違反建築が発覚した時の対応
既存の建物で違反建築が発覚すると、突然、役所の職員がやってきたり、消防署員がやってきたり、違反建築であることの通知が来たり、役所に呼び出されたりと様々なパターンがあります。
また、既存の建物に増改築や用途の変更を行っている場合で違反があったり、無届だったりすると、突然、工事の中止命令が出たりすることもあります。
この場合、絶対にしてはいけないことは、その
行政指導(場合によっては行政処分)を無視しないこと!
無視を続けると、最終的には建築基準法第9条第1項(もしくは第10条第2項)に基づき、違反状態を是正する命令が来て、さらには同法第9条第13項の規定で建物に「使用禁止」と書かれた紙を貼られ(標識の設置)、さらには行政のホームページに違反の事実が公表されたりします。
行政(役所や消防署)が、行政指導をしてくるということは、それなりに違反である根拠を押さえているケースが多いです。その為、行政指導を無視していけば、行政はより精密な調査をして、さらには、行政指導を超えて、完全に法令に則った行動をしてきます。行政が法令に則った行動をすると行政も後には引けなくなるので、違反者側も法令に基づいた行動をしなければならなくなります。
では、行政から違反に関する、行政指導や行政処分が来た場合、どうするか?
違反建築に関して行政と交渉のできる一級建築士に依頼するしかありません。
※ 違反に関する行政指導でその建物を除去(解体)するのであれば、一級建築士に相談しなくても問題はありません。二級建築士や木造であれば木造建築士に相談するのでも構いませんが、違反建築対応ができる建築士でないと意味がありません。
ここでよくあるケースが
建築基準法関連法令や条例に対する行政指導や行政命令に対して、弁護士に相談する。
というパターンですが、建築士法第21条で
「建築物に関する法令又は条例の規定に基づく手続きの代理その他の業務」
は建築士の占業とされています。
もちろん、本人が建築基準法等に相当詳しくて、建築士を代理に立てなくても自分で対抗できるというのであれば、行政と直接やりとりすることも可能です。
また、行政指導というのは、行政手続法に基づくものなので、その手続きの正否を問うのであれば弁護士に相談するのでも構いません。
ただ、本当にそれが建築基準法に違反しているのか、また技術的な話になると、結局、前述の建築士法第21条が出てくるので弁護士から建築士に依頼をするということになったりします。
ここで、建築基準法及び関連法令や条例に関する、行政指導と行政処分の違いについて説明をしておきましょう。実例をあげて説明をします。
第二種中高層住居専用地域に地下1階地上3階の建物を適法に作った建築主がいました。その場所は都市計画法上、第二種中高層住居専用地域なのですが、周辺は海外の高級ブランド店や流行のアパレルショップ等が立ち並ぶ場所で、商業的価値の高い場所でした。
その建物の3階は、簡易なシャワーユニットと、ミニキッチン、トイレ(いわゆる住宅三点セット。これがあれば住宅として確認申請ができる。)が設置される計画で実際に完成時には取り付けられていました。
ところが、その建物の地下1階から地上3階までを1人(法人)の賃借人が借りて、地下1階から地上3階までを店舗として利用しようとしました。
第二種中高層住居専用地域では3階以上では店舗や事務所に利用することはできません。
その賃借人は、悪意があったわけではなく、店舗の内装が終わって、開店する前に消防検査を受けました。そこで、消防署が建築基準法違反に気が付きました。その当時、現場で消防署員が注意(行政指導)をしたかは不明ですが、消防署は、役所の建築指導課に通報をしました。
行政はすぐに現場を確認して、建物所有者及び店舗の経営者である賃借人に、
「3階を店舗として利用してはダメですよ!」と注意をして、さらに使ってはいけない法律根拠(建築基準法第48条第4項違反)を書面で渡しました。ここまでは、行政指導です。
ところが、建物所有者も賃借人もそれを無視して、そのまま開業しようとしたのです。
店舗が開業したところで、役所は建築基準法第9条第1項により、3階の店舗を住宅に戻すように書面で命令を出しました。(ここからが行政処分です。)
さらに、建物所有者と賃借人はそれを無視して店舗の営業を続けた結果、ある日、役所がやってきて、建物の入り口に「使用禁止」という紙を貼り、その事実を公表したのです。
ちなみに、その使用禁止の紙には
「建築基準法第9条1項」によりと書かれていて、さらに、「この命令を破った物には建築基準法第98項第1項により、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。」
と書いてあります。もう、こうなってからでは手のつけようがありません。
その後、建築主である建物所有者と店舗の経営者である賃借人とで民事訴訟になりました。(裁判所で和解したところまでは、聞いていますが、和解内容までは聞いていません。)
しばらくの間、使用禁止の紙が貼られ、空き店舗になっていたのは記憶にあります。
行政指導について次の様なことを行政官にいう人がいます。
「他の建物もやっているのに、うちだけなんで行政指導なんだ!」
これが一番多いのですが、これは既に、スピード違反で捕まった人が
「他の車もスピード違反しているのに、自分だけ捕まえるのはおかしいだろ!」
と言っているのと同じです。行政指導や行政処分を受けた際に、他の事例や他の行政区の取扱いを持ち出して、交渉するのは何の意味もありません。むしろ、心象を悪くするだけです。
この様にして、心象を悪くしてから、建築士に依頼されても、その建築士は心象の悪くなった状態から交渉をしなければならなくなります。
例えば、建築士が当該違反の改善計画書などを提出していくのですが、改善に3年を掛けようと思っても、既に心象が悪くなっていると1年しか待ってくれないなどという不具合が発生します。
「そんな法律おかしいだろ!」
ということを言う方もいますが、そもそも法令ですから、国民によって選ばれた立法府や、条例であれば、同じく市民によって選ばれた地方議会によって定められているものです。法律がおかしいなら、法令の改正からしなければなりません。行政官の仕事は、法令に従って、行動するだけなので、法令の是非を言うのは無駄です。
ただ、行政官が法令解釈を間違っている場合が稀にあります。その場合もやはり、法令解釈の専門家である建築士に依頼しないと、なかなか交渉そのものが難しいことになります。
また、時々、消防署の立入検査の結果通知で建築基準法違反を指摘される場合があります。
消防署は、消防法によって存在しているので、建築基準法について指導する権限はないのですが、消防署の査察管は、建築基準法にもかなり精通しています。消防署からの結果通知に建築基準法違反について書かれることがありますが、それについて
「消防署の言っていることだから、建築基準法は無視して、消防法に係るところだけ是正しよう」
などと言い出すかたがいます。
しかし、多くの消防庁管内の内規で
「法令に基づく、建築基準法違反を発見した場合には建築行政(特定行政庁の建築指導課)に通報しなければならない。」
というものがあります。つまり、消防署の通知に建築基準法違反が書かれていたら、その内容については建築指導課も知っているということになります。消防署の指導に従って、建築基準法違反を是正して報告すれば、そのことも建築指導課が情報を共有します。
ところが、消防署の通知に対して、建築基準法違反を是正しなければ、是正しない旨が、建築指導課に通報されます。そうすると、今度は建築指導課監察官が現場にやってきます。
今度は本当の建築基準法の監察官で、建築基準法の番人みたいな人がやってくるわけです。消防が通知した建築基準法以外の建築基準法違反まで指摘されて、余計に多くの是正を求められることになりますし、建築基準法第12条5項に基づく報告書を出すことになったりすると、その手続きの煩雑さもあり、こうなってくると請負ってくれる建築士を探すのにも往生することになります。当然に報告費用や是正費用も高額になってきます。
この様に違反建築を指摘されたら、すぐに違反建築の是正に詳しい一級建築士に相談する。口頭での行政指導レベルの段階で、一級建築士が介入すると、自主是正(所有者と建築士で責任をもって適法な状態にする)となり、今後、行政が介入してこないという場合もあります。
