住宅用地の需給バランスと値段
最近、こんな話がよくでます。
「大至急、住宅用地を探してくれ・・・」
ほとんど、毎日聞くのですが・・・目ぼしい物件が無いのが原状です。
マンション用地でも戸建用地でもそうなのですが、最近はめっきり物件が減っています。土地そのものが無いわけではなく、単純に価格バランスが崩れているのが現状です。新築住宅の価格は一時、アウトレットマンションなどが出回り、マンション価格が値崩れをした為、普通の値段のマンションは売れ行きが芳しくありません。そこで業者が求める値段が恐ろしく安くなっているんです。
例えば、東京の城西地区で2年前は、200万円/坪で土地30坪、建物30坪で8500万円ぐらいで売れていた物件が最近は概ね7000万円前後まで価格が下がっています。
もともと、建物の工事費の値段と言うのは、急激に上がったり下がったりするものではありません。とすると単純に土地の値段で調整するしかありません。とすると、この土地の場合、2年前は6000万円だったものが4500万円になったということで、売値が約25%下落していることになります。そして、土地の原価を考えると、分譲住宅業者の仕入れ値は、造成費(固定費)や税金、利益などを差引いて、5100万だったものが3750万ぐらいになります。つまり、業者の土地仕入れ値は26.5%も下落しているのです。これでは余程、お金に困っていないかぎり地主さんは売りません。
ある上場している、関東エリア中心の分譲住宅を専門的にやる会社のIRを見ると125億円の評価損を計上しました。この会社は注文住宅や法人からの受注を除くと600棟ぐらいを販売しているので、1棟当り2000万円ぐらいの評価損を計上したことになります。この125億円のうち、どの程度が住宅用地の評価損かは解りませんし、1年分の棚卸し資産の評価損とも限らないのですが、相当な価格下落であることは間違いありません。
※2000万円/棟の下落はちょっと考えにくいですし、高値の時に将来の棚卸し資産を買い込んだことも考えにくいことから、収益不動産などの棚卸し資産があったものと考えられます。そうでなければ、余程、経営センスが無いか、用地仕入れが下手だったかのどちらかになります。両方の可能性もありますが・・・
通常の考え方で行けば、供給不足になれば値段は上がるのですが、住宅を買う側の所得が上がってこないと需要自体が回復しないので、しばらくの間は非常にパイの小さい需給バランスが保たれることになるのではないかと思います。
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【開発】L字溝 第1話
「『L字溝』って、聞いたことがありますか?」
聞いたことがなくても、外を歩いたことのある人なら絶対に見たことがあるはずです。
これがL字溝です。道路の脇の水が流れるところです。
『だから、なんだ?』
と思われる方もいるかもしれませんが、最終的にはL字溝になるまでに物凄く苦労したことがあるので、その事を書こうと思います。(←意味不明)
今回はかなりの建築的専門知識を要します(大学の建築学科レベルではちょっと無理かもしれません。)ので、それについての解説も書きます。一級建築士試験を受ける方が読んでも役立ちます。(試験まであと3週間だから、今から新しいことを勉強するぐらいなら、これを読んで息抜きしてください。)
また、経緯から書くので、ハリー・ポッター並に長くなりますので何回かに分けて書きます。覚悟して最後まで読んでください。(一級建築士の学科までに終るか・・・自信なし)
もう、5年程前の話になりますが、私は都内S区のある場所に目をつけていました。そこは、都市計画上は住居系の地域(第二種住居地域)ですが、少しずつ商業地化している場所でした。その頃は、まだ、その周辺の土地の値段もそんなに上がっていませんでした。しかし、周辺の家賃は1階で既に4万円/坪に届こうとしています。一番高いときには6万円/坪までいきました。これだけ下がった不動産市場の現在から見ても、不動産価格はおおよそ2/3ぐらいでした。
私が注目していた土地の形状はこんな感じです。
(サムネイルになっているので拡大して見て下さい。)
売買の対象地は水色の部分とオレンジ色の部分です。水色の部分の面積は約60坪でオレンジ色の部分は私道(42条2項道路)でその部分を含めると、概ね80坪程度の土地です。東側の私道も水色の部分の所有者と一緒の持ち主でした。また、土地の断面を見ると、こんな感じです。
対象土地部分を南北(X-X’)と隣接地を南北(Y-Y‘)に切った断面
(サムネイルになっているので拡大して見て下さい。)
私道路部分を南北に切った断面
(サムネイルになっているので拡大して見て下さい。)
と、こんな土地です。
「なんか、一級建築士試験の参考書みたい・・・」
という意見もありますが・・・。
さて、この土地に商業建築を計画します。
(去年、一級建築士の学科試験に合格して、今年は二次試験だけで良いという方は計画してみてください。都市計画で定められる建ペイ率60%、容積率400% ちなみに防火地域です。当然ですが、値段の高い土地ですから、土地は有効に使ってください。不動産屋さん的には当たり前ですが商業ビルというのは一般的には路面階(低層階ほど)が一番売上げが上がります。つまり、無理やり、建物を高くする必要はありません。規模は一級建築士二次試験よりも全然小さいですが、難易度はこちらの方が上かもしれません。)
次回はその計画概要です。
ちゃんとL字溝オチになるから・・・
【開発】L字溝 第2話
さて、皆さんは、どんな計画を立てましたか?
