違反建築が発覚した時の対応

連載シリーズ 【 違反建築が発覚した時の対応 】 第 2 話 / (全 3 話)
違反建築の対応

既存の建物で違反建築が発覚すると、突然、役所の職員がやってきたり、消防署員がやってきたり、違反建築であることの通知が来たり、役所に呼び出されたりと様々なパターンがあります。

また、既存の建物に増改築や用途の変更を行っている場合で違反があったり、無届だったりすると、突然、工事の中止命令が出たりすることもあります。

 

この場合、絶対にしてはいけないことは、その

行政指導(場合によっては行政処分)を無視しないこと!

無視を続けると、最終的には建築基準法第9条第1項(もしくは第10条第2項)に基づき、違反状態を是正する命令が来て、さらには同法第9条第13項の規定で建物に「使用禁止」と書かれた紙を貼られ(標識の設置)、さらには行政のホームページに違反の事実が公表されたりします。

 

行政(役所や消防署)が、行政指導をしてくるということは、それなりに違反である根拠を押さえているケースが多いです。その為、行政指導を無視していけば、行政はより精密な調査をして、さらには、行政指導を超えて、完全に法令に則った行動をしてきます。行政が法令に則った行動をすると行政も後には引けなくなるので、違反者側も法令に基づいた行動をしなければならなくなります。

 

では、行政から違反に関する、行政指導や行政処分が来た場合、どうするか?

違反建築に関して行政と交渉のできる一級建築士に依頼するしかありません。

※ 違反に関する行政指導でその建物を除去(解体)するのであれば、一級建築士に相談しなくても問題はありません。二級建築士や木造であれば木造建築士に相談するのでも構いませんが、違反建築対応ができる建築士でないと意味がありません。

 

ここでよくあるケースが

建築基準法関連法令や条例に対する行政指導や行政命令に対して、弁護士に相談する。

というパターンですが、建築士法第21条で

「建築物に関する法令又は条例の規定に基づく手続きの代理その他の業務」

は建築士の占業とされています。

もちろん、本人が建築基準法等に相当詳しくて、建築士を代理に立てなくても自分で対抗できるというのであれば、行政と直接やりとりすることも可能です。

また、行政指導というのは、行政手続法に基づくものなので、その手続きの正否を問うのであれば弁護士に相談するのでも構いません。

ただ、本当にそれが建築基準法に違反しているのか、また技術的な話になると、結局、前述の建築士法第21条が出てくるので弁護士から建築士に依頼をするということになったりします。

 

ここで、建築基準法及び関連法令や条例に関する、行政指導と行政処分の違いについて説明をしておきましょう。実例をあげて説明をします。

 

第二種中高層住居専用地域に地下1階地上3階の建物を適法に作った建築主がいました。その場所は都市計画法上、第二種中高層住居専用地域なのですが、周辺は海外の高級ブランド店や流行のアパレルショップ等が立ち並ぶ場所で、商業的価値の高い場所でした。

その建物の3階は、簡易なシャワーユニットと、ミニキッチン、トイレ(いわゆる住宅三点セット。これがあれば住宅として確認申請ができる。)が設置される計画で実際に完成時には取り付けられていました。

ところが、その建物の地下1階から地上3階までを1人(法人)の賃借人が借りて、地下1階から地上3階までを店舗として利用しようとしました。

第二種中高層住居専用地域では3階以上では店舗や事務所に利用することはできません。

その賃借人は、悪意があったわけではなく、店舗の内装が終わって、開店する前に消防検査を受けました。そこで、消防署が建築基準法違反に気が付きました。その当時、現場で消防署員が注意(行政指導)をしたかは不明ですが、消防署は、役所の建築指導課に通報をしました。

行政はすぐに現場を確認して、建物所有者及び店舗の経営者である賃借人に、

「3階を店舗として利用してはダメですよ!」と注意をして、さらに使ってはいけない法律根拠(建築基準法第48条第4項違反)を書面で渡しました。ここまでは、行政指導です。

ところが、建物所有者も賃借人もそれを無視して、そのまま開業しようとしたのです。

店舗が開業したところで、役所は建築基準法第9条第1項により、3階の店舗を住宅に戻すように書面で命令を出しました。(ここからが行政処分です。)

