鞆の浦景観訴訟
最近のニュースには時々、驚かされるものがあります。
ポニョの件はさて置き、公共事業に対して、景観を理由に差し止めの判決が出るというのは・・・。
記事をコピペしておきます。
万葉集に詠まれ、昨夏大ヒットしたアニメ映画「崖(がけ)の上のポニョ」の舞台ともされる瀬戸内海の景勝地・鞆(とも)の浦(広島県福山市)の埋め立て架橋事業をめぐり、反対派住民らが知事の埋め立て免許差し止めを求めた訴訟の判決が1日、広島地裁であった。能勢顕男裁判長は「鞆の浦の景観は住民だけでなく国民の財産というべき公益で、事業により重大な損害の恐れがある」として原告側の請求を認め、免許差し止めを命じた。
歴史的景観が地元住民にもたらす「景観利益」保護のために大型公共事業を差し止める初の司法判断。免許認可をめぐる国の判断に影響するのは必至で、県と福山市の計画策定から26年の同事業は見直しを迫られることになる。
能勢裁判長は判決理由で、事業について「公有水面埋立法には住民らの景観利益を保護する目的があり、慎重な政策判断がない限り計画は不合理」と判断。「侵害された景観利益は事業が完成すれば復元が不可能だ」と指摘した。
そのうえで県側の主張していた渋滞解消や下水道整備といった利便性向上について「必要性、公共性の根拠について調査、検討が不十分。埋め立ては行政の裁量権の範囲を超えている」とし、差し止めが必要と結論付けた。
住民側は常夜燈の残る港や古い町並み、島々を一体的にとらえ「良好な景観を享受する利益がある」と主張。県側は利便性向上を根拠に必要性を主張し「景観利益は公共のもので、住民ら個々人は対象外」と反論していた。
判決などによると、県と市は港の一部を埋め立て、湾を横切る全長約180メートルの橋の建設を計画。県は昨年6月、埋め立て免許について国に認可申請したが、審査は中断している。
出典 産経新聞
事前に書いておきますが、判決そのものを批判するものではありませんし、この判決そのものには、ちょっと賛同するところもあります。
しかし、ポイントは「鞆の浦の景観は住民だけでなく国民の財産というべき公益で、事業により重大な損害の恐れがある」という部分です。
「○○の景観」というのは、どこにでも存在します。
鞆の浦の場合は『国の名勝』『国立公園』にも指定されている場所ですから、本判決が、この部分の景観が国民の財産であるという評価であるのならば、この判決は極めて限定的なものになります。
しかし、この鞆の浦問題に『国の名勝』や『国立公園』という言葉はあまり出てきていない。どちらかと言えば、『歴史的な景観』という言葉が目立つ。
この『歴史的な景観』の定義が曖昧なために、今後、この判決が乱用される可能性があるのではないかという懸念もある。
私が、本判決を支持する理由はこの架橋計画そのものが四半世紀も前の計画で、鞆の浦地区の人口が既に9000人から5000人に減少し、そもそも計画を立てたときと状況が全く違うことにあるからである。もちろん、景観を守らなければならないことは重要だが、公共事業を含める、再開発の計画などは時間が掛かることはよく解るのだが、経済環境や人口動態の変化などをよくよく考えるべきではないだろうか?
八ツ場ダム問題もそうだが、公共事業というのは一度始めると、その保障、自然景観の破壊など取り返しが極めて難しい。ただ、長期に渡る計画の公共事業は、例えば「5年おき」になど、定期的にその計画の必要性や内容の妥当性を検討していかなければならないのではないだろうか?
民間事業者が例えば、大型の再開発事業を行う場合は当然だが、販売価格や事業内容は常に見直しながら行っている。これは民間事業者が常に収益と戦っているからである。公共事業が目先の収益と戦ってはいけないのは当然だが、日本の経済環境や人口動態に合わせた最低限の見直しはしなければならない。
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