不動産価格の周期性
『不動産価格の周期性』などが解ったら、苦労はいりません。
もっとも、投資用の不動産用地であれば、ある一定の規則性はあります。インフレ率がゼロであればアップトレンドの時は価格が高くなれば投資家の投資意欲が減っていき価格上昇率は鈍化し、いつか高値を踏んで価格は下落に転じます。ダウントレンドの時は、価格が安くなるれば、投資家の価格意欲が増してきて、価格の下落は鈍化し、いつか底値を打ち、価格は上昇に転じます。これは株や先物と同じです。
昨今、不動産価格が底打ちかどうかという話がありますが、価格下落が鈍化しているし、安くなったことで投資家の投資意欲が増してきているのも事実です。ただ、ワンルームマンションを見れば、金融機関の投資用マンションに対する貸し出し評価がまだまだ厳しいこと、J-REITを見ればたしかに想定利回りは相当に高くなっていますが、J-REITそのものに不安を感じているので、そちらのリスクが払拭できないでいると思います。そこで二番底懸念の様な話がでるわけです。
個人的には実需不動産価格との関連性も無視できないと思っています。実需不動産価格で言えば、マンション販売戸数は12月が必ず多くなる傾向がありますが、今年はボーナスの最大の落ち込みが解っていますから、販売戸数が増えれば、契約率の大幅低下は免れないと考えています。とすれば、決算期の3月辺りに、再び値引きをして販売するという形になり、3月ごろに不動産価格は再び下落に転じ、来春に二番底を迎えると考えています。
この様に大きなトレンドはファンダメンタルからある程度の想像はつきます。しかし、周期性はなかなか読み取ることができません。それは、株価や先物の価格に『決定的』な周期性が無いのと同じです。
理由は簡単です。
その価格の決定は『人間』が行っているからです。つまり、テクニカルな要因がそこに関わってくるからです。また、インフレ率をゼロとしていますが、ゼロであり続けるわけがなく、必ずプラスかマイナスに動きます。つまり、外的要因も大きくそこに関わってきます。
株価や先物取引に於いて、『罫線』があります。不動産価格にこれを使わないのはその取引が株や先物取引ほど、同一のものに対して、取引回数の絶対数が圧倒的に少ないからです。
しかし、似たようなことは出来るのではないかと考えています。
株価はある一定の景気動向を示しています。不動産価格もそれに近い動きはしています。
周期性は導き出せなくても、株価や株の出来高、それに金利との関連性はある程度は導きだせます。
前述の様に決定権が人間にある以上、完全に一定の法則を見つけることは不可能です。
酒田五法という株の罫線解読法がありますが、これは経験則から成り立っているはずです。万能ではもちろんありませんが、ある程度の役には立っていると思います。(私は株をやらないので、酒田五法を利用したことはありません。)
しかし、経験則から解るということは、明らかに関連線のある経験値を数式の左右に並べて回帰分析を行えば、なにか出てくるのではないかと思っています。
例えば・・・
商業地であれば
公示価の変動≒株価&株の出来高とLIBOR
住宅地であれば
公示価の変動≒所得動向と税率と人口と長期金利
建築価格はどの様に絡めるんだろう???
