銀座という街の力
今週の東洋経済は
『百貨店スーパー大閉鎖時代!』
というタイトルです。
- 週刊 東洋経済 2010年 3/13号 [雑誌]/著者不明
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さて、デパートが社会的使命を終えているのでは・・・ということは、過去にも、この場で書いたのですが
過去の記事はこちら・・・有楽町西武撤退
どうも、記事を読むと、業界関係者はマリオン(有楽町西武と有楽町阪急が入っているビル)から、西武が撤退するとは考えていなかったようです。
理由は・・・
・銀座と言う立地
銀座に店を持てば、アパレルに対する発言力が増す。西武は池袋、渋谷、そして有楽町の3店を持っていたからこそ、有利な条件を引き出せていた。
・大家が朝日新聞であること
百貨店は新聞社の所有ビルにテナントとして入居することが意外に多い。地域インフラとしての側面を持つ百貨店にとって、新聞社との連携にはメリットがある。これまでそうした店を閉めることは、業界的にタブー視されていた。
東洋経済2010年3月13日号の38ページより
しかし、セブン&アイ・ホールディングス会長鈴木敏文氏によると
Q:閉鎖する西武有楽町店はそごう・西武の顔的存在だったと思うのですが、決断した理由はなんですか。
顔的存在でもなんでもない。今までやってきていたこと自体が不思議だった。1984年の開業以来一度も黒字化したことがなく、規模が小さいからファッションビルにもならない。
東洋経済2010年3月13日号の42ページより
さらに面白いデータが出ています。
銀座にあるデパートの売上げ等を示すデータです。
店名 | ㎡売上 | 売上高 | 売場面積 |
三越銀座店 | 1,952,045 | 44,858 | 22,980 |
松屋銀座本店 | 1,751,414 | 56,364 | 32,182 |
有楽町阪急 | 953,962 | 10,915 | 11,445 |
西武有楽町店 | 909,698 | 14,174 | 15,581 |
松坂屋銀座店 | 564,492 | 14,311 | 25,352 |
㎡売上高・・・単位:円
売上高・・・単位:百万円
売場面積・・・単位:㎡
この㎡売上高こそ、三越銀座店が関東6位と検討していますが、上から、松屋が11位、阪急が38位、西武が42位、松坂屋は69位です。(全80店舗中)
ちなみに1位は新宿の伊勢丹新宿本店で3,589,337円ですから、三越銀座店のほぼ2倍。その伊勢丹新宿店は売上げが230,780百万円ですから、銀座の全ての百貨店を足しても、伊勢丹新宿本店の6割にしかなりません。
たしかに、伊勢丹新宿本店は売場面積も広いです。伊勢丹新宿本店の売場面積は64,296㎡です。しかし、銀座の百貨店の面積の合計は107,540㎡あります。
さらに、ここに明確なデータがある訳ではないのですが、新宿と銀座では賃料格差が約2.2倍ぐらいはあるはずです。つまり、
『ネームバリューは高いが実際の商売には向かない場所。』
ということが解ります。
では、なぜ、この様な現象が起きているかと言うと・・・
まずは駅力です。
銀座という街に行くには
JR山手線 有楽町及び新橋、地下鉄 銀座、銀座一丁目、東銀座
となります。京橋はちょっと遠いので除外
駅名 | 降乗車数 |
有楽町 | 490,806 |
新橋 | 722,814 |
銀座 | 267,092 |
東銀座 | 150,870 |
銀座一丁目 | 35,982 |
※JRは乗者数のみなので乗者数の倍を乗降客数にしています。
となり、合計で1,667,564人です。
ちなみに、新宿は364万人の乗降客がいます。しかも、これは新宿3丁目駅、新宿御苑駅、新宿西口駅、西新宿駅、南新宿駅、都庁前、東新宿駅などを含んでいません。
圧倒的な人口差が全てを物語っていると言っても良いでしょう。
たしかに、銀座と言うのは、明治の時代から商売の街として発達してきました。故に、東京以外の地方の人には知名度も抜群に高く、有名な町です。
その証拠に、地方のアンテナショップも銀座に多いです。
私が東京に店舗を持っていない外食産業のお店等にリーシングをしても
「銀座なら出店してもいい!」
という方は多数います。そして、家賃と売上げのバランスに対応しきれずに、割と早く撤退します。赤字でも、
「銀座に店を構えるステータスが欲しい!」
という方にしか向かない街なのかもしれません。
もちろん、全てが赤字ではないと思っていますが・・・。
セブン・アイホールディングスの鈴木会長が撤退して当然とまで言うのはこの辺にあるのだと思います。そして、アパレル業界に上から物を言えると言っても、今や、ユニクロが全衣料品の4%を占め、さらに、しまむらやファストファッションがそれを追随する社会です。
彼らも銀座店はありますが、位置づけはあくまで、一つの店舗で、銀座だから特別扱いというわけではありません。
つまり、銀座に店があるからと言って、アパレル業界に上から物を言える時代は終ったのかもしれません。
ある、日本全国に大型店舗を持つ、大手書店に銀座への出店依頼をした時の反応です。
「相澤さん、銀座のそこだといくらで借りれるの?」
「1棟貸しで坪35000円です!」
※当初、ビルオーナーはこの倍以上を想定していましたが借り手は付かないで、ここまで値下げしました。
「あのね、書店というのは、地方からは本を買いに来てくれないんだよ。銀座まで地方から本を探しに来なくても、今やAmazonがある。ということは、銀座にいる人しかターゲットにならないんだよ。」
ちなみに、この大手書店、新宿では35000円/坪以上の賃料で入っています。
「では、いくらぐらいだったら・・・」
「銀座の商売の力は25000円/坪・・・そこまでが限界だね。実際には新宿どころか、池袋や渋谷どころか、吉祥寺や錦糸町程度の力しかない。」
というのが、その見解でした。
ちなみに、外食コンサルタントで有名な会社に同じビルで検討を頂いたのですが・・・。解答は30000円/月以下・・・。もちろん、アパレルにも声を掛けましたが、前述の流行っているところは、
「今更・・・。」
それ以外のナショナルブランドには、
「時代が違うんですよ・・・。」
という回答でした。実際にそのビルは築3年で1,2階にテナントがついただけで空中階(8階建て)は、全て空室です。
今は、まだ年輩の方や地方の方に対する知名度で銀座ブランドは成り立っているのですが、実際の商いの力は衰退しています。ファストファッションが銀座よりも表参道・原宿・渋谷エリアに1号店を出し、大手家電メーカーは池袋や新宿に主眼を置く時代です。
不動産価値と商売の力のアンバランスさ、街並みの古さ(大型店舗が出しにくい)、交通の利便性の悪さ(ターミナル駅ではないから人が集まらない)など・・・。
私は昭和の時代の良さを銀座に求めるのは、時代の流れの中で不可能だと考えています。
ただ、現在の知名度や社会的役割はまだまだ銀座にはあると考えています。
それは・・・
日本のショールーム
これだと思います。
もちろん、銀座を愛する人は嫌がると思います。しかし、以前の記事でも書きましたが、
「あの、お店が無くなると、寂しい」
という人たちだけでは商売にはなりません。
どこかで、自分達の街の役割を見つけないと、生き残れなくなると考えています。
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