では、ここで建築基準法と今回の敷地条件から基本的な考え方を書きます。
① まず、一番大事なことは土地の値段が高いということが前提条件になるので、建築費を抑える為に建物を小さくするというのはナンセンスです。容積は最大限に消化することを考えます。
② 東側の42条2項道路(前回のオレンジの部分)が3.8mしかないので10cmのセットバックが必要です。
※基本的に建築基準法の道路とは4m以上(地域によっては6m以上)の道路のことを言います。しかし、この法律が定められる前から道路そのものはありました。当然、その中には4m未満のものもあります。その中で一定条件を満たした道路を2項道路(建築基準法42条2項に定められている為、そう呼びます。)と言います。2項道路は当然ですが4m未満です。その場合、その2項道路に面する場合、道路の中心線から2mの場所までを道路として提供しなければなりません。
今回の私道は42条2項道路で幅員が3.8mですから、
2m-(3.8m÷2)=10cmとなり、
道路中心線から2mセットバックすると10cmは道路として提供しなければなりません。
③ 本物件の都市計画上の最大容積率は400%です。しかし、②によって、本物件は4mの公道と私道に接道している土地となります。そして、本物件は住居系の地域(第二種住居地域)にあることから、法定容積率は160%となります。
※都市計画上の容積率とは別に法定容積率は接道する道路幅員によって変化します。道路幅員が12m以上の場合は法定容積率は都市計画で定める最大容積率となります。本物件が12m以上の道路に接道していれば400%の容積を使っていいことになります。しかし、本物件は道路幅員が12m未満しかありません。その場合は・・・
道路幅員×A×100と都市計画上の最大容積率を比較して大きい方が法定容積率となります。(Aは住居系の場合は0.4、住居系以外の場所は0.6)
本物件は4m×0.4×100=160<都市計画上の最大容積率400%となるので160%が最大容積率となります。つまり、土地面積の1.6倍の床面積の建物を作ります。
④ さて、次は建蔽率の考え方です。本物件は、都市計画上の建蔽率は60%です。
この時点では
160%÷60%=2+α
となるので3層の建物を計画しないといけません。
⑤ しかし、この物件は角地です。2方向の道路に囲まれた土地の場合10%の建蔽率の緩和を受けられます。
60%+10%=70%
⑥ さらに、本物件は防火地域上にあることから、計画建物を耐火建築物にすることにより、さらに10%の建蔽率の緩和を受けられます。
70%+10%=80%
⑦ したがって、
160%÷80%=2
となり、上手くやれば2階建ての建物で済むわけです。前回の記事どおり、商業ビルの場合は路面階から近いほど収益があがるので、2階建ての計画を立てます。
そこで、私が考えた平面計画はこんな感じです。
(サムネイルになっているので拡大して見て下さい。)
(普通・・・)
ここまでは、一級建築士を取得している方や、不動産業の経験の長い方はできると思います。
さて、次回は高さ関係について、考えます。
・
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L字溝までの道のりは長いけど・・・
不動産投資
よく電話で投資用のマンションの売り込みの電話があります。正直言って、良い度胸してるなぁ・・・と思いますが相手からはこちらの職業などは解らずに掛けてるでしょうから、仕方がありません。
そこで・・・
「同業者なんだけど・・・」
ここで9割方は諦めます。しかし・・・
「御社でやっている物とくらべて、うちの物は・・・」
と粘る営業マンがいます。
投資用分譲マンションの電話営業してる子たちに負けるわけもないので理屈でねじ伏せちゃうのですが・・・。
私は個人的には投資用の区分所有のマンションを買おうという気はまったく起こりません。だって、それ以上に美味しい物件がいくらでもありますから・・・。投資用分譲マンションというのは不動産のことがわからない人達が買うものだと思っています。
不動産投資もハイリスクハイリターン、ローリスクローリターンです。