まだまだ関連項目があるとは思いますし、上記だけでも循環参照をしている感じがします。ということは、株価とLIBORの関連性や所得動向と長期金利の関連性なども考えないといけないことにはなります。
きっと、どこかのエコノミストや金融機関なんかで誰かがやっているんだろうけど・・・。
なんの役に立つかは解らないんですけど・・・。
そんな、本やサイトを知っている方がいらしたら、教えて下さい。
収益還元法と取引事例法と相場観
さて、今日は忙しい中で、私の会社の社員と話していた会話です。
「私はなかなか、相場観が掴めないんですよ」
この社員はもともとは設計屋さんです。この2年ぐらいで一気に商業系の不動産の世界に飛び込み、それなりの実績を上げてきています。
「そんなことないだろ。それこそ、いい勘してると思うんだけど・・・」
「でも、最近は本当に見てきたものが日々変わるので・・・」
「たしかにそうだな。2年前と比べたら賃料相場も地価相場も激変しちゃったからねぇ・・・」
という会話でした。
しかし、私には一つの目線としているものがあります。
不動産価格がアップトレンドだった時代は不動産鑑定士に鑑定してもらった価格が一つのラインでした。
不動産鑑定士の鑑定方法というのは・・・
収益還元法と取引事例です。
不動産鑑定士になるには非常に難しい試験に合格しなければならないのですが(受けたことが無いので本当は難しいかどうか知りません。倍率から想像すると難しいだろうと思っている次第です。)
ところが、この収益還元法も取引事例も怪しいものなんです。
収益還元法というのは簡単に説明すると
キャップレート(投資家の期待利回り)から逆算する不動産価格です。
つまり、
(不動産が得られる収入(賃料もしくは想定賃料)-ビルの管理費や税金などの支出)÷不動産の取得価格=利回り
となります。
しかし、その物件が新規開発物件(新しくビルを建てるなどの土地)の場合は賃料は全て想定賃料です。
ということは、得られるであろう賃料は周辺相場と賃料上昇率などから想像することになります。ここが非常に怪しいことになります。賃料の上昇率を加味すれば、賃料は永久に上がることになります。不動産鑑定士は景気動向などは考慮に入れません。
また、投資家の期待利回りも怪しいもので、どこぞのファンドがこのエリアで利回り○%で買ったという情報があればそれが期待利回りだったりします。
『それって・・・取引事例であって、収益還元法じゃないんじゃない?』
と言いたいことが多々ありました。
また、取引事例ですが、不動産鑑定士は取引事例を全て知っているわけではありません。というか、全然知りません。せいぜい、解るのはレインズや日経不動産マーケット情報に出ている情報です。
ところが、こちらは実際に売買を多々している不動産屋です。不動産鑑定士なんかよりも遥かに取引事例を知っています。
そこでこんなことがありました。私がある物件の検討をするにあたって不動産鑑定を依頼した某大手不動産鑑定事務所のT所長から電話です。
「相澤さん、この辺のキャップレートっていくらぐらいですかね?」
「○○○コーポレーションは△%ぐらいなら買うって言ってましたよ。」
「じゃあ、キャップレートは△%にしておきます。ところで、この辺の取引事例はありますか?」
「こことあそこはうちが××不動産に○○億で売りましたよ。それから、そこはうちが○億で買いましたよ。」
「じゃあ、それをレポートに入れておきます。」
と出来上がった不動産鑑定資料で金融機関がお金を出してくれました。
つまり、不動産鑑定士に依頼しておいて、鑑定内容は私の言いなりだったわけです。
なんでもありの時代でした・・・。
ところが最近は・・・
収益物件であっても実需物件(マンションや戸建などを建ててエンドユーザーに売却する物件)でも私は路線価を基準にしています。
理由は簡単です。金融機関が路線価ベースで融資してくるからです。
2年前は路線価の5倍以上でも融資していた物件がいくらもありましたが、最近は路線価辺りが融資の上限です。つまり、収益還元も取引事例も意味が無いわけです。(不動産鑑定士もまったく意味がないことになりますが・・・)
これが私の相場観というわけです。
楽しい不動産投資
金貸し屋嫌い2
今日はまず地震で目が覚めました。
私の自宅付近では震度3程度だったので、我家に限っては被害はなかったのですが、我家は水槽がいっぱいあります。飛び起きて、水槽を押さえにいきます。
