家賃滞納対策 ~住宅編~ 【立退き】
今回の問題は、家賃を滞納された側、つまり、賃貸物件の所有者(家主)側からの話です。
ですから、家賃を支払えなくなって困っている人からすると、少しきつい話になっているかもしれません。
家主にとって、家賃滞納は非常に頭の痛い問題です。賃借人が家賃を滞納するのには、色々、理由があります。今回は「支払日を忘れていた。」、「家賃支払日に急病などで入院してしまった。」というのも、退院後にちゃんと支払える場合などは、考えないことにします。
今回の家賃滞納は、故意に家賃を支払わないケースです。
「故意に家賃を支払わない」
と書くと、家賃の支払い能力があるのに、支払わないというように聞こえますが、経済的に家賃の支払い能力が無くなった場合でも同じです。
家賃滞納を防ぐ方法は・・・
1.賃借人の属性をしっかり調査しておく。
・ 職業
・ 収入、給与所得(所得証明、源泉徴収表など)
2.しっかりした連帯保証人の確保
・ 賃借人との関係(友人、愛人などの知人よりも親族であること)
・ 年齢(65歳未満であること)
・ 収入(家賃を保証できる定期収入があること)
・ 契約時に連帯保証人と連絡をしておく(連帯保証人の責任を説明しておくこと)
ここさえ、ちゃんとしていれば、まず家賃滞納問題で困ることは無いはずです。しかし、上記の条件をクリアできることが少ないから問題が発生します。なぜ、上記の条件をクリアできないかは、簡単です。
条件を全てクリアできる賃借人が少ない=空室問題にぶつかる
からです。余程、条件の良い物件は、クリアできるかもしれませんし、超高額物件などは、上記以上に厳しい条件が付されている場合もありますが、一般的な物件では上記の条件でさえ厳しいという場合が多々あります。
そこで、家賃保証などを利用することをお勧めしますが、家賃保証も完璧ではありません。保証会社が倒産した事例もあります。個人的には、余程のことが無い限り、「一括借り上げ」(サブリース)は利用するべきではないと考えています。また、賃借人との関係をある程度、築き上げられて入る方が、家主にとっても賃借人とっても、後々の対応が楽になります。
ここを読まれている方は既に、家賃保証も利用せずに、家賃滞納問題に直面していることかと思います。また、賃借人との信頼関係も築けていないという方が多いと思います。
では、家賃滞納に直面してしまったらどうすれば良いかを書きます。
結論から書くと
- 家賃滞納から、1週間~2週間で賃借人に電話を入れて催促をする。
- 電話で連絡が付かなかった場合は、すぐに督促状を出す。(この場合は内容証明の必要はなし。普通郵便でも良いですが、簡易書留の方が良い。)
- 督促状に対して1週間程度、反応が無かった場合は、勤め先に連絡する。(ただし、勤め先などに、賃借人が家賃滞納をしていることを告知することは不可。)
- 1~3で賃借人に反応が無かった場合は、連帯保証人に電話する。
- 連帯保証人に電話連絡が付かない場合、連帯保証人に督促状を出す。(この場合も内容証明の必要はなし。)
- 1~5で連絡が付かなければ、賃借人と連帯保証人同時に内容証明を出す。
特に1~4までは間髪入れずにやります。家賃滞納から2~3週間で、4までを完了させます。これは家賃滞納の原因が事故であった場合に被害を最小限に食い止めるためです。4が終わった時点で、賃借人にも連帯保証人にも連絡が付かない場合は、物件を見に行く方が賢明です。自分で行けない場合は、管理会社、賃貸借契約をした不動産会社などに行ってもらいます。異常を感じた場合にはすぐに合鍵等で開けてはダメです。警察に連絡して警察官立会いで合鍵を使います。
1~6までを、家賃滞納から、1ヶ月~1ヶ月半でやらなければなりません。
そして、ここまでで、賃借人もしくは連帯保証人と話し合いができれば、家賃回収か立退きは2~3ヶ月でできるはずです。ここまでは、弁護士に頼らないでやった方が賢明です。余程、良い弁護士を知っているのであれば別ですが、インターネットで検索した程度で知り合った弁護士はもっての他です。弁護士に親しい知人がいるとか、信頼できる人からの紹介などがあれば、最初から弁護士に依頼するのでも良いでしょう。
