不動産売却の時期 消費税増税前の駆込み需要

連載シリーズ 【 不動産売却の時期 消費税増税前の駆込み需要 】 第 2 話 / (全 4 話)

 平成7年、もう18年も前のことですが、その年は随分と暗い年でした。1月に阪神大震災があり、さらに3月に地下鉄サリン事件、また政治基盤も村山内閣という連合政権で不安定でした。バブル崩壊後、弱っていた日本経済にとって、さらに追い討ちを掛けた年でした。

 平成8年になると、村山政権で内定発表されていた消費税増税(3%から5%へ)に対する駆込み需要が始まります。

 住宅需要も平成7年は景気の落込みなどで、平成6年の156.1万戸から148.5万戸まで減りましたが、平成8年になると、特に所得が増えている訳でもないのに、163万戸と前年比9.8%増と一気に増えました。

 こと分譲住宅(分譲マンション・戸建て分譲)だけに限ってみると平成6年は37.8万戸から平成7年には34.5万戸まで減りましたが、平成8年には35.2万戸に増えました。

 住宅全体が9.8%だったのに対し、分譲住宅は34.5万戸から35.2万戸だと、僅かに2%の上昇でしかありません。

 よく覚えていますが、この年は「造れば売れる」というような状態で、どの現場でも抽選会が行われていました。抽選会が行われるということは、それだけ需要に対して供給不足だった状態だったのです。

販売部門の責任者が

「撃てば当たる。売って、売って、売りまくれ!」

と販売担当に発破を掛けていました。

実際に販売の営業は軒並みボーナスが上昇し、生産部門もその恩恵に与りました。しかし、会社の中で厳しい眼差しで見られていたのが、用地買取部門です。

 「造れば売れる」という状態ですから、土地さえあれば、もっと造ったのですが、あまり土地が買えなかったのです。

 その頃の地価はバブル崩壊後下落の一途で、土地所有者がなかなか土地を手放さなかったという経緯がありました。実際に事業用地は、個人から買取ったものは少なく、バブル崩壊で社宅、工場、倉庫などの法人が手放したものが殆どで、個人から買取ったものは相続で手放された僅かな土地だけでした。

 「それだけ、需要があるのだから、土地を高く買っても売れるだろう。」

 と思う地主が多かったのと、バブル崩壊直前まで信じられていた、

 「土地の値段は下がることがない」

 という不動産神話も手伝い、再び地価が反転上昇すると思っていた地主が多かったこともあります。

 しかし、分譲住宅会社は多少利益を削って、高く土地を買取ることはありましたが、販売価格を上げることはありませんでした。何故なら、分譲住宅を買う方が値上げについて来られなかったのが原因です。買う人たちは、多少高くても買いたいのが本音だったのですが、金融機関がバブル時のような無理な融資をしなかったのです。

 分譲住宅を買う人の殆どが、なんらかの住宅ローンを使います。住宅ローンを使わない人は、2割に満たないのです。ですから、販売価格を上げられず、必然的に土地の買う値段も利益を削れる範囲の中でしかあげることができませんでした。

その後、消費税増税は実際に行われることになります。

それは、村山政権という不安定な政権から、自民党公明党だけによる橋本政権という強力な政権誕生によるものでした。

この部分だけを見ると、平成25年現在とかなり似ていました。

 土地の値段が反転上昇するのは10年後のことで、上昇と言っても僅かな期間であり、この時の消費税増税前の地価に戻ることはありませんでした。

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