行政から指摘を受けたら、自分で対応しようとしないで、まずは一級建築士にご相談を下さい。
建築基準法適合状況調査の流れ(検査済証の無い建物を適法化する方法)
本内容は2014年12月6日に掲載されたものの修正版です。
① 確認済証の副本と確認申請時の図面の有無を確認する。
副本と図面がある場合は②へ進む。無い場合は③へ進む
② 一般木造住宅2階建て200㎡未満の建物以外の場合は構造計算書の有無を確認する。
構造計算書が無い場合は④に進む。
一般木造住宅2階建て200㎡未満の建物、もしくは構造計算書がある場合は⑤に進む。
③ 建築士事務所(出来れば一級建築士事務所)に依頼して、現況図面の作成を依頼し、現況図面作成後に④に進む。
④ 現況図面をもとに構造計算を実施する。
⑤ ①の確認申請時の図面もしくは③で作成した現況図面が、建物が建てられた時点の建築基準法に適合しているかを一級建築士に確認してもらう。
この時点で、建築基準法に大きく違反しており、是正するのに建て直す方が、経済的に有利な場合には、建築基準法適合調査を中止する。
概ね建築基準法に適合している、もしくは軽度の違反(建て直すよりも是正する方が遥かに経済的に有利な違反)がある程度である場合には、⑥に進む。
⑥ 依頼した建築士に『建築基準法適合調査』を第三者機関に依頼してもらう。
この時点で依頼された建築は特定行政庁との協議を行い、第三者機関に議事録で報告を行う。⑦に進む。
⑦ 第三者機関が『建築基準法適合調査』を行い、『建築基準法適合調査報告書』のドラフトを作成する。
不適合箇所が無ければ、『建築基準法適合判定合格状況調査報告書』が発行されます。
不適合箇所がある場合は⑧に進みます。
⑧ 依頼した建築士に不適合箇所についての是正方法等を第三者機関と協議して貰い、不適合箇所を是正する工事を行う。その是正箇所を依頼した建築士に写真などを取って貰い、第三者機関に報告してもらう。是正完了を第三者機関が認めてもらえば『建築基準法適合判定状況調査報告書』が貰えます。
建築基準法適合判定状況調査報告書は、不適合でも貰えますが、報告書の中に『不適合』箇所の指摘が残ったままになると、その効力がありません。 この場合は違反建築物である証明書にしかなりませんので注意が必要です。
ただし、『建築基準法適合調査』が出来るようになったのは、平成26年7月2日の国土交通省発表のガイドラインからで、すべての建築士事務所が引き受けてくれる訳ではありません。
価格については、建物の規模、築年数、構造、確認済証の副本の有無、確認申請時の図面の有無、建築基準法の技術的指針への違反の程度によって大きく異なります。
まずは、株式会社リデベにお気軽にお電話下さい。
03-5389-6082
営業時間 平日午前10時~12時 午後13時~18時半となります。
なお、ご相談に御来社する際には、必ずお電話で予約を取ってください。
「民泊」、建築基準法や消防法に注意が必要
本内容は2016年4月13日に掲載されたものの修正版です。
平成28年4月1日に旅館業法施行令の一部が改正され、通称「民泊」と言われるサービス(以下、「民泊」と言う)の中でも小規模なものが出来るようになった。今までは客室が全体として33㎡以上あることや玄関帳場もしくはフロントの設置が必要であったが、10人未満の民泊を行う場合に限り、一定の規制が緩和された。しかし、建築基準法や消防法までが緩和された訳ではない。また、当然だが区分所有のマンションなどでは、管理規約などが優先されることは言うまでもない。今回は、民泊を行うにあたり、旅館業法の他に建築基準法や消防法の規制を受けるということを書いているが、その他にも各自治体などの条例等の規制を受ける場合がある(殆どの自治体で何らかの条例がある)ので、保健所の他に各自治体や消防署には必ず事前協議に行くべきだろう。
さて、下記表を見てもらいたい。今回の法改正は民泊に対して、旅館業法の一部が緩和されただけであり、建築基準法や消防法が緩和された訳では無い。旅館業法が緩和されても、安全性が排除されてよい訳ではない。
まず、建築基準法についてだが、「200㎡以下なら、用途変更の確認申請を出さなくてよい」から、建築基準法について、何ら確認をしなくてよいと考える傾向にあるが、200㎡未満の場合、確認申請を出さなくて良いだけで、当然だが建築基準法は守らなければならない。用途地域によっては、民泊が出来ないエリアもある。下記表のように分譲マンションの一室で民泊を行うことによって、建物全体の容積率がオーバーすることになれば、そのマンションそのものが違反建築になり、他の区分所有者の権利を侵害することにもなる。
さらに、防火地域外にある3階建て以上の木造(鉄骨造の一部を含む)の場合、耐火構造になっていない可能性が高く、その場合は、かなり大がかりな工事を必要とするため現実的には難しいことを覚えておきたい。
民泊を行う場合でも消防法についても特に注意を払わなければならない。2015年5月17日未明に神奈川県川崎市で起こった簡易宿所の火災により、消防法、建築基準法違反により大参事になることが浮き彫りになった。以降、消防署も簡易宿所に関して、以前にも増して注意を払っている。そこで、住宅を民泊にする場合に設置しなければならないものがある。
下記表の通りであるが、300㎡を超える様な民泊の場合、宿泊人数が10人を超える可能性が高いので、改正前の旅館業法が適用される。注意を払わなければならないのは、宿泊者が10人未満であっても、民泊になる部分が建物の10%を超えると、消防法に於いては、「特定防火対象物を含む複合用途防火対象物」とみなされる。例えば、もともとマンションの住人が50人未満の場合、防火管理者が設置されていないが、民泊を行った場合、マンションの住人と民泊の収容人員の合計が30人を超えると防火管理者が必要となる。また、民泊を営んでいるフロア以外にも誘導灯が必要になる。誘導灯は専用回路などの配線工事も必要になってくるので注意が必要だ。専用住宅を利用して民泊にして、30人以上の収容人員がある場合には、2階以上(避難階より上階)には避難器具が必要になってくる。
民泊をする部分が300㎡を超えると、改正された旅館業法ではなくなるが、旅館業法で定める玄関帳場やフロント以外にも、全ての住宅部分の居室に自動火災報知器(全ての火災報知器が連動しているもの)が必要になってくるなど、さらに厳しい規制もある。
この様な規制があるのだが、報道発表などで旅館業法の改正になった部分だけを見てしまうと、民泊が簡単にできる様になったと勘違いし、一戸建てや共同住宅の空室を使ってすぐにでも民泊が出来るように感じるが、実際には旅館業法により、小規模な簡易宿所が出来る様になっただけで、何でも民泊が出来るという訳ではない。
そして、旅館業法の緩和により、仮に旅館業法の許可が受けられる様な物件であっても、建築基準法や消防法によって民泊が出来ない物件を、「民泊可能」などと書いて、不動産の広告を行うと宅地建物取引業法32条の「誇大広告」や同法47条の「不実のことを告げる行為」に抵触する可能性があるので宅地建物取引業者も注意が必要である。
表
旅館業法 | 宿泊数10人未満(新基準) | 宿泊者数10人以上 | ||||
・3.3㎡/人以上・玄関帳場・フロント不要(※1) | ・客室の合計が33㎡以上・玄関帳場・フロント必要 | |||||
建築基準法 | 民泊部分が200㎡未満 | 民泊部分が200㎡以上 | ||||
確認申請の手続きが不要(一部行政機関は必要な場合有) | 確認申請の手続きが必要(※2) | |||||
【民泊にする場合の共通事項】(確認申請の要否に関わらず厳守)・第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域・第一種中高層住居専用地域・第二種中高層住居専用地域では設営不可。・第一種住居専用地域では3000㎡以上は設営不可・300㎡以上の場合は準耐火構造(木造建物の場合注意) | ||||||
【専用住宅を民泊にする場合】(確認申請の要否に関わらず厳守)・建物が3階建て以上の場合、耐火構造にしなければならない。防火地域以外の木造建物や鉄骨系の建物の場合、多額の費用が掛かる場合が多い。 | ||||||
【共同住宅を民泊にする場合】(確認申請の要否に関わらず厳守)平成9年9月1日以降に確認申請を行っている場合、民泊にした部分の面積の割合に応じて、共有部分の面積が容積率対象面積になるため容積率オーバーになる可能性がある。 | ||||||
