ライフコート倒産と三原の天満屋
前のブログ記事に書いたマジェスティック・ライズと同じく、転売屋さんのライフコートが倒産しました。こちらは、一応、リノベーションなどの加工をして転売する会社です。どちらかというと、以前に倒産した都市デザインシステムをもうちょっと不動産色を強くした会社でした。
「東京」 (株)ライフコート(資本金6億2642万円、千代田区飯田橋2-4-5、代表篠原美香経津氏)は、3月17日に債権者より東京地裁へ破産を申し立てられていたが、12月2日に同地裁より破産手続き開始決定を受けていたことが判明した。
破産管財人は阿部信一郎弁護士(東京都千代田区永田町2-13-10、電話03-5157-2700)。
当社は、1996年(平成8年)11月に設立、一時休眠にあったものを2002年(平成14年)7月に再開した。不動産分野におけるリノベーション事業が主体で、不動産価値を高めるため、購入した不動産に対しリフォームなどを施し最適化して販売する事業を主に手がけていた。
当初は、マンション建設に関する企画、コンサルティングや分譲販売などを手がけ、2004年8月には年売上高約17億3600万円を計上。その後は、同業者などからの情報を活用して中古不動産、他社が開発した売れ残り物件などを仕入れ、リフォーム、リノベーション後に転売する不動産取引にほぼ特化した。近年活況を呈した不動産市況を追い風に、金融機関、商社、ベンチャーキャピタルなどからの出資、融資を受け、積極的に「都市再生」事業を展開して業況を急速に拡大。ここ数期は増収増益を続け、2007年8月期には、過去最高の年売上高約157億1000万円、当期純利益約3億5900万円を計上していた。
しかし、業容の拡大にともない各種販管費、経費負担が上昇したほか、物件取得にともなう多額の借入金の金利負担も増加。加えて、サブプライムローン問題、建築基準法改正の影響などから急速に信用収縮が進み、資金調達も困難となっていた。販売対象先であるファンドなどの業況悪化から、購入キャンセル、見送り、延期が発生したことで、資金回収にズレが発生し、支払いに支障が生じていた。
2008年8月期の年売上高は約11億400万円にまで減少し、資産評価損、貸倒引当金などの計上で当期純損失約145億9600万円となり、約129億5000万円の債務超過に転落していた。資金繰りが極度に悪化するなか、当社がフロアの8割を所有する賃貸ビル(大阪府高槻市)の電気、水道費など共益費が未払いとなり、管理会社が立て替えていたが、その後の資金繰りも改善せず、ビルの機能が失われる懸念があるため、管理会社より破産を申し立てられていた。
負債は2009年7月時点で約230億円。
帝国データバンクより
さて、この会社ですが、個人的な取引の経験はありません。
検討物件がかち合って、この会社に持って行かれたことがあるぐらいなのですが、個人的に思い出すことは三原の天満屋です。
東海より東にお住まいの方にはあまり聞きなれないかもしれませんが、岡山に本店のある中国地方最大の百貨店です。
三原がわからない方もいらっしゃるかもしれませんので簡単に・・・。三原とは広島と福山の間にある町でかつては愛媛県今治との連絡船が出る町としてまた、三菱重工などの工場もあり、栄えたところです。しかし、西瀬戸自動車道の開通などもあって、徐々に人口も減ってきている地方都市です。
その三原の天満屋をこの会社が買い取って、テナントの立退きを行ってマンションを建てるという計画を言い出したことがすごく記憶に残っています。
この頃、私も地上げや立退きの仕事を行っていたのですが、よくやる手段ではありますが
買い取ってすぐに
「老朽化の為、修繕費が掛かりすぎるので、立ち退いてください。」
と、テナントに説明したわけです。
最初はまるで、収益ビルとして所有するかも?みたいなそぶりを見せながら、結局は最初から解体再開発目的で購入していました。もっとも、我々の間では買う前から再開発だということは解っていました。収益物件としては値段が合うわけがありませんでしたから・・・。
