【賃貸住宅】契約書と重要事項説明書【中編】
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最近、うちに相談のあった賃貸の契約です。
「この契約内容で契約していいでしょうか?」
ということで、契約書と重要事項説明書を送って頂きました。
ざくっと見ると・・・
① 東京ルールに完全に違反している。
② 契約書で矛盾している点が何点かある・・・
ということでNGをだしました。
(しかし、この管理会社、どっかで聞いたことがあるんだよなぁ・・・)
と、思ったのですがこの時点では思い出せませんでした。
※名前はぼかしてあります。
その契約書がこれです。(抜粋)
一番、上の画像が契約書の原状回復義務に関する条項
二番目が重要事項説明書の特記事項
三番目が重要事項の建物の設備状況です。
そして、これの何がおかしいかと言うと・・・
まず、みなさんは『東京ルール』という言葉をご存知ですか?正式には『賃貸住宅紛争防止条例』という名称の東京都の条例です。
これは退居時の借主と貸主の原状回復によるトラブル(敷金の返還額による問題)を解消することを目的として作られた条例です。東京に於いては、ちゃんと条例化されているのですが、内容は各判例をまとめただけで特別に新しい内容ではありませんでした。
唯一、新しい内容はその原状回復と善管注意の義務範囲を契約時に書面で説明しなければならないということです。そして、借主から了解した旨の捺印をもらうということです。
東京ルールについては・・・賃貸住宅紛争防止条例/東京都都市整備局
判例については・・・敷金返還と原状回復特約に関する判例集
簡単に言うと、
『通常の生活をしていて損耗したものは貸主の負担で修復しなければならない』
ということです。これは前述の通り、東京ルールでなくても判例があるので実際には全国共通です。
では、この契約書のおかしな部分は・・・
この契約書(一番上の画像)の4及び重説の特記(2番目の画像)の(4)を見てもらうと
『本契約の原状回復に係る壁紙(クロス等)や床材(カーペット・CF・フローリング等)の修繕や交換については乙に於いて負担するものとします。又、乙の故意・過失や通常の使用方法に反する使用など、乙の帰すべき事由により、修繕の必要が生じた場合は、乙がその費用を全額負担することになります。』(以下略)
と書かれています。
この内容では壁や床が日焼けで変色して交換しても、借主の負担になってしまいます。壁や床の日焼けは当然ですが普通に生活していて、どんなに注意しても日焼けしてしまいます。絶対に日が入らない様な生活をすれば別ですが、それは通常の生活とはいえません。
また、重説の特記(2番目の画像)の(2)を見ると・・・
『本契約の修繕について乙は、畳表の取替えまたは裏返し・障子紙・ふすま紙の取替え、電球・蛍光灯及びヒューズの取替え、エアコンのリモコン本体の故障・紛失、ガスコンロの目詰まり、照明カバー及び照明スイッチ及びコンセント、インターホン、ドアチェーン、ドアスコープ・窓鍵・備付鏡・コンセント・アンテナジャックの故障、エアコンダクトの外側の蓋、エアコンドレインの目詰まり・はがれ又は亀裂の修理、洗濯機パンの亀裂・破損及びエルボーの目詰まり、交換・ハンドシャワーノズルの取替え、シャワーカーテンの取替え、浴槽内止水栓のチェーン破損時の取替え、入浴剤による浴槽の変色の補修、トイレ便座のがたつき及び亀裂、トイレットペーパー等器具の取替え、シャワートイレの故障、トイレタンク内のボールタップ等々については借主の負担とすることを乙は承諾する。』
これを見たときははっきり言って驚きました。これじゃあ、石膏ボードの内側にある物は全て借主の負担ということと同じです。もちろん、故意に壊せば借主の負担ですが通常の使用で壊れれば貸主の負担です。
そして、極めつけが契約書(1番上の画像)の6と重説(2番目の画像)の(5)を見ると
『本契約に係わる従前の賃借人が残して言った設備(エアコン・電灯等)における修繕や交換については甲は一切の責任を負わないものとし、乙の善管注意義務に係らず修繕や交換に関する費用は乙の負担とする。』(以下略)
※赤字の誤字は記載通りです。
とあって
重説の建物の設備状況(3番目の画像)を見ると
『エアコン 有 1基』
とあります。ということは、このエアコンは所有者が設置したものではなく、前居住者の残置物ということでしょうか・・・。それに、『エアコン・電灯等』ではなく、この条文を入れるならば、前居住者の残置物が何なのかを明確にしておかないと、対処のしようがありません。
さて、この辺りのことを管理会社と交渉することになります。
貴方の契約書もこんな感じかもしれないけど・・・
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