消防法 | 建物全体の10%以上 | 300㎡以上 | 建物全てを民泊にする | 左記の全てに該当しない(※3) | ||
防火管理者 | 収容人員が30人を超えたら必要 | |||||
消化器 | 150㎡以上で必要 | |||||
避難器具 | 収容人員が30人を超えたら避難階より上階は必要(※4) | |||||
自動火災警報装置設備 | 民泊部分は設置。建物全体が300㎡以上であれば、その他の居室も設置。(※5) | 左記に該当 | ||||
消防機関へ通報する火災報知設備 | 建物全体が500㎡以上で設置。(※6) | 左記に該当 | ||||
誘導灯等 | 全階の階段部分(設置必要箇所) | 民泊を設置する階のみ | ||||
※1 代替設備を設け、善良の風俗を保持出来る処置、事故などの緊急時に迅速に対応の為の設備※2区分所有の共同住宅等で、区分所有者Aと区分所有者Bがそれぞれ簡易宿所を営もうとする場合、各々の合計が100㎡を超えると確認申請が必要となる。(一部の行政区は緩和規定等あり)※3 例えば、延床面積が500㎡のマンションの30㎡部分だけを民泊として、簡易宿所にするのであれば、①~③のどれにも当てはまらない。※4 既存建物が共同住宅ならばもともと設置してあるが、専用住宅の場合は新たに設置が必要。※5 既存建物が共同住宅として、500㎡以上あるのであれば、もともと自動火災警報装置設置の義務がある。民泊以外の部分の住人の許可をとって自動火災警報装置を各居室に設置するのは困難である。
※6 既存建物が共同住宅として、1000㎡以上あるのであれば、もともと消防機関へ通報する火災報知設備の義務がある。 |
違反建築物に使用停止、除去の命令を出せない理由(2022年9月21日更新)
下記の記事を2014年12月20日に書きましたが、昨今の行政の対応や、私の書き方が悪かったこともあり更新します。
赤字部分が加筆になります。
掲題の問合せを時々受けます。
この問合せで、こちらから聞き返すことがあります。お問合せをしてきた方をAさんとします。
私「Aさんは、その違反建築の為に何か損害を被っていますか?」
この質問で多くの回答は、
1 建物が少し傾いているから怖い。
2 隣地の建物の一部(多くの場合、換気扇のフードやエアコンの室外機)が越境している。
というもので更には、
3 うちの建物は建築士の人に目一杯の高さで設計してもらったのに隣の建物がうちの建物より高いのはおかしい!
という、回答もありました。
さて、この回答、いずれも、その建物が違反建築と即座に言えるものではありません。ただし、1の場合は、違反建築ではなくても隣地に倒壊したら危険な場合は建築基準法(以下、「法」といいます)10条で、特定行政庁が除去、使用禁止、是正などの命令を出すことはできるのですが、しかし、私は今までこれを見たことがありません。1の場合、建てられた当時の建築基準法は、守っているが劣化によって傾いてしまったかもしれません。2の場合は法に違反しているというよりも、民法の権利関係の問題になります。
しかし、完全に法に違反していても、特定行政庁は、是正命令は出せますが、除去や使用禁止の命令をだせないのが実態です。
法第9条では
特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反した建築物又は建築物の敷地については、当該建築物の建築主、当該建築物に関する工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者又は当該建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者に対して、当該工事の施工の停止を命じ、又は、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。
法第10条では
特定行政庁は、第六条第一項第一号に掲げる建築物その他政令で定める建築物の敷地、構造又は建築設備(いずれも第三条第二項の規定により第二章の規定又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の適用を受けないものに限る。)について、損傷、腐食その他の劣化が進み、そのまま放置すれば著しく保安上危険となり、又は著しく衛生上有害となるおそれがあると認める場合においては、当該建築物又はその敷地の所有者、管理者又は占有者に対して、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用中止、使用制限その他保安上又は衛生上必要な措置をとることを勧告することができる。
とあるので、違反建築やあまりに建物が劣化している場合は特定行政庁の命令で除去命令や使用禁止にできるはずなのですが、これを出せないのには、法的な理由があります。特定行政庁の担当者に
私「違反建築物、若しくは激しく劣化した建物に対して、除去命令とか使用停止命令って出しますか?」
と聞くと
担当者「法9条命令、法10条命令は出しますよ。」
と言います。
私「では、〇〇町〇丁目○番〇号にある、この建物ですが、台帳記録では、完了検査も受けていません。さらに、この建物、すでに柱の一部が腐食して、壁の一部が倒壊し、屋根が傾いている状態で、近隣の方が迷惑しています。ですから、法9条、法10条のどちらでも構わないので、何らかの行政命令を出して頂けませんか?」
と聞くと
担当者「検討します・・・。」
で、大体、何もしてくれません。親切な担当者だと現地まで見に行って、なんとか所有者に注意してくれたりはしますが、除去命令や使用禁止命令というのは私のしる限りでは見たことがありません。
最近は除去命令や使用禁止命令が出るようになってきました。これの理由には大別すると3種類に分けられます。
1.公共性が高く、不特定多数の第三者が利用する建物の場合で、著しく危険性が認められる場合。
2.その建物が倒壊などをした場合に所有者以外にも害は及ぶ可能性が高い、もしくは緊急輸送道路などを塞いでしまう場合。
3.市街化調整区域などで、都市計画法第53条の許可を得ずに建てた建物で、インフラ設備などが整っていない場所に勝手に建築された建物
などで、是正が困難な場合、もしくは是正勧告を無視した場合などには除去・使用禁止命令が出されます。
これは、憲法第29条と憲法第98条の問題があるからです。特定行政庁の担当者は解ってないかもしれませんが、特定行政庁の上司はちゃんと解っています。
憲法第29条
財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
憲法第98条
この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
ちょっと解説すると、憲法第29条で、「財産権に対する国による制約は原則として許されないとしながらも、他人を侵害することとなる場合や、 経済的な弱者を守るためなどの社会的な事情から、合理的な規制を受けることがあること」と規定していることから、その違反建築物が他人に直接的な被害を与えていないと特定行政庁(国)によって、その財産を侵害することが難しいことになります。
ただし、私有財産権も他人の権利を侵害してまでは成立はしない。ということは念頭にいれておいて下さい。
これは、法第9条や法第10条と相反しています。
しかし、憲法第98条で憲法に反する法律は効力を有しないとあるので、法第9条や法第10条が憲法に反している可能性があり、財産権が確立してしまった、つまり完成した建物に対して、簡単に除去や使用禁止命令を出せない訳です。因みに、財産権が確立していない建築中の建物には法第9条命令で工事中止命令が簡単に出ます。また、憲法第29条は他人を侵害する場合は、この限りではないので、明らかに危険な場合は、法第9条、法第10条の命令を出せそうな感じもするのですが、この線引きが難しく、もし安直に認めると、この世から、除去、使用禁止にしなければならない建物が沢山でてしまいます。
ただし、明らかに第三者に迷惑が掛かる可能性があり、昨今の災害などで同様の建築物が事故の対象になっているような建物の場合は、是正が出来ないような状況だと、使用禁止・除去命令が出るようになってきました。