そして、営業保証無しで引越し代だけ出すという乱暴な交渉をテナントとしていたことを思い出します。
しかし、そのライフコートも本日、倒産しました。
最近は減っていた不動産市場の倒産がここに来て、増え始めました。来年の3月ぐらいまで、バタバタと逝きそうな感じです。
訂正 住宅のエコポイント
で住宅着工戸数について書きましたが訂正させて頂きます。
昨日のブログで今年度の住宅着工戸数は97万戸ぐらいと書きましたが、とてもじゃないけど、そこまで行きそうもないということが本日の国土交通省発表の10月の着工戸数で明らかになりました。
昨年の1月~10月までの着工戸数 927,011戸
今年の1月~10月までの着工戸数 650.914戸(前年比 -29.8%)
昨年の年間着工戸数 1,093,485戸(平成20年4月~平成21年3月の平成20年度は1,039,180戸)
この比率で行けば、今年の住宅着工戸数は
767,806戸
昨日の記事で書いた97万戸なんてとても到達できる数ではありません。
この数はこの業界にいない人にはわからないかもしれませんが、驚異的な数字です。
どこかの記事で弱気なエコノミストが80万戸を予想などとかいてありましたが、
「バカ言ってんじゃないよ。日本の住宅着工戸数が100万戸を切るだけでも大変なのに80万戸なんてあるわけないだろ!」
と思っていたのですが、いよいよ現実味を帯びてきました。
私が、この業界に入った頃の住宅着工戸数は150万戸ぐらいですから、約半分です。
去年の103万戸でも、十分に少ないと思ったのに・・・。
今回のこのデータをもう少し分析すると・・・
特に不動産的な要素が大きい分譲住宅(分譲マンション&戸建)の減少率が20年4月~10月と21年4月~10月の対比で-50.2%・・・これじゃ、不動産業界が苦しいわけです。
また、住宅以外のオフィスや店舗も-26%、-34%ですから、ゼネコンも瀕死だと思います。
このペースで行けば、ゼネコンの売上げだって40%減とかになってもおかしく無さそうですが、新興国の公共事業などでフォローしているのかもしれません、ドバイで大幅な赤字が出そうですが・・・。
ただ、個人的な感覚論で根拠はないのですが、住宅というのは一度、数が減って需要が落ち込むとそれを回復するのは容易なことではありません。
バブル崩壊後、平成2年から平成3年に166万戸から134万戸に大幅に減りました。平成8年の消費税特需(平成9年から消費税が5%になるということでの駆け込み需要)で一旦は回復しますが、その後もずるずると減り、平成17、18年に底打ち感から、120万戸台に回復しますが平成19年以降103万戸になります。
この様に一度、落ち込むと、住宅需要の大きな回復というのはなかなか難しく、またデフレスパイラル、人口減少などのファンダメンタル的な要因もあり、大きな回復は見込めなくなります。
私がハウスメーカーの商品開発にいた時(2001年ごろ)に、住宅業界は2030年までに70万戸、2050年までに50万戸になるというレポートを発表し、その為にリフォームなどの新築ではない業態を育てるべきだという持論を展開したことがありました。当時の役員から大いにバカにされたのですが、今となってはそれすら、甘い予測だったと反省しています。(この戸数をあと20年維持してくれれば予想は当るわけですが・・・)
また、私が、そのハウスメーカーで資材の調達等をしていた頃(平成7年ぐらいだったと記憶しています。当時は私もまだ20代の後半でした。)に、ある化成品会社の建材部長に石膏ボードの価格について
「もっと、工場の規模を大きくして大量生産すればコストが下がるのではないでしょうか?」
「日本は住宅着工戸数が100万戸の時代が来る。その時でも、安定した価格で供給しなければならない。戸数が減ることが分かっていて、戸数が減ったから建材が高くなりましたじゃ、ハウスメーカーも困るだろ。」
「100万戸の時代が私が目の黒いうちに来ますかね?」
「君は生きている年数が僕の半分しかないからね。そのうち、解るときがくるだろう。」
業界の収束が急激すぎて、ついて行けなくなる業態が不動産や建築だけではないところまで来年は影響を及ぼす時代が来るかもしれません。
