収益還元法と取引事例法と相場観

カテゴリ:ブログ 不動産投資

さて、今日は忙しい中で、私の会社の社員と話していた会話です。

「私はなかなか、相場観が掴めないんですよ」

この社員はもともとは設計屋さんです。この2年ぐらいで一気に商業系の不動産の世界に飛び込み、それなりの実績を上げてきています。

「そんなことないだろ。それこそ、いい勘してると思うんだけど・・・」

「でも、最近は本当に見てきたものが日々変わるので・・・」

「たしかにそうだな。2年前と比べたら賃料相場も地価相場も激変しちゃったからねぇ・・・」

という会話でした。

しかし、私には一つの目線としているものがあります。

不動産価格がアップトレンドだった時代は不動産鑑定士に鑑定してもらった価格が一つのラインでした。

不動産鑑定士の鑑定方法というのは・・・

収益還元法と取引事例です。

不動産鑑定士になるには非常に難しい試験に合格しなければならないのですが(受けたことが無いので本当は難しいかどうか知りません。倍率から想像すると難しいだろうと思っている次第です。)

ところが、この収益還元法も取引事例も怪しいものなんです。

収益還元法というのは簡単に説明すると

キャップレート(投資家の期待利回り)から逆算する不動産価格です。

つまり、

(不動産が得られる収入(賃料もしくは想定賃料)-ビルの管理費や税金などの支出)÷不動産の取得価格=利回り

となります。

しかし、その物件が新規開発物件(新しくビルを建てるなどの土地)の場合は賃料は全て想定賃料です。

ということは、得られるであろう賃料は周辺相場と賃料上昇率などから想像することになります。ここが非常に怪しいことになります。賃料の上昇率を加味すれば、賃料は永久に上がることになります。不動産鑑定士は景気動向などは考慮に入れません。

また、投資家の期待利回りも怪しいもので、どこぞのファンドがこのエリアで利回り○%で買ったという情報があればそれが期待利回りだったりします。

『それって・・・取引事例であって、収益還元法じゃないんじゃない?』

と言いたいことが多々ありました。

また、取引事例ですが、不動産鑑定士は取引事例を全て知っているわけではありません。というか、全然知りません。せいぜい、解るのはレインズや日経不動産マーケット情報に出ている情報です。

ところが、こちらは実際に売買を多々している不動産屋です。不動産鑑定士なんかよりも遥かに取引事例を知っています。

そこでこんなことがありました。私がある物件の検討をするにあたって不動産鑑定を依頼した某大手不動産鑑定事務所のT所長から電話です。

「相澤さん、この辺のキャップレートっていくらぐらいですかね?」

「○○○コーポレーションは△%ぐらいなら買うって言ってましたよ。」

「じゃあ、キャップレートは△%にしておきます。ところで、この辺の取引事例はありますか?」

「こことあそこはうちが××不動産に○○億で売りましたよ。それから、そこはうちが○億で買いましたよ。」

「じゃあ、それをレポートに入れておきます。」

と出来上がった不動産鑑定資料で金融機関がお金を出してくれました。

つまり、不動産鑑定士に依頼しておいて、鑑定内容は私の言いなりだったわけです。

なんでもありの時代でした・・・。

ところが最近は・・・

収益物件であっても実需物件(マンションや戸建などを建ててエンドユーザーに売却する物件)でも私は路線価を基準にしています。

理由は簡単です。金融機関が路線価ベースで融資してくるからです。

2年前は路線価の5倍以上でも融資していた物件がいくらもありましたが、最近は路線価辺りが融資の上限です。つまり、収益還元も取引事例も意味が無いわけです。(不動産鑑定士もまったく意味がないことになりますが・・・)

これが私の相場観というわけです。

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