また、市街化調整区域などで、特にインフラ設備が整っていないところに、勝手に排水をするなどをするなどの物件は環境破壊など、やはり第三者に迷惑を掛けることになるので、何らかの処置ができないと、使用禁止・除去命令が出ます。
しかし、除去や使用禁止の命令が出ないからと言って、違反建築をしてよいという訳ではありません。最終的に最も損害を被るのは所有者です。違反建築や明らかにメンテナンスを怠り劣化してしまった建物は法第9条、法第10条に抵触していることになり、財産価値が大きく毀損することになります。もし、建物を売ろうと思っても買い手が付きにくいとか、貸そうと思ってもなかなか借り手が付かないということになりかねません。
ですから、このような状況に陥った場合は、なるべく早めにこの状況を是正することをお勧めします。現在は、「建築基準法適合判定」※というものがあり、費用と時間はかかりますが、多くの場合で財産価値を復旧させることができます。
※建築基準法適合調査の流れ(検査済証の無い建物を適法化する方法)
「建築基準法適合判定」については、リデベまでお気軽にご相談ください。
用途変更の価格比較について
用途変更の確認申請の難しいところは、建築基準法上、現在の法律のどこまでを守らなければならないかの判断をするところにあります。おそらく、用途変更を請負った建築士の方の多くがここで悩んだと思います。そして、国土交通省指定確認機関(役所や民間機関)に聞いても、多くのミスリードを見かけます。
先日、ある建築主から、
「事務所の2階部分を飲食店に用途変更したいから、建築士に用途変更を依頼したら、エレベーター全ての扉に遮煙という機能を付けなければならず、何百万という費用とそれだけで3ヶ月ぐらいの工期が必要だと言われたんだけどなんとかならないでしょうか?もう、物件も借りて家賃も発生しているのに用途変更の申請期間や内装工事期間だけでも辛いのにとてもじゃないけど・・・」
という悲鳴に近い問い合わせがありました。
もちろん、用途変更時にこのエレベーターの扉に遮煙の性能を附加する必要性はありません。現行法ではエレベーターの扉には、遮煙の性能が付いているのですが、平成12年より前の建物だと、その性能はありません。これは、既存不適格として建てられた当時の法律が守られていれば、そのままで良いのです。
話を聞いてみると、指定確認機関の民間機関の担当者が設計者にその様に伝えたとのことでした。その設計者が、「エレベーターの遮煙」=「防火区画」については既存不適格で良いということを理解していない故に発生してしまった話です。
しかし、この建築主、私と話をするのは2回目でした。よくよく、当社の問合せ履歴を調べてみると数カ月前に同じ物件の用途変更の問合せが来て、当社の概算金額(約140万(税別))を伝えてありました。その後、音沙汰が無かったので当社も別の方に頼んだのか、用途変更をしなかったのか・・・。正直、問合せだけなら1日に何件もくるので、全ての問合せ内容を覚えている訳ではないので、そのままにしてありました。
そこで経緯を聞いてみると、当社に概算金額を聞いた後、数件に電話をすると、やはり、200万円前後~300万円近い金額を提示されたが、1社だけ100万円税別でやってくれるところがあったので飛びついたとのことでした。
結果的には用途変更の経験の浅い建築士が値段だけで引き受け、指定確認機関に言われるままに用途変更をするから、設計費は安くても工事費や期間がとんでもないことになってしまったという事例です。
当社は豊富な経験から指定確認機関言われるままになどと言うことは絶対になく、不要な工事により建築主の負担を増やすようなことは絶対にありません。
当社の場合、基本的に設計業務しか受託しませんが、必要とあれば工事業者もご紹介します。当社のご紹介する業者は、用途変更の確認申請が必要な工事ばかりをやっているので、工事のスピードも格段に速いですから、一度、設計費と合わせて見積を取って頂くと良いかもしれません。
用途変更の設計費用について~旅館・ホテルなど~(価格変更のお知らせ)
当社では用途変更業務について、当社ホームページから簡単に概算金額のお見積りを作成できる様にいたしました。
こちらから、ご利用頂けるようお願い致します。
平成28年1月18日より、簡易宿泊所・旅館・ホテルなどの用途変更の設計費用を下記の通りとさせて頂きます。
(消費税及び国土交通省指定確認機関に支払う確認申請料は別途となります。)
関東以外のエリアでも対応しています。(出張費下記参照)
飲食店・物販店・遊技場等への用途変更は『用途変更の設計費用について~飲食店・物販店・遊技場など~(平成28年より)』を参照して下さい。
老人介護施設・児童福祉施設等への用途変更は『用途変更の設計費用について~老人介護施設・児童福祉施設など~(平成28年より)』を参照して下さい。
民泊につきましては『民泊について考える。~合法的に民泊はできるのか?~』に当社の基本的な考え方を記載していますので、こちらをお読みください。
その他の用途については、直接、当社にお問合せ下さい。
基本料金
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基本料金に含まれる内容
・変更後の用途が簡易宿泊所・旅館・ホテル・下宿等の場合になります。※2
・6階建て以下のビルで用途変更する部分が地上階であること。
・用途変更する部分が1フロアであること。
・確認済証(もしくは確認通知証)・完了検査済証があること。※3
・確認申請の副本及び確認申請時の図面・構造計算書があること。
・用途変更後の各種法適合している平面プランがあること。
・平成13年以降に建てられた建物であること。
・新築時以降に建築基準法・消防法等の各種法令に違反していない建物であること。※4
・防火対象物使用開始届については、基本料金内に含まれますが、各種消防機器類の届出は含まれません。
上記、基本料金に含まれる内容以外の場合、オプション対応となりますので、下記オプション設定を参照して下さい。
各種オプション
オプション1
用途変更が2フロア以上になる場合、2フロア以上の各フロアの面積ごとに
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例:各階200㎡の3階建ての事務所の建物の各階を定員10人の旅館に変更する場合
1フロア基本料金+オプション料金600,000円×2フロア
オプション2
法令適合している平面プランをご用意できない場合
ご自分で間取りを描いてみたが法令適合しているか解らない、内装業者(インテリアコーディネーター等)に間取りを描いて貰ったが法令適合しているか解らない場合等※5
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例:各階130㎡の3階建ての事務所の建物の各階を定員6人の旅館に変更する場合で、法令適合している平面図をご用意できない場合
1フロア基本料金+320 ,000円+250,000円/フロア×2フロア
オプション3
プランの案が全くなく、基本プランから依頼される場合
用途変更の工事費用が坪100万円を超えるようなデザインをご希望の場合は別途料金が発生します。オプション2の料金は、本料金に含まれます。
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例:各階130㎡の3階建ての事務所の建物の各階を定員6人の旅館に変更する場合で、法令適合している平面図をご用意できない場合
1フロア基本料金+550 ,000円+400,000円/フロア×2フロア
オプション4
確認済証(もしくは確認通知書)・完了検査済証の紛失
各5,000円
オプション5
確認申請副本の紛失
新築後に増築・用途変更等の確認申請が必要な変更をしている場合には、その確認申請副本も含みます。
100,000円
オプション6
確認申請時の設計図書(構造計算書含む)の紛失
完全に紛失している場合の価格です。一部残っている、構造計算書だけ無くした、確認申請時のものでは無いが契約時もしくは竣工時の図面が残っているなどの場合は、残存状況などによって、料金が変わってきますので、その場合は当社に直接、お問合せ下さい。(ある一定の精度の図面が残っていれば、かなり安くなります。)
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オプション7
平成12年以前に建てられた建物の場合