東名高速の路肩が崩壊して、さらにはけが人も大勢でていますし、また余震も続いています。ちょっと、不安になります。
銀行嫌いの続きです。
今回は抵当権解除で辛い目にあった話を書こうと思いましたが、その前にある会計事務所から聞いた話を書きます。
最近は大型の倒産件数がめっきり減っていますが中小の倒産は未だに止まっていない様子です。
政府は対策として、
政府保証による緊急融資制度を設けて、各金融機関に融資をする様に要請しています。
そんな中で、酷い話を聞きました。
政府保証の緊急融資制度を活用して会社の運転資金を調達した。しかし、金融機関はその緊急融資制度で融資してもらったお金を、以前の借金の返済に充てさせた。
という話です。
これでは、この会社は実質上、運転資金を得れたことにはなってない上に、銀行からしてみれば政府保証があるためにノンリスクの債権に変わったことになります。
緊急融資制度がなんの為にあるのかわからず、実質上、運転資金が手に入らないので、倒産する可能性が高くなります。
この融資を受けた企業が倒産すれば、紙くずとなる債権は政府に行き、その損失は政府が被る、つまり税金によって保証されるということです。
これでも、
「銀行が好きです。」
という人は、銀行関係者か物好きしかいないと思います。
もっとも、銀行がなければ、企業は成り立ちません。ただ、銀行に上手く扱われるのではなく、銀行を上手く活用しないといけません。
次回は本当に抵当権解除について書くから・・・
金貸し屋嫌い 最終回
平成16年頃になると、Jリートなどの話も有名になり、NHKなどで、不動産ファンドやノンリコースローンの特集が組まれるなどを始めます。また、SPCを作ってノンリコースローンさえ、曳ければ比較的容易に資金力の無い、不動産会社でも不動産投資が出来るようになりました。
それによって、この頃になると、今まで殆ど聞いたことも無かった様な新興不動産会社やアセットマネージメントを行う会社、また、今まで、謄本を見ても決して出てくることのなかった、外資系金融機関や不動産投資専門のノンバンクなどが出てきます。
※新興不動産
アーバンコーポレーション、プロパスト、アイ・ディー・ユー、CRE、ゼファー、ジョイントコーポレーション、ランド、原弘産、エスグランド・・・などなど、上げればキリが無いのですが、この頃までは聞いたこともない会社ばかりでした。この会社の中には10年で三井不動産を超えるなどと豪語していた会社もあります。また、この会社の担当者に至っては「他人の金で金儲けをするのは楽しい・・・」などと言い出す始末でした。
※アセットマネージメント会社
この頃になると、
「僕の仕事はアセットマネージャーなんだよ・・・」
という人が増えてきます。そのまま訳せば『資産管理をする会社』『資産管理をする人』なんですけど、基本的には不動産資産管理の専門家ですが、どうやってお金を用意するとか、物件の売買をして、手数料で儲ける人達です。従って、物件が動かなければ仕事にならないので無理矢理でも物件を動かそうとします。その為、過剰な地価上昇に一役、買った会社です。
※外資系金融機関
外資系金融機関で一番、荒っぽいことをしていたのは言わずとしれた『リーマン・ブラザーズ』ですが、個人的な感想としては『メリルリンチ』も大差ありませんでした。その他にもゴールドマンサックス、クレディ・スイス、ドイチェ、カリヨンなどなどが積極的に融資します。本当は自分達で直接投資したかったのか、中には休眠不動産会社を反社会的勢力に買収させて、その会社に融資して不動産を買わせるなどかなり、悪質なこともありました。
話がそれそうなので、本題に戻ります。
その頃、私の勤めていた会社(戸建の注文住宅や分譲住宅の会社)だったのですが、収益不動産に力を入れて行くようになります。私もその部署に移動になりました。
そして、ある会社の本社ビルが売却になっているという情報が手に入りました。
その会社は老舗の呉服屋A社です。もともとは東京の会社ではなかったのですが、バブルの頃に東京に本社ビルを作り移転してきたそうです。
実際に、A社の社長にお会いしました。
東京に移転してきた経緯は・・・
当時のメインバンクから、東京に本社を移転しないかという誘いがあった。たしかにお客さんも首都圏の方が多く、東京進出は憧れでもあった。土地代の融資を含め、土地はその銀行があてがい、ゼネコンもその銀行が用意してくれるということだったそうです。その話に乗って、東京に本社ビルを作ることになったそうです。
私は物件の調査を始めました。
