【用地購入】~額縁?~【中編】
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- 【用地購入】~額縁?~【後編】
N氏からの物件資料を見ると、
『なんか・・・どっかで見たことのある様な気が・・・』
その頃は、物件資料が10~30件も手元に届く毎日です。だから、似たような条件の物件もいくらでもあります。だから、思い過ごしかな・・・・。と思ってそのまま、検討にはいりました。
収支もばっちり、合いました。
さっそく現場を見に行くと、地下鉄銀座線の某駅から歩いて5分。大通りから50mぐらい入っているところで静かです。
ワンルームマンションを計画するには絶好の立地でした。
その場から、すぐにN氏に電話して・・・
「買うぞ~!物件を押さえてくれ!」
「了解っす!」
さて、事務所に戻って、思い出したことがありました。
『あっ、謄本取り寄せてみなきゃ・・・』
N氏からの資料にも謄本は付いていたのですが最新のものをチェックすることにしています。
※法務局の印がないもので内容の確認はネットでできます。法人会員登録をしなければならず、有料です。
事務の女性社員に住所を伝えて謄本を取ってもらおうとしたら・・・
「この物件、Gさんが一度、検討されてますよ?」
「へ?まぁ、とりあえず謄本は取って・・・」
すぐにGさん(先輩社員)に確認・・・
「××町の物件って検討しました?」
「あああ、したよ~。半年以上前にね!今の所有者が買うときに検討したけど稟議が通らなかったんだよ」
(Gさんの机の上にあった資料を私は微かに覚えていました。それでどこかで見た記憶があったわけです。)
「なんでっすか?」
「その物件に古屋があって、アスベストがあったんだよ。解体費とかの問題があってねぇ・・・」
「今日見たら、更地でしたよ」
「じゃあ、今の所有者が解体したんだな。更地ならいい物件だよなぁ」
Gさんのお墨付をもらって、GOサインです。
謄本を見れば乙区になにも無い綺麗な土地です。
※乙区:乙区とは謄本上、甲区に書かれている所有者の債務状況が書かれている欄のことです。例えば、「この土地を抵当で○○銀行が10億円を貸している」という様な旨が書かれています。その場合、その所有者が8億円でその土地を売ると言った場合、2億円は別途、○○銀行に返さなければなりません。そのお金が無ければ銀行は抵当権を外さないということはよく有ります。その場合は売主の一存ではその物件を売れないということになります。
もう、ケチの付けようはありませんでした。
私はすぐに稟議書を作成して、役員会停止条件はついていますがすぐに購入申込書を作成しました。
※役員会停止条件:停止条件とは「この条件が成就できたら、物件を買います。」ということです。つまり、「自分の会社の役員会でこの物件を購入すること認められることを条件に買います。」ということです。曖昧な感じですがこの停止条件をい行使して買わないことを連発すれば信用を無くします。逆に役員会停止条件でもいつもちゃんと買えば、この人は会社での影響力がちゃんとある人と信用度は上がります。
所属部署の執行役員が稟議書を持って社長の了解を取りに行っている時でした。
Gさんが、その稟議書のコピーを見て・・・
「相澤~。なんか、俺が検討した時と微妙に地積がちがうな・・・」
※地積:土地の面積
「Gさん、記憶力いいっすねっつか、そういう問題じゃないか・・・Gさんの検討したときの資料あります?」
「おう、あるよ」
すぐに貸してくれました。
たしかに・・・3㎡弱ですが私の稟議書の方が面積が少ないのです。
Gさんの稟議書を見ると3筆、私の資料は1筆しかありません。
Gさんの資料によると、Gさんが検討してた土地はこうです。
私の検討している土地は水色の部分だけです。物件資料を再度確認しても赤と緑の部分はありません。すぐに赤と緑の土地の謄本を取り寄せました。赤と緑の所有者も水色の土地の所有者と同じです。赤と緑の土地は幅が15センチほどしかありません。
『ちっ、共担でもあれば気がついたものを・・・。乙区がまっさらだったからなぁ・・・』
※共担:共同担保の略。上の図を使って説明すると、水色、赤、緑の土地を合わせてお金を借りようとした場合、それぞれの土地で借りるのではなく、当たり前ですが一団の土地としてお金を借ります。その場合、それぞれの土地から別の2つの土地が共同担保ということになります。もし、この物件を担保にお金を借りていて、抵当権の設定がされていると水色の土地の謄本には乙区にその旨が書かれて、乙区の下に共同担保目録として赤と緑の土地の地番が記載されています。
しかし、そんなことよりも私の脳裏をよぎったのは
『額縁』
ということでした。もし、額縁であれば水色の土地の境界は確定しています。しかし、赤と緑の土地に対して境界が確定できなかったということは、赤と緑の土地の向こう側隣地の人が境界を認めてくれなかったという可能性があります。(というより、その可能性が高いです。)ということは隣地所有者となんらかで揉めた可能性が高いということです。とすると、水色の土地にマンションの建設をしようとしている私は隣地所有者と揉めることになるのは必至です。
私はすぐにN氏に電話しました。
「本物件の西側に細い筆が2つあるんだけど、その筆の所有者は本物件の所有者と同じだぞ。なんで、売買対象地じゃないんだ?」
「へ?すぐに物件担当に確認して折り返します」
「ん?売主じゃなくて?」
「あっ、その物件はうちの会社の別の者が担当なんっすよ」
大きい仲介会社の場合、物元と客付けの担当が違うことはよくあります。
※物元:売主側の担当している仲介
※客付け:買主側を担当している仲介
「とにかく大至急確認してくれ執行役員Fが社長に稟議を持って行ってるんだぞ」
「了解っす」
N氏からの電話が掛かってくるまでの3分間ほどがすごく長く感じました。
今回も長いので次回に分けます。
次回が本話の最終回だから・・・
まずは1本、お電話ください。些細な疑問にも答えます。プロ、アマ、一般の方、すべて歓迎。