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オプション8
その他
厨房以外で火器(調理用・炉等)を使用する場合
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地下が存在する場合もしくは、用途変更箇所が地下の場合
1フロアごとに基本料金+100,000円
機械排煙設備を使用している建物の場合
200,000円/箇所
現況建物の遵法性確認について、特定行政庁が建築基準法第12条5項による報告を求めてくる場合
200,000円~
東京都練馬区等が該当しますが、その他の行政区でも該当する場合がありますので個別にご相談下さい。また、求めてこない行政区であっても、用途変更する建物に何らかの法的瑕疵がある場合などは必要になる場合もあります。上記料金は、建築基準法に一切抵触していない場合の料金になります。
お支払い方法について
建物によっては完了検査済証が存在しても、図面が揃っていても用途変更ができない場合があります。
例えば階段が一つしかなく、避難場有効なバルコニーの無い建物の5階の事務所を飲食店にすることや、第一種住居地域の飲食店をカラオケ屋さんにすることや、2mしか接道していない路地状敷地の中にある戸建てを保育施設にするなど、建築基準法の別の規制によって不可能な場合があります。
また、用途変更をしようと思っている以外の部分に重大な建築基準法違反がある場合なども用途変更の確認申請が出せない場合があります。
その為、当社では、まず用途変更が可能であるかどうかの調査を行います。・・・調査段階
そして用途変更が可能であることが解った段階で用途変更の申請作業着手となります。・・・用途変更の申請着手
そして、用途変更の工事が終了し、特定行政庁に工事完了届を出して業務終了となります。
まず、頂いた基本情報にて、概算見積りを作成します。
調査料(調査段階)
概算見積金額が100万円未満の場合・・・調査料 10万円+消費税
概算見積金額が100~200万円未満の場合・・・調査料 概算見積の10%+消費税
概算見積金額が200万円万円以上の場合・・・200万円までの部分が10%+200万円を超える部分につき5%+消費税
(別途出張料:下記出張料の10%を調査段階で請求いたします。)
調査によって概算見積の段階で判明しなかった部分について、金額が変更される場合があります。
調査後、すぐに正式見積りを発行します。
正式見積り金額の50%-調査料=用途変更の申請着手時
正式見積+国土交通省指定民間確認機関に支払う確認申請料=工事完了時
となります。
確認申請(用途変更)・工事完了届・防火対象物使用開始届以外の届出が必要な場合
個別にお問合せ下さい。
用途変更を行う規模、行った後の建物の状態、その建物の所在する地域によって、変わってきます。
看板設置に関して
個別にお問合せ下さい。
看板は設置する規模によっては工作物の確認申請を行わなければならず、申請するための設計図書も必要になり、設置する場所によっては、構造計算が必要になります。また、地域によっては看板の規模や色彩などの制限がある場合や届出が必要になる場合があります。
出張費について(沖縄本島を除く島嶼部を除く)
東京都・千葉県・埼玉県・神奈川県 | 基本料金に含みます。 |
北海道 | 400,000円 |
四国 | 335,000円 |
九州 | 370,000円 |
沖縄本島 | 400,000円 |
上記以外のエリアの場合東京駅から物件最寄りの駅までの鉄道距離が400kmまでの範囲 | 基本料金50,000円鉄道距離換算 50km毎に10,000円 |
上記以外のエリアの場合東京駅から物件最寄りの駅までの鉄道距離 | 基本100,000円鉄道距離換算100km毎に20,000円 |
基本料金内で完了できる業務範囲内の出張費です。オプションが発生する場合は、オプション内容によって出張回数が変わってきますので、個別にお問合せ下さい。
沖縄本島を除く島嶼部につきましては、当社に直接、お問合せ下さい。
2物件以上をまとめて依頼される場合などは、当社に直接、お問合せ下さい。
例:最寄りが名古屋駅の場合の出張費
基本料金50,000円+(366km(東京~名古屋)÷50km切り上げ)×10,000円=130,000円
例:最寄りが大阪駅の場合の出張費
基本料金100,000円+(556km(東京~大阪)÷100km切り上げ)×20,000円=220,000円
注意事項
※1 用途変更後に建物の中に違う用途が存在する場合は複合用途となります。例:1~5階が事務所だった建物の2階~5階を旅館にして1階を飲食店にした場合など
※2 ホテル、旅館、簡易宿所、下宿等の中に集会場(結婚式場・セレモニーホール等)・映画館・劇場・スポーツ施設(フィットネスクラブを含む)、寄宿舎(シェアハウスを含む)は含まれておりません。この場合は、当社に直接、お問合せ下さい。
※3 確認済証(もしくは確認通知証)・完了検査済証を紛失した場合は、オプション対応となりますので上記オプション設定を参照して下さい。確認申請もしくは完了検査を受領していない建物の場合は、建築基準法適合状況調査報告からの対応となりますので、当社に直接、お問合せ下さい。参考:『建築基準法適合状況調査を利用した増築、用途変更等の確認申請の方法』
※4 完了検査受領後に違法に増築・用途変更もしくは法令に抵触するような間取り変更をしている場合、違法状態の内容によって対応が変わってきますので、当社に直接、お問合せ下さい。また、建築基準法第12条1項及び3項の定期検査、消防法に関わる定期検査を受けていない場合、もしくは受けていても指摘事項の改善が行われていない場合、各種定期検査を受領し、指摘事項の是正をしてからでないと用途変更が出来ない場合があります。
※5 法令適合の確認については、必ず建築士にして貰い、その建築士に法令適合していることの書面を貰ってください。「保健所から了解を貰っている。」「消防署からの了解を貰っている。」等のお話をされる方がいますが、消防署は消防法、行政庁は建築基準法という様に管轄範囲外については見ていません。しかし、用途変更を行う場合には各々の法適合をしなければなりません。
※ 物件や地域によって、ご希望の用途に変更出来ない場合があります。可否については、当社に直接、お問合せ下さい。近隣の学校法人からの合意など旅館業法に関わる作業につきましても、当社に直接、お問合せ下さい。特に風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条6項4号のホテルもしくは旅館(通称ラブホテル)については、御請け出来ない場合もあります。
民泊について考える。~合法的に民泊はできるのか?~
民泊について考えてみよう。最近の民泊は広義の意味で
「住宅をホテル、旅館ないし貸別荘の様な形態で貸す。」ものになってきているが、狭義の意味では
「共同住宅の空き家等の1戸ないし複数戸を貸す。」というものであろう。
もちろん、この行為を、何ら許可を得ずに反復継続的に繰り返せば、これは旅館業法に抵触するだろう。どの程度で抵触するかというかは微妙だが一つの事例がある。
2010年の話だが、佐賀市が空き家の市営住宅を利用して、田舎暮らし体験企画を行った。しかし、それに対し、佐賀県が、その業態は「旅館業法」の簡易宿所に該当すると指摘した。」
ポイントは男女個別のトイレが無かったことによるものらしい。
話が脱線する前に、現在、国家は規制緩和と称して行おうとしている民泊というものがどういうものなかを考えてみよう。そもそも、「民泊」を合法化するために法律が施行されている訳だが、その法律とは、(末尾の青字の部分。)国家戦略特別区域法の第13条になる。
現在、民泊条例を勇猛果敢に真っ先に条例化した行政区が2つ(正確には3つ)ある。東京都大田区と大阪府(大阪市)だ。
個人的な私見からすれば、色々な意味で東京都大田区はもう少し冷静に対応して欲しかった。
さて。国の定める民泊とはなんだろうか?今のところ、大阪府と東京都太田市しか条例を可決させてないので、他の条例がどうなるかはなんとも言えないので、この2区(といっても内容は同じだが)がどの様に民泊を活用していくのかを見守っていきたい。
では、旅館業法が国家戦略特別区域法によって緩和される部分(メリット)はどの様な部分であろうか?