しかし、そのリスクをどの程度、自分でヘッジできるかは、その知識と経験に掛かっています。
だから、投資用の区分所有の分譲マンションは不動産の知識が無い人の投資物だと考えています。また、Jリートは不動産じゃなくて、株だと思っています。
私の持論ですが・・・
「不動産や建築は机じゃ勉強はできない。本当に知りたければ現場を見ろ」
です。ExcelでIRR関数などを駆使して収支計算をしたり、PMレポートを眺めている子たちも、少しは現場でリスクを感じてみてください。金融機関との交渉が上手くても不動産は見えません。
ちょっと、生意気だけど・・・
不動産会社の上場
「デベはなぁ、上場すると苦しいんだよ。金があるなら、上場なんかしない方がいいな。」
これは、随分前に先輩に教わった言葉です。
上場のメリットは
・株式市場から資金を調達できる。
・知名度が上がる。
デメリットは
・上場を維持するのにお金が掛かる。
・株主に左右される。
などがよく言われます。
景気のいい時(土地の値段が上がっている時)には、余程のバカ以外は資金力さえあれば、儲かる業界です。簡単に言えば、買って、売れば儲かります。
景気の悪い時(土地の値段が下がっている時)には、物凄いプロでもなかなか、儲からない業界です。
『稼げる時に稼いで、悪い時にはじっとしている。』
というのが、基本スタンスになるのですが上場していると、なかなか上手くいきません。
平成18年の秋口ぐらいから、そろそろ潮時というのは、この業界の人ならみんな感じていたはずです。リーマンショックの1年ぐらい前から・・・。
しかし、それでも高値の不動産に手を出したのは上場企業故の目標があったからでしょう。もちろん、上場してなくても、上場を目指していた会社も同じです。耐力が無く、派手にやりすぎた、新興系の不動産が片端から逝くのは、この辺が原因でしょうか・・・。人材の問題も大きかったと思いましたが・・・。(人材については後述します。)
宮下公園の命名権と地上げの苦い思い出
宮下公園をご存知でしょうか?
※みやしたこうえん:渋谷区神宮前にある公園です。杉並区宮前にも同じ漢字の公園がありますが、この公園は『みやしもこうえん』と読みます。
渋谷から明治通りを原宿方向に歩くと山手線沿いにある細長い公園です。命名件売却で知っている方もいるかもしれません。
東京にお住まいじゃない方にはなじみの薄い公園だと思うし、東京に住んでいても宮下公園そのものに行ったことのある方は少ないと思います。ただ、渋谷ではちょっとしたシンボルでもあるので、渋谷から神宮前方向に買い物に行ったりするとその脇を通ったりするので知っている方も多いと思います。1980年代ぐらいまでは渋谷のちょっとしたデートスポットだったりしたのですが、最近ではそういう雰囲気の場所ではありません。
何故かと言うと・・・ホームレスの方の家?が建ち並んでいるからです。ブルーシートで覆われた簡易なものから、かなり立派なものまであります。
それが、最近になって渋谷区が宮下公園の命名件を売ったということで有名になりましたが、その公園の命名件料が公園整備に当てられるそうです。
しかし、まさか『ナイキ公園』なんて名前になるのでしょうか・・・。
この公園ですが私にはちょっとだけ悲しい話があります。
これは宮下公園のそばに住んでいて、今でもすぐ近くに住んでいる方から聞いた話です。
(地上げをしていて、仲良くなった地元の方から聞きました。)
この公園はそもそもは東京都の都市計画で1930年に出来た公園です。この頃の渋谷はというと・・・まさに忠犬ハチ公の時代ですから、完全な住宅街だったはずです。宮下公園の周辺も例外なく住宅街だったそうです。
当時は宮下公園の脇を渋谷川(今では地下を通っていて渋谷の南口のところから、また地上に顔をだす川です。)が流れ、その公園と渋谷川に小さな店舗併用住宅が並ぶ静かな町だったそうです。
しかし、太平洋戦争末期になると、当時、山手線が重要な軍事物資を運ぶ鉄道だったそうです。鉄道の周りに住宅があると、光が漏れて夜に空襲の対象になり、また空襲に会うと火事になって鉄道が使えなくなるということから、宮下公園の周りにあった、家は強制的に明治通りの反対側に移動させられたそうです。しかし、引き屋が動かしたというから驚きです。
