【ラーメン店 経営】平凡な立地で成功した事例
今回は、一見、立地が良くなさそうなのに、成功した事例を書いて最終回にします。
まずは、飲食店として最大の魅力である『味』が整っていた事です。
ただし、テレビが取材に来るとか、食べログで3点台後半を叩きだせるほどではありません。しかし、ラーメン激戦区に行っても充分にやっていける程度の味はあります。ただ、流行の創作ラーメンという感じではなく、普通の豚骨系(チャッチャ系)のラーメンです。お店はカウンターで10席です。ここはもともと金物屋さんだったので居抜きではありません。
このお店の場所は、JRの駅から1.5km。さらに私鉄の駅は2つの駅の真ん中で、やはり、どちらの駅も1.5km近くあります。余程のラーメン好きでない限り、わざわざ来ようと思う場所ではありません。
幹線道路には面しているものの、車道の幅員はさほど広くなく、路駐もできなくはないですが、お店から見えるところに止めておかないと、取締が怖い場所です。つまり、お店の前になんとか止めて、慌てて食べてすぐに立ち去るぐらいでしょう。それもお店から見える位置に止められる車は一台です。
ではコインパーキングがあるのかと言えば、最寄りのコインパーキングまで400mありました。つまり、コインパーキングに止めても、歩いて5分は掛かるのです。
歩道もさほど広くないのですが、なんとか自転車は止められるという程度です。
しかし、派手な看板もなく、街路樹もしっかり立っているので視認性も悪く、最初は近所に住んでいる私でさえ気がつきませんでした。
午前11時にお店がオープンするのですが、土日は11時ちょっと前に行ったら、すでに2~3人が待っている状態。午前11時30分に行ったら満席で待ち客が2人いました。行列ができる店ではありませんが、常に満席であれば、行列なんかできる必要性はありませんから、繁盛店であることは間違いありません。
では、何故にこのお店は大した好立地でもなく、視認性も悪い場所で繁盛しているのでしょうか?
これは、立地があまり良くないが故に、他のお店が出店して来ない為、周辺人口を独占していることが最大の原因です。
たしかに最寄のJRの駅まで行けば、このお店よりも評価の高いお店はあります。それが、ラーメン好きな人(マニアのような人)が超有名店に行くというのであれば別ですが、わざわざラーメンを食べるのにバスに乗ったり、歩いて20分以上掛けるのは面倒です。
しかし、味は、そこそこ良いですから、周辺住民を完全にリピーターとして取り込んでいるわけです。
また、家賃が安いというのも経営を楽にしている要因の一つと考えられます。このようなお店の場合、固定客を掴むまでの間、少々時間がかかります。今でこそ、スマートフォンや携帯電話で自分のいる場所から評価の高いお店を検索できたりもするので、その時間は短縮されています。
それでも、駅前好立地店と比較すれば、固定客を掴むのに時間が掛かることは間違いありません。それでも家賃さえ安ければ、仕入れや人件費で失敗しない限り、短期間で失敗する可能性は低くなります。その耐えられる時間の間に固定客を掴めばいいわけです。
また、固定客を掴みやすかった理由は、味が無理に個性的なわけではなく、普通の豚骨に磨きをかけて、一般の人が食べやすい味にしていることも、幅広い顧客層をターゲットにできていると考えられます。
このように立地が一見悪いようでも、周囲の客を独占できる環境があり、家賃などの支出と商品設定を間違えなければ、充分に繁盛できるわけです。
ただ、この店主がそれを狙っていたかどうかは微妙です。おそらく、偶然だったのだと思います。少なくとも出している商品(メニュー)に関しては別の店で修行していたことから、立地に合わせて商品設定をしたわけではありませんが、商品に合わせて立地を選んだ可能性はあります。機会があったら、この場所に出店した理由を聞いてみたいと思います。
前回も書きましたが安易に居抜き店舗に頼ると失敗することが多々あります。
居抜き店舗でなくても、しっかりしたマーケティングと予算に見合った計画(設計)さえ出来れば、セルフビルドなどで、出店費用を抑えることはできます。
ブランド力のある大手居酒屋チェーン店でさえ、既存店の売上が落ちたときに単純に値段を下げたりするのではなく、業態変更をしたり、内装を大きく変えたりして、その店舗の売上をアップさせようと努力します。それがマーケティングパワーで劣る個人経営者がその調査をすることは非常に難しいことです。
居抜き店舗を狙って出店展開する企業の話を最初に書きましたが、その企業はこの辺のマーケティング能力が優れているから成功するのであって、単純に出店コストが安いから居抜き店舗を狙っているわけではないことを良く考えなければなりません。
形で残らないものでも、失敗しないためにも必要なものもあります。
まずは1本、お電話ください。些細な疑問にも答えます。プロ、アマ、一般の方、すべて歓迎。