既存不適格と違法建築 違法建築のチェック
- 既存不適格と違法建築【収益不動産】
- 既存不適格と違法建築 収益不動産を扱うまでの経緯
- 既存不適格と違法建築 検済のある建物
- 既存不適格と違法建築 検済と謄本の記載内容の違い
- 既存不適格と違法建築 違法建築のチェック
- 既存不適格と違法建築 完了検査の未受領
- 既存不適格と違法建築 用途変更と構造偽装
- 既存不適格と違法建築 品確法と中間検査
- 既存不適格と違法建築 旧耐震ビルの利用検討
- 既存不適格と違法建築 PCBとアスベストの調査
- 既存不適格と違法建築 隣のビルの高さが明かに違う
- 既存不適格と違法建築 建物の登記情報(謄本)
- 既存不適格と違法建築 土地の登記情報(謄本)
- 既存不適格と違法建築 増築のための確認申請
- 既存不適格と違法建築 建築後の分筆
- 既存不適格と違法建築 地名地番と家屋番号
- 既存不適格と違法建築 正しい建築士に仕事を依頼していますか?
- 借りた物件の用途変更が出来ないのは誰の責任?
さて、第3章、第4章で私が収益不動産に関わった経緯を書いてきました。
今回は、私が収益不動産に関わった経緯と、その不動産が違法状態に陥り、その後の経過を書きます。
社内で相談できる人は皆無で、私はその物件を紹介してくれた仲介業者に出向き、状況を説明しました。すると、その仲介業者は
「あれ、これ完全な違法物件だね。気がつかなかった、ゴメンね。じゃあ、ゼロ契で停止条件に違法建築が認められた場合は白紙解除って入れよう。」
と提案してくれました。
(※ゼロ契:契約時の手付金を支払わないこと。手付金を支払った場合、契約解除になると手付金は支払い側に戻すことが前提だが、一度、相手に渡った金銭を戻せる保証は無いため、リスクが大きい場合には手付金を支払わない契約のこと)
そのまま、停止条件に「違法建築が認められた場合には白紙解除」を特記事項に入れて契約をして、白紙解除で事なきを得ました。
この物件が白紙解除になった時には、既に私は4物件目の購入に差し掛かっていて、1件の白紙解除によって失った会社に対する利益を取り返す案件を複数持っていたので余裕もありました。
私はこの事態に陥ったことで、この物件がどうして違法建築に至ったかを調べずにはいられませんでした。勿論、調べたところで、会社の利益にはなりません。ただ、同じ徹を踏まないためということもありましたが探究心もあったと思います。
まずは、現所有者(私に対する売主)も、違法建築物だということを知らなかったことが解りました。現所有者も収益不動産として購入していました。
問題は登記情報です。建物謄本も4階建となっており、登記されている建築図面も4階の図面がしっかりとあります。最初の建築主がどのように4階で登記したかまでは正確には辿れませんでしたが、ある程度のことは解りました。
まず、確認申請図通りに3階建てで建てます。しかし、最初から4階建てにすることを意識して設計された建物です。そして3階まで出来上がった時点で完了検査を受けて合格します。完了検査済証発行後、もしくは完了検査終了直後に4階部分を増築します。最初から4階建てにすることを前提として設計されているので、違和感なく増築できるわけです。ですから、私が感じた違和感は、「なぜエレベーターが無いんだろう?」に、留まってしまい、意匠的違和感を得ることができないことに至ります。例えば、屋上に無理やり、小屋を建てれば意匠的不具合が発生するのですぐに気がつきますが、もともと違法増築を計画的に考えていると外見的判断では難しくなります。
完了検査後、4階部分が出来た時点で建物の登記を行います。建物の登記をする場合に完了検査済証の有無を法務局に提出する必要性は無く、家屋調査士が現存する建物の情報を法務局に報告して、家屋調査士が作った図面で登記することが可能です。
つまり、私が持っていた建築図面は、違法建築後の家屋調査士が作った図面です。また、法務局はその建物が完了検査済証を確認して違法性の有無を確認しないで、現存状況を登記するため、登記情報は建築の違法性を確認する手段には全くなりません。
しかも、この建物の竣工図を仲介業者が入手してくれたのですが、その竣工図がなんと、現状の4階建ての建物になっていました。しかも、完了検査済証に記載されている一級建築士事務所と施工会社の名前で竣工図が作成されています。つまり、この建物は建築主、一級建築士事務所、施工会社が違法であることを承知で4階建にしてしまったものだと言う事がわかりました。
このケースは、時間が無かったという言い訳をしても明らかに、私のケアレスミスです。
完了検査済証で『3階建』となっている建物なのにそれを見落とすというのは、あまりに酷いミスでした。しかし、このミスが発生した理由は何かを整理してみると、
1.登記簿、建物図面等の登記情報が4階建になっていた。
2.エレベーターが無いものの、不自然な形でなく4階建になっていた。
3.竣工図と確認申請図の双方を比較しなかった。もしくは確認申請図の有無を確認しなかった。
4.完了検査済証のチェックを怠った。
つまり、登記簿情報や竣工図というのは違法建築の確認には全くならないということです。よって、いかに正確な知識で物事を判断できるかということが大事かということになります。
この様に簡単なケースは、大した建築の知識が無くても、注意していれば、見抜くことができますが、もっと、専門的な知識が無いと見抜けないケースもあります。そのような場合は、やはり、一級建築士などの建築の専門家に依頼して、見てもらうことが大切です。
あっ、この時点で私も一級建築士だったので、お恥ずかしい限りです。(^^;)
この建物は、私はこの時点で買うことはなかったのですが、数年後のリーマンショック前年に再会することとなります。大手外資系保険会社から、大手外資系投資銀行へのバルク取引の中の建物に入っていたのです。
(※バルク取引:複数の建物をまとめて売買する取引)
大手外資系保険会社は、私が気づかなかったように、違法建築物ではないものと思って、保有してしまっていたのです。私は当時、大手外資系投資銀行側のアレンジャーとして物件調査担当でした。大手外資系保険会社のアセットマネージメント会社の担当者は、以前、私が見た資料と同じ資料を持って、その合法性を説明しましたが、当然ですが私に一蹴されます。
結果的には、大手外資系保険会社がその美容歯科医院に立退き料を支払った上で、4階部分を撤去して、確認申請時の状況に戻すという大工事を行いました。
この物件の単体取引では、ありえない工事費が掛かりましたが、300億円級(物件数で13棟)の同時取引でしたから、成立した工事でした。
このケースは極めて巧妙に3階建を4階建にしているケースですが、もっと乱暴に屋上にプレハブを増築している建物は沢山あります。
3~4階建ての商業ビルや雑居ビルが立ち並ぶ街で、ちょっと建物の屋上部分を見てみると、明らかに不自然な最上階がある建物を見つけることができます。時々、屋上を見てみると面白いかもしれません。
次章からは『完了検査』を受けているのに、『違法建築』という事例をもう少し紹介していきます。
・既存建物を買うときに違法建築物かどうかを判断するのは、なかなか難しいものです。ですから、既存建物を買う前に是非、リデベにご相談ください。
・違法建築物を既に買ってしまって、お困りの方もリデベにご相談ください。(場合によっては、違法建築を解消できます。)
・既存不適格建物に関して、不安をお持ちの方もリデベにご相談ください。
まずは1本、お電話ください。些細な疑問にも答えます。プロ、アマ、一般の方、すべて歓迎。