大まかに考えると
1.学校法人などの施設から100m以内であっても、相手方の許可がいらない
2.宿帳などを管理する受付がいらない(宿帳を管理する必要がない)
とこの2点に限られる。逆にデメリットは
1.1室の大きさが25㎡以上無ければならない
2.1回の利用が6泊7日以上でなければならない
このメリットデメリットの比較だけでも、新築で民泊を作ることはしないと考えられる。この法律を読むと外国人の宿泊しか認めない可能性も否定できない。
さて、国家戦略特別区域法だが、旅館業法の緩和は認めているが、建築基準法や消防法まで緩和するとはどこにも書いていない。では、建築基準法や消防法の緩和が認められるのかを考えてみよう。
まずは建築基準法だが、建築基準法については、時々、旅館業法で定められているものが建築基準法でも旅館やホテルに該当するという国土交通省の指針が出ているという、建築士がいるのでこれについて確認してみると、たしかに、その様なものがあった。
建築基準法に於ける旅館の位置付け
(「旅館類似の寮又は保養所」昭和28年3月23日住指発第349号)
(照会) 当県下箱根、湯河原等の温泉地に官公庁または会社等が寮または保養所と称して特定の人を対象とした旅館類似の用途の建築物 が建築されているが、これらの建築物はその設備や利用度の点からも全く旅館と同一のもので、旅館業法からもその業として旅館と 同様の取扱いをしている状態ですので、建築基準法からもこれらに対して旅館と解して、名称如何拘らず旅館の関係規定を適用した いが、如何。
(回答) 貴見のとおりである。
これをよく読んでみると解るのだが、『社員寮や保養所が旅館の様に使われている上に、行政庁としても旅館業法を適用しているから、建築基準法も旅館で適用をしてよいか?』と建設省(現国土交通省)に神奈川県が訊ねているわけである。これをもって『旅館業法が適用されている建物は建築基準法でも旅館の用途になる』という、見解は正しいであろう。しかし、本来なら『旅館業法適用の建物』が、景気振興のために緩和されたとしても、安全面まで無視して良いと言うことには当然にならない。そう考えれば『旅館業法の緩和を受けた建物は建築基準法の用途まで旅館では無くなる』とは言いきれない。
一つの事例を挙げておくと、例えばマンションを旅館に用途変更するのだが、国家戦略特別区域法を適用させ、旅館じゃないから用途変更しないでマンションのままにすることが出来たとしても、国家戦略特別区域法を適用させて旅館業法に適用しない旅館を新築で建てた場合、この建物の用途は何になるのであろうか?と考えれば、実態が旅館なのだから、当然に旅館になる。
つまり、必然的に用途変更という確認申請行為は必要になってくる。
ここで、共同住宅からホテル・旅館に用途変更が出来ない決定的な事例があることを書いておこう。
それは、容積率である。平成9年9月1日の建築基準法改正に伴い、共同住宅の共用部分は容積率対象面積に参入しなくて良いことになった。しかし、これは共同住宅だからであって、もし、平成9年9月1日以降に確認申請を出した共同住宅をホテル・旅館に用途変更しようとすれば、共同住宅の共用部分として容積率対象面積に参入しなかった部分を算入しなければいけなくなる。共同住宅の多くは、専有面積を最大限に取ろうとするので、斜線規制や日影規制などで高さが取れない限り、容積率を最大に使っていることが多いので、もし、共用部分を容積参入する余裕のない建物の場合は、民泊には出来ないと考えて良いだろう。
容積率をクリアすると、建築基準法で共同住宅と旅館・ホテルで何が変わってくるかと言えば、1住戸をバラして貸すようなこと、例えば3LDKの3つの部屋をそれぞれ別の顧客に貸すようなことをしなければ、非常用照明の設置ぐらいで済む。つまり、非常用照明を付けるための専用回路を準備し、その配線を行い、非常用照明を設置すればことが足りる。ただし、関連法規の条例などがクリアできない可能性があるので注意が必要だ。1例を挙げておくとすれば、1000㎡東京都の福祉のまちづくり条例や東京都バリはフリー条例の対象にはなってくる。
もっと、厳しいのは消防法だろう。消防法には建築基準法の様に旅館業法との関連性をしめした事例がないのだが、安全性などのことを考えれば建築基準法で旅館・ホテルに該当するものが消防法で適用を免れるとは考えにくい。そこで共同住宅を旅館・ホテルに用途変更した場合に必要になるものをまとめておくと
500㎡未満でも | 火災報知器設置(500㎡以上は共通) |
500㎡以上で | 火災通報装置(1000㎡以上は共通) |
収容人員20人で | 非常警報装置(50人以上は共通) |
収容人員300人で | 放送設備(800人以上は共通) |
6000㎡を超えると | スプリンクラー設備 |
4階~10階部分が1500㎡以上で | スプリンクラー設備 |
11階建て以上だと | スプリンクラー設備(共同住宅は11階以上の階) |
11階建て未満でも | 誘導灯必要 |
※収容人員
ホテル・旅館
次により求めた数の合計
1、従業者の数
2、【宿泊室】
イ.洋式の宿泊室→ベッドの数
ロ.和式の宿泊室→6.0㎡ごとに1人
3、【集会・飲食・休憩用の部分】
イ.固定席のいす席→いす席の数(長いすの場合:幅0.5mごとに1人 端数切捨)
ロ.その他の部分→3.0㎡ごとに1人
※ダブルベッドは2人として算定する
共同住宅
居住者の数
なんだか、火災報知器やスプリンクラーを設置すれば簡単にできる様に感じるが、火災報知器、非常警報装置やスプリンクラーが設置されていない建物に後から、設置しようとすると、かなりのコストが掛かる。特にスプリンクラーは設置できない可能性もある。
このように、建築基準法や消防法がかなり難しいことを言ってくることになるわけだが、結論から言えば、
1. 学校法人などが100m以内にない
2. 宿帳などを管理するスペースがあり、受け付けを作れる。
3. 共有部分を容積率参入できるだけの余裕がる
以上の3点がクリアできるのであれば、25㎡以上ないとダメだとか、6泊7日以上じゃないとダメだとかという規制を受けないので用途変更してしまった方が良いだろう。
※3.については、いずれの場合ではも必要。
共同住宅や空き家を民泊で活用したい方は
リデベに相談ください。
03-5389-6082
国家戦略特別区域法(平成二十五年十二月十三日法律第百七号)
(旅館業法の特例)
第十三条 国家戦略特別区域会議が、第八条第二項第二号に規定する特定事業として、国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業(国家戦略特別区域において、外国人旅客の滞在に適した施設を賃貸借契約及びこれに付随する契約に基づき一定期間以上使用させるとともに当該施設の使用方法に関する外国語を用いた案内その他の外国人旅客の滞在に必要な役務を提供する事業(その一部が旅館業法 (昭和二十三年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する旅館業に該当するものに限る。)として政令で定める要件に該当する事業をいう。以下この条及び別表の一の四の項において同じ。)を定めた区域計画について、第八条第七項の内閣総理大臣の認定(第九条第一項の変更の認定を含む。以下この項及び第九項第二号において「内閣総理大臣認定」という。)を申請し、その内閣総理大臣認定を受けたときは、当該内閣総理大臣認定の日以後は、当該国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、その行おうとする事業が当該政令で定める要件に該当している旨の都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあっては、市長又は区長。以下この条において同じ。)の認定(以下この条において「特定認定」という。)を受けることができる。