この危機感が民主党に伝わることがあるのか疑問です。
住宅のエコポイント
さて、『住宅のエコポイント』で1000億円を2次補正予算に計上。というニュースが出ています。
1000億円というと、大そうな金額に感じますが、どの程度の効果があるかを検討してみます。
このエコポイントは分譲マンションには適用されないものとして考えます。
昨年の住宅着工戸数は約109万戸でした。今年はマンション市場などを見てみると100万戸には大きく届かないと思っています。ちなみに去年の戸建の住宅着工戸数は約43万戸でした。
今年の予測は97万戸前後と言われていますから、比率で言えば戸建は約38です。来年、もし多少、景気が回復して着工戸数が増えたとして平成22年度は40万戸になると仮定しましょう。(計算上便利だから・・・。)
エコポイントなどが出てくれば原則としてハウスメーカーなどはその施工基準を最大限に満たす方向に行くと考えられます。とすれば、約70%の住宅はエコポイント対象の住宅になります。当然ですが、ハウスメーカーとは言われない、所謂、地元工務店でも、その基準を満たすものは出てくると考えられますから、実際には75%~80%ぐらいの住宅がこのエコポイント対象の住宅になると考えられます。
とすれば、エコポイントの対象住宅は30万戸~32万戸です。
つまり、戸当りの対象額は31万円~33万円ということになります。もし、マンションも対象になれば1戸当りの対象額はもっと減ることになります。
ちなみに、戸建住宅の平均的な価格は2500万円~3000万円ぐらいです。
ということは、エコポイントによって、還元される価格は2%にも満たないということになります。実際にはエコポイント対象仕様にすることでコストが上がれば、その効果は更に減ることになります。
また、住宅各メーカーは長寿住宅の開発を行ったばかりで更に、エコポイント対象仕様の開発をすればそのコストも考えなければなりません。
例えば、サッシが変われば、サッシと造作材の取り合いも変わってくるので、今までの造作材が使えなくなる可能性があります。
壁内断熱材の厚さが変われば、その断熱材を収める壁厚が変わったら大変なコスト増になります。
現在の住宅性能評価制度に定められる基準程度であれば、あまり、性能アップに掛けるコストは無くて済むかもしれませんが、それでもその効果は住宅価格に占める2%未満ということになります。
私見としては・・・
無いより、マシだがこの1000億円は自動車なり家電なりのエコポイントに使うべき
と考えています。
理由は・・・
・ 住宅エコポイントは上記の通り、総額に対する価格が小さく極めて限定的であると考えられる。
・ 限られた財源で今の景気を乗り越えるのであれば、既に効果が出ている自動車や家電などに集中投下して、景気対策の効果を確定し、さらなる景気拡大をより効果的に行うべき。
・ 今の時期に住宅の購入を検討できる人は相当な富裕層と考えられることから、税金再分配の考え方からすれば、貧困層~中流層から徴収した税金を富裕層に分配するという矛盾が生じる為。
・ 民主党政権が掲げる、中古住宅の流通や賃貸住宅の透明性、リフォーム市場の発展などの考え方にも矛盾が生じる為。
・ 住宅エコポイント導入する際に生じる、各戸がエコポイント対象住宅であるかどうかの検査などに更に税金を使う可能性がある為。
限られた財源です。
景気対策は当然に必要ですが、その効果を最大限に発揮する為には・・・
・ 最大効果の得られる場所に集中投下をすること
・ 最大効果の得られる時期に集中投下をすること
この二点に尽きると考えています。
小沢さん・・・、あれだけ囲碁が上手いんだから、それくらい解ると思うのですが・・・。それとも、囲碁は戦略ゲームで、こういう戦術論は弱いというのでしょうか・・・。
もっとも環境問題を住宅業界の中に浸透させるという意味に於いては、多少は効果があるとは思うのですが、その費用が1000億円と考えると、ちょっと解せません。
【アルデプロ】粉飾決算
ここも、いよいよダメかなぁ・・・。
