子猫の救出劇
※ 不動産・建築とは一切関係のない記事です。
現在、私は激しい腰痛に悩まされています・・・
先週の木曜日、東京は朝から激しい雨が降っていました。
午前中、会社でボチボチ仕事を始めると・・・、自称美人女性社員が・・・
「社長、どっかで猫の鳴き声しませんか?」
雨の音もあるのですが、うちの会社は6階です。なかなか、猫の声など聞こえるはずもないのですが・・・、たしかに、微かに猫の鳴き声が聞こえます。
私は、それが子猫の鳴き声だとすぐにわかりました。
私は、17歳の時から、今日に至るまで、10匹以上の猫を飼っていました。家で生まれた子猫もいます。だから、その声が子猫だということはすぐに解りました。
しかし、うちの会社は一応、西新宿です。うちの会社は12階建てですが、道路の反対側には44階建ての高層のオフィスビルもあります。そんな、場所で子猫を探すことなど果てしなく不可能に近いし、仮に探す意味もわかりません。
午後、昼食後・・・まだ、雨は激しく降っていたのですが、やはり、子猫の鳴き声が聞こえました。今度は大人の猫の声も聞こえます。
さすがに私も気になり始めました。
自称美人社員と、自分の会社の建物のあるブロックを探し始めました。
うちの会社のブロックはこんな感じです。
ピンク色の建物が家の会社のビルです。(以下、「うちの会社」)
紫色のビルは飲食店などが入っているビルです。(以下、「紫色のビル」)
水色のビルは6階建てのマンションです。(以下、「水色のマンション」)
緑色は建設予定地で現在は空き地で、雑草が1.2mぐらいの高さで生えています。
グレーの部分はうちの会社のビルの駐車場です。
空き地と駐車場の北側は4m道路です。
青梅街道から、ぐるっと1周回ってみたのですが、猫らしき姿は見えませんでした。
あきらめて、6階に戻ったのですが、エレベーターを降りたとき、ふっと外階段に出てみました。
すると、紫色のビルと水色のマンションの間(約50cmぐらいの幅)を猫が歩いています。その猫を目で追いかけていくと、うちの会社と水色のマンションの間にその猫は入っていきます。
よく見てみると、うちの会社と水色のマンションの隙間の中間点に直径20センチぐらいの穴(直径はあとでわかります。)があり、その穴を猫が覗き込んでいます。
その時点で私には大体の事態が解りました。
その穴に子猫が落ちて、出られないのを親猫が見ているのです。
道路から、私の会社と水色のマンションの間には行けません。(水色のマンションと紫のビルの間には露出の配管があり、猫は通れても人間は通れません。)
うちの会社と、水色のマンションの間には2m20センチぐらいのフェンスがあります。
そのフェンスの上に、紫色のビルの非常階段から出られました。
そのフェンスの上を両側のビルを手で押さえながら、綱渡りの様にして行くことができました。私の目線から、地上までは4mぐらいの高さです。
その穴に着いたときには既に私は全身、ずぶ濡れでした。(スーツどろどろです。)
フェンスをゆっくり降りてみると、その穴は水色のマンションの汚水枡(トイレの水が流れる配管の点検口)でした。
そこから、確かに子猫の鳴き声は聞こえますが姿は見えません。
その時、うちの会社のビルの2階から、
「子猫ちゃん、助けに来てくれた人がいるよ!」
という声が聞こえました。うちの会社のビルの2階には保育所があります。その保母さんの声でした。
「助けたいけど、姿が見えないんですよ」
私は、とりあえず、道具もないので撤収しました。そして、保育所に行き、いつから鳴いているかなどを聞きました。保母さんは午前7時半には来ているそうなのですが、その時には既に鳴いていた。とのことでした。
そして、うちの会社のビルの管理人さんもそのことを知っているとのことでした。
実は、このフェンスは管理人室の窓の目の前にあります。
自分たちだけでは助けられない・・・
そう、思った私は、119番通報をしました。以前、崖の上に取り残された野良犬を消防隊のレスキューが助けたニュースを思い出したからです。しかし、来てくれるかは電話をするまでは半信半疑でした。
しかし、新宿消防署の分隊が程なくしてやってきました。
見るからにプロという人たちです。
状況を説明して、消防隊をその汚水枡まで案内しました。消防隊の一人が
「相澤さんは、危ないので戻ってください。」
と言われ、私が自分の会社のビルに戻ろうとしたとき、私はフェンスから転落し、腰と左の脇を強打しました。その痛みが未だに残っています。
消防隊は他の汚水枡も蓋を開けて、ライトを照らしたり、ホースを突っ込んだり、色々したのですが結局、子猫の姿どころか、鳴き声も確認できませんでした。
うちの自称美人社員が、ネットで調べて、自力で出られる様にタオルをぶら下げることを提案しました。
結局、2時間ぐらい、格闘して撤収することになりました。ただ、タオルはぶら下げておきました。それと、私の経験から、子猫が何も食べないで生きられるのは僅かな時間だから、せめてと思い、缶詰のえさをコンビにで買ってきて、紐でつるしておきました。
