リストラ 第8話
N取締役に呼ばれたあとは、大した情報は私には入りませんでした。社員間での噂は四六時中聞こえてくるのですが、何の根拠もない噂ばかりでした。
人事の発表の前日でした。
私はM部長に呼ばれました。
※M部長については第1話を参照してください。
「相澤はどこかの部署に異動とかの話はあったのか?」
「はい、何やら朝礼で発表になった、新事業部への異動という様な話を言われました。もっとも、勿論、内示というような正式なものではなく、I常務に言われただけですが・・・」
他の部長職で私がI常務から、その話をされたことを言うのは、言われた時に一緒にいたS部長以外ではM部長が始めてでした。
「そうか・・・。よかったな。」
M部長はなぜか、ホッとした様な微笑を浮かべました。もっともM部長は「よかったな」と言いましたが、仮にその様な人事になっても良いのか悪いのか、その時点では判断できませんでした。
「M部長にはなにか人事jの話はありましたか?」
「ああ、一応な・・・」
ちょっと、歯切れが悪い様に感じましたが、私の中ではM部長が技役員への昇格の伏線として、術部門を統括するような部署への人事だとばかり思いました。部署の異動は通常は4月1日に行われるのですが、昇格人事については6月の株主総会後と決まっていたのでこの段階ではありません。
ただ、その歯切れの悪さが気にはなりました。だから、あえてM部長に対して、どの様な人事があったかを聞くようなことはしませんでした。
「この部署の他のメンバーも異動はあるんですか?」
M部長の人事について、聞きにくかったので他の話に振り替えようとしました。
「いや、ほとんどない。1名、設計部に異動があるがな・・・」
「そうですか・・・。ちょっと、意外ですね。もっとも、この部署は特殊な技術部門ですから、他からはなかなか来れないし、ここのメンバーを他に異動させると欠員補充が大変ですからね。」
「あはは・・・。そうだな。じゃあ、その1名の変わりに相澤が戻ってくるか?」
「私は構わないんですが。ここの水は結構、あっていますから・・・」
「でも、他に行くことが決まってるんだろ。」
「正式なお達しではないですから・・・」
と、本題から逸れた、他愛もない話で終りました。
しかし、この時になんでM部長に呼ばれたのかはあまり深く考えていませんでした。
翌日、人事発令がありました。
私は社長室に呼ばれ、人事部長から辞令を貰いました。
『商品技術開発室』
I常務の言っていた、新しい事業部です。
しかし、この時点では他の誰が同じ部署になるのか、また、他の誰にどんな人事があるかは解りませんでした。
次回はいよいよS部長やM部長の移動の内容です。
ダラダラになってるけど・・・
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