その土地はバブルの時に転売を繰り返され、わずか、2年の間に4倍の値段になっていました。その銀行も抵当権融資をどんどん追加していきます。最後の出口として、実需の人を探したことが容易にうかがえます。
また、そのゼネコンも当時、その銀行に多額の負債を抱えている中規模のゼネコンでした。たしかに立派な本社ビルですが、当時の施行費(見積と領収書を見せてもらいました)が、なんと、施行床面積辺り450万円/坪です。どう高く見積もったとしても、普通の価格の3倍以上です。つまり、その銀行とゼネコンは組んで、その利益で負債の返済に充てさせたわけです。
しかし、呉服の需要が低迷するなか、その本社ビルの負債の金利がその会社に重く圧し掛かっていました。
そこで本社ビルを売却することになったわけです。
希望売却価格は5億5千万円でした。(抵当権は12億円付いていましたがいくらかは元本返済がされていたと思います。)
私がはじいた価格は4億6千万円、会社の稟議を取った価格は4億7千万円でした。
私はA社の社長と、その抵当権者である銀行の担当者と打合せを行いました。
その場で銀行の担当者は言いました。
「相澤さん、いい線ですね。実は当行としても4億6千万円なら抵当権解除の了解を取っています。正式な回答は決済が必要ですが、大丈夫だと思います。」
A社の社長も胸をなで降ろしていました。
契約は2週間後となりました。
そして、契約日、前日です。
こちらは、契約書のリーガルチェックも全て終わり、さぁ、明日は朝から契約だから、今日は早く帰ろうと思っていた矢先でした。
銀行の担当者から電話です。
「相澤さん・・・言いにくいのですが、契約を延期していただけませんか?」
「なんでよ!?」
「支店長がその価格では抵当権を解除できないと・・・言い出しまして・・・」
「何を今更、言ってるのよ!こっちはキャッシュも用意してるんだぞ!今更、上になんて言うんだ?それにそっちだって、稟議取ってるんじゃないの!?」
「口頭ベースでの了解は取っていました。最終稟議の段階で蹴飛ばされまして・・・スイマセン・・・僕の力では・・・」
契約日です。
私は上司に一応、その旨を伝え、その銀行の支店に向かうことになりました。
そして、担当者では話にならないので支店長と話すことになりました。
「どういうことなんですか?」
「いや、このアップトレンドのご時勢でしょ。なにも弊行がそこまで損切りしてまで売却することはない。という判断になりましてね・・・」
「じゃあ、あといくら出せば・・・」
「4億8千万なら・・・考えても良いんですが・・・」
「あのねぇ、うちだって、ちゃんと調査しているんですよ。
御行が、14年前にこの土地の最終出口でA社に売りつけ抵当権を回収している。
また、御行に対して債務超過にあったゼネコンに明らかに高い価格で本社ビルを建設させているじゃないですか!しかも、そのゼネコンはその後、倒産している。
しかも、今日は契約日ですよ?契約日になって、あと2千万上積みしろとは、とてもメガバンクと言われる御行のやり方とは思えません。」
「なんて言われても結構ですが、昔の話は弊行が合併する前の話ですから、私も解らないです。とにかく、あと2千万円上積みして、頂けませんかね?なんだったら、弊行が御社に対して融資しても構いませんよ。まぁ、御社だからなんですけどね。」
「あのなぁ、ウシジマくん、それがあんた達のやり方ですか?」
「私はウシジマではありませんが・・・」
「よく、社会勉強するんだな。うちはあと2千万円の上積みもしないし、この物件の購入の話は降ろさせてもらいますよ!」
※ウシジマくん・・・その頃から、スピリッツで連載の始まった「闇金ウシジマくん」という漫画の主人公。詳しくは・・・↓を・・・
- 闇金ウシジマくん 1 (ビッグコミックス)/真鍋 昌平
- ¥530
- Amazon.co.jp
「大丈夫なんですか?御上司に判断を仰がなくても・・・」
「ナメルナ・・・。うちはね、私が本件については全権を委ねられてるんだよ。私の言うことが会社の総意だと思ってもらえれば結構です。」
※その会社では、稟議内の金額であれば、全権委任をされた担当者はその場で判断してよいことになっていました。
と言って帰ってきました。
その銀行は私の勤める会社の準メインバンクでもありました。その話は私が話した支店長から本店経由でうちの会社が付き合っている支店に伝わり、私が会社に戻った時には私の会社の上層部にも伝わっていました。
帰ると同時に社長室呼び出しです。社長に謝らなければ・・・。
