リストラ ~第10話~
私が行った商品技術開発室は想像通りか、それ以上のメンバーでした。
しかし、想定外だったとことが2つありました。
第一は、営業企画部のS部長が商品技術開発室の室長になると思っていたのですが、S部長は商品技術開発室にはいませんでした。S部長は第一設計部の部長です。S部長とは、その後に話すのですが、S部長も驚いていました。
「自分でも、新部署に行くと思っていたんだがな。」
「しかし、S部長は元々設計ですし、解りやすい人事だったのでは?」
「今、思えば誰も俺が新部署とは言ってなかった。」
「そういえば、我々は『別の部署に行ってもらう』と言われただけですもんね。」
※第4話参照
「ということだな。」
第二は、室長がU次長だったことです。U次長はその時は注文住宅などの設計をやっていました。以前はH建設が片手間にやっていた、集合住宅の営業だった時代もあります。もともとは設計部にいたらしいのですが、創業者に嫌われて、色々な部署を転々とさせられていました。しかし、U次長は、それを自覚していたのかどうかは解りませんが、どの部署でも大変明るいし、下の者には好かれていました。また、設計者としての能力は大変高く、管理職としての能力はともかく、U次長が設計すると必ず、お客さんは喜んでくれました。
U次長のネックはお酒を飲むと、訳がわからなくなることです。H建設の廻りにあるスナック等は殆どが出入り禁止でした。社会人としては如何なものかという部分もありましたが、そういう人間味が他の社員に好かれる点でもありました。
ただ、創業者にはあまり好かれてはいませんでしたが、I常務からはかなり気に入られていました。
この二点が驚いた点ですが他の主なメンバーは
まず、Y次長です。Y次長は普段は大変、大人しい人なのですし、後輩に対して怒ったりすることは滅多にありません。ただ、上役に食って掛かるところがあります。私が入社する前に創業者に食って掛かって、翌日、他の部署に異動させられたという話を聞いたことがありました。しかし、このY次長の同期にK部長、O次長それと前述のU次長を併せて、Iカルテット(IはI常務の苗字)と呼ばれていて、やはりI常務に気に入られていました。
次がKK課長です。KK課長はこれは設計部門のエリートです。誰からもKK課長は切れる人だと言われる人です。このKK課長の特徴は、会社がある無茶な課題を命令したとします。誰がどう見ても無理なことなのですが、それを適当にこなしてしまう点です。
例えば、その無茶な課題に10個のハードルがあったとします。誰もがその10個のハードルを越えるのは無理と思うとき、KK課長は5個しか越えません。
「それなら、自分にも出来る!」
と後で考えると思うのですが、そのハードルの選択が上手いんです。
つまり、会社がどのハードルを越えれば満足するかということを咀嚼して、その5個のハードルを越えることに全力を尽くし、残りのハードルは最初から捨てて掛かります。それにより、戦略的目標をちゃんと到達させることで、会社が満足するわけです。しかし、いつもこのやり方ですから、100%をこなすことが無いので、プロジェクトごとの会社からの評価は総じて80点ですが、そのプロジェクトを一覧にしてみると、その全てを戦略目標に到達させていること、そしてそれが、かなり難易度が高いという点から考えても、相当に評価の高い人でした。
実質上、私がナンバー4となるのですが、同格が1名いました。その同格がH課長代理ですが、これは努力の塊の様な人でした。いろいろなことを試すし、資格に関しても貪欲に挑みます。
ある日、
「新しい発想を生むためには右脳の働きが重要」
と聞いたH課長代理は、次の日から左手で箸を持つようになりました。効果があったかどうか解りませんが、何事もチャレンジする人でした。
他の若手社員も各部署でそれなりに、まずまずの実績のあるメンバーでした。
そんなメンバーで私はこの部署で3年を過ごすことになります。
次回は『耐震リフォーム部』について書きます。
後は女子パシュートしかチャンスが無さそうだけど・・・
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