※引き屋・・・家を土台から持ち上げて動かす商売の人
当初はみんな、嫌がったそうですが、結局、戦時下で逆らうこともできず家ごと疎開したみたいな格好になったそうです。しかし、それでも線路付近は空襲され、家ごと疎開したことで助かった方が多かったということです。
しかし、その宮下公園から運んだ最後の家も、一昨年、壊されてしまいました。
住んでいた方が老人ホームに入ることになり、売却してしまいました。
それを買って壊した張本人です。
ちょっと、罪悪感を感じた地上げでした・・・。
老人ホームにいる方が幸せと本人が言っているので・・・
【ミヤビエステック】SR広尾ビル
このビルを誠和リートっていう会社が買いました。
いくらで取引されたのかは知らないのですが・・・。
売主はミヤビエステックスって会社です。この会社は今年の1月に民事再生を申請したので覚えている方も多いかと思います。元はと言えばマンションデベだったんですが、収益不動産の転売を相当やっていました。
ちょっと、荒っぽいところもあって、近寄りがたかったのですが・・・
有名なのは福岡は中州でのカミソリ登記です。
簡単に説明すると
この会社は中州で再開発をしようとしたのですが近隣同意を取得できなかったのか面倒だったのか解りませんが、隣地に隣接している土地を薄く切って登記して、それを繰り返して、再開発しようとしたんです。
詳しくしりたい方は、中州・ミヤビエステック・カミソリ登記でGoogleで検索してください。
カミソリ登記についてはこちらの記事を見てください。
ビルの売買よりも、その事件を思い出してしまいました。
マンションデベロッパーのP
この会社、以前はデザイナーズマンションなどをやっている会社でしたが、収益不動産の売買で急成長しました。六本木に会社があったころは付き合いがあったのですが、最近はめっきり付き合いがありません。虎ノ門の方に引っ越したとは聞いたのですが・・・
役員変更(同じ役員で役職をぐるっと回しただけ・・・)
役員持ち株の売却
社員の大幅リストラ
そして、ゴーイングコンサーン
と、いつまで耐えられるかなぁ・・・と、よく噂されていましたが・・・。
ところが、最近になって、同社の物件が成約しはじめています。しかし、かなりの投売り状態です。
なんだろう・・・と思っていたら、
この会社の前社長(現同社取締役)がメンバーそのままで別の会社を作って、最近物件を買っているという話を聞いたので確かめてみると・・・事実でした。
なんか・・・怪しげな話です。
敢えて、会社名は伏せたけど・・・
【賃貸住宅】契約書と重要事項説明書【後編】
さて、前回の続きです。
この契約はそもそも、おかしな話がありました。
今回の借主Y⇔仲介会社H⇔管理会社(貸主代理)E⇔貸主T
という関係です。ここまではよくあることで、なにもおかしな点はなかったのですが・・・
私に相談してきたのは借主のYさんです。Yさんは木曜日に相談してきました。この木曜日を6月11日としましょう。Yさんの話によると・・・
「『仲介会社Hが13日の土曜日に重要事項説明をします。そこで、前家賃、敷金、礼金、仲介手数料等を12日に銀行に振り込んでください。そして、20日の土曜日に管理会社(貸主代理)Eが重要事項説明をして、20日に契約して鍵を渡します。』といわれてます。」
と言うのです。まず、
『仲介手数料というのは契約が行われないと、受け取ることができません。』
これは賃貸だけではなく、売買でも当然ですが同じです。しかも、重説よりも前に貰うということは、重説を読んで、「こんな条件じゃやだ!」とか「実はこの部屋の前居住者は自殺した。」などということが発覚したら、手数料を返せということになります。特に賃貸の場合は、契約日当日までは重要事項説明を受けないなどということが多いから、前日より前にお金を振り込むと面倒なことになります。
また、なぜか重要事項説明が2回・・・。
これだけでも十分に怪しい物件だったことは間違いありませんでしたが・・・。
さて、まだYさんも管理会社Eとは会っていないというので、仲介会社Hと話すことになりました。仲介会社Hには私はYさんの知り合いで不動産関連の仕事をしている者ということになっています。仲介会社Hは大手で日本全国に支店を持っている会社で、今回の担当者はまだ若い業界経験の浅そうな30前後の人です。