これで持ちこたえたら、凄いけど・・・。ダメだろうなぁ。
以下、ロイターより
証券取引等監視委員会は24日、アルデプロ<8925.T>に有価証券報告書などの虚偽記載による金融商品取引法違反があったとして課徴金2億8155万円の納付命令を出すよう金融庁に勧告したと発表した。監視委は、業績目標の達成を優先するあまり、売上高や利益の確保をしようと虚偽開示をしたとみている。
監視委によれば、同社は売上高の過大計上や引当金の不計上、債務超過の隠ぺいなど、虚偽記載のある有価証券報告書などを提出したほか、それを参照書類とする有価証券届出書に基づく資本増強などをした。2006年1月中間期以降、09年4月第3四半期までに複数の期において虚偽開示していた。
このうち、08年1月中間期の売上過大計上では、販売用不動産をめぐって自社物件と取引先の物件を約67億円で交換する取引を同取引先との協議を通じて約160億円の売買取引とすることにし、同取引先の資金調達が困難だったことを受けて自社資金を同取引先の名義で入金するなど資金の移動を偽装した。
アルデプロは6月、過年度決算に影響を与えかねない事象が判明したとして調査委員会を設置。この調査結果を踏まえて10月、過年度決算の訂正をしていた。同社は2日、09年7月期に債務超過に陥ったとして、東京証券取引所の上場規程により2010年7月末までの猶予期間に入ったと発表していた。
【穴吹工務店倒産】四国の巨星堕ちる
穴吹工務店が倒産(会社更生法申請)しました。
以下、帝国データより
「香川」 (株)穴吹工務店(資本金57億5425万円、高松市藤塚町1-11-22、代表朝倉泰雄氏ほか1名、従業員844名)と関連会社の(株)エイシィカンパニーグループ(資本金1億円、高松市藤塚町1-11-22、代表朝倉泰雄氏ほか1名)、(株)穴吹ハートレイ(資本金1億円、木田郡三木町下高岡972-30、代表榎範雄氏)は、11月24日に東京地裁へ会社更生法の適用を申請し、同日保全命令を受けた。
申請代理人は松嶋英機弁護士、宮崎信太郎弁護士(東京都港区赤坂1-12-32、電話03-5562-8500)ほか14名。保全管理人は長谷川宅司弁護士(東京都千代田区有楽町1-7-1、電話03-5288-1021)。
(株)穴吹工務店は、1905年(明治38年)1月創業、61年(昭和36年)1月に法人改組された総合建設業者。「サーパス」ブランドの分譲マンションを全国で展開し、TVCMや広告、プロ野球、プロバスケットボールなどのスポンサーになるなどの積極的な宣伝で高い知名度を誇った。また2005年4月には、中堅ゼネコンの古久根建設(株)(東京都、2002年11月民事再生法申請)を第三者割当増資の引き受けなどで連結子会社としていた。
2005年12月には同ブランドの供給棟数が累計1000棟に達し、「2007年(暦年)全国事業主別マンション販売戸数ランキング」で初の1位にランクされるなど名実ともに業界トップクラスの業容に成長。また、グループ会社も含めて企画・設計・施工・アフターサービスまで一貫した事業となる「ATD(アナブキトータルデベロップメント)システム」を導入して差別化を図り、販売戸数が過去最高となった2006年3月期の年売上高は約1553億4000万円を計上していた。
しかし、改正建築基準法の施行に伴う着工の遅れにより販売戸数が減少。急激な景気減速による末端需要の低迷から、2009年3月期の年売上高は約1306億5000万円にまで落ち込んでいた。また、販売価格の低下や用地取得費・建築費などの原価上昇により収益性が低下した上に、棚卸資産並びに投資有価証券評価損など約36億6600万円の特別損失を計上し、2期連続の最終欠損となる約127億4600万円の当期純損失発生を余儀なくされていた。昨年9月には、2005年から行ってきた債権流動化サービス業者との業務提携契約が終了したことで当社への信用不安が高まる中、今年1月にはグループ会社の集約や希望退職者募集を含む人員のリストラ計画を発表、今後の展開に注目が集まっていた。そうした中、10月26日の取締役会で、穴吹代表以外の取締役11名全員の解任とともに、新たに3名の取締役就任の方針を固め、11月3日の臨時株主総会を開催する旨の通知を行っていたが、臨時株主総会開催前に再度経営の方向性を検討し、これまでの体制を維持することが賢明と判断し臨時株主総会の中止を発表するといった一連の騒ぎが更なる信用不安を招き、資金面での限界に達したことで今回の措置となった。
