賃貸物件の所有者変更(オーナーチェンジ)の借主への通知
時々、質問をされるのですが、
「賃貸物件の所有者変更(オーナーチェンジ)をした場合、借主や連帯保証人の承諾を取る必要がありますか?」
という質問をうけます。解答は
「承諾を取る必要はありません。ただし、通知は出しておいた方が良いでしょう。」
となります。
以前、私がアセットマネージャーをやっていた時に、賃貸物件の売買の際に、同じ仕事に携わった地方銀行出身のアセットマネージャーが
「もし、賃借人に貸主変更を拒絶されて賃料の支払いを拒絶したり、連帯保証人が貸主変更を拒絶した場合に連帯保証人がいなくなると困るから、賃貸人と連帯保証人から承諾を取ろう」
と言いだしました。その賃貸物件、122世帯の賃貸マンションですから、その承諾を取っていたらいつになるやら・・・というような話です。しかし、実際には、賃借人や連帯保証人に所有者変更を拒絶する権利は有していません。
実際に判例もちゃんとあります。
大判昭和6年5月29日新聞329号18頁等(要旨)
賃貸不動産の所有者に変更があった場合、特約がない限り、賃借人・新所有者間に、従来の賃貸借関係がそのまま移転・存続する。
このことから、所有者が変わっても賃貸関係がそのまま新所有者に移るので、その賃貸関係を借主側が拒絶することは出来ないのです。
もっとも、地方銀行出身のアセットマネージャーは、私がこの判例をもって説明しても、納得していませんでした。まぁ、今まで自分がアセットマネージャーとして余程、自信があったのに、判例まで持ち出されて否定されたので悔しかったのだとは思います。ですから、私は、
「取引までの時間が無いから、今回は通知を出すだけにしよう」
と言って納得してもらいました。
この判例だけを見ると、通知すら出す必要性が無いように感じますが、法的には必要は無いのですが実務レベルで問題が発生します。
それは、借主が貸主の変更を知らないと、旧貸主に家賃を払い続けてしまうからです。
また、新貸主からだけの通知だと、新手の詐欺と思われてしまう可能性もあるので(実際にありました。)、少なくとも、新貸主と旧貸主の連名で、その通知を出します。さらに所有者変更になった登記情報か、新貸主、旧貸主の印鑑証明の複写を同封する方が良いでしょう。
貸主が変更になった物件の借主から、下記のような質問がありました。いずれも、新貸主より、
「今まで、家賃は手渡しだったのに、振り込みに変わった。振込手数料は借主負担と言われた。」
「ペット可ということで入居したのに、猫を飼っていることを理由に退去を迫られた。」
「飲食店可ということで、ラーメン店をやっているが物販店しか認めないと言われた。」
などという質問ですが、上記の判例の通りで、『従来の賃貸借関係がそのまま移転・存続する。』となるので、いずれも新貸主の主張は通らないことは、注意が必要です。
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