私が前回の話の通り、おかしな部分を説明すると・・・
「そうなんですよ~。とりあえず、管理会社Eから送られてきた契約書と重説をYさんに送ったんです。」
「いや、送ったって、御社だってこの契約じゃ、まずいだろ」
「ええ、とにかく指摘された部分を管理会社に言ってみます。」
「明日までにお金を振り込むっていうのもおかしいぞ。」
「はい、その件も・・・」
と、しばらくすると仲介会社Hから電話が掛かってきました。
「え~っとですね~。まず重説の(2)の細々とした内容
なんですが、そのままにしてくれって言うんですよ」
「いやいや、東京ルール違反だろ」
「それも言ったらですね。『東京ルールは原状回復の範囲を書面で説明することであって、それに付随するガイドラインはあくまでガイドラインだから法的拘束力はない』と言うんですよ。」
※ガイドラインそのものに法的拘束力がないのは事実です。
「しかし、そのガイドラインは今までの判例をまとめて、わかりやすくしたものだから、訴訟になれば負けるのは管理会社と貸主だろ。それにこの特約内容じゃ消費者契約法10条で特約そのものが無効になるぞ」
「そ・・・そうなんですけど・・・。やれるもんなら、やってみろって感じで受け付けないんですよ。」
『なんて強気な・・・。この契約はダメかな・・・』
と思いつつも・・・
「では、契約書8条4項
の件は?」
「同じような感じです。これも東京ルールの話をしたんですが、『うちは退居したら次の人のために必ずクロスと床は貼りかえるんだよ』と言われまして・・・」
「話にならないなぁ・・・、じゃあ特約の(5)の前居住者の残置物の件は?」
「それがですね、『今回は残置物は無い』っていうんですよ。」
「じゃあ、この項目は削除しろって言ったか?」
「言いました。そうしたら、『これはフォーマットだから直せない。』って言うんですよ。」
「あのなぁ・・・、これじゃあ、エアコンが残置物としか読みようがないだろ。そして、エアコンの故障による交換は借主負担になっちゃうだろ!」
「っていうか、それが狙いなんだと思います。」
「だろうなぁ・・・。しかし、フォーマットっていうことは、みんな、このフォーマットで
今までやってきたのか?」
「今までずっと、このフォーマットでやってきて問題ないと・・・」
「ほう・・・、じゃあ、賃借人が残して『言った』は恥ずかしいからせめてそこだけでも治せ。と言っておいて」
「あはは・・・じゃあ、その件は管理会社S不動産に言っておきます。」
「ん?管理会社はEだろ?」
「あああ、この会社、前はSって言う名前だったんですよ。社名変更をしたのか、会社を分けたのかは解りませんが・・・」
「え?じゃあ、S不動産って○○町にあるS不動産か?」
「よく、ご存知ですね~」
「なるほど・・・、君の話せる相手じゃないよ。この契約は破談にしよう。Yさんには私からよく言っておくよ」
やっと、思い出しました。
最初に管理会社Eという名前をどこかで聞いたことがあるとは思っていましたが、S不動産の名前を聞いて・・・。
このS不動産というのは業界の中では広域指定暴力団S会のフロント企業で有名な会社です。トラブルも絶えません。
その旨をYさんに話して、Yさんは別の物件を探すことになりました。契約書だけではなく、相手のことも良く調べないといけないな・・・と思いました。
その後、仲介会社Hの担当者はYさんに余程、悪いことをしたと思ったのか、つきっきりで面倒をみて、なんとか満足のいく部屋を見つけてあげました。
・
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・
安い仲介手数料でもがんばるから・・・
【賃貸住宅】契約書と重要事項説明書【中編】
最近、うちに相談のあった賃貸の契約です。
「この契約内容で契約していいでしょうか?」
ということで、契約書と重要事項説明書を送って頂きました。
ざくっと見ると・・・
① 東京ルールに完全に違反している。
② 契約書で矛盾している点が何点かある・・・
ということでNGをだしました。
