尖閣諸島問題2

カテゴリ:ブログ 政治経済

先日のブログで・・・

『中国政府は、日本との経済外交に於いて、直接的に利益を享受している人を傷つけない様にしながら、圧倒的多くの国民の不満をここに散らせるようにしていると考えるのが自然です。』

と書いたのですが、どうもそんな簡単にはいかなくなってきました。

レアアースの禁輸処置やフジタ社員の監禁など、尖閣諸島の漁船船長拘束とは、両政府とも関係ないとは言っているものの、客観的には、誰の目にも報復処置にしか見えない様な対応を中国政府は取ってきました。

それに対して、このタイミングで漁船船長を釈放したのですから、明らかに水面下での交渉があったと考えるのが自然かと思います。

もっとも、ここまで来ると、中国も上げた拳を降ろす場所が無くなっているし、日本としても経済的損失を考えれば、前回のブログで書いたように

『日本の法律に従って粛々と処理をしながら、最終的には「国外退去処分」で後は、中国に任せるぐらいの対応を素早くすることで、あとは、日本から見れば、日本経済にはあまり影響の無い中国国民が騒いでいるだけという環境は作れます。』

ということになるのは自然の状況だったと思います。

また、これ以上やれば、中国も南シナ海に面する他国だけではなく、国際的非難の対象にもなりかねないし、せっかく、親中派の民主党政権になったのに日本がアメリカとの軍事関係をさらに親密にするという弊害も出てきます。

中国からしてみれば、ある程度の圧力をかけた段階で日本が漁船船長を釈放したので、国民に対してのアピールはできたと思います。

日本に対するレアアースの禁輸処置を解除、フジタ社員を解放すると、お互いの政府が弱腰と自国民に揶揄されるかもしれませんが、中国政府は

「日本が尖閣諸島の中国領有権を認めたから船長を釈放した。」

とアピールし、日本政府は

「日本の法律に則って処置した結果、処分保留で釈放した。」

とアピールするだけでしょう。

当面の間はこれで良いのですが、今回の事態で中国の焦燥感というのが、はっきりしたと考えられるのではないでしょうか?

たしかに、領有権を双方が主張している場所というのは他にもあります。

例えば北方領土付近で日本人がもしくはロシア人が双方の国に拿捕されるということもあります。

しかし、拿捕されたことは報道されても、それが即時に領土問題に発展したり、報復処置に繋がると言う事はありません。大体が「大人の対応」で収束するのが普通です。

しかし、それに対して中国が今回の件で「大人の対応」をしてこなかったのは何故でしょうか?

前回のブログでは・・・

経済格差問題などで不満を持っている人の気持ちを外に向けさせる為

というニュアンスのことを書きましたが、それも一つの理由だとは思いますが、レアアースの禁輸処置やフジタ社員の拘束など、将来に渡って、日中間の民間レベルでの経済縮小が懸念される様なことの行動を起こすとまでは考えていませんでした。

これは、中国がその他の部分で焦燥感を抱いているからだと私は感じます。それは何かと言うと・・・

中国の経済発展を支えている最大の理由は、「人件費の安い大量の人口」によって支えられる「世界の工場」が外貨を稼いでくれることと、どう考えてもおかしい、元レートにあります。ところが、国内の経済格差問題で賃金は毎年10%以上の上昇を続け、「人件費が安いか中国に工場」と言う時代は終わり、如何に、中国から周辺国に工場を移転するかという時代に突入しています。そして、元レートにしても、必死に中国政府は抑えているものの、対外圧力は強まるばかりです。

この状況は日本も1970年代以前(オイルショック前)までは同様だったのですが、(「アメリカの工場」であり、「1ドル360円」という固定相場に支えられていた。)当時の日本と今の中国では少しだけ違う点があります。

それは日本は製品を独自で開発していたのに対し、中国は技術そのものも外国の企業誘致などで独自開発力が圧倒的に弱いという点にあります。当時の日本も模倣品が多かったのは事実で「猿真似ばかりのイエローモンキー」などと揶揄されましたが、中国はそれと比較しても酷すぎます。

もし、中国の人件費が高いことを理由に、外国企業がこれ以上、海外に流出すると民間レベルでの技術進歩も止まるでしょうし、大きく経済が停滞することになります。

また、経済発展によって、中国国民の生活レベルが上昇したことで、食料や化石燃料の海外依存度も非常に増えているのも事実です。もし、「世界の工場」の地位を失い、元レートが高くなれば(変動相場制に移行するなど)、中国は単純に貿易赤字国に転落します。今の段階で、中国が貿易赤字国に転落すれば、中国の経済先進国への転換は、藻屑となるでしょう。

さらに中国には、これから経験をしたことの無い、一人っ子政策による人口減少が経済に与える影響というハードルを迎えるでしょうし、また、細かな問題ですが、一人っ子政策によって育った世代がこれから中国を支える時代になるという問題があります。

そこで、中国は、大きな経済発展はあきらめて、内需政策に切り替えるにしても、ある一定の資源の確保と、地政学的に見た海洋権の確保が必要になります。中国にとって、南シナ海は唯一の海洋玄関です。南シナ海の資源だけではなく、世界の海洋に自由に出るためには、どうしてもここを通らなければならないので、少なくとも自国の海域に完全にする必要性はなくても、『公海と同程度』にして、自由に航行できる権利を確保したいのでしょう。

その為に、少なくとも尖閣諸島は自分に領有権があることは主張しておかないとならないのは理解できますが、「大人の対応」を捨てた今回の行動を見る限り、急速に中国国内経済が変化していて、政策転換に対する焦燥感が相当なものだと言う事が伺えます。

民間レベルで考えればチャイニーズマネーを当てにするビジネスは遠くない将来に終わるということを意味しています。

ただ、今回の一件は中国にとっての方がマイナスに作用することの方が大きかったのではないかと推測します。

客観的に見て、少なくとも、尖閣諸島は圧倒的に多くの諸外国が日本の領海上にある島だと認識しています。その領海内で起こった事件にも関わらず、中国は「尖閣諸島問題とは関係ない」とアピールしたものの、客観的には完全に報復処置と思われる行動を取りました。

これにより、中国国内でビジネスを展開しようとするには、相当なリスクを取る必要性があるということは、日本人だけでなく感じたはずです。「世界の工場」である地位からの脱落を加速させてしまった可能性があります。

また、レアアースの問題も中国が独占しているだけに、中国以外の場所で採取できないのか、代替品の研究などを加速させ、レアアースの独占という地位を失う可能性を高めてしまっています。

日本にとってのマイナスは、米軍の必要性を認識させられたことによる、米軍基地維持などの予算を割かなければならないことぐらいでしょう。むしろ、日本政府(民主党)からしてみれば、普天間基地移設問題の失態を中国のお陰で取り返せ、こじれたアメリカとの関係を取り返せるという千載一遇のチャンスかもしれません。社会党はご愁傷様ということかもしれませんが・・・。

熱くなった方が損をするという典型的な事件でしたが、チャイニーズマネーがあまり早く撤退すると自分の商売にも影響がでるだけに、困りものです。

結局は自分の商売が心配なんだけど・・・

追記

この記事を書いている間に下記ニュースが・・・

『那覇地検の鈴木亨次席検事は釈放の理由について「我が国国民への影響や、今後の日中関係を考慮した」と述べる一方、・・・以下略』

事実だとしても、

「日本の法律に則って処置した結果、処分保留で釈放した。」
と言うのが普通だと思います。情けない・・・

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