容易に用途変更ができる。
・ 確認申請の手続きが無いので、確認申請から確認済証が発行されるまでの期間が短縮できる。
デメリット
・ 建築士等の建築基準法を解っている人を介さないで作ってしまって、違反建築になって、発覚すると、思わぬ出費や事業停止がある。
しかし、本当に危惧しなければならないことは、
これは私が、本改正の前に国土交通省住宅局建築指導課長にと話し合ったことですが、その課長さんは
「200㎡未満の小さな建物ならば、違反があっても是正しやすいし、仮に事故があっても被害は少ないから・・・」
と説明されましたが、私は
「200㎡の保育所って想像したことがあります?40人からの児童が預けられる保育所ができてしまうんですよ。それなのに建築基準法が守られてない建物が乱立する可能性があるんですよ。消防法や児童福祉法に定める施設基準は建築基準法が守られていることが前提なんですよ。
火事になっても建築基準法が守られてないために避難できない児童がでるかもしれないんですよ。40人の児童の命は、あなたにとって小さな被害なんですか?」
その課長さんはそれっきり黙ってしまいました。
用途変更の確認申請の手続きが200㎡未満になったことで、今まで使えなかった検査済証のない建物で100㎡から200㎡未満までが用途変更ができるようになったということだけでも、ありがたいということで、建物利用者の安全を守るという意味からも、用途を変更する場合には、必ず建築士に相談することをお勧めします。
用途変更の価格比較について
用途変更の確認申請の難しいところは、建築基準法上、現在の法律のどこまでを守らなければならないかの判断をするところにあります。おそらく、用途変更を請負った建築士の方の多くがここで悩んだと思います。そして、国土交通省指定確認機関(役所や民間機関)に聞いても、多くのミスリードを見かけます。
先日、ある建築主から、
「事務所の2階部分を飲食店に用途変更したいから、建築士に用途変更を依頼したら、エレベーター全ての扉に遮煙という機能を付けなければならず、何百万という費用とそれだけで3ヶ月ぐらいの工期が必要だと言われたんだけどなんとかならないでしょうか?もう、物件も借りて家賃も発生しているのに用途変更の申請期間や内装工事期間だけでも辛いのにとてもじゃないけど・・・」
という悲鳴に近い問い合わせがありました。
もちろん、用途変更時にこのエレベーターの扉に遮煙の性能を附加する必要性はありません。現行法ではエレベーターの扉には、遮煙の性能が付いているのですが、平成12年より前の建物だと、その性能はありません。これは、既存不適格として建てられた当時の法律が守られていれば、そのままで良いのです。
話を聞いてみると、指定確認機関の民間機関の担当者が設計者にその様に伝えたとのことでした。その設計者が、「エレベーターの遮煙」=「防火区画」については既存不適格で良いということを理解していない故に発生してしまった話です。
しかし、この建築主、私と話をするのは2回目でした。よくよく、当社の問合せ履歴を調べてみると数カ月前に同じ物件の用途変更の問合せが来て、当社の概算金額(約140万(税別))を伝えてありました。その後、音沙汰が無かったので当社も別の方に頼んだのか、用途変更をしなかったのか・・・。正直、問合せだけなら1日に何件もくるので、全ての問合せ内容を覚えている訳ではないので、そのままにしてありました。
そこで経緯を聞いてみると、当社に概算金額を聞いた後、数件に電話をすると、やはり、200万円前後~300万円近い金額を提示されたが、1社だけ100万円税別でやってくれるところがあったので飛びついたとのことでした。
結果的には用途変更の経験の浅い建築士が値段だけで引き受け、指定確認機関に言われるままに用途変更をするから、設計費は安くても工事費や期間がとんでもないことになってしまったという事例です。
当社は豊富な経験から指定確認機関言われるままになどと言うことは絶対になく、不要な工事により建築主の負担を増やすようなことは絶対にありません。
当社の場合、基本的に設計業務しか受託しませんが、必要とあれば工事業者もご紹介します。当社のご紹介する業者は、用途変更の確認申請が必要な工事ばかりをやっているので、工事のスピードも格段に速いですから、一度、設計費と合わせて見積を取って頂くと良いかもしれません。