2 特定認定を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書及び厚生労働省令で定める添付書類を都道府県知事に提出しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
二 その行おうとする事業の内容
三 前二号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
3 都道府県知事は、特定認定の申請に係る事業が第一項の政令で定める要件に該当すると認めるときは、特定認定をするものとする。
4 特定認定(次項の変更の認定を含む。以下この項及び第九項において同じ。)を受けた者(以下この条において「認定事業者」という。)が行う当該特定認定を受けた事業(第八項及び第九項第三号において「認定事業」という。)については、旅館業法第三条第一項の規定は、適用しない。
5 認定事業者は、第二項第二号又は第三号に掲げる事項の変更をしようとするときは、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県知事の認定を受けなければならない。ただし、その変更が厚生労働省令で定める軽微な変更であるときは、この限りでない。
6 第三項の規定は、前項の変更の認定について準用する。
7 認定事業者は、第二項第一号に掲げる事項の変更又は第五項ただし書の厚生労働省令で定める軽微な変更をしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
8 都道府県知事は、この条の規定の施行に必要な限度において、認定事業者に対し、認定事業の実施状況について報告を求めることができる。
9 都道府県知事は、次の各号のいずれかに該当するときは、特定認定を取り消すことができる。
一 第九条第一項の規定による認定区域計画の変更(第八条第二項第二号に規定する特定事業として国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業を定めないこととするものに限る。)の認定があったとき。
二 第十一条第一項の規定により認定区域計画(第八条第二項第二号に規定する特定事業として国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業を定めたものに限る。)の内閣総理大臣認定が取り消されたとき。
三 認定事業者が行う認定事業が第一項の政令で定める要件に該当しなくなったと認めるとき。
四 認定事業者が不正の手段により特定認定を受けたとき。
五 認定事業者が第五項又は第七項の規定に違反したとき。
六 認定事業者が前項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。
国家戦略特別区域法 政令
(法第十三条第一項 の政令で定める要件)
第十二条 法第十三条第一項 の政令で定める要件は、次の各号のいずれにも該当するものであることとする。
一 当該事業の用に供する施設であって賃貸借契約及びこれに付随する契約に基づき使用させるもの(以下この条において単に「施設」という。)の所在地が国家戦略特別区域にあること。
二 施設を使用させる期間が七日から十日までの範囲内において施設の所在地を管轄する都道府県(その所在地が保健所を設置する市又は特別区の区域にある場合にあっては、当該保健所を設置する市又は特別区)の条例で定める期間以上であること。
三 施設の各居室は、次のいずれにも該当するものであること。
イ 一居室の床面積は、二十五平方メートル以上であること。ただし、施設の所在地を管轄する都道府県知事(その所在地が保健所を設置する市又は特別区の区域にある場合にあっては、当該保健所を設置する市の市長又は特別区の区長)が、外国人旅客の快適な滞在に支障がないと認めた場合においては、この限りでない。
ロ 出入口及び窓は、鍵をかけることができるものであること。
ハ 出入口及び窓を除き、居室と他の居室、廊下等との境は、壁造りであること。
ニ 適当な換気、採光、照明、防湿、排水、暖房及び冷房の設備を有すること。
ホ 台所、浴室、便所及び洗面設備を有すること。
ヘ 寝具、テーブル、椅子、収納家具、調理のために必要な器具又は設備及び清掃のために必要な器具を有すること。
四 施設の使用の開始時に清潔な居室を提供すること。
五 施設の使用方法に関する外国語を用いた案内、緊急時における外国語を用いた情報提供その他の外国人旅客の滞在に必要な役務を提供すること。
建築基準法適合状況調査を利用した増築、用途変更等の確認申請の方法
平成26年7月に国土交通省が新たなガイドラインを策定し、国土交通省指定民間確認検査機関等(以下、「民間第三者機関」と言います。)を利用して建築基準法適合状況調査(以下、「適合調査」と言います。)ができるようになりました。これにより、適合調査がスムーズに出来るようになり、完了検査を受領していない建物が適法化される道筋ができるようになりました。しかし、適合調査をしただけでは、建物が適法化されるわけではありません。
適合調査をした結果、不適合だった箇所の是正が必要になります。また、適合調査をした結果、合理的(経済的合理性など)もしくは物理的に不適合箇所を是正できない可能性があります。
適合調査が民間第三者機関で可能になったことにより、現実的になったのですが、適合調査には相応の費用も掛かり、前述のように適合調査後に建築基準法に適合することが難しい場合もあります。そこで、弊社では、予備調査を行い、さらに民間第三者機関の調査後に不適合箇所の合理的な是正方法のご提案から、最終的に全てを適合させるまでのお手伝いをさせて頂いております。
適合調査を民間第三者機関に依頼する前に、対象建物の現地調査、必要書類の保管状況、特定行政庁との事前協議、民間第三者機関との事前協議などを行い、適合までの確率の想定、最終的な概算費用、適合までのスケジュールなどをご提示するための予備調査を行います。これにより、費用を掛けて適合調査をした結果、適法化出来ないリスクの軽減、費用対効果の分析を行うことが出来ます。
予備調査終了後、適法化の可能性が高く、費用対効果も得られると判断された場合、適合調査を行うことになります。適合調査をするためには、確認申請図書が完全な状態で整っていないとできません。整っていない場合は、当社に於いて復元図及び復元構造計算書等の作成を行います。また、特定行政庁以外の関係諸官庁との事前協議を行うことで、民間第三者機関がスムーズに適合調査を行えるように支援を致します。
必要書類等が全て揃い、特定行政庁、関係諸官庁との協議を行い、各庁の意向等も踏まえた上で、適合調査を行います。完了検査を受領していない建物の殆どが、完了検査を受領していない以外の部分で建築基準法に抵触しています。その為、適合調査時に於いて、不適合箇所が発見されますが、当社では、当社スタッフも検査に立合い、検査官と検査時に協議しながら、経済合理性が高く、タイムリーな是正方法を検討します。
民間第三者機関が現地での適合調査を元に建築基準法適合状況調査報告書のドラフトを作成します。その中に不適合箇所がある場合、その不適合箇所を是正して、当社で是正報告書を作成します。その報告書の内容を民間第三者機関と協議の上、建築基準法適合状況調査報告書の内容が全て適合になるように調整して、全て適合とします。