これで、ダメなら訴訟ということになります。
訴訟自体も自分で出来ないことは無いですが、手続きも面倒ですから、ここからは弁護士に任せた方が良いでしょう。
多くの家賃支払日は前月末日頃になっていると思います。例えば6月分の家賃の支払いが滞納されるのは、5月末日です。ということは、6月10日~15日には、電話を入れることになります。そして、内容証明を送るのは7月10日~15日頃になります。これで2~3週間待って、家賃が支払わなければ、8月分の家賃も期日に支払われなかったということになります。
判例では概ね3ヶ月の家賃滞納で契約解除が認められます。(1日でも家賃滞納は契約そのものには抵触しますが、それで訴訟を起こしても立退きは認められません。)
つまり、最短で事態解決をするためには、家賃滞納から1~2週間で賃借人に連絡することが大事です。連絡が遅くなれば、家賃が回収できても賃借人に滞納癖が付きますし、回収できなかった場合に損失も拡大します。
次回以降で、1~6の作業を具体的にどうすれば良いのかを書きます。
家賃滞納でお困りの方は
リデベにお気軽にお電話ください。
弁護士のご紹介までリデベでは、させて頂きます。
建築コスト(第3話) ~CM編~
前回に続き、その他の問題事例を書くこととします。
私の知っている他の事例でも・・・
建築主がインターネットで見つけた安いフロア材に変えようとして、建築主がいざ発注してみたら、必要な数量が納入されるのに半年以上掛かってしまうことが解り、結局、当初の床材に戻したけど、そっちも生産に1ヶ月かかるということで、結局、工期が1ヶ月延びてしまいました。
工期が1ヶ月延びれば、現場管理費がその分、増えてしまいます。(現場監督を余計に1ヶ月配置しなければならない。現場事務所も1ヶ月余計に借りなければならない等)
特に、最近ではインターネットでの通信販売等で、通常では素人がなかなか買えなかったようなものが簡単に手に入るようになりました。しかも、人件費が掛かってない分、そちらの方が安かったりすることが普通にあります。実際に私も、自宅の建具のラッチが壊れた時にネットで1個だけ取寄せて、自分で直したりできるので便利だと思います。
そして、素人がゼネコンの見積よりも安く買えることが簡単にわかってしまう時代です。
ただし、製品の値段だけの問題ならです。
問題はこのような、搬入の手順や数量だけのトラブルだけではありません。
アフターのトラブルもあとが絶えません。
製品は建築主が支給したものですから、製品に関する欠陥はメーカーの責任です。しかし、取付けたのはゼネコンですから、施工不良はゼネコンの責任です。
簡単な問題ですが、実際にはどちらも責任は取りたくありません。そもそも、建築主もどちらにアフターを頼んで良いか解らない場合もあります。
ある時、クッションフロアを支給した建築主さんがいました。それも、日本の有名メーカーのものではなく、韓国製のものでした。結果、2年後にそのクッションフロアが剥がれてきました。最初は施工不良だと思いゼネコンに修理を依頼しますが、調査の結果、そのクッションフロアの専用接着剤の耐熱性があまりに悪く(40度前後で劣化する)、窓際の日当たりの良い場所から剥がれてきているということが判明しました。
ところが、その韓国製のクッションフロアは、日本の小さな商社(ネット通販専門の商社)が韓国の会社にOEM生産を依頼したものでした。
その日本の小さな商社はすでに無くなっており、韓国のOEM生産を依頼した会社も解らず仕舞いでした。
結果的には建築主の負担で、全てのクッションフロアを貼り替えるということがありました。
また、これは建築時のトラブルではなく、マンションのリフォーム工事のときの話です。
