【賃貸住宅】契約書と重要事項説明書【後編】
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さて、前回の続きです。
この契約はそもそも、おかしな話がありました。
今回の借主Y⇔仲介会社H⇔管理会社(貸主代理)E⇔貸主T
という関係です。ここまではよくあることで、なにもおかしな点はなかったのですが・・・
私に相談してきたのは借主のYさんです。Yさんは木曜日に相談してきました。この木曜日を6月11日としましょう。Yさんの話によると・・・
「『仲介会社Hが13日の土曜日に重要事項説明をします。そこで、前家賃、敷金、礼金、仲介手数料等を12日に銀行に振り込んでください。そして、20日の土曜日に管理会社(貸主代理)Eが重要事項説明をして、20日に契約して鍵を渡します。』といわれてます。」
と言うのです。まず、
『仲介手数料というのは契約が行われないと、受け取ることができません。』
これは賃貸だけではなく、売買でも当然ですが同じです。しかも、重説よりも前に貰うということは、重説を読んで、「こんな条件じゃやだ!」とか「実はこの部屋の前居住者は自殺した。」などということが発覚したら、手数料を返せということになります。特に賃貸の場合は、契約日当日までは重要事項説明を受けないなどということが多いから、前日より前にお金を振り込むと面倒なことになります。
また、なぜか重要事項説明が2回・・・。
これだけでも十分に怪しい物件だったことは間違いありませんでしたが・・・。
さて、まだYさんも管理会社Eとは会っていないというので、仲介会社Hと話すことになりました。仲介会社Hには私はYさんの知り合いで不動産関連の仕事をしている者ということになっています。仲介会社Hは大手で日本全国に支店を持っている会社で、今回の担当者はまだ若い業界経験の浅そうな30前後の人です。
私が前回の話の通り、おかしな部分を説明すると・・・
「そうなんですよ~。とりあえず、管理会社Eから送られてきた契約書と重説をYさんに送ったんです。」
「いや、送ったって、御社だってこの契約じゃ、まずいだろ」
「ええ、とにかく指摘された部分を管理会社に言ってみます。」
「明日までにお金を振り込むっていうのもおかしいぞ。」
「はい、その件も・・・」
と、しばらくすると仲介会社Hから電話が掛かってきました。
「え~っとですね~。まず重説の(2)の細々とした内容
なんですが、そのままにしてくれって言うんですよ」
「いやいや、東京ルール違反だろ」
「それも言ったらですね。『東京ルールは原状回復の範囲を書面で説明することであって、それに付随するガイドラインはあくまでガイドラインだから法的拘束力はない』と言うんですよ。」
※ガイドラインそのものに法的拘束力がないのは事実です。
「しかし、そのガイドラインは今までの判例をまとめて、わかりやすくしたものだから、訴訟になれば負けるのは管理会社と貸主だろ。それにこの特約内容じゃ消費者契約法10条で特約そのものが無効になるぞ」
「そ・・・そうなんですけど・・・。やれるもんなら、やってみろって感じで受け付けないんですよ。」
『なんて強気な・・・。この契約はダメかな・・・』
と思いつつも・・・
「では、契約書8条4項
の件は?」
「同じような感じです。これも東京ルールの話をしたんですが、『うちは退居したら次の人のために必ずクロスと床は貼りかえるんだよ』と言われまして・・・」
「話にならないなぁ・・・、じゃあ特約の(5)の前居住者の残置物の件は?」
「それがですね、『今回は残置物は無い』っていうんですよ。」
「じゃあ、この項目は削除しろって言ったか?」
「言いました。そうしたら、『これはフォーマットだから直せない。』って言うんですよ。」
「あのなぁ・・・、これじゃあ、エアコンが残置物としか読みようがないだろ。そして、エアコンの故障による交換は借主負担になっちゃうだろ!」
「っていうか、それが狙いなんだと思います。」
「だろうなぁ・・・。しかし、フォーマットっていうことは、みんな、このフォーマットで
今までやってきたのか?」
「今までずっと、このフォーマットでやってきて問題ないと・・・」
「ほう・・・、じゃあ、賃借人が残して『言った』は恥ずかしいからせめてそこだけでも治せ。と言っておいて」
「あはは・・・じゃあ、その件は管理会社S不動産に言っておきます。」
「ん?管理会社はEだろ?」
「あああ、この会社、前はSって言う名前だったんですよ。社名変更をしたのか、会社を分けたのかは解りませんが・・・」
「え?じゃあ、S不動産って○○町にあるS不動産か?」
「よく、ご存知ですね~」
「なるほど・・・、君の話せる相手じゃないよ。この契約は破談にしよう。Yさんには私からよく言っておくよ」
やっと、思い出しました。
最初に管理会社Eという名前をどこかで聞いたことがあるとは思っていましたが、S不動産の名前を聞いて・・・。
このS不動産というのは業界の中では広域指定暴力団S会のフロント企業で有名な会社です。トラブルも絶えません。
その旨をYさんに話して、Yさんは別の物件を探すことになりました。契約書だけではなく、相手のことも良く調べないといけないな・・・と思いました。
その後、仲介会社Hの担当者はYさんに余程、悪いことをしたと思ったのか、つきっきりで面倒をみて、なんとか満足のいく部屋を見つけてあげました。
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安い仲介手数料でもがんばるから・・・
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