「申し訳有りませんでした。」
「いや、相手は足元を見たつもりなんだろう。その場で断った相澤の判断は正しい。」
「ありがとうございます。」
「しかしだ・・・。相澤は相手の支店長のことを『闇金』呼ばわりしたそうだな・・・。」
『げっ・・・、もう解っちゃったの・・・』
と言いたいのを押さえて・・・
「も・・・申し訳ありません。つい、頭にきちゃいまして・・・」
「始末書書いてね。自己記録更新だな。」
※創業50年以上の上場会社でしたが、始末書の枚数がトップでした。しかも、もう退社された2位の方にダブルスコアーをつけて・・・。
「はい・・・。」
「あと、相澤の始末書はいつも同じ文面だけど、フォーマットを使わないで、今回は手書きね!」
「は・・・い・・・」
と始末書を書くハメになりました。別に始末書は書いても特にそれ以上の罰則がないので、痛くは無いのですが社内に公表されるので、からかわれることになります。
しかし、その後、その銀行は抵当権解除の額をどんどん釣上げていくことになります。同じ物件が平成19年の初めに7億5千万円で情報が回っていました。買うつもりはなかったのですが登記情報を取り寄せると、所有者はA社のままでした。
そして、今でもA社が所有者のままです。
今でも、A社はその金利に苦しんでいます。
だから、私は金貸しが嫌いです。
長々と読んで頂いて、なんなんですが・・・ついでに
金貸し屋嫌い1
私は銀行が嫌いです。
と・・・いきなり、なんの話をしだすかと言うと・・・
不動産と金融機関というのは切っても切れない関係です。しかし、私は過去に2度程、銀行に辛い目に遭わされたことがあります。
一度目はまだ、日本がバブル崩壊後の苦しみに喘ぐ平成9年のこと・・・。二度目はやっとバブル崩壊から日本が立ち直った平成16年のことです。
平成9年のとき、私はまだ、不動産の仕事はしていませんでした。
あるハウスメーカーで積算や購買関係の仕事をしていました。
その頃の住宅需要の落ち込みは戦後最大と言われて(今の方が遥かに酷いですが・・・)、各ハウスメーカーが悲惨な状況でした。昭和の時代には、大ハウスメーカーと言われた、殖産住宅、太平住宅が相次いで倒産、その他にも木下工務店・・・マンション業界も長谷工や大京が、ゼネコンも熊谷組や佐藤工業が経営危機に陥るなどかなり激しい状態でした。
もちろん、金融機関もどんどん併合していきます。かつては都銀13行といいましたが、今ではそれが何銀行だったのかを思い出すのも苦労するぐらいです。
その頃、私のいたハウスメーカーも生産量はどんどん減っていきました。
※ハウスメーカーと言っても、殆どの部材はOEM生産なり、既製品を使うし、現場の職人さんは社員ではありません。(一部の大工さんは社員の場合もあります。)
その為、社員の給料を減らすのは当然ながら、外部への発注量もどんどん減っていきます。
また、平成のはじめ頃までは戸建には和室が1つか2つは最低でもありました。しかし、和室の需要が減り、和室の部材の発注量は追い討ちをかける様に少なくなっていきました。
私の勤めるハウスメーカーの創業時から支えてくれていた、表具屋さんへの発注量もどんどん減っていき、その表具屋さんはいよいよ資金繰りが厳しくなっていきました。
私はその表具屋への発注担当だったのですが、そこの社長と金融機関に返済日の延期を金融機関に行きました。私の勤める会社の戸数が回復すれば必ず、その表具屋さんに発注を依頼するという書面も持っていました。金融機関からは支店長クラスの方も出て、口頭ですが了解をしていただきました。
しかし、その約束は守られませんでした。
その社長は亡くなりました。
僅かな社員の退職金だけは支払うことができたそうです。
葬儀の日、その社長のお子さんに
「人殺し」
と、泣きながら言われました。
しかし、今ではそのお子さんも成人しています。ご結婚され、住宅購入の際には私にいろいろ相談があり、良いお付き合いをさせていただいています。
私は金融機関、特に銀行は、
「企業を育て守っていく」
本来の企業理念があるはずです。
しかし、今の日本の銀行はそんなことは考えてないと思います。もちろん保身で精一杯なのもわかりますが、企業としての目的を見失っているのは事実だと思います。
「儲かるところに投資する。」
ただ、それだけではないでしょうか?ユダヤ系の外資金融機関と何も変わらなくなっていると思います。
銀行というのは、経営を一緒に考えて、有効な資金活用を提案しながら融資するのが、本来の仕事ではないでしょうか?
