【開発】大規模小売店舗立地法6
さて、今回は『【開発】大規模小売店舗立地法3』で書いた開発用地を大店立地法に抵触しないようにどのように開発したかの正解を検討していきます。
『【開発】大規模小売店舗立地法3』にも書いたように、この土地にまともに、容積率を完全に消化した物販店の商業施設を作ろうとすると、大店立地法に抵触してしまいます。そこで、大店立地法の抵触を回避するいくつかの方法があるのですが、それをそれぞれシュミレーションして、もっとも効率的な方法を選びます。
① 大店立地法に抵触しない面積に抑える。
簡単に言えば、容積率を消化しないで、
大店立地法に抵触しないようにしてしまうということです。
メリット
・ 建物が小さくなるのでその分、建築コストが抑えられる。
・ 貸しやすい、低層階の面積は大きくする訳ですから、当然に上層階が無くなったり、面積が小さくなったりしますから、空室リスクが軽減されます。
デメリット
・ トータルの床面積が減るので、最大収益は減ります。
この手法を使うケース
・ 最大容積の建物を建築した際に、大店立地法にわずかに抵触してしまうとき。
大店立地法は売り場面積が1000㎡以上のときに要件を満たさなければならなくなります。もし、容積率を完全に消化しようとした際に、極論になりますが1000.1㎡の建物ができるならば、0.1㎡は当然に捨ててしまった方が得です。
・ 土地の値段が安いとき。
やはり、極論ですが、土地の値段がゼロであれば、土地の価格は収益率に全く影響を与えません。
例えば、5000円/坪で貸せるエリアで
坪単価が20万円の100坪の土地
施工費が70万円の1000㎡(302.5坪)の建物を作ると、
家賃収入は5000円/坪×302.5坪×12ヶ月=1815万円/年
取得コスト(手数料、税金を考えない)は
20万円/坪×100坪+70万円/坪×302.5坪=23175万円
となり、表面利回りは
1815万円/年÷23175万円=7.83% となります。
もし、同じ土地に
施工費が70万円の900㎡(272.25坪)の建物を作ると
家賃収入は5000円/坪×272.25坪×12ヶ月=1633.5万円/年
取得コスト(手数料、税金を考えない)は
20万円/坪×100坪+70万円/坪×272.25坪=21057.5万円となり、
表面利回りは1633.5万円/年÷21057.5万円=7.75%となります。
実際に土地の値段が僅かでもあれば、建物が減って総家賃収入が減るほど、利回りは悪くなっていくのですが、土地の値段が取得コストに与える影響が小さければ多少、建物を小さくしても収益率そのもののダメージは少なくてすみます。
・景気の悪い時や、地方都市等でテナントリーシングに苦戦が予想される時
「こういう時は、収益率を目標として無理に土地を取得しない」
とか
「さっさと転売しちゃえ!」
と言わないでください。それだと話が続かなくなってしまいます。
用地取得後に景気が悪くなり、転売もできない。と考えてください。
この場合は、できるだけ経費を抑えたいのが本音です。できれば、何も建てずに駐車場にでもしておきたい。と言ったところでしょう。実際に、都心で更地になって、コインパーキングになっている場所が散見されますが、その中にはこのパターンの土地があるはずです。実際に私も駐車場にしてしばらく、放っておいたところがあります。(まぁ、『塩漬け』ってやつですね。)
もっとも、駐車場にする為には、駐車場としての需要が見込まれないと厳しいです。主要道路に面しているなどの一定要件が必要になってきます。
そこで、駐車場に不適な場所だったりする場合には簡易な建物を作って、短期の定期借家契約にします。もっともこれは、大店立地法に抵触しなくても使う手法です。
いずれにしても、採算性に乏しく、出来れば使いたくない手法ですが、こんなご時勢には、使わざる得ない手法かもしれません。
今回のケースで検討する必要性があるのは・・・
土地の値段が安いわけでもなく、また、当時は景気が悪かったわけではありません。ただ、『最大容積の建物を建築した際に、大店立地法にわずかに抵触してしまうとき。』だけは検討しなければなりませんでした。
第3話でも書いた通り、抵触する面積は240.8㎡です。実際には建物の全てを売り場にすることは、ありません。必ず、バックヤードやトイレ、それにレジカウンターなどの売り場にはカウントされない部分が出てきます。
その面積は一般的には25%~30%ですが、店舗が小さくなればなるほど、また、家賃が高くなればなるほど、売り場を効率的に使いたいと思う様になり、最大で専有面積の90%ぐらいが売り場面積になってしまうことが考えられます。つまり、
1000㎡÷90%=1111.1㎡
以内の建物を作れば、まず、大店立地法には抵触しないと考えられます。
そこで、大店立地法に抵触した場合の利益、2億7000万円を超えればこちらの方が得ということになります。
では検討してみます。
大店立地法には抵触しないので、駐車場は不要です。そこで1階の面積は建蔽率を消化します。
1階462㎡(139.75坪)
地下1階と2階の想定家賃は一緒なので面積を適当に割り振ります。実際には地下の建築コストの方が高いので地下の面積を減らす方向で検討するのが一般的です。
2階 462㎡(139.75坪)
地下1階 187.1㎡(56.95坪)
の建物が想定されます。
とすると、地下の部分が希望される建物よりも38.88坪少ないことになります。
38.88坪×4万円/12ヶ月=1866万円/年
の収入を失うので
▲1866万円/年÷5.7%=▲32726万円
つまり、売却時の価格は32726万円も下がってしまいます。
しかし、地下の面積が減った分のコストは浮きます。
100万円/坪の建築費で計算していますから、3888万円ほど建築費が浮くことになります。
としても▲28838万円の利益を失うことになり、最大収益3億8千万円に対して、約9200万円程度の収益しか出なくなってしまいます。
これでは、大店立地法に抵触した場合の期間リスク(詳しくは第5話を参照)を考慮したとしても、大店立地法を素直に申請した方が得ということになります。次回(第7話)では『②大店立地法に抵触しないテナントを誘致する。』について検討します。
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