窓先空地

カテゴリ:ブログ 不動産開発

うちの会社は、不動産の仕事もしていますが、設計事務所でもあります。
今年は、売上の半分、仕事の6~7割が設計系の仕事でした。
さて、タイトルの件です。
「窓先空地」という言葉をご存知でしょうか?
東京や神奈川で、マンションの設計や開発をやった方なら知っていると思います。
これは、東京都安全条例と横浜市建築条例に定められている共同住宅の計画の際に発生するルールです。
実は、この窓先空地のために、容積率が消化できないということが多々あります。
では、東京都の場合のルールを紹介します。
住戸の床面積の合計   窓先空地の幅員
100㎡以下        1.5m
100㎡を超え300㎡以下  2m
300㎡を超え500㎡以下  3m
500㎡を超え1000㎡以下  4m
耐火建築の場合は、床面積を2倍で計算する。

となっています。
例えば・・・
・ 耐火建築のマンション
・ 各住戸が70㎡
・ 各階に7戸
・ 全て南向きに面している
・ 5階建て
・ 道路は北側にある
という条件のマンションを計画すると・・・
70㎡×7戸×5層=2450㎡
となります。
つまり、南側に4m幅の空地を作らなければならなくなります。
これが、商業地などで、日影規制が無いような場所ならば、高層にして容積率を消化してしまえば良いのですが、これが住居系地域などで日影規制があったりすると、日影規制を避けるために北側はなるべく空けないとならないし、窓先空地のために南側も空けなければならないという事態が発生します。
当然に、マンションという住宅ですから、各住戸はなるべく南向きに配置したいですから、窓先空地は南側に発生しやすくなります。
南接道の敷地であれば、窓先空地は必要なくなりますが、これが東西もしくは北接道の土地の場合は、窓先空地が発生します。
上の条件になると二種中高層住居専用地域などで、容積率が300%あったとしても、日影と窓先空地で、容積率が150%ぐらいしか消化できないなどということは、多々あります。
東京都や横浜市でマンションを計画するときには、この窓先空地を考慮しなければなりません。

不動産業界には、よく「一種○○万円」という言い方があります。これは容積率100%辺りに換算した時の土地の坪単価を表す言葉です。
例えば、容積率300%で270万円/坪の場所があれば「一種90万円」ということになるのですが、上記の様に都市計画上の指定容積率が300%であっても、実際には150%しか容積が消化できないと、この「一種○○万円」という言葉は意味をなしません。
不動産業者は、よくこのことを度外視して、近所の土地が「一種○○万円」だから、この土地も「一種○○万円」で売れるなどと言う安直な評価をしたりします。
ところが、敷地の形状によって、大きく日影規制を受けたり、接道方向によっては窓先空地が取り難い形状だったりして、近所の土地は容積が消化できたのに、当該地は全く容積が消化できなかったりすると、近所の土地の評価が全く意味が無い場合がよくあります。
その事を忘れて(知らなくて)、土地を買った転売業者が、土地を転売できなくて困っているなんてケースもよく見かけます。
三○のリハ●スなんかの土地評価書なんかも、直近の近隣の土地の取引実績に道路状況や土地形状等を簡単に係数で評価することで、土地の価格を売主に提案したりしています。
大手でも、この有様です。
大きな土地を持っている方が、不動産屋に行き、いくらで売れるかを聞いたら
「4億で売れる。」
それを聞いて、大手の業者だしと安心していたら、実際には、2億にもならなかった、なんて話も実際にあった話です。
大地主さんの場合は、不動産業者の評価書をもって、建築士に聞いてみるのも良いかもしれません。(もっとも、建築士は不動産評価書を読めない人も沢山います。)
この様にローカルルールが多々あるので、その地域の条例等はよく調べてみないといけません。
次回のテーマ「開発」は、福岡市の「三室採光」について書きます。

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