リストラ ~第11話~
耐震リフォーム部はM部長が耐震リフォーム部長でした。
第9話でも書きましたが、私は『耐震補強』や『リフォーム』は今後の住宅産業の中で軸になっていく産業だと思っていましたし、今もそう思っています。その理由は第9話の通りなのです。
私の中では、大変重要な部署だと思ってたのでM部長の人選は正しいと思っていました。
また、『商品技術開発室』はとりあえず正式な『部』ではなく、準備段階は『室』としてスタートさせられましたが、この部署は最初から『部』としてスタートさせたことからも、それなりに会社が期待していたものだと私は思っていました。
ただ、一つの不安はM部長には殆ど営業経験が無いということでした。私が入社するはるか前にM部長がまだ入社2年目ぐらいの時に半年だけ、営業をやったそうですが、その頃のH建設はまだ、従業員が100人に満たない会社でしたし、また、入社2年目の半年間の営業経験では営業戦略を構築するだけの営業ノウハウは持っていないと思っていました。
故に、当然に営業部門から、それなりの社員が参謀に付くものと私は思っていました。
ところが・・・
蓋を開けてみると、商品技術開発室とは違う意味で驚くメンバーでした。
MM課長代理(M部長と同じ苗字)が役職的にはNo2でした。このMM課長代理は私より10年先輩です。大学も某国立大学の大学院を出ています。H建設の中では学歴も相当高い方です。ところが10年も先輩なのに役職は私と同じでした。それには理由がありました。うつ病で有給休暇の3倍ぐらいの日数を休みます。うつ病の理由も会社が無茶なことをMM課長代理にやらせているとか、パワハラがあったとかそういう事ではありません。どうも、突発的にうつ状態になるらしいのです。当然ながら、昇進は遅れていきました。
次がWA部長です。WA部長は社員のみんなは「部長」と呼んでいますが、実際には部長ではありません。単なる嘱託社員です。WA部長は65歳定年制度の延長などが世間で問題になりはじめたこともあって、この歳からH建設では60歳までで定年とした後も希望者には65歳まで嘱託採用するという新しい規則が設けられて、その第一号の方でした。昨日まで、「WA部長」と呼んでいた方を「WAさん」とも呼びにくく、どの社員も「WA部長」と言っていました。
このWA部長ですが、私が入社した時にはすでに『部長』でした。一応、営業推進部という部署の部長だったのですが、本部長は別にいて、担当部長という形でした。部下も一人もいませんし、実際になにをしている人か私には良くわかりませんでした。しかし、先輩から当時聞いた話では、その昔、D銀行から出向でH建設にきた人だということです。簡単に言えばD銀行に椅子が無くなった人です。
また、私の同期のS君がこの部署に配属されました。彼はそれまで現場監督だったのですが、私の同期の中でも、もっとも動きの遅いタイプの人でした。話してみるとそんなに悪い人間ではないのですが・・・。
彼の口癖は
「もっと、作りやすい家を設計しないから現場が困るんだよ!」
でした。
建設会社の方なら解ると思いますが、設計と現場というのは基本的には仲が悪いものです。
設計と言うのは現場を知りません。ですから机上(図面上)で出来ることは現場でもできると思っています。実際には出来ることが多いのですが、そのために必要以上の労力を要することもあります。
ですから、本当に優秀な設計は現場を良く知っていることで、本当に優秀な現場監督と言うのは設計者の意図をよく咀嚼して、現場サイドから、施工しやすい方法などを提案するものです。
しかし、彼はいつも設計を批判することしかしませんでした。
その他にも現場監督から召集された若い社員や、営業から招集された社員もいましたが、ほとんどが私の知らない社員でした。
私の目には、このメンバーで、耐震リフォーム事業を会社が本気で進めているとは感じませんでしたし、M部長を営業面で支える参謀がいるとは思えませんでした。
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