負債は(株)穴吹工務店が約1403億3400万円(2009年3月末時点)、(株)エイシィカンパニーグループが約96億8000万円(2009年2月末時点)、(株)穴吹ハートレイが40億2700万円(2009年9月末時点)で3社の単純合計(債務保証など会社間の重複債務を含む)で約1540億4100万円。
なお、(株)穴吹工務店の負債は今年5番目の大型倒産となったほか、四国では過去最大規模の倒産となった。
穴吹工務店についての所感については後ほど・・・。
首都圏マンションの市況
今日はかつて、ハウスメーカーでマーケティングや経営戦略、商品戦略をしていた経験を活かして、データ解析から自分なりの市場分析をしてみます。
不動産の景気動向の指標には投資用不動産と実需用不動産に区別されます。今回は実需用不動産を考えてみました。
マンションの市況で前年同月比での比較をします。
9月は久々に前年同月比を上回り、『底打ちか!』と言われましたが、10月は一転して前年同月比を大きく割り込む結果となりました。
しかし、これは去年の9月の業績があまりに悪かったために、
『去年よりも今年の9月は良かった』
という話であって、市況が本当に回復したかの目安にはあまりなりません。
我々が良く見ているのは、在庫状況と契約率です。特に契約率に関しては70%が販売の好不調を表す指標となります。
ちなみに2008年と2009年のデータを比較してみると
2008年
月 販売戸数 契約率 販売単価
1月 2320戸 52.7% 4210
2月 3460戸 60.1% 4768
3月 4446戸 65.2% 5008
4月 2865戸 63.1% 5338
5月 4389戸 71.0% 4825
6月 4002戸 64.7% 4638
7月 3554戸 53.5% 5309
8月 2041戸 70.9% 4799
9月 2427戸 60.1% 4467
10月4240戸 63.0% 4848
11月3293戸 63.2% 5018
12月6696戸 61.9% 4218
2009年
月 販売戸数(前年同月比) 契約率 販売平均単価
1月 1760棟(-560) 64.2% 4172
2月 2509棟(-951) 61.7% 4823
3月 2390棟(-2056) 78.3% 4747
4月 2621棟(-244) 64.7% 3953
5月 3528棟(-861) 70.6% 4550
6月 3080棟(-922) 70.2% 4543
7月 3230棟(-324) 75.3% 4627
8月 1914棟(-127) 69.3% 4314
9月 3063棟(+636) 73.9% 4527
10月3386棟(-854) 69.0% 4619
こうやって見てみると、去年の9月の発売戸数が如何に少なかったかということがわかります。
また、去年の10月は去年の9月と比べると1813戸も増えていますが、今年は323戸しか増えていません。今月の前年同月比は単純に去年の10月の販売戸数が多かったというだけの話です。
しかし、今年に入って9月以外は前年同月比で販売戸数が上回った月はありません。
このデータは色々なところで毎月出ているので、多くの方が目にする機会が多いと思います。
ではここまでの統計を取ってみると・・・
去年の10月までの販売戸数 33,744戸
今年の10月までの販売戸数 27,481戸(前年比81.4%)
去年10月までの販売平均単価 4765万円
今年10月までの販売平均単価 4508万円(前年比94.6%)
去年10月までの平均契約率 62.8%
今年10月までの平均契約率 70.0%