その表具屋の社長が亡くなったのは銀行だけのせいだとは、もちろん思っていません。私の責任も少なからずあったと思っています。しかも、その約束を守れなかった、銀行も今ではありません。
次には抵当権解除を書くから・・・
投資用分譲マンション
目に飛び込んで来たのが大々的に6段で広告している投資用マンションです。
東京都城西の中核都市
練馬駅前
確定・手取り 家賃収入299万8600円 4年間の総額
収支を考えて資産運用
購入価格1890万円
月々の家賃収入 65,000円
支出(ローンで購入の場合) 64,256円
文字サイズ1以下を省くとこんな内容の広告です。
これだけでも
「誰が買うんだ?」
と思ってしまいます。
最初は『4年間の総額』を見落としたので
「利回り15%以上?そんなバカな、利回り良すぎだ!」
と思ったのですが、すぐに4年間に気がつきました。ということは4%未満しか利回りない。しかも、ローンで買うと月々の収入は744円って・・・。
そこで、小さい字を良く読んで、内容を咀嚼すると
・駅前と書いてあるが徒歩7分(駅から500m前後)
・21.12㎡(6.39坪)→専有単価@296万/坪
・都市計画上の容積率200%
・4年間のサブリース
・支出に固都税・火災保険が含まれていない。
上記のローンで買った場合というのが
・頭金100万
・長期金利変動の35年ローン
という内容です。
まず、駅から500mを駅前と堂々と呼ぶあたりもすごいのですが(都心だったら500m行ったら隣の駅なんて場所もゴロゴロあります。)、その辺は主観的な問題もあるのでこれ以上、触れないでおくとして・・・
専有単価@296万/坪って、どうなんだよ!って思います。
まず、利益、販促などで20%は掛かるでしょうから、原価は@246万円/坪
まず、施工費が@140万/坪は掛かるでしょうから、土地が専有一種単価が106万円、ということは専有面積の容積消化率を94%と想定すれば土地代は@226万/坪です。
では、広告に出ている住所から固定資産税路線価を調べてみると、@932,000円/坪です。路線価ですから70%で割り戻しても@133万円/坪ですから土地代がバカみたいな値段で買ってしまったんだろうな・・・ということが想像できます。
4年間のサブリースはいいのですが練馬駅徒歩15分以内、築15年以内の平均のマンションの賃料が@10,900円/坪のエリアです。新築、駅前(徒歩7分)ということを加味すれば12,000円近い賃料と想定できます。とすれば、この部屋なら77,000円ぐらいの賃料にはなるということです。つまり、この会社は安全目な賃料で想定したところから15%ぐらいのサブリース料を取っているわけです。15%そのものが高いか安いかといえばこれは普通かなぁ・・・という感じです。
その他の謳い文句に「実物資産で老後の年金補充」とあります。昨今、これだけ年金不安が問題になっていて、実際に「年金たまご」などというねずみ講まで出てくるご時勢です。年金という言葉に過剰反応することは解るのですが・・・。
本物件は35年ローンで考えると頭金100万円の投資で35年間は利回り0.89%・・・。しかも、固都税と火災保険を払えば、満室でも赤字確定です。しかも、景気に変動や、この地域の発展性を考慮しなければ(プラス要素もマイナス要素もあるから考慮しない)4年後からは賃料が下がり始めます。30歳で投資すればたしかに、65歳の時にはローンは返済完了しています。しかし、その時には築35年のマンションになっているわけです。35年後にこのマンションがどんな風になっているかを想像できない方は昭和49年に建てられたマンションを想像してください。
それに、専有@300万円/坪に近い値段じゃ不動産プチバブル(2007年10月より前)の時でさえ転売しても赤字になるだろうし・・・
と、書けばきりがないくらい突っ込みどころ満載なのですが・・・
この類のものを購入するときには
『年金』
『老後の不安』
『マンションオーナー』
などなどの曖昧な言葉に惑わされずにしっかりと、数字の比較をしてみてください。(他の投資商品も含めて・・・)
ちなみにどうしてもマンションオーナーに興味があるならば、中古マンションの市場もよくよく見るといいかもしれません。
収益不動産を買い始めた会社
