「洗面所の電気が点かないのよ!」
私は不動産屋でもありますが、そもそもは建築屋です。しかも、住宅の専門家です。
というわけで、今日は住宅の仕事をしていた時の話です。
住宅業界というのはそもそもクレーム産業です。建物というのは自動車やパソコンの様に工場で画一されたものを大量生産をしているわけではありません。個々の部品は工場生産でも、それを組み立てるのは現場で作ります。
故にどうしても、クレームが発生します。その代表が雨漏りです。『8時だョ!全員集合』(古っ!)のコントの様な大雨の日に、家中に洗面器や鍋を置いてしずくを受けるという雨漏りはありませんが、ちょっと壁紙にシミができるという様な雨漏りは日常茶飯事です。
経験的に言うと15軒に1軒ぐらいの割合でありました。まじめにやっていても、クレームというのはなかなかなくなりません。だから、その対応を丁寧にすることが大事です。
今回は雨漏りではなく、電燈の話です。
私の席の電話が鳴りました。出ると、アフターメンテナンス部のクレーム担当Sです。
「おう、相澤か?あのさぁ、A団地って設計したの相澤だろ?相澤の設計したA団地3号棟の方から、洗面所のダウンライトの電気が点かないというクレームなんだけど、思い当たる節はある?」
A団地はたしかに私が3年ほど前に設計した団地です。しかし、その方が入居されてから、もう2年以上は経っていました。
「う~ん、ちょっと図面を見てから折り返すよ。」
と応えて電話を切り、図面を引き出してきました。その頃の私は年間に何十棟も設計してますから、3年も前に設計した建物の配線系統まではまったく覚えていません。
図面を見ると、トイレや浴室と系統は一緒です。
(あれ?洗面所だけなのかぁ?そもそも洗面台に付いてる電燈は点くのかな?)
などと、考えていると、またSから電話です。
「相澤さぁ、まだ解らないの?A団地3号棟の方から、なんとかしてくれって何度も電話があるんだよね!この方、結構ヒステリックなんだよ!」
「あのさぁ・・・洗面所のダウンライト以外に点かない場所はないのかなぁ?」
「いや、洗面所のダウンライトだけだって言ってるぞ」
私はひらめきました。
「あのさぁ、電球1個を持ってA団地の3号棟にいってくれる?」
「へ?どこが悪いの」
「たぶん、電球を換えれば直ると思う。」
Sも解ったみたいでした。
「球切れか・・・?」
Sが行くとやっぱりそうでした。
A団地3号棟の方はSに向かって言ったそうです。
「おたくはたった2年で切れる電球を使っているのっ!」
(まだ、LED電球が登場する10年も前の話です。)
中にはこういうお客さんもいます。
まずは1本、お電話ください。些細な疑問にも答えます。プロ、アマ、一般の方、すべて歓迎。