検査済証が無いと増築や用途変更はできないか?

連載シリーズ 【 検査済証が無いと増築や用途変更はできないか? 】 第 1 話 / (全 6 話)

今回は、当社に寄せられる質問の中でも非常に多い質問なので、ここに整理しておきたいと思います。

Q.検査済証が無くても増築や用途変更はできるか?

A.原則的にはできません。

※平成26年7月2日に国道交通省より

「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合調査のためのガイドライン」

が発行され、検査済証がなくても、増築や用途変更が出来る可能性が出てきました。

ご希望の方は当社まで、お電話をください。

詳細記事についてはこちらを参照ください。

『確認済証や検査済証が無い場合に増築や用途変更の方法』

平成26年8月5日追記

さて、ここで原則的に出来ないと書いたのですが、非常に困難な工程を乗り越えると、出来る場合もあります。それについては後述します。

よく、質問で頂くのですが、

「確認申請はあるのだが、検査済証がない。建蔽率(けんぺいりつ)や容積率はオーバーしてないのですが・・・」

というのがもっとも多い(くだり)です。

ここで、「違法建築」という言葉について書いておきます。

実は「違法建築」などという言葉は、建築基準法及びその関連法規には出てきません。つまり、「違法建築」などという、法律用語は原則的には存在しません。地域条例や、その他の全く関係のない法律に出てくる可能性はありますが、言葉の定義がなされているものは見たことがありません。

とすると、俗に言う「違法建築」とは、何を指すのかという疑問が生じます。これに、ついて私が国土交通省住宅局建築指導課に確認したことがあります。

「建築基準法及び、その関連法規(建築基準法施行令、建築基準法施工規則、建築士法)に抵触している建物及び、建てられようとしている建物(工事中の建物)」

という回答でした。

これについて、行政機関(市区町村など)に尋ねてみると、おかしな回答をする人がいます。

「検査済証が無い、即ち完了検査を受けてないというのは、手続き上の瑕疵であり、建築基準法及びその関連法規の技術的指針に即座に抵触しているとは、言えないので違法建築とまでは言いきれない。」

もっとも、この回答をした担当者は、私に論破されることになります。さて、私がどのように論破したかは置いておいて、『検査済証』が無いということが、既に建築基準法に抵触しているのです。

建築基準法第7条  

建築主は、第6条第一項の規定による工事を完了したときは、国土交通省令で定めるところにより、建築主事の検査を申請しなければならない。

2  前項の規定による申請は、第六条第一項の規定による工事が完了した日から四日以内に建築主事に到達するように、しなければならない。ただし、申請をしなかったことについて国土交通省令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。

3  前項ただし書の場合における検査の申請は、その理由がやんだ日から四日以内に建築主事に到達するように、しなければならない。

4  建築主事が第一項の規定による申請を受理した場合においては、建築主事又はその委任を受けた当該市町村若しくは都道府県の職員(以下この章において「建築主事等」という。)は、その申請を受理した日から七日以内に、当該工事に係る建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合しているかどうかを検査しなければならない。

  建築主事等は、前項の規定による検査をした場合において、当該建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合していることを認めたときは、国土交通省令で定めるところにより、当該建築物の建築主に対して検査済証を交付しなければならない。

以上のことから、検査済証が無いということ自体が、建築基準法第7条に抵触していることになります。但し、ここで言う、「無い」のと「紛失した」のは、意味合いが全然違います。紛失した場合は、当該建物の所管行政庁に行き、確認申請等を受け付けてくれる部署に行き、台帳記録を見せてもらい、そこで検査済証が発行されていることが確認できたら、「台帳記載証明」を貰ってくることで、検査済証の代用となる場合もあります。

さらに、建蔽率や容積率がオーバーしていないというのは、直ちに建築基準法に違反していないということを示すものではありません。単に同法第52条と第53条が守られているということにすぎないのです。

では、検査済証が無いとどうして、増築や用途変更が受けられないかの法的根拠を示しておきます。

第6条  建築主は、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号から第三号までに掲げる規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第四号に掲げる建築物を建築しようとする場合においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地、構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。以下同じ。)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない。

以下、省略

と、何が書いてあるのか難しいので、簡単に整理をします。第一号~第四号という言葉はこの際無視してください。

建築主は、建築物を建築、大規模の修繕若しくは大規模の模様替えをする時には、その計画が建築基準関係規定(建築基準法及び関連法規)に適合するものであることについて、確認申請を提出して、建築主事の確認を受け、確認済証を受けなければならない。

ここで言う、建築物の建築というのも建築基準法に用語の定義がされており、

第2条  この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

十三  建築 建築物を新築し、増築し、改築し、又は移転することをいう。

この事から、増築は法律上、建築に該当するのです。そして、建築をする場合は、その計画が建築基準法関係規定に適合しなければならないことから、完了検査を受けていない(検査済証)がない建物は、同法第7条に適合していないので、増築ができないということになります。

また、用途変更に於いても結果的に同じことが言えるのですが、増築とは、建築基準法の法律根拠が違う場所にそのことが書かれています。

第87条  建築物の用途を変更して第6条第一項第一号の特殊建築物のいずれかとする場合(当該用途の変更が政令で指定する類似の用途相互間におけるものである場合を除く。)においては、同条(第三項及び第五項から第十二項までを除く。)、第6条の二(第三項から第八項までを除く。)、第6条の三(第一項第一号及び第二号の建築物に係る部分に限る。)、第7条第一項並びに第18条第一項から第三項まで及び第十二項から第十四項までの規定を準用する。この場合において、第7条第一項中「建築主事の検査を申請しなければならない」とあるのは、「建築主事に届け出なければならない」と読み替えるものとする。

これまた解りにくいのですが、用途変更に於いて、同法第6条の規定が準用されるので、確認申請を出さなければならず、増築で書いたこと同様に、用途変更ができないということになります。

※用途変更の場合は、通常の建築(新築)や増築と違い一部の地域(富山市等)を除き、完了検査を受ける必要はありません。但し、工事完了届は通常通り、提出しなければなりません。

では、全くできないかと言うと、方法が無い訳ではありません。同法第86条の7 既存建物に対する制限の緩和を利用します。

まず、検査済証が無いということは、完了検査を受けていないということなので、確認申請通りに建物が建てられているかどうかの行政機関によるチェックを受けていないということになります。

そこで、確認申請通りに建物が建てられているかの、チェックを建築士に依頼してやってもらわなければなりません。

この時に必要になるのが

・ すべての建物共通で、確認済証、確認申請時の設計図書一式

・ 木造で3階建て以上もしくは200㎡以上の場合には構造計算書

これがなければ、スタートすらできません。

この条件が揃ったとしても、確認申請通りに建てられてなければ、確認申請通りの建物に是正しなければなりません。(確認申請書通りに建てられていない建物の場合、ここで殆どの方が断念します。)

さらに、この仕事を引き受けてくれる建築士を探さなければならないという問題も発生します。もともと、建築基準法に抵触している建物ですから、それを行政に代わって、民間の建築士が、その責任において、それを証明するという仕事を受けたがらないからです。当社では、請け負ってはいますが、建物本体と必要書類一式を見させて頂いてからの判断となります。

また、増築や用途変更をする場合において、検査済証があったとしても、既存不適格があった場合、一部の既存不適格は現行法に合わせないと、増築や用途変更が出来ないことも注意が必要です。

※平成26年7月2日に国道交通省より

「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合調査のためのガイドライン」

が発行され、検査済証がなくても、増築や用途変更が出来る可能性が出てきました。

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『確認済証や検査済証が無い場合に増築や用途変更の方法』

平成26年8月5日追記

 

 

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