【開発】大規模小売店舗立地法3
さて、大規模小売店舗立地法の続きです。
商業系のデベをやっていて、一番困るのがこの大店立地法と改正都市計画法であることは、前回までの内容でご理解頂けたと思います。
これから6回(予定)で実際の3つの事例を書いていこうと思います。
さて、今回の話は東京のある場所での商業開発に挑み、実際に行った大店立地法逃れを行った事例です。
物件概要
土地面積:約200坪
用途地域:一種住居地域
建蔽率:60%
容積率:300%
その他の規制:防火地域・第一種文教地区(東京都)
既存建物:違法建築(違法増築)の全室空室の共同住宅
場所は、山手線の内側で、土地の値段は当時で1200万円/坪です。
当時の賃料相場は1階で6万円/坪、地下1階と2階で4万円/坪、3階より上で3.2万円/坪です。
当時の周辺のCAPレートは5.7%ぐらいです。ですから、売却した時の利益を考えるとネット利回り6.3%ぐらいの利回りは欲しいところです。
※CAPレート・・・Capitalization Rateの略。簡単に言うと、収益物件として投資家が期待する利回りのこと。投資家が期待する利回りに達していればJ-REITなどのファンドへの売却が期待できる。例えばCAPレートが5%のエリアであって、純収益が5000万円の物件であれば10億円で売却できることになる。
※純収益・・・収益物件に於いて、収入が賃料収入や共益費であるならば、支出は管理費や固定資産税、都市計画税で、『収入-支出=純収益』となる。
※ネット利回り・・・『純収益÷(物件価格+諸経費)×100』となります。純収入が5000万円で10億円(諸経費込み)の物件価格であればネット5%ということになります。この場合の諸経費とは、不動産取得税、登録免許税、仲介手数料などです。
※純収入が5000万円でネット利回り7%にする為には不動産取得価格は諸経費込みで約71400万円です。この時、キャップレートが5.7%であれば、約87700万円で売却できる計算となります。つまり、利益が16300万円の利益が出るわけです。
今回の物件は周囲及びその通りには既に外資系のアパレルなどの高級ブランドが進出しているエリアです。
土地の形状は下の絵を見てください。
※クリックすると拡大します。
都市計画上は住宅地域ですが、周辺には外資系のアパレルショップが進出し、住宅は殆どありません。
道路幅員は狭いですが、土地は整形で、間口もそれなりにあります。また、都心の商業地の場合はゆったり歩ける方が商業地域として優れていることが多く、どんなに道路幅員が広いよりも、歩道がしっかりしていることの方が重要です。
しかし、今回の土地は道路幅員が4.7mしかありません。その為、都市計画上の容積率は300%ですが、法定容積率は188%です。
※法定容積率・・・道路幅員が12m未満の場合、住居系地域の場合は『道路幅員×0.4×100』、その他の地域に於いては『道路幅員×0.6×100』となります。
つまり、今回の土地では
土地が約200坪(約660㎡)なので
床面積が660㎡×1.88=1240.8㎡の建物が建てられます。
また、今回の物件の都市計画上の建蔽率は60%ですが、防火地域なので耐火建築物を作ることで70%まで使えます。今回の土地には
建築面積が660㎡×0.7=462㎡の建物が建てられます。
ここで問題になるのが大店立地法です。
大店立地法は売り場面積が1000㎡を超えると適用されます。
デベロッパー側の考えとしては、床面積全てを専有面積にしたいところです。もちろん、専有面積=売り場面積ではないのですが(バックヤードやトイレ・洗面所などがあるため)、テナントに1240㎡を貸しておいて、1000㎡しか売り場面積として使えません。とは極めて言いにくいところです。
この物件の場合、1240.8㎡の最大容積率を消化してしまうと、大店立地法に掛かります。その場合、駐車場を18台設けなければなりません。18台の駐車場を設けようとすると、平置きの場合は最低でも247㎡は必要です。しかも道路に面した部分に駐車場を持ってこなければなりません。今回の土地は間口が19mですから、18台を横並びで止めることは厳しくなります。(駐車場の1台の幅員は2.5m以上は必要です。)
機械式の駐車場を使う場合は敷地の中で待ちスペースを作らなくてはなりません。3台式の機械駐車を6機使えば足りますが、待ちスペースを考えると、やはり216㎡の駐車スペースが必要となります。
実際の土地の面積が660㎡で最大建築面積が462㎡ですから、198㎡の建物の建ってない部分があるのですが、実際に建物を作る為に隣地から約50cmぐらいは空けたいところです。
と考えると、この土地の場合、隣地と接する部分を50cm空けると
(19m+34.5m+34.5m)×50cm=44㎡が必要となります。つまり、駐車場として使えるのは154㎡しかありません。
とすると、必要駐車場を用意すると機械式を使ったとしても建築面積を62㎡減らさないといけません。
しかし、実はこれがもの凄く大きいことなんです。
減らした62㎡は空中階に振り分ければ良いのですが、1階と2階では賃料の差が2万円/坪あります。
つまり、1階の面積が62㎡(18.8坪)減ると、月の家賃が37.6万円、年間で451.2万円の収入減となります。また、最終的な売却価格としては、
451.2万円÷5.7%=7915万円(約8千万円)の減となります。
希望としては
1階 462㎡(139.75坪)
2階 462㎡(139.75坪)
地下1階 316.8㎡(95.83坪)
の建物を作れば、1780万円/月、年収21360万円となり、諸々の経費を除いても年辺りの純収入は19000万円ぐらいになります。
とすれば33億3千万円で売却できます。
では取得価格はというと・・・
土地 200坪×1200万円=24億円
諸経費 =2億円
建築コストが =3億8千万
となるので合計29億8千万円です。
つまり、期待通りに言って3億5千万円の利益です。
(開発リスクを背負って、この利益率で良いのか)
つまり、大店立地法をクリアしようとすると3億5千万円の利益が2億7千万円になってしまします。
そこで、なんとか、大店立地法に抵触しないようなことを考えるわけです。
では、次回はどんな開発を行ったかを書きます。
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