リデベで、マンションのリフォームを依頼されました。依頼された範囲はキッチン等を含む水周りのリフォームがメインでした。
そこで、見積を出したのですが、キッチンだけで50万円+αぐらいの価格になってしまいました。
これは
1.既存のキッチンの解体廃棄費用
2.既存キッチンを取り外すのでタイルが使えなくなるのでキッチンパネルの材工費用
3.梁下にキッチンの換気扇がぶつかるので、その部分の特注費用
4.新しいキッチンの費用
5.新しいキッチンの運搬費用
6.キッチンの取付費用
7.ガス工事費用
8.給水給湯排水工事費用
の全てが入っている値段で、その明細もちゃんと書いて提出しました。
しかし、この依頼主は
「キッチンなんて、ニトリで12万円以下で手に入るだろ!」
と言って怒り始めました。
たしかに、ニトリで安いキッチンを買うと12万円以下ですが、これは上記でいう6の部分だけの値段です。しかも、ニトリで買うキッチンは梁型に合わせた特注などできません。この依頼主に、キッチンの解体廃棄やキッチンパネルの取付は大工、キッチンの取付はキッチンメーカーの専属業者、ガス工事はガス屋、給排水工事は設備業者と4つの業者が必要なことを説明しましたが、
「キッチンメーカーが全部やればいいだろう!」
と言い出す始末です。
私は、一生懸命説明しようとしたのですが、なかなか、ご理解を頂けませんでした。正直言えば、2回説明した時点で面倒だなとも感じていました。
当然ですが、この話は破談になりました。
結果、その物件がどうなったかと言うと、水周りは一切にいじらずに家賃を下げて募集していました。おそらく、その依頼主は修繕費という概念があまり無かったものと考えられます。しかし、周辺の新築物件も今の経済状況下の中で賃料は下落していますから、更に下げないと決まらないでしょう。
そして、一度下げた家賃はどんなにリフォームしても、元には戻らないということを知らなかったものと考えられます。
前回の洗面所の件もそうですし、今回のクッションフロアの件もそうですが、値段が安いことだけでは、全く話になりません。必ず考えておかなければいけないことは、
・ 着工前に設計事務所、施工会社と相談して、仕様を決定しておき、取付費用や搬入のタイミングなどで発生する運搬費用・保管費用などを検討しておく。
・ インターネットやホームセンターで見つけたものの場合は、必要な数量やどこまでの工事を行ってくれるかを確認しておく。価格.comで調べた値段が全てではないということです。
・ 分離発注や施主施工にする場合は、建築基準法や消防法などに抵触しないものか、製品性能が問題ないかを事前に設計事務所などの専門家の意見を仰ぐ。
・ 分離発注などを行う場合は、責任の範囲を起こりうる事態を想定して、責任所在を明確にしておく。
このようなことが、できなければ分離発注は不可能です。しかし、これができれば、建築費などのコストダウンも可能です。
コンストラクションマネージメント、建築費の削減などは、是非リデベにご相談下さい。
違法建築物であることを不動産業者は説明しなくてよいのか?
多くの宅地建物業者さんや、重要事項説明で違法建築であることの説明を受けなったという方がいるので解説します。
まず、大前提になりますが、
違法建築物は、存在そのものが違法です。法では行政処分により、使用禁止や除去(取壊し)、さらに悪質な場合は、刑事処分や罰金刑という場合もあります。これは完了検査を受けていない、各行政の定める条例に違反している等も含めます。
悪質な場合とは
・ 違法建築物に対する行政指導に対し、それを無視する、もしくは度重なる勧告に従わない。
・ 営業を目的とする複数の建物で同様な建築基準法・条例違反を繰り返す。
・ 建築基準法・条例違反であるということを認知していて、それを故意に行う。
実際に、行政処分があるのかと言われると、事例は非常に少ないのですが、いずれも見たことがあります。
そのことを前提に読んでください。
Q.違法建築物であることを不動産業者は説明しなくてよいのか?