(しかし、この管理会社、どっかで聞いたことがあるんだよなぁ・・・)
と、思ったのですがこの時点では思い出せませんでした。
※名前はぼかしてあります。
その契約書がこれです。(抜粋)
一番、上の画像が契約書の原状回復義務に関する条項
二番目が重要事項説明書の特記事項
三番目が重要事項の建物の設備状況です。
そして、これの何がおかしいかと言うと・・・
まず、みなさんは『東京ルール』という言葉をご存知ですか?正式には『賃貸住宅紛争防止条例』という名称の東京都の条例です。
これは退居時の借主と貸主の原状回復によるトラブル(敷金の返還額による問題)を解消することを目的として作られた条例です。東京に於いては、ちゃんと条例化されているのですが、内容は各判例をまとめただけで特別に新しい内容ではありませんでした。
唯一、新しい内容はその原状回復と善管注意の義務範囲を契約時に書面で説明しなければならないということです。そして、借主から了解した旨の捺印をもらうということです。
東京ルールについては・・・賃貸住宅紛争防止条例/東京都都市整備局
判例については・・・敷金返還と原状回復特約に関する判例集
簡単に言うと、
『通常の生活をしていて損耗したものは貸主の負担で修復しなければならない』
ということです。これは前述の通り、東京ルールでなくても判例があるので実際には全国共通です。
では、この契約書のおかしな部分は・・・
この契約書(一番上の画像)の4及び重説の特記(2番目の画像)の(4)を見てもらうと
『本契約の原状回復に係る壁紙(クロス等)や床材(カーペット・CF・フローリング等)の修繕や交換については乙に於いて負担するものとします。又、乙の故意・過失や通常の使用方法に反する使用など、乙の帰すべき事由により、修繕の必要が生じた場合は、乙がその費用を全額負担することになります。』(以下略)
と書かれています。
この内容では壁や床が日焼けで変色して交換しても、借主の負担になってしまいます。壁や床の日焼けは当然ですが普通に生活していて、どんなに注意しても日焼けしてしまいます。絶対に日が入らない様な生活をすれば別ですが、それは通常の生活とはいえません。
また、重説の特記(2番目の画像)の(2)を見ると・・・
『本契約の修繕について乙は、畳表の取替えまたは裏返し・障子紙・ふすま紙の取替え、電球・蛍光灯及びヒューズの取替え、エアコンのリモコン本体の故障・紛失、ガスコンロの目詰まり、照明カバー及び照明スイッチ及びコンセント、インターホン、ドアチェーン、ドアスコープ・窓鍵・備付鏡・コンセント・アンテナジャックの故障、エアコンダクトの外側の蓋、エアコンドレインの目詰まり・はがれ又は亀裂の修理、洗濯機パンの亀裂・破損及びエルボーの目詰まり、交換・ハンドシャワーノズルの取替え、シャワーカーテンの取替え、浴槽内止水栓のチェーン破損時の取替え、入浴剤による浴槽の変色の補修、トイレ便座のがたつき及び亀裂、トイレットペーパー等器具の取替え、シャワートイレの故障、トイレタンク内のボールタップ等々については借主の負担とすることを乙は承諾する。』
これを見たときははっきり言って驚きました。これじゃあ、石膏ボードの内側にある物は全て借主の負担ということと同じです。もちろん、故意に壊せば借主の負担ですが通常の使用で壊れれば貸主の負担です。
そして、極めつけが契約書(1番上の画像)の6と重説(2番目の画像)の(5)を見ると
『本契約に係わる従前の賃借人が残して言った設備(エアコン・電灯等)における修繕や交換については甲は一切の責任を負わないものとし、乙の善管注意義務に係らず修繕や交換に関する費用は乙の負担とする。』(以下略)
※赤字の誤字は記載通りです。
とあって
重説の建物の設備状況(3番目の画像)を見ると
『エアコン 有 1基』
とあります。ということは、このエアコンは所有者が設置したものではなく、前居住者の残置物ということでしょうか・・・。それに、『エアコン・電灯等』ではなく、この条文を入れるならば、前居住者の残置物が何なのかを明確にしておかないと、対処のしようがありません。
さて、この辺りのことを管理会社と交渉することになります。
貴方の契約書もこんな感じかもしれないけど・・・