『買付』と『取纏』と『売承』の意味
- 『買付』と『取纏』と『売承』の意味
- 『買付』と『取纏』と『売承』の実例
不動産売買に於いて、『買付』と『取纏』と『売承』というものがあります。
『買付』(かいつけ)とは、『買付証明書』の略ですが、『購入申込書』とも言います。
意味は、ある不動産を購入したい人が、購入条件を書いて、売主に対して、提出するものです。ちなみに、大抵の場合は、売主=所有者になりますが、売主が、現所有者から、当該不動産を購入してない場合などは、その限りではありませんが、他人物売買に該当するので、諸条件が揃わないと、できません。
『取纏』(とりまとめ)とは、『取纏依頼書』の略です。
意味は、不動産を購入したい人が、仲介業者に対して、購入する条件を書いて、その条件で売主と交渉して、物件を購入できるように、話を纏めてきてもらう為の依頼書です。
『売渡』(うりわたし)とは、『売渡承諾書』の略ですが、『売渡証明書』という人もいます。
意味は、購入申込書や取纏依頼書に対して、売主が、売渡条件を書いて提出するものです。
『買付』の条件と『売渡』の条件が合致していることを業界では条件を鏡に写した様なことから『ミラー』と言います。
サンプルは『買付証明書』、『購入申込書』、『取纏依頼書』、『売渡承諾書』でGoogleで探せば出てくると思います。
不動産業界では、この『買付』と『売渡』が重要になります。
まず、『買付』を出すことで、少なくとも購入希望者は売主に対して、購入条件を伝えることができます。その条件に対して、売主の反応を見ることもできるので、物件の購入は、まずは『買付』からと言っていいかもしれません。
また、『売承』も重要です。不動産とは車やパソコンの様な製造物と違って、原則として1つしかありません。逆に、その不動産を欲しいと思う人は、複数いるかもしれません。その状況下で『売渡承諾書』を貰えることにより、自分が購入する権利を得たと考えられます。
※『買付』と『売承』は、原則的に法的拘束力はありません。
宅建を勉強したことのある人なら、『諾成契約』と『要物契約』という言葉を学んだと思います。
『諾成契約』とは、当事者の意思表示が合致することで実際の物の引渡しが無くても成立する契約のことを言います。要物契約とは、逆に物の引渡しが無いと成立しない契約のことを言い、消費賃貸・使用貸借・寄託が要物契約の対象となります。諾成契約が成立した状況で、一方が契約を破棄した場合に、他方に損害が発生した場合は、実際の契約書が無くても損害賠償を請求できるとあります。
『買付』と『売承』の条件が『ミラー』であるならば、諾成契約は成立しているかの様に感じます。
しかし・・・
東京地裁平成2年12月26日判決
本件不動産の売買条件等をめぐる原、被告間の口頭によるやりとりや前記の買付証明書及び売却証明書の授受は、当時における原告又は被告の当該条件による売渡し又は買付の単なる意向の表明であるか、その時点の当事者間における交渉の一応の結果を確認的に書面化したものに過ぎないものと解するのが相当であつて、これを本件不動産の売買契約の確定的な申込又は承諾の意思表示であるとすることはできないものというべきであるし、前項に認定した事実関係をもつては未だ原、被告間において本件不動産の売買契約の成約をみたことを認めるには足りず、他にはこれを認めるに足りる証拠はない。
という判例があり、『買付』と『売承』では、諾成契約は成立せず、交渉結果の確認書でしかないとされています。これは、後日、正式な契約を締結する予定があれば、尚更ということになります。この様に法的拘束力が曖昧にも関わらず、『買付』や『売承』を提出することが、誤解を招きやすいことから、出すことを嫌う法人や、出すことを推奨しない法律家もいます。
さて、明日は買付と売承に関する実際にあった話を書きます。
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