販売戸数(供給戸数)を18.6%減らして、販売単価を5.4%減らして、なんとか需給バランスを取っているといった状態です。これは『過去にこうしていれば』という話になりますが、去年に同じ様な状況であれば今年と同じ様な状態であったと考えられます。
ということは、昨年から、なんら状況は変わっていないというのが現在の状況です。
ただ、逆に言えば大分、前から市況は底を打っているという事です。
前年同月比の比較で言えば、毎月マイナスですが、契約率や販売価格などから総合的に判断すれば、その様な状況になっていると言えます。
そして、販売戸数や契約率、販売価格は違うものの分譲戸建にも同じ様な傾向が出ています。
ここで気をつけなければならないのは、今の契約率などから市況が回復に向かっていると判断することです。
実際には需給バランスが取れているのに底打ちと判断して攻勢にでれば、やはり供給過多になります。バブル後の平成7~9年ぐらいにも同じ様な現象が見られていたはずです。(データの比較をしていないから感覚的な話ですが・・・)
そこで、更なる地価下落や販売単価の下落が発生します。しかし、来年度は契約率向上や自社データから、供給戸数が増すと考えます。(12月に賞与減などで契約率が大幅に減れば別ですが・・・)
つまり、どちらかというと・・・
「(そろそろ、攻勢かけないと株主もうるさいし・・・)底値も打ったことだから、攻勢に転じよう!」
と、テクニカル的な動きを始めます。
そこで供給過多になることで住宅市場は二番底を打つと考えられます。実際には金融機関の動きも影響があると思います。
問題は二番底を打つ時期にあると考えています。
実際には来年売上げ分の用地を『攻勢に転じる』程、取得しているデベロッパーは少ないと思います。それは、土地の担保に対して、金融機関が懐疑的であったことも大きく関与しています。来年のマンションの販売戸数は大きくは増えないと考えるのが自然ですが、工期の短い低層マンション用地は各デベロッパーが必死に集め始めています。所得等が大きく変わるとは考えにくいですが、民主党の『団体から個人』への政策も講じて、住宅市場も若干ですが今年よりも明るい兆しが出ると考えます。
そこでの攻勢の開始が(実際には用地取得という考え方からは既に始まっていますが)供給過多になると考えています。
その影響は来年の下期に出てくるはずです。そこが二番底・・・。つまり来年のこの時期が二番底になると考えられます。
また、現在は苦しい中規模のデベが排除され、大手(財閥系や電鉄系)が強いですが、高価格ハイブランドの需要の先食いから、その辺りの価格帯に限界がくるのは時間の問題です。
この状況から考えると、中長期的には大手ブランドよりも適正な仕様と価格を追求した中規模のデベロッパーが勝ち組に回ると考えています。
需要の二極化
今日の日経不動産マーケット情報にこんな記事が出ていました。
【調査】「市況に明るい兆し」、ニッセイ基礎研の不動産実務家アンケート
2009/11/02
今後の不動産市況について「やや良くなる」との見方が増加した――。ニッセイ基礎研究所が不動産分野の実務家、専門家を対象に実施した不動産市況アンケート調査で、このような結果が明らかになった。調査は毎年実施しており、今年で6回目となる。
現在の景況感については「悪い」と答えた人が58.8%と最も多く、次いで「やや悪い」(38.2%)となった。両者を合わせると97%に及ぶ。今後6カ月後の市況見通しについては、「変わらない」(46.1%)、「やや良くなる」(38.2%)の順に多かった。1年前の調査では「悪くなる」、「やや悪くなる」との回答が合計で90%を超えていたが、今回は15%弱に激減した。「やや良くなる」との回答は、昨年の3.9%から大幅に増加している。こうした結果について、ニッセイ基礎研究所は「市況にやや明るい兆しも見えた不動産投資市場」と表現している。
6カ月後に「良くなる」、「やや良くなる」と答えた人に、その理由を尋ねたところ、「J-REIT市場の不安払拭(ふっしょく)」が55.0%と半数を超えた。「投資資金流入の持続」(50.0%)、「金融機関の融資姿勢の改善」(45.0%)といった回答も多かった。
