『買付』と『取纏』と『売承』の実例

連載シリーズ 【 『買付』と『取纏』と『売承』の実例 】 第 2 話 / (全 2 話)
買付証明・取纏依頼・売渡承諾証

さて、買付と売承の続きですが、先日、こんなことがありました。

(※ 法人名、個人名は全て仮名です。)

物件は、都内某所にある土地です。1000㎡以上ある土地で、住居専用地域の低容積率のエリアのため、紹介は、建売業者に絞って行いました。

その物件の最大の問題は・・・

地権者が大勢いることです。しかも、全て相続による共有の所有者です。現在、その土地を地上げ屋がまとめていて、目処が立ったので、売り先を探して欲しいという依頼でした。とは、言うものの、全ての地権者と契約を交わしているわけではありません。

もちろん、そのことを前提に青山ハウジングという建売業者に紹介をしました。もともと、よく知っている建売業者で、担当者の神山課長もよく知っている人でした。

神山課長曰く、

「その物件は、こちらの提示価格でも十分に採算が合うから、是非、買いたい!それに、うちの取締役の本木も是非と言っている!」

とのことでした。

「では、取纏依頼書出してもらえませんか?」

と、私が言うと・・・

「取纏を出すのは、売主(地上げ屋)と全ての地権者との契約が終わってからだな。それと売承と交換で・・・」

とこんな調子でした。

取纏や買付の意味がよく理解できていないと、こうなります。

「売承と交換で・・・」

というのは意味は理解できます。

これは、自分たちの、価格を叩き台にされたくないからです。

よく、売主が買付や取纏を集める理由に、出てきた価格を叩き台に、他の買いそうな客に、その買付を持って行き、価格を吊り上げるために使います。それを避けるために、売承を即、貰いたいわけです。

また、私が持ってきた取纏を叩き台にされて、よその仲介業者が話を纏めたのでは私も商売にならないので、売承はできるだけ速く貰います。

しかし・・・

地上げ屋と、現況の地権者との契約が締結できなければ、これは物件にはならなくなるので、当然ですが、青山ハウジングに売却することはできなくなります。(というか、誰にも売却なんてできません。)

つまり、地上げ屋と現況地権者の契約が纏まれば、売り物になるので、先に取纏か買付を出して欲しいという意味で、もし、纏まらなくても、青山ハウジングには、原則的にはリスクはありません。

むしろ、今の纏まってない状態だから、この価格なわけであって、完全に話が纏まっていたら、欲しいと言い出す人は大勢いることになるかもしれません。

また、纏まる前に他の買主が同じ価格で、取纏や買付を入れたら、青山ハウジングは極めて不利な状況になります。

また、私も仲介業者である以上、他の仲介業者ではなく、うちで纏めたいと思うのは当然のことです。契約が纏まるのを待って、青山ハウジングから取纏を貰ったのでは、他の仲介業者に出し抜かれてしまうかもしれません。

私が取った行動は、説明するまでもないと思います。

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