「助けられなくて悔しいです。でも、鳴き声が聞こえたらまた、すぐに呼んでください。」
と言って消防隊の隊長は私に名刺を残していきました。
金曜日も気にはなっていたのですが、子猫の鳴き声は聞こえません。自力で出られたのかな・・・と思っていたら、保母さんから、電話で
「鳴き声は聞こえないけど、親猫が来ています。」
との、報告。しかし、子猫の鳴き声がしないのでは位置が確認できません。結局、金曜日はなにもできませんでした。
土曜日、日曜日は休みなので会社には行きませんが、当然気にはなります。しかし、この暑さです。自力で出られなければ、無理だろうな・・・と思っていました。
月曜日・・・
保母さんから、電話です。
「また、鳴き声がします!親猫はいませんが・・・」
私は、痛い腰でビッコを引く様な状態ですが、再び、フェンスの上を伝い、汚水枡のところまで行きました。たしかに鳴いています。しかし、親猫の姿はもう、ありません。
しかも、木曜日よりも、その声は近くに聞こえました。
すぐに、消防隊に連絡すると、別の分隊ですがすぐにやってきてくれました。
再び、枡からホースを突っ込むと、今度は猫の姿が確認できました。
隊長は20センチないぐらいの子猫です。しかし、消防隊が手を突っ込むと、水色のマンション側(つまり、マンションのトイレに向かって)に入ってしまいました。
こうなると、押し出すことはできないので、待つしかありません。
すると、待つこと1時間、子猫が顔を出しました。
今度は私が手を突っ込むと、頭は触れましたが、あと少しですが指が掛かりません。子猫はそのまま、配管の奥に入ってしまいました。
位置を確認するために汚水枡に携帯のカメラで内部を撮影しようとしました。
(綺麗なものではないですが、その時の写真です。)
子猫の姿を捕らえる事はできませんでえした。
そして、子猫を配管に向かって呼び続けました。
待つこと3時間、子猫の鳴き声は聞こえなくなりました。
さらに待ったのですが、姿は見えない。声も聞こえない。猛暑と激しい悪臭の漂う中、また、私などは素手で汚水の中に手を入れている状況(手は汚物でどろどろです。)ですから、その衛生状態を考えて、消防隊の隊長は撤収を言いました。
あと少し、あと少しで助けられたのに・・・
悔しくて、辛くて、子猫の声が耳について、殆ど寝ることができませんでした。
「自分が諦めたら、助からない・・・」
私は、その夜、インターネットで、同じ様に汚水枡に落っこちて助け出された事例が無いかを調べました。
ありました。
2002年に富山市、昨年は徳島市で助け出されたとあります。
火曜日・・・
私は家を出るときに保育所に電話をしました。
「鳴き声、聞こえますよ!」
会社に向かいながら、私は富山市と徳島市にどうやって助け出したかを聞きました。
富山市はファイバースコープ(CCDカメラ)を使って、徳島市は動物捕獲機?なるものを使って助け出したと言います。
電車に乗りながら、新宿消防署にファイバースコープはあるかもしれないが・・・動物捕獲機はないだろうなど考えながら行きました。
この日は、前日の反省から、ビニール手袋を用意しました。
保育所の窓から、穴を見ると、確かに鳴き声は聞こえます。
ただ、位置が確認できないと、前日と同じことになると思い、一人で汚水枡の位置に行きました。
意外に声が近くに感じます。
ビニール手袋をして手を突っ込んでみました。
ちなみに、手を突っ込むことはできますが、手を入れると、自分の手が邪魔で中が見えません。
すると、手首のあたりに何かが動きました。
な・・・なんと、私の洋服を伝って、子猫が出てきたのです。
子猫はよちよち歩きながら、北側の空き地に逃げていきました。
私は汚水枡から手を抜いて、再び、フェンスの上に登り、北側の空き地で、子猫を捕獲しました。
汚物まみれで、物凄く汚いですが、目はしっかり開いています。
私はその汚物まみれの子猫を胸に抱きかかえ、自分の会社につれて行きました。
自称美人社員にペットショップでシャンプー等を買ってきてもらい、何度も何度も子猫を洗いました。
ノミや耳ダニの心配はなさそうですが、なにがあるかわかりません。
会社の近くの動物病院に連れて行きました。
体重は350グラム、おそらく生後6週間。特に病気も無さそうとのことでした。
それがこの子です。
うちの自称美人社員が鳴き声に気がついたから助かった子です。
保育所の保母さん、管理人さん、本当にご協力、ありがとうございました。
富山市消防本部の方、徳島市役所の方、徳島消防本部の方、色々、教えていただき、本当に感謝しております。
そして、何よりも、あの猛暑と悪臭の中、この子を助けるために来てくださった、新宿消防隊西新宿出張所の皆さん、本当に本当にありがとうございました。
長々と駄文・・・すいません。
まずは1本、お電話ください。些細な疑問にも答えます。プロ、アマ、一般の方、すべて歓迎。