つい、今まで、大手不動産仲介会社のS氏と打合せをしていました。
「相澤さん、○○エステートって知ってます?」
「いや、聞いた事無いなぁ・・・」
「最近、収益不動産を結構、買ってるんですよ~」
「へ~、聞いた事ないけど、大手なの?」
「いや、それがよく解らないんですよ。ホームページもないし・・・」
「最近、そういう話が時々あるよな・・・」
というやりとりがありました。
最近の収益不動産の動きは一時ほど、まったく無いということはなくなってきました。今年の4月ぐらいまでは、エンド法人が実需で買う、高くても10億まで・・・などと言う話だったのですが、ここに来て、今までは聞いたことも無いような会社が出てきます。売主は全部、知っている法人名ですが・・・。
たしかに、今の不動産価格が底打ちをしたかどうかは微妙なところで、もう一段安があるかもしれません。しかし、株や先物取引でもそうですが、完全な底や山を捉えることは大変難しい話です。しかし、底付近を捉えることは出来るかもしれません。そういう意味では底値に近いと見ている人達が出てきたのかもしれません。
しかし、それも資金力が無いとできません。つまり、この2年の中で怪我をしなかった会社が少しずつ動き出したということなのでしょう。そういえば、平成14年ぐらいに収益不動産を買い始めてた会社って聞いたことのない会社ばかりだったと思いました。
新しい人脈作りしないと・・・。
【不動産売買】恵比寿スクエア
不思議なニュースが出ていました。
日経不動産マーケット情報に『恵比寿スクエア(渋谷区恵比寿1丁目)が68億9千万円で売却された。』という記事が出てました。
売主はJ-REITのクレッシェンド投資法人、買主はサッポログループの恵比寿ガーデンプレイス
で、何が不思議かと言うと・・・
このビルは築1994年で1階が駐車場で2~7階がオフィスです。クレッシェンドのサイトでポートフォリオのデータを見ると、常に1フロアか2フロアが空いています。
全てのフロアの貸し面積が正確には解っていませんが、おそらく専有面積は1550坪~1580坪ぐらいと考えられます。恵比寿のこの場所で築15年でフロアが250坪ぐらいだと賃料は管理費込みで20000円+αぐらいのはずです。現在の借主が高いときに借りてくれていれば話は別ですが、通常は現在の家賃相場で考えます。
つまり、年収は4億±αのビルということが想像できます。
ということは、表面利回り5.80%・・・
昨今はこのクラスのビルでも最低は表面利回りで8%ぐらいは欲しいので50億円ぐらいが妥当じゃないかと思っていた(甘い?)のですが・・・。
単純な投資目的じゃないのかもしれません。
景気回復底打ちという訳ではないとは思いますが・・・。
なんか、不思議なニュースだと思いました。・
現場で知る不動産価値と『官僚たちの夏』
『官僚たちの夏』というドラマの第一話を見ました。
公式サイトはこちら・・・TBS「日曜劇場 官僚たちの夏」
あらすじはネタバレになるので書きませんが・・・
物づくりに掛ける熱い思いや、現場の大事さを感じさせられます。
今の日本が高度経済成長期並みの発展をとげられない理由は多々あります。
社会的構造の問題もあるとは思います。
しかし、現場に出ないで、机の上で仕事をすることの方が収入が良かったり
たまに現場を見ても、視察するだけで要点が解らない人が増えていると思います。
時代の変化と言えばそれまでですが・・・。
製造業だけではなく、不動産や建築の業界も現場を見なければものは解りません。
それが、投資目的であっても同じです。
現場が解らなければリスクも解らないはずです。
数字や技術屋のレポートを見て投資判断をする。
話をすると、大して建築も不動産のリスクも解ってない人が殆どです。
そして、職業を「不動産金融系」と言っています。
ノンリコースでも抵当権でもいいけど、不動産の本当のリスクを知らない。
だから、収拾がつかないことになってる訳ですが・・・。
私の会社にいる若い社員の言った言葉です。
※この社員は設計が専門ですが、商業マーケティングも出来ます。
「私はネットで調べたデータや本で読んだ知識も大事かもしれないけど、自分の足で現場に行き、自分の目で町を見て、初めて、その価値が解ると思います。」
その言葉を思い出しました。