【解答】
仲介業者は、違法建築物であることを知っていれば、説明義務はあります。
【解説】
まず、今回の質問は「違法建築物であることを不動産業者は説明しなくてよいのか?」ということですが、責任の所在は
・売主(貸主)
・不動産仲介業者
となります。
本質問から、ずれますが一応、売主(貸主)の責任について書いておきます。
売主の場合は、民法570条の瑕疵担保責任という問題が発生します。つまり、隠れたる瑕疵があった場合については、買主が気づいた時点から1年以内に契約解除又は損害賠償の請求ができます。
貸主の場合は、建築基準法87条違反になります。詳細については『違法建築物を賃貸してよいか?』をお読み下さい。
さて本題の不動産業者の責任です。
まず、解答に書いた通り、違法建築物と知っていれば、宅地建物取引業法47条に抵触します。これは、売買であっても、賃貸であっても当然に抵触します。
宅地建物取引業法
47条 宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
47条1項 次のいずれかに該当する事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為
二 前略~、現在若しくは将来の利用の制限、~後略
つまり、知っていれば告知義務が発生します。これは同法35条の重要事項説明の列挙事項に入っていなくても同法47条に抵触しますから、重要事項説明時に説明しなければならないということになります。
と、ここまで書くと、不動産業者は「知らなかった」で全部押し通せてしまうような感じがしますが、以下のような場合に知らなかったと言えなくなります。
1.売主もしくは貸主から、違法建築であることを伝えられていた場合。
2.元付け業者(売主から物件を預った不動産業者)から、違法建築物を伝えられていた場合。
3.敷地面積に対して、建築面積や延べ床面積が建蔽率や容積率を明らかに超えている場合や確認申請証や検査済証が無い場合。
1や2の場合は当然です。
問題は3のような場合です。宅地建物取引業者は建築のプロではありません。建蔽率や容積率が明らかに超えているような場合は、建築のプロ如何に関わらず、違法建築が疑われます。この程度のことは宅建主任者試験にも出ることです。また、売主や貸主に、確認申請証や検査済証の有無を確認して無い場合は、当該物件の行政機関に行けば解ることです。
しかし、一般の不動産業者に、例えば、その居室の採光面積が確保されているかとか、必要換気量が確保されているかとか、建物その物が日影規制に抵触していないかとか、天空率や各種斜線に抵触していないかなどを調べることは不可能です。ですから、このようなことは、売主や元付け業者から、教えてもらわない限り、仲介業者は知りようが無いということになります。
不動産業者が知らなかったから説明をしなかったとしても違法建築物にあることには変りありません。これによって、行政指導がある場合もありますし、罰則規定もあります。その詳細については『違法建築物を賃貸してよいか?』『違法建築物に出店してよいか?』で詳しく説明しています。
違法建築物かどうかの調査は、リデベにご相談ください。
違法建築物に出店してよいか?
まず、大前提になりますが、
違法建築物は、存在そのものが違法です。法では行政処分により、使用禁止や除去(取壊し)、さらに悪質な場合は、刑事処分や罰金刑という場合もあります。これは完了検査を受けていない、各行政の定める条例に違反している等も含めます。
悪質な場合とは
・ 違法建築物に対する行政指導に対し、それを無視する、もしくは度重なる勧告に従わない。
・ 営業を目的とする複数の建物で同様な建築基準法・条例違反を繰り返す。
・ 建築基準法・条例違反であるということを認知していて、それを故意に行う。
実際に、行政処分があるのかと言われると、事例は非常に少ないのですが、いずれも見たことがあります。
そのことを前提に読んでください。
Q.違法建築物に出店してよいか?
【解答】
出店してはいけないとは、言い切れません。
【解説】
『違法建築物を賃貸してよいか?』でも、書きましたが、違法建築を賃貸することは不可ではありません。同様に出店するのも、違法建築物を賃貸すること自体は、建築基準法、借地借家法、民法さらには、消防法、食品衛生法、大規模小売店舗立地法にも定義が無いので、不可とは言い切れないという曖昧な解答になってしまいます。
ただし、『違法建築物を賃貸してよいか?』でも書いたことと同様なリスクが付いてきます。
簡単に言えば、違法建築物は行政処分によって、是正、使用停止さらには除去(取り壊し)命令が出る場合があります。その場合、出店していたとしても、営業を止めなければならない可能性があります。
さらに最大の問題は、違法建築(完了検査を受けていない建物を含む)の場合、用途変更が出来ません。用途変更を必要とするにも関わらず、用途変更をしないで出店した場合は、建築基準法での罰則規定もありますが、火災や地震などによって人身事故が発生した場合は、業務上過失致傷や業務上過失致死などの罪に問われます。
用途変更が必要な状況にも関わらず、用途変更を出したくても出せないのが、違法建築物です。
ですから、
「出店は出来るが、その後、行政処分の対象になる可能性もある。」
ということになります。
出店する場合には違法建築かどうかをしっかり確認する必要性があります。
さらに、違法建築でなくても、居抜き物件などで、