不動産投資市場が持続的に成長するために必要な政策も聞いたところ、「J-REITなど不動産証券化市場の信任回復政策」が65.7%で最も多かった。「海外からの不動産投資資金流入策」(47.1%)、「総人口増加政策」(44.1%)に対する期待も高い。このほか、アンケートでは「環境規制強化が不動産投資に与える影響」についての調査結果もまとめている。
調査は不動産会社や建設会社、金融機関、保険会社、不動産仲介、不動産管理、ファンド運用会社、投資顧問などの業務に携わる専門家200人を対象にアンケートを実施し、102人から回答を得た。
この記事を読んだ時に、ここまで下落してくれば、さすがにこれ以上悪くなると予測する人は少なくなってくるだろうとは思います。
株式投資でもそうですが、投資というのは『買う人がいなくなった時が最大の投資のチャンス』と言いますから、ここまで買う人がいなくなれば投資のチャンスと考える人が出てくることも事実だと思います。
現実問題、実需ではにその傾向が出ていると思います。
これだけ、不動産価格の下落がメディア等で言われればマイホームを取得するチャンスと考える人はいると思います。
特に、自身の勤める組織の業績が安定しているか、もしくは上向きであれば、今は買い時です。
実際にマンションにしても戸建にしても、公務員や世で言う勝ち組企業の社員の方がお客さんには多い様です。昨年から続いた不動産価格の下落も底値安定状態に入ってきたので、そういう人達から見れば買い時かもしれません。ただ、実際には、昨今の景気から見れば絶対数が少ないので、本格回復までは行っていません。
問題はその『絶対数の少ない人』たちの需要が一巡した際の二番底かもしれません。
投資用マンションにも一定の傾向が見られます。
一時期は東京主要5区辺りの高級賃貸マンションが良く売れたのですが、最近はちょっと外れた場所の中級立地、中級グレードに需要回復の傾向が見られます。これは、投資用マンションに対して、不動産の価値を度外視して、金融機関の評価の上限が2200万円前後だからという傾向が見られます。
つまり、その上限ギリギリのある程度の立地の場所のみに需要が集中しているという傾向があります。
また、デベロッパーにもある傾向が見られます。
これは以前のブログでも書きましたが財閥系と電鉄系を除けば、平成19年までに収益物件にあまり手を出さなかったデベロッパーです。
この様に数少ないですが芽吹いていることは事実ですから、少しずつ回復しているのかもしれません。ただ、圧倒的に少ない回復組がどこまで牽引できるか、静観したいと思います。
中規模デベロッパー藤沢建設 倒産
藤沢建設という、中規模のマンションデベが倒産しました。
この会社は土地の買取から施工、販売までを一括してやる会社であり、また、本業以外には、(たぶん)手を出さなかったので、細々とやっているのかな・・・と思っていました。ただ、今年の8月、9月からホームページのアクセスが出来なくなったりと不安定な状態が続いていましたが・・・。
わりと、真面目にやっていて、悪い噂のある会社ではなかったのですがダメでした。しかも、民事再生法ではなく、解散です。
以下は帝国データのコピーです。
「東京」 藤澤建設(株)(資本金5億3500万円、豊島区南池袋3-13-5、代表清算人野原千秋氏)は、10月15日に東京地裁より特別清算開始決定を受けた。
当社は、1967年(昭和42年)3月創業、69年(昭和44年)5月に法人改組。東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県を営業エリアとし、なかでも東京都の城北・城東地区および埼玉県内を主力エリアに、自社オリジナルブランド「ロ-ヤルシティ」でファミリータイプマンションの販売を展開。土地の買収から企画、設計、施工、分譲、販売まで一貫したシステムを採用しコストダウンを図って販売価格に反映させ、2004年12月期には年売上高約139億5000万円を計上。2005年6月には「ローヤルシティ新小岩」が江戸川区優良まちなみ賞を受賞するなど対外的な評価を得ていた。
