【地上げ】~接道~
『立退き屋』だとか『地上げ屋』と聞いて、良いイメージを持つ人はいないと思います。私もまったく、良いイメージがしません。会ってみると、やはり、あまり良いイメージの人はいません。私は自分では普通のイメージの人だと思っています。が、社員からは
「オールバックにしないでください!怖いからというより、一緒に歩いてると自分も仲間だと思われるのが嫌だから!」
と言われます。
設計の仕事をしているときにも同じ身なりだったんですけど、やっていることと身なりが重なるとあまり良いイメージにはならないのでしょう。ちなみに、立退きの話の時にも書きましたが、地主さんを脅したり、不法占拠をして地上げをする人もいないことはないですが、今どき、そんな地上げをする人って、かなり古い人です。
もちろん、私はそんな地上げの仕方はしません。格好悪いですし・・・。すぐに逮捕されちゃうし・・・。
さて、色々な地上げをしてきましたが、今回は後始末の話です。しかも、私が地上げに失敗した数少ない話です。
ちょうど、3年ほど前の話です。梅雨の季節でやはり、雨の降る日でした。
私の知り合いの分譲住宅業会社に勤めるM氏から電話がありました。
「もしもし・・・あのさぁ、前から買おうと思っていた、○○町の土地!やっと買えたよ!」
「良かったじゃないっすか」
(ん?自慢話かな?)と思いつつ、社交辞令でそう言うと・・・
「それが困ったことになったんだよ。」
さて、私はこのM氏とは前から知り合いで、今回のこの物件のことは前から聞いていました。
話が解りにくいので、まずは下の絵を見てください。
事前に見せてもらっていた、公図を簡単に絵にすると、下の絵の様になります。
※公図・・・土地の境界や建物の位置を示すものです。一団の土地の様に見えても実際には何区画にも分かれている土地だったりするのですが、それが公図を見れば解ります。ちなみにこの区画の単位は『筆』です。
M氏はAの土地を買いました。面積は250坪ぐらいの土地です。
目的は宅地を分割して分譲住宅を作って売る予定で購入しています。
Aの土地はBとCの土地の所有者でもあるJさんです。
BにはJさんの子供夫婦が住んでいますが土地はJさんのものです。CにはJさんが住んでいます。Aの土地はJさんとJさんの子供夫婦が庭として使っていました。M氏はBとCの土地も売却して欲しかったのですが、それはどうしてもJさんが嫌だということで買えませんでした。
D~Hはそれぞれ、Dさん~Hさんが持っていました。
1~4はアスファルト敷きの道路状になっています。
1と4は幅員が8m、2と3は幅員が6mでした。
この絵だけだとなんの問題もないかと思われます。
「どうしたんですか?」
「接道してないんだよ・・・」
「はぁ?そんなこと、ちゃんと重説に書いてあったでしょ。」
「俺、Jさんから直接買ってるんだよ。仲介はさんでないから、重説ないんだよ」
M氏はこの業界で30年近くはやってるベテランです。たしかにM氏はいい土地を見つけて、直接、所有者に交渉してきます。だから、安く買えるというのがM氏の持論でした。
「ということは、2の土地は一見、道路に見えるけど道路じゃないんですか?二項道路でもないんですか?」
※二項道路・・・幅員4、未満の道路でも建築基準法施行前からある道路で行政から認められている道路のこと。建築基準法42条2項に定められる。この場合、すでに6mあるので私が「二項道路」というのは間違いで、「私道」と聞くのが正解である。
「そうなんだよ。3の土地も2の土地もHさんのものだったんだよ。」
たしかに業者が個人から、買うのに重説なんか作りません。
(それにしても隣接地の謄本上げて、役所に行って道路状況を調べるの当たり前だろ!)
と、言いたいところを抑えて・・・
「じゃあ、Hさんに2の土地を売ってもらう様に交渉してきたら?」
「それがさぁ、Hさんの土地にはアパートが建っていて、謄本に出ているHさんの所に行ってもHさんいないんだよ。それで、困って相澤に電話したわけだ。」
「じゃあ、とりあえず謄本送ってください。」
FAXされてきた謄本を見ると・・・たしかに2はHさんの土地でした。○○町の役所の道路課に行ってみると、たしかに2の土地は道路でもなんでもありません。ちなみに3の謄本を取り寄せると、やはりHさんの土地で役所では道路にはなっていませんでした。
Mさんが既にやったことですが2の土地の謄本に書かれてあるHさんの住所△△町に行ってみました。
普通に家が建っています。表札はHさんとは全く関係のない名前です。
とりあえず、無駄と思いながらも、その家を尋ねると
「ここは借家なんだよね。でも、貸主はHという名前じゃないよ。」
(じゃあ、誰だ・・・)
事務所にもどってパソコンで、△△町のHさんの土地の謄本を取ってみてやっと解りました。
Hさんは平成元年に亡くなっていました。そして、HさんからHさんの子供?と思われる人に登記され、Kさんに売却されています。あの手この手で調べて、Hさんは相続人がご子息しかいないことまでは解りました。
○○町の土地はHさんの名義のまま、相続による名義変更が行われていなかっただけなんです。
そこで、△△町のHさんの相続人の登記されている住所を見ると・・・・
『ハンガリー国ブダベスト市』
諦めました。
私はM氏にその旨を伝えました。
「どうしよう・・・」
「その、住所に手紙でも書いてみてはどうですかね?」
「日本語でいいかなぁ・・・」
「日本人だから、たぶん大丈夫じゃないですか?」
(どうせ、ハンガーリ語なんか書けないだろ!)
M氏はHさんのご子息に手紙を出しました。
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M氏は今でも返事を待っているそうです。
Mさんに返事が来なくても・・・
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