リストラ ~第15話~
時々、サラリーマン(雇われ役員を含む)時代は
良かったなぁと思うことが多々あります。
サラリーマンは言われたことをやっていれば、
会社が存続する限り、給料が貰えます。
もちろん、上司の機嫌を伺わなきゃいけない場面もあるし、
出来の悪い部下の尻拭いをしなければならない時もあります。
しかし、今にして思えば、極めて楽だったと思います。
サラリーマンを辞めることがどういう事かを知っていたはずなのに・・・。
後悔こそしていませんが、懐かしくは思います。
さて本題です。
前回までの話はこちらから
私は少し、落ち着きが無くなっていました。
なぜか入社時の配属命令を聞いた時の話しだけで30分が経過しそうだったからです。他の社員から、聞いていた話によると、今の部署に於ける業務の改善策等についての話がメインだったそうです。その類の話になると思って、準備していた資料なんかもあったのですが、全く出す余地がありません。
そうこうしている内に、現在の会社の問題点についての話になりました。
「相澤君はうちの会社の問題点はどこにあると思うかね?」
「当社は、新築住宅の売上げが95%以上を占めていますが、リフォームなどの非新築事業の売上げを伸ばすべきだと考えています。」
「ふむ、その理由はなんでだね?」
「今はまだ、人口も増加していますが・・・」
等と、第9話に書いたような内容の持論を展開しました。R会長も、それそのものには理解を示してくれました。さらに・・・
「しかし、このことを当社が真面目に考えているとは思えません。」
「どうしてかね。相澤君の考えていることを会社も考えているから、耐震リフォーム部を作ったんだよ。」
「失礼ですが、到底、結果が出せる部署には見えません。」
「ビジネスの結果は、新しい部署を作ったから、すぐに出せるというものではないよ。」
「いえ、私が言っているのは将来に向かっても、今の耐震リフォーム部のメンバーでは難しいと言っているのです。」
「なるほど・・・。他の社員から見ても、そう思うのかな?」
「恐らく、そう感じていると思います。もっと、悪い言い方をすれば、耐震リフォーム部イコール窓際族ぐらいにみんな思っていると思います。」
「そうか、改善策はあるかな?」
「昨年できたばかりの部署のメンバーを大きく入れ替えるのは難しいかと思います。しかし、M部長を役員に昇格させるなどして、耐震リフォーム部は窓際ではないことを強調するなどして、モチベーションを上げるなどの策は必要かと存じます。」
「相澤君の言うとおりだね。相澤君、会社の経営をしていく為に2つの権力が必要だがそれは何か解るかね?」
「2つの権力ですか?・・・わかりません。」
「人事と金だよ。しかし、今の私にはそのどちらも無い。」
R会長は少し肩を落としたように見えました。
「しかし、M部長に関してはR会長が社長のうちに役員にするとおっしゃっていたかと・・・」
「そうか、それをMに話したときに相澤君もいたか・・・。昨年の取締役会で、Mの役員昇格を提案したよ。今まで、私が人事采配を行ってきたことに対し、それまで誰も反対しなかったから、反対されると思わなかったよ。」
「では、取締役会で反対者が出たと?」
「I常務がMの役員昇格に反対してな。それで多数決になったんだよ。残念ながら反対多数でな。」
「理由はなんだったんでしょうか?」
「二つある。一つは私が社長を退いた後の役員構成を他の役員が気にしたこと。もう一つは、私が考えていた以上にMが他の役員に嫌われていたということだろう。」
私は、R会長とのやり取りで耐震リフォーム部が、他の社員が噂している様に窓際部署であることを再確認したにすぎませんでした。面接時間は3時間におよび、昼休みのチャイムで開放されました。最後にR会長から1冊の本を手渡されました。その時の本がこれでした。
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次回は新規事業部の話です。
まずは1本、お電話ください。些細な疑問にも答えます。プロ、アマ、一般の方、すべて歓迎。