さらに、建物所有者と賃借人はそれを無視して店舗の営業を続けた結果、ある日、役所がやってきて、建物の入り口に「使用禁止」という紙を貼り、その事実を公表したのです。

ちなみに、その使用禁止の紙には

「建築基準法第9条1項」によりと書かれていて、さらに、「この命令を破った物には建築基準法第98項第1項により、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。」

と書いてあります。もう、こうなってからでは手のつけようがありません。

その後、建築主である建物所有者と店舗の経営者である賃借人とで民事訴訟になりました。(裁判所で和解したところまでは、聞いていますが、和解内容までは聞いていません。)

しばらくの間、使用禁止の紙が貼られ、空き店舗になっていたのは記憶にあります。

 

行政指導について次の様なことを行政官にいう人がいます。

「他の建物もやっているのに、うちだけなんで行政指導なんだ!」

これが一番多いのですが、これは既に、スピード違反で捕まった人が

「他の車もスピード違反しているのに、自分だけ捕まえるのはおかしいだろ!」

と言っているのと同じです。行政指導や行政処分を受けた際に、他の事例や他の行政区の取扱いを持ち出して、交渉するのは何の意味もありません。むしろ、心象を悪くするだけです。

この様にして、心象を悪くしてから、建築士に依頼されても、その建築士は心象の悪くなった状態から交渉をしなければならなくなります。

例えば、建築士が当該違反の改善計画書などを提出していくのですが、改善に3年を掛けようと思っても、既に心象が悪くなっていると1年しか待ってくれないなどという不具合が発生します。

「そんな法律おかしいだろ!」

ということを言う方もいますが、そもそも法令ですから、国民によって選ばれた立法府や、条例であれば、同じく市民によって選ばれた地方議会によって定められているものです。法律がおかしいなら、法令の改正からしなければなりません。行政官の仕事は、法令に従って、行動するだけなので、法令の是非を言うのは無駄です。

ただ、行政官が法令解釈を間違っている場合が稀にあります。その場合もやはり、法令解釈の専門家である建築士に依頼しないと、なかなか交渉そのものが難しいことになります。

 

また、時々、消防署の立入検査の結果通知で建築基準法違反を指摘される場合があります。

消防署は、消防法によって存在しているので、建築基準法について指導する権限はないのですが、消防署の査察管は、建築基準法にもかなり精通しています。消防署からの結果通知に建築基準法違反について書かれることがありますが、それについて

「消防署の言っていることだから、建築基準法は無視して、消防法に係るところだけ是正しよう」

などと言い出すかたがいます。

しかし、多くの消防庁管内の内規で

「法令に基づく、建築基準法違反を発見した場合には建築行政(特定行政庁の建築指導課)に通報しなければならない。」

というものがあります。つまり、消防署の通知に建築基準法違反が書かれていたら、その内容については建築指導課も知っているということになります。消防署の指導に従って、建築基準法違反を是正して報告すれば、そのことも建築指導課が情報を共有します。

ところが、消防署の通知に対して、建築基準法違反を是正しなければ、是正しない旨が、建築指導課に通報されます。そうすると、今度は建築指導課監察官が現場にやってきます。

今度は本当の建築基準法の監察官で、建築基準法の番人みたいな人がやってくるわけです。消防が通知した建築基準法以外の建築基準法違反まで指摘されて、余計に多くの是正を求められることになりますし、建築基準法第12条5項に基づく報告書を出すことになったりすると、その手続きの煩雑さもあり、こうなってくると請負ってくれる建築士を探すのにも往生することになります。当然に報告費用や是正費用も高額になってきます。

 

この様に違反建築を指摘されたら、すぐに違反建築の是正に詳しい一級建築士に相談する。口頭での行政指導レベルの段階で、一級建築士が介入すると、自主是正(所有者と建築士で責任をもって適法な状態にする)となり、今後、行政が介入してこないという場合もあります。

 

行政から指摘を受けたら、自分で対応しようとしないで、まずは一級建築士にご相談を下さい。

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