賃貸住宅に対する消費税増税の対応

連載シリーズ 【 賃貸住宅に対する消費税増税の対応 】 第 3 話 / (全 4 話)

そもそも、住宅は課税対象にはなりません。

その為、賃貸住宅の場合、消費税が増税になったからと言って、それだけを理由に賃料を上げるということはおかしな話になります。

貸主が宅建業者ではなく、かつ貸主本人から、それを告知するのであれば、特段と罪になることはないです。(借主が消費者庁あたりに、文句を言えば、何らかの注意を受ける可能性はあります。)しかし、当然ですが、課税対象ではないので、借主に拒絶、もしくは無視されても、何ら文句を言うことはできません。

では、貸主が宅建業者であり、貸主から告知する場合や、貸主がそれを仲介業者や管理会社(管理会社が宅建業者だった場合)は、違法行為となります。

なんの法律に抵触するかというと、宅建業法第47条に抵触します。

第四十七条  宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をしてはならない。

  宅地若しくは建物の売買、交換若しくは賃借の契約の締結について勧誘をするに際し、又はその契約の申込みの撤回若しくは解除若しくは宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため、次のいずれかに該当する事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為

この『故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為』の部分に抵触するのです。

先に書いた通り、住宅の賃料は消費税の課税対象外です。それにも関わらず、借主に、あたかも住宅の賃料に消費税が課税対象であることを告げる行為は、『故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為』となります。

仮に、その仲介業者が、『住宅の賃料は課税対象外』ということを知らなければ『故意に事実を告げず』の部分には対象とはならない可能性はありますが、一般的には

「そんなことも知らずに、宅建業者をやっていたのか!」

と判断されるでしょうし、知っていたかどうかは別としても『不実のことを告げる行為』に対して、言い訳はできません。

しかし、貸主側の気持ちも解らなくはありません。

そもそも、住宅の賃料が課税対象外であっても、賃貸住宅の維持管理費は、課税対象ですから、建物所有者である貸主は、その賃貸住宅の維持管理費において、消費税は払うけど、貰うところがないという矛盾したことが発生します。さらに言うならば、住宅を購入する際には、建物代には消費税は税対象ですし、その建物の維持管理も所有者が消費税は課税されます。

このことから、借主に、「消費税が増税になったことにより、維持管理費が上がったので賃料を値上げしたい」という旨を正直に伝えるべきでしょう。

これは私見になりますが、私は賃貸住宅の所有者保護のことを消費税増税の際に考えておくべきだったと考えています。

消費税増税の際にもっとも懸念されていたことは、消費税増税は経済的弱者を苦しめるということでした。その観点からも「貸主と借主では、借主は一般的に経済的弱者」という判断をしたのだろうことが想像されます。それは、一部の考え方において事実なのですが、現在の賃貸住宅というのは、投資目的で所有している割合が非常に増えています。もちろん、地主が持っているものも依然として多いのも理解しています。

しかし、現在の消費税率について、私は以下の理由から上げざるを得ないと考えています。

① 社会保障費などが高齢化社会にともない増えていくこと

② 日本経済を相対的に守るべく法人税率を引き下げること

③ 所得税に関しても、富裕層が資産管理会社化することや、海外移住などをされた場合、対処が難しいことから所得税も諸外国以上には、上げにくいこと

④ 諸外国の消費税率が日本よりも高い国(特に先進国)が多いこと

以上のことから、消費税は上がっていくと考えています。

この場合、日本の住宅に関する賃料の考え方、特に敷金に関する法律を考えてみると、

『通常の生活を行っていて、損耗したものについては、賃料の範囲に含まれるから、その修繕費用を敷金で負担させてはならない』

と、なっています。とすれば、建物の維持管理費や共益費が、消費税の課税対象に含まれなければ話は矛盾してきます。

もし、この状態を放置して、消費税を上げていくと考えます。

よく、分譲マンションや、分譲戸建て住宅の販売の際に、現在、支払っている家賃と住宅ローンの比較が出てきます。

ところが、消費税が増税していくと、分譲マンションや分譲戸建て住宅の販売は、常に消費税分のハンデを背負うことになります。これから建てる新築の賃貸マンションやアパートは、その分、最初から家賃に上乗せすればという稚拙な意見もあります。家賃というのは、掛かった原価で決まるものではなく、周辺相場で決まるものです。このことから、新築の賃貸マンションへの投資は減り、さらに分譲マンションや分譲戸建ても減っていきます。これは、日本経済にとって決して良いことではありません。

もちろん、借主に私の私見を展開してもご理解してもらうことは出来ないということは、よく解っています。人間と言うのは、原則として社会よりも個人を大切にする傾向にあります。

そのことからも、賃貸住宅に於いて、今回の消費税増税に伴う、賃料の値上げに関して、借主には、住環境維持のために協力を願いたいということを説明するべきだと私は考えています。

私も賃貸住宅に住んでいます。ちょっと古いですが、非常に住環境の良い賃貸マンションです。私の住んでいるマンションが、家族のためにもいつまでも良い住環境を維持するために貸主と一緒に考えていくべきだと思います。借主も住環境維持を何か考えるべきだと思います。

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