不動産の公示価格と路線価の循環参照

まず、『循環参照』という言葉をご存知でしょうか?

循環参照とは、Excelなどの表計算ソフトで、数式が直接または間接的に、その数式自体が入力されているセルを参照している状態を言います。

と・・・解りにくいので簡単な説明を・・・

 

   A    B
  1 3
  2 5
  3 15
  4

とこんな表があったとします。

A1のセル(マス目)には『3』、A2のセルには『5』を入力し

A3のセルには『A1×A2の答え』の式である『=A1*A2』と入力します。

当然ですが、A3のセルには『15』と表記されます。

ところが・・・

ここでA1のセルに

『A3÷A2の答え』を意味する『=A3/A15』と入力すると

『循環参照』というエラーメッセージが出ます。

『Dr.相澤の住宅情報館』の館長のブログ-循環参照

実際にExcelでやると、こんなダイアログが出ます。

なぜかと言うと、A3のセルは『A1×A2の答え』です。つまり、A3のセルはA1とA2の値によって決定されています。

それなのにA1のセルに『A3÷A2の答え』と入れると、A3がA1によって決定されるので、A1とA3はいつまでたっても答えが出ないという矛盾が発生するからです。

と、なぜ、こんな事を書いたかと言うと・・・

実は公示価格の決定方法にも、循環参照という矛盾が発生しているからなんです。

公示価格の決定方法は1つの地点に対して、2人の不動産鑑定士が

①比較法(取引事例比較法):周辺の実際にあった不動産取引の価格をベースに算定される。

②収益還元法:その不動産がどの程度収益を生むか(家賃収入、地代収入があるか)

③原価法:開発費用(建築費や造成費)がどれくらいかかるか

の3つの異なる手法を用いて、価格を割り出し、それを調整して決定します。

ここまでだと、矛盾していないようなのですが・・・

では、実際の土地取引を考えてみると・・・

土地の価格の決定自体は自由に決められます。私が私の土地をいくらで売ろうが自由です。ところが、公示価で20万円/㎡の土地を、50万円/㎡で売ろうとしても、なかなか買い手はつきません。

私が一般の人であれば、売却は不動産業者に頼むのが一般的です。買う方も、不動産業者などを介して買うのが一般的です。そうすると、他の類似物件等と比較して、『概ねこれくらいの価格』という指標が出てきます。それが公示価格だったりします。ただし、不動産価格が上昇している景気の良い時は、公示価格が上がるだろうということを想定して、売買されるし、逆の時は下がるだろうと想定して売買されることもあります。

つまり、比較法に於いて、周辺の不動産取引事例によって公示価格が出されるが、周辺の不動産取引自体も公示価格を参照しているという、矛盾が発生しています。

では、収益還元法や原価法を考えて見ましょう。

収益還元とは・・・

利回りの考え方

(家賃収入-管理費・税金)÷取得コスト=年間利回り

です。

利回りはキャップレート(期待利回り)に収束します。

そこで、これを逆算して不動産価格を割り出すのが収益還元法です。

では家賃が8万円/月で管理費が戸あたり5000円/月で100戸の賃貸マンションがあったとします。

そのマンションの取得コスト(建物代)が8億円だったとしましょう。税金はめんどくさいので無視します。(実際には無視しません。)

※建築費は収益還元法によって決定されません。

なぜなら、建築費というのは積み上げ方式で決定されます。

セメント代や鉄筋代・・・、それに人件費など、実際に掛かった価格と建築会社の利益によって決定されるからです。もちろん、建築会社の利益があるので景気が悪くなれば、建築会社も利益を減らさざる得ないし、人件費も多少は安くなります。また、セメントや鉄筋も需要によって価格は変動しますが、土地代ほど大きな影響は受けません。

そこでキャップレートが5%として、このマンションの利回りを5%にするための土地代は

(8万円/月-5000円/月)×100戸×12ヶ月÷(8億円+土地代)=5%

となりますから

土地代は10億円ということになります。

では、家賃はどうやって決定されるかと言うと・・・

もちろん、最終的には需給バランスによって価格は動きますが、一番最初は・・・

あるAというデベロッパーの担当者が、仲介業者Cからあるマンション用の不動産情報を入手しました。価格は12億5000万円です。12億5000万円は公示価格と比較しても、ほぼ同じぐらいです。

キャップレートは今は5%だけど、ここら辺だったら、1室辺りいくらぐらいで貸せるかな・・・近くの賃貸の不動産屋に聞いてみようっと・・・。100戸は作れるな。

近くの不動産屋、

「あなたがここでマンションを作って貸す時にうちで任せて貰えるなら9万円ぐらいで貸せますよ!」

(内心・・・本当は8万ぐらいだろうけど・・・仕事欲しいからな・・・)

そっか、そっか、9万円か~、管理費は5000円でいいよな。

それじゃあ・・・建築費はいくらだろ?ゼネコンから見積もり取ってみよう・・・。

8億3000万か・・・。ちょっと高いけど、あとでゼネコン叩けば8億円にはなるな・・・。

とすると、

(9万円/月-5000円/月)×100戸×12ヶ月÷(8億円+土地代)=5%

だから、土地代は12億4000万円までいけるな!

12億5000万円だけど、1000万円ほど安くする様に仲介業者Cに言ってみよう!

仲介業者C

すいません・・・。別のデベロッパーBから、12億4500万円の申し込みが入っちゃいました。

え~、困ったな。

(9.2万円/月-5000円/月)×100戸×12ヶ月÷(8億円+土地代)=5%

なら・・・土地代は12億8800万までいけるな!

よっし、近くの不動産屋に電話して、家賃を2000円ほど、高く貸せるか聞いてみよう。

近くの不動産屋

「9万2000円で頑張ります!」

内心:(仕事欲しいからな・・・とろあえず言っちゃえ!)

仲介業者Cに対して!

「よっし!うちは満額の12億5000万で買っちゃる!!!」

※景気が良い時は、別のデベロッパーBも上乗せしてきたりします。

募集賃料:9万2000円決定

と、こんな調子です。

実際に不動産鑑定士も募集賃料は解っても、成約賃料までは正確には追いきれません。つまり、この土地の公示価格を割り出すのに、この価格を使います。

公示価格12億5000万円

と、収益還元法でも、循環しているんです。

つまり、不動産の価格の上昇、下降は需給バランスによって、影響は受けるものの、需給バランスに於ける、本来の適正価格には、遠い状態であると考えられます。

この問題を解決する方法を考案中です。

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