「自分が出店する前も飲食店だったし、自分も飲食店で出展するから用途変更は必要はないだろう。」
と考える人がいるようですが、それは最初から、その建物の用途が飲食店だったか、前の占有者が用途変更を出していたらという条件が付きます。ですから、居抜き物件の場合は、用途が自分の出店する業態になっているか、もしくは用途変更が出されているかを確認する必要性があります。
注意しなければならないのは、一般的な不動産屋さんでは、建物が違法建築物かどうかの判断はできないことが多々あります。用途についても謄本(登記情報)に書かれているものと違うこともよくあります。
建物が違法建築かどうかの調査はリデベにご相談下さい。
公正証書の効力 ~立退きの場合~
ここで、公正証書の効力を書きますが、私は不動産や建築の専門家です。
不動産業界で公正証書を使うとすれば、『事業用定期借地契約』の時ぐらいで、あまり、公正証書を使うことはありません。
※ 専ら事業の用に供する建物を所有する目的で設定される借地権で、契約の更新がなく、契約上の存続期間が経過すれば確定的に終了するものです。この契約は、公正証書によってすることが要件とされています。
では、何故ここで公正証書の効力について書いているかと言うと・・・
公正証書によって、『立退き』(賃借人の退去)の約束が確約されると勘違いしている人が多いからです。土地売買の確約に公正証書を使ったという話は聞いたことがありません。しかし、賃借人の退去の約束を公正証書にしたという話は何度も聞いたことがあります。
「相澤さん、やっと、〇〇町のアパートの人から退去の確約とれましたよ!」
「よかったねぇ。そろそろ、手伝ってあげないと辛いかな・・・。と思っていたけど自分でできたんだ。」
「はい!ちゃんと、公正証書にもしました。」
「なにを?」
「えっ。何をって、〇月〇日までに退去するという約束を公正証書にしたんですよ。」
「もしかして、賃借人を公証人役場に連れて行って、公正証書にしたの?」
「もちろんですよ。」
「公証人から、その公正証書に立退きの効力が無いことの説明無かった?」
「・・・。効力ないんですか?法務部にもチェックしてもらったので内容は完璧かと・・・」
「やっぱり、俺が行った方が良かったかな・・・」
この類のやり取りは何度もしたことがあります。
公正証書の効力は、前述の『事業用定期借地契約』と『任意後見人契約』を除けば、
『金銭債権の強制執行権』
だけです。もちろん、債務者に支払い能力や財産がある場合に限ります。
つまり、退去の約束を公正証書にして、賃借人がその約束の期日までに退去をしなかったとしても、その賃借人をその公正証書で退去させる強制執行権にはなりません。退去の約束をさせる場合には『和解調書』(『即決和解』とよく言われるもの)を裁判所で作ってもらう必要性があります。
もちろん、全く効力が無いかというと、そうでもありません。公正証書というのは、裁判の時に重要な証拠になります。
例えば、賃貸人と賃借人が合意解約を締結し、それを書面にしたとして、その書類に実印で捺印し、印鑑証明を添付したとしても、賃借人がなんらかの形で賃貸人に脅されたと言い出せば、話はややこしいことになります。しかし、公正証書の場合は、公証人という第三者が、内容を読み返し、賃貸人と賃借人にその内容を説明します。その上で、公正証書に押印するので、退去の約束をしたという、ほぼ完璧な証拠になります。
しかし、賃貸人にとって、賃借人に立退きを迫るときというのは、概ね早く出て行ってもらいたい場合が殆どであり、できれば裁判を省略して、裁判費用も掛けたくないはずです。公正証書は重要な証拠になるので裁判には勝てる可能性が極めて高いですが、裁判を経由しないと公正証書の約束を実行できないという場合があるわけです。
また、公正証書を締結しているということで賃借人に精神的圧力を与えることができるという効果もあります。
他にも、金銭に関わらない契約内容の部分、例えば
『本業務が完了するまでは、私は貴方に誠意をもって協力します。』
などという部分を公正証書にしている事例を見たことがありますが、公正証書の意味を理解していないで、上記の通り、後の裁判の際の証拠作りをしたかったのかとしか思えません。もし、公正証書の趣旨を理解していて、この類の約束を公正証書にして証拠作りをしようとしているということは、余程、相手を信用していないということですが、裏を返せば、証拠作りをしないと相手が約束を守ってくれない、つまり、相手に信用されていない人のやることとも言えます。
以前、『立退きの際には内容証明を送ってはいけない』という記事を書きましたが、『立退きの際には公正証書は効力を発揮しない』ということも、よく覚えておいてください。
※ 内容証明を送ってはいけない記事はこちらから・・・【立退き】内容証明
公正証書は、『金銭債権の強制執行権』があると書きましたが、これもただ単純に公正証書を作るだけでは不可です。『強制執行認諾約款』を公正証書内に明文化しておく必要があります。『強制執行認諾約款』とは、債権者が
「支払いを怠った場合には、強制執行をされても異議を申し立てません。」
という主旨の内容です。これが無いと、公正証書が在っても、裁判を経由しないと強制執行はできないということです。
前述の和解調書は個人でもできますが、基本的には弁護士を必要とします。リデベでは、弁護士費用も含めてトータルでご相談に乗ります。
特にお急ぎの場合には、すぐにリデベにご相談ください。
違法建築物を賃貸してよいか?
