既存不適格と違法建築【収益不動産】
- 既存不適格と違法建築【収益不動産】
- 既存不適格と違法建築 収益不動産を扱うまでの経緯
- 既存不適格と違法建築 検済のある建物
- 既存不適格と違法建築 検済と謄本の記載内容の違い
- 既存不適格と違法建築 違法建築のチェック
- 既存不適格と違法建築 完了検査の未受領
- 既存不適格と違法建築 用途変更と構造偽装
- 既存不適格と違法建築 品確法と中間検査
- 既存不適格と違法建築 旧耐震ビルの利用検討
- 既存不適格と違法建築 PCBとアスベストの調査
- 既存不適格と違法建築 隣のビルの高さが明かに違う
- 既存不適格と違法建築 建物の登記情報(謄本)
- 既存不適格と違法建築 土地の登記情報(謄本)
- 既存不適格と違法建築 増築のための確認申請
- 既存不適格と違法建築 建築後の分筆
- 既存不適格と違法建築 地名地番と家屋番号
- 既存不適格と違法建築 正しい建築士に仕事を依頼していますか?
- 借りた物件の用途変更が出来ないのは誰の責任?
収益不動産を購入を考えている方や、収益不動産をこれから建築されようとお考えの方、また、すでに収益不動産をお持ちの方は是非、お読み下さい。
私の会社は設計事務所(一級建築士事務所)でもありますが、不動産屋(宅地建物取引業者)でもあります。
ブログの過去の記事を読んで頂いている方は、御存知の通り、私は、ハウスメーカーで設計、積算や商品開発などの技術系部署を経て、収益不動産のための用地取得や開発の部門に行き、その後、アレンジメントの会社の役員になり、今の会社を立ち上げました。
さて、今回は収益不動産を取得するときに注意しなければならない点として、タイトルの『既存不適格』と『違法建築』について書きます。
まず、『違法建築』については、読者のみなさんも御存知の通り、建築基準法や地方自治体が定める条例等に対して『故意』に違反している建物のことを指します。
『既存不適格』というのは、一般の方はあまり聞きなれない言葉かもしれません。『既存不適格』とは、その建物が建てられた時の建築基準法や条例に対して合法ではあったが、その後、建築基準法や条例が変ったことによって、その変更になった部分に対して適合してしなくなってしまった建物のことを言います。
簡単に言えば、建築主や施工業者もしくは設計者が『故意』に違法行為をしているものを『違法建築』で、合法だったのに法律の方が変ってしまったものを『既存不適格』と言いますが、結果的には、どちらも現在の建築基準法には適合していないということになります。
しかし、この二つには大きな違いがあります。
もちろん、故意に違法行為をしているのだから、その時点で犯罪行為になる訳ですが、実は日本の建物は違法建築物だらけだったりします。そして、この違法建築物は、是正処置命令や、あまりに酷い場合は行政処分として使用禁止命令、もっと酷い場合には建築主や設計者、施工業者に刑事罰が課せられる場合もあります。
しかし、実態は行政もほとんど放置しているのが実態です。これには財産権の問題や既にその建物が使用されている場合に、その使用者の権利の問題があって、一度、違法建築物が使用され始めると、それを是正するのは難しいからです。
では、違法建築でも一度、建って使い始めてしまえば、問題ないかというと、そうでもなかったりします。建物というのは何十年も使うことが殆どです。ところが、その間に建築基準法や条例、消防法などが時代の流れでどんどん変っていきます。そして、後述しますが、その法に適合するようにしなければならない状況が発生した場合に、『違法建築物』の場合、その是正に掛かる費用の全額を所有者が負担しなければならないというケースが殆どです。
では既存不適格はというと、殆どの場合が、現行の法律に是正しなくても犯罪行為にはなりません。一部の消防法などに抵触する場合は、何らかの手を加えないといけない場合がありますが、極めて軽微なものが多く、どうしても大規模な補修を必要とするような場合は行政から助成金等がでる場合が殆どです。最近で言うと、軽微なものは居室、台所や階段室に火災報知機を設置しなければならないというものです。これは居住者がホームセンターで1個、2000円~3000円のものを買ってきて自分で付けることも可能ですから軽微な事例です。
大規模なものでは、東日本大震災後、東京を中心として主要幹線道路沿いにある旧耐震の建物(昭和56年4月より前に建てられた建物)に耐震診断を実施して、現在の耐震基準を満たしていない場合は耐震補強工事を行わなければならないというものです。この場合は、規模にもよりますが何千万円もかかる場合もありますが、行政によっては、その殆どが助成金で賄えたり、少なくとも50%以上は助成金で賄うことができます。
さて、収益物件を取得する場合に注意しなければならないのが、この『違法建築物』です。前述のように、何らかの法改正でその建物を是正しなければならない時に自己負担になってしまえば、その場合は大きな出費となります。また、それを是正しないで問題が発生すれば所有者責任を免れることはできません。当然、そのことを理解している人が殆どなので、市場での流通性も低く、転売することも難しいのが現実です。
では、違法建築を見抜く手段として、一般的に行われている手法はというと、『完了検査済証』の有無です。この『完了検査済証』があって、完了検査に合格していることが確認できれば、その建物が建ったときに違法ではなかったということが確認できます。
この『完了検査済証』さえあれば、その後、その建物が規定の検査、例えば消防法の定める定期検査や、建築基準法施工令によるエレベーターの定期検査などを受けていなくても、これから、その検査を受けて問題がなければ、『検査済書』は発行されるので問題はありません。
ところが、これでは完全とは言えないケースもあるのですが、プロでもこの程度の確認していなくて後で往生するケースがあります。高額な物件の取引の際で、買い手がしっかりとした法人の場合には、その建物が違法建築物ではないかのレポート(エンジニアリングレポートと言います。)を一級建築士事務所に依頼します。高額な物件の場合、規模も大きいのでその調査費用も数十万~100万円以上になる場合もあります。
次回はなぜ私が収益不動産の取得に関わることになったのかを少し書いてみたいと思います。
まずは1本、お電話ください。些細な疑問にも答えます。プロ、アマ、一般の方、すべて歓迎。