しかし、サブプライムローン問題に端を発した信用収縮に伴い金融機関からの資金調達が困難となり、新規開発が滞っていたうえ不動産市況の低迷からマンション販売が急速に冷え込み、2008年12月期には年売上高約102億7000万円に減少し資金繰りが悪化していた。このため不動産物件の売却により債務の圧縮に努めていたが、物件売却にメドが立ったことから8月27日開催の株主総会で解散を決議していた。
負債は約38億円。
建築基準法改正
今回、民主党政権になって、なにかと、メディアへの露出度が高いのは、鳩山総理を除くと、
前原国土交通大臣
亀井郵政・金融担当大臣
長妻厚生労働大臣
の3人だろうか・・・。外務大臣の岡田さんはなにしてるんだろう・・・。
それにしても亀井さんのわけの解らない話を除けば、他の二人は頑張っているのかな・・・と感じます。
長妻厚労大臣は予算に苦しみ、前原国交大臣は反対派に苦しんでいる感じは否めません。
しかし、前原さんはそれなりに言っていることは正しいと感じます。
・ 八ツ場ダム廃止
・ 新規道路の建設廃止
・ 羽田空港のハブ空港化
などなど・・・
そして「建築基準法の改正」です。
姉歯問題で最近、改正されたばかりなのにまた改正!?と思われるかもしれませんが、その内容は個人的にはほぼ賛成です。
・ 確認日数の削減
・ 提出資料の簡素化
・ 厳罰化
現在の確認申請は以前の3倍から掛かります。これによって、着工戸数が大幅に減りました。
例えば、
マンションを建設する為に今まで一ヶ月だった、確認日数が三ヶ月になれば、土地を取得しているデベロッパーなどは、その土地を取得する為の融資が二ヶ月分増えることになります。
東京近郊
土地単価:400万円/坪
土地面積:300坪
容積率:500%
と言う場所に、計60戸(平均面積23坪)のマンションを計画したとします。
土地原価は・・・
300坪×400万円=12億円です。
これを3%の金利で融資を受ければ、月額の金利は300万円ですから、2ヶ月伸びれば600万円の金利増になります。
たったの600万円ですが何もしないで戸辺り10万円の価格アップになってしまします。
そして、何よりも大きいのは決算期を跨ぐ物件が多くなるという事です。
RCのビル(マンションを含む)というのは、概ね
階数×1ヶ月+2ヶ月が着工~竣工までの時間です。
例えば5階建てのマンションを建てるために4月(決算期が3月の会社)に土地を買ったとします。
設計開始~確認申請提出までに2ヶ月
確認申請取得に3ヶ月
建築期間に7ヶ月
これだけで、1年経ってしまいます。
つまり、5階建てのマンションでさえ、4月の始めに土地を取得して、ギリギリ、今期の売上げに上がるかどうかということになります。
以前は、湾岸エリアや都心エリア(主要5区)の様な場所での高層マンションが流行っていましたが、最近はどちらかというと、低容積率の場所での低層マンションが流行っています。
これは需要を無視した供給側の考えで、資金回収を急ぎたいからです。
もし、確認日数が以前のように短くなれば、その分、デベロッパーは高容積率の場所でも商売がやり易くなるわけです。
もっとも、確認期間が短くなっても、需要が増えるわけではないので、それだけで一気にマンション市場が回復する訳ではありませんが、多少の効果はあると考えています。
来年の通常国会提出に向かって動いているらしいので、頑張ってもらいたいものです。
日本土地建物増資
日本土地建物(以下、『日土地』)が120億円の増資を実施した。
この会社は旧第一勧銀系の不動産会社でマンションもやれば戸建分譲もやるし、オフィスや再開発事業までなんでもやる会社です。
有明セントラルタワーや大阪駅北口再開発事業などが直近の大型プロジェクトでしょうか・・・。
しかし、今回の増資ですが、ゼネコンやハウスメーカーなどの日土地から見れば発注先が引き受けています。応じなければ・・・以下略。
ゼネコンも苦しいのに大変ですが引き受けた先が、清水、竹中、戸田、大和ハウスと業界のなかではまだ余力のある方の会社です。
大手は大手なりに大変です。
今日は簡単にまとめちゃったけど・・・