多くの貸す側、借りる側双方の方が疑問に持っているようなので解説します。
まず、大前提になりますが、
違法建築物は、存在そのものが違法です。法では行政処分により、使用禁止や除去(取壊し)、さらに悪質な場合は、刑事処分や罰金刑という場合もあります。これは完了検査を受けていない、各行政の定める条例に違反している等も含めます。
悪質な場合とは
・ 違法建築物に対する行政指導に対し、それを無視する、もしくは度重なる勧告に従わない。
・ 営業を目的とする複数の建物で同様な建築基準法・条例違反を繰り返す。
・ 建築基準法・条例違反であるということを認知していて、それを故意に行う。
実際に、行政処分があるのかと言われると、事例は非常に少ないのですが、いずれも見たことがあります。
そのことを前提に読んでください。
Q.違法建築物を賃貸してよいか?
【解答】
賃貸してはいけないとまでは言い切れません。
【解説】
色々なリスクが付きまといますが、違法建築物を賃貸すること自体は、建築基準法、借地借家法、民法にも定義が無いので、不可とは言い切れないという曖昧な解答になってしまいます。
では、どんなリスクがあるかというと・・・
・ 地震や火災などの事故があって、賃借人や、それが店舗だったりした場合に従業員やお客さんに被害があった場合は、所有者責任が問われます。
・ 行政処分で、使用停止や除去命令が出た場合に、賃借人に対して、立退き料や営業保証を求められる可能性があります。この場合の使用停止や除去命令は、「借地借家法第18条の正当な事由」には該当しません。違法建築物を作った、もしくは所有していた賃貸人側の都合です。
・ 違法建築の場合、用途変更が出来ません。そもそも、用途変更とは、特殊建築物でない建物を特殊建築物などに変更する(一般的な住宅をホテルに変更する)とか、特殊建築物を別の特殊建築物に変更する(ホテルを病院にする)などのことです。
では、このリスクを回避する方法としては・・・
あらかじめ、賃貸借契約及び、契約前の重要事項説明に於いて、この建物は違法建築であり、行政処分により使用停止や除去命令が出た場合の賃貸人の賃借人に対する補償を決めておくべきでしょう。同様に、違法建築物であるから、用途変更が出来ない旨を説明しておかないといけません。
また、用途変更を行わないで、使用した場合、最終的な責任の所在は、建築基準法第9条により、「所有者、管理者若しくは占有者」となっています。以下の判例は用途変更ではありませんが、建築基準法・消防法などに違反した場合の判例です。
東京都杉並区高円寺の居酒屋で平成21年、14人が死傷した火災で、業務上過失致死傷罪に問われた元経営者、佐藤信一被告(64)ら3人の判決公判が13日、東京地裁で開かれた。今崎幸彦裁判長(斉藤啓昭裁判長代読)は「防火意識の低さは強い非難を免れない」として、佐藤被告に禁錮2年6月、執行猶予5年(求刑禁錮2年6月)を言い渡した。ビル所有会社元社長の高橋昭彦被告(57)、同社社員で防火管理担当だった倉田俊二被告(30)はそれぞれ禁錮1年8月、執行猶予3年(同禁錮2年)とした。
この様に、所有者も管理会社も占有者(賃借人)も一網打尽にされるケースもあります。
地震や火災などの事故に対しては、違法建築であるかどうかは別として、万全の体制をとるべきです。ましてや、違法建築というリスクがある訳ですから、過剰なぐらいの意識を持っておく方がよいでしょう。
違法建築物でお困りの方は、リデベにご相談ください。
※ 必ず解決できるとは言えませんが、状況によっては対策があります。
地目が宅地でない場合、税制面がどのようなことが考えられるか
6.地目が宅地でない場合、税制面がどのようなことが考えられるか。
【解答】
地目が宅地であるか否かは、税制面ではあまり関係ありません。
【解説】
地目が山林であっても、実際には宅地として使われていれば、宅地並み課税が適用されるので、地目によって税金(固定資産税や相続税)を評価することはできないのです。
地目が宅地でない場合の地積
5.地目が宅地でない場合の地積はどのようになっているか。
【解答】
地目が宅地でない場合の地積は、整数で表記されています。
【解説】
宅地の場合は小数点第2位まで書かれています。これは測量制度による問題が大きいのですが、財産価値の問題もあります。
一般的に宅地は外の地目と比べると価格が高いのが一般的ですから、1㎡未満でも表記します。
一番抵当権と二番抵当権の差は何か
4.一番抵当権と二番抵当権の差を答えよ。
【解答】
一番抵当権は、その不動産を担保に最初にお金を貸したということです。二番抵当権は、その不動産を担保に二番目にお金を貸したということです。
【解説】
当然ですが、お金を借りた人がお金を返せなくなって、その担保物件を売却してお金を回収した(これを「抵当権の行使」と言います。)時に、一番抵当権が優先されます。例えば、ある不動産を担保に一番抵当で1億円、二番抵当で3000万円を借りたとします。
残債(返し終わってないお金)が一番抵当に9000万円、二番抵当に2500万円ある時点で、返済不能になったとします。ここで抵当権を行使するのですが、その不動産が1億円でしか売却できなかった場合、その1億円のうち、まずは一番抵当の残債9000万円に当てられます。つまり、一番抵当権者は、貸したお金を全て回収できましたが、二番抵当権者は、まずは500万円を実際に返してもらい、抵当権行使によって一番抵当権者が回収したあとの残り、1000万円を回収します。つまり、1500万円が回収しきれなかったことになります。
二番抵当権者は、回収しきれなかった1500万円を債務者に請求することになるのですが、そもそも、この債務者は、お金が返せなくなったから、抵当権を行使されているわけですから、この1500万円を回収することは不可能になるのです。
では、なんで二番抵当権者は、お金を貸したのでしょうか?
結論だけ書けば・・・
不動産の評価に対して、一番抵当権で設定された価格が安かったからです。
10億円の評価額の土地で1000万円しか借りてなければ、二番抵当権者が1000万円を貸しても二番抵当権者はリスクは少ないと考えられます。
ところが、一番抵当権者が10億円の評価額の土地に対して8億円の抵当権設定をしたとします。その後、景気が良くなり土地の評価額が上がり、土地の評価額が15億円になったとします。この時点で二番抵当権者がさらに3億円の抵当権設定をしたとします。最初は順調に返済もされていたものが、景気が悪くなり返済が滞り始めます。そして、その頃には景気のせいで、土地の評価額が8億円になってしまうと、前述のような事態に陥るわけです。
「表題部」と「権利の部」(甲区、乙区)の違い
3.「表題部」と「権利の部(甲区、乙区)」の違いを答えよ。
【解答】
表 題部を見て解るのは、地目、地積、分筆や合筆がされた経緯ぐらいのものです。権利部(甲区)は、所有権に関する事項が書かれています。現在の所有者が、ど のような経緯でこの土地を入手したとか、所有者が複数いた場合は、それぞれの所有者の持分の割合などが記されています。
【解説】
権利部(乙区)は、所有権以外の権利に関する事項が書かれています。多くは抵当権や根抵当権の設定に関する事項が書かれています。その他にも借地権の設定がある場合に借地権が記載されている場合もあります。
こ こで、重要なのは表題部の登記を「表示登記」といいますが、これは義務です。実は自分でもある程度の知識があれば、意外に簡単にできます。表示登記は義務 ですから、法務局で手数料を取られることはありません。ですから、自分で行えば無料です。時々、勘違いしている人がいますが表示登記は、司法書士の仕事で はなく、家屋調査士の仕事です。家屋調査士に依頼すれば、当然ですが家屋調査士の手数料が発生します。
そして、権利部の登記を「保存登 記」 と言います。保存登記は、自分の権利を登記する訳ですから、義務ではありません。従って、登記する際には法務局に手数料を支払う必要性があります。これ も、自分で出来ますが、こちらはちょっと面倒です。特に抵当権などの登記は自分では、ほぼ不可能です。そして、保存登記は司法書士に依頼します。この場 合、法務局への手数料と司法書士の手数料の双方が発生します。