完成した「建築基準法適合状況調査報告書」を、新たな確認申請(増築、用途変更等)の既存不適格調書に添付することで、確認申請を受け付けて貰うことが出来ます。また、予め特定行政庁や金融機関と協議しておくことにより、耐震診断・耐震補強の補助金を受けることが出来たり、建物(不動産)を担保にした融資を受けたりすることが可能になります。
不動産業者・設計事務所・施工会社等の法人様へ
お見積りにつきましては、建物の構造、築年数、階数、面積、確認申請図書の保存状況によって、予備調査だけでも、かなり金額に幅がありますので、お手数ですがお見積りにつきましては、直接、お電話でご相談下さい。
また、お客様へのご説明用の資料等も用意しておりますので、お気軽にお電話で資料請求をしてください。
株式会社リデベ
TEL 03-5389-6082
営業時間 平日 10時~18時30分
空き家問題を考える ~検査済証の無い空き家を賃貸に出す~
前回、空き家をリフォームする場合、完了検査を受領してない場合(検査済証が無い場合)は安易にリフォームして賃貸に出して良いとは言えないと書いた。
では、完了検査を受けていなければ、法的整合性が絶対に取れないかというと、そうでもない。現在では、建築基準法適合判定という制度がある。詳しくは『建築基準法適合状況調査の流れ(検査済証の無い建物を適法化する方法)』を読んで頂きたい。
木造2階建てで500㎡未満の建物であり、確認申請時の図面が存在し、確認申請時の図面と比較して建物が図面通りなら、建築基準法適合状況調査は、意外に簡単に行える。
しかし、確認申請時の図面が無ければ、現在、建っている建物から、必要な図面を作成してもらい(ほぼ確認申請と同じ図面が必要)、さらに新築時の建築基準法に合致しているかの調査をして、不適合な箇所があればそれを是正しなければならない。
図面の作成は、測量などをしなければ出来ないから、新築よりも大変である。つまり、作図だけで新築時と同等かそれ以上に掛かってしまう。さらに新築時の建築基準法に適合しているかの調査も数十万から掛かってしまう。そして、不適合な箇所があればそれの是正を行わなければならない。私の経験から、不適合箇所が全く無かった物件は一つもない。とすると、総額で最低でも、建築基準法適合判定だけで、150万円以上掛かってしまうことになる。これは、木造2階建て200㎡未満の場合で、3階建てや非木造建築物となれば、費用はもっと掛かる。150万円というのは、図面が無いだけで極めて遵法性が高かった場合の価格であるから、是正箇所の多さや是正工事の規模によって価格は異なってくることを考えておかなければならない。
ここまでを読むと、建築基準法適合状況調査を行ってまで法的整合性が必要なのだろうかという疑問が出てくる方が多いかもしれない。
しかし、大きなリフォーム工事を行うのであれば、千載一遇のチャンスだと思って、建築基準法適合状況調査を行うことを推奨する。もちろん、賃貸に出した時の瑕疵担保責任の問題などもあるのだが、それ以上に、この物件を将来、売却しようとした時にその効力が大きく発揮されることとなる。
もちろん、今は賃貸に出そうとしている訳だから売却を考えていないかもしれない。しかし、相続が発生したり、または何らかの事情で物件を売らなければならなくなった時が来るかもしれない。多くの場合は売却の機会が訪れる。
現在、完了検査を受領していない物件に関して、金融機関が融資をしない方向に動いている。主だった金融機関は、既に完了検査未受領の建物には融資をしない。まだ、小さな金融機関などは融資をしてくれるが、それも時間の問題であろうと考えられる。
図面が無い場合、図面を復元することとなるのだが、図面を復元する際に壁の中までは、見えない。特殊な機械を使って柱の位置などを確認することは出来なくもないが、柱や梁などの接合部などが、正しく接合されているかまでは確認できない。だから、何もしないで建物の図面を復元することはほぼ不可能なのだが、大きなリフォームをするのであれば、壁も取り外す場所も多いだろうし、天井内の構造なども解りやすい。ついでに、建築基準法に不適合な箇所も直してしまえば良いのであるから、この機会を逃す手はない。
もし、リフォーム工事をやってしまって、将来、建物を売却するのに建築基準法適合状況調査を行えば、そのコストは個別に掛かってきてしまうが、同時にやっておけば、その工事などは重複するところが大きいから、コストも個別にやるよりかは大きく抑えられることになる。
空き家に借り手が付くようにするリフォーム工事は場合によっては多額な工事になり、不動産会社などは目先の利益を追求し、所有者の将来の利益よりも仕事が成立することを優先するから、コストが高くなることは提案してこない。それどころか、建築基準法適合状況調査というシステムそのものを知らない可能性もある。小さな町の不動産屋さんや大手でも賃貸専門のチェーン店の社員などは、知っている人の方が稀である。
見栄えを整える提案も重要だが、中身のあるリフォーム工事を行って行くべきである。
所有者が物件を売却しやすくなるということは、所有者にとっても良いことであり、その様な不動産が市場流通しやすくなれば、空き家問題の手助けに大きく寄与することになる。
建築基準法適合状況調査について
・ 完了検査を受けていないため、検査済証が無い
・ 完了検査を受けていないため、融資を受けられない
・ 完了検査を受けていないため、耐震診断や耐震工事の補助が受けられない
・ 完了検査を受けていないため、用途変更や増築ができない
上記の様なことで、お困りの場合は、リデベまでお気軽にお電話をください。
空き家問題を考える ~空き家をリフォームして賃貸住宅にして良いか~
もちろん、現在使われていない建物を賃貸すること自体は何の問題もないのだが、それは、「その建物が合法的な物ならば」だ。
第1話で空き家の再利用の事例を簡単に紹介したが、その中でも今回は、今まで全く使われていなかった空き家を賃貸住宅として貸し出している事例を紹介しよう。
『まだまだ、再利用可能と考えられる空き家を若い建築家にアイデアを出して貰いリフォームして、住みたいと考える人に賃貸住宅として提供する。』
この部分だけを読むと極めて前向きで美しい提案に聞こえる。私も最初にこれを聞いた時には、
「なかなか良いアイデアだし、昔の住宅の良さを活かしながら、今の生活に対応出来るように出来たら、それは素晴らしいことかもしれない。」
と考えた。
しかし、その様子がマスコミなどで取り上げられ、実際にその提案を受けたという人から話を聞いてみると、かなり杜撰な実態が見えてきた。
まずは、この類の提案の殆どが、賃貸住宅にするため、つまり、借主を付けるためにデザイン的な部分に重きを置き、法的整合性、建物の構造や性能という部分は殆ど手が付けられていないと言うことだ。
例えば、昔の家を再利用しているのだから、「隙間風が入ってくる」、これは仕方がないかもしれないし、そこに情緒を感じて借りる人もいるかもしれない。
しかし、地震が来た時に周りの家は倒れなかったが、その建物だけ倒れて被害に遭われたら借主はどう思うだろうか?もちろん、貸主だって高いリフォーム費用を払ったのに採算が取れないどころか借主から瑕疵担保により、損害賠償請求をされるかもしれない。
現在では消防法の観点から、火災報知器の設置が義務となっているが、それが設置されていないという事例もあったが、これには既存不適格は適用されないし、もし、火災が発生した場合に火災報知器が付いていなかったことが原因で借主が被害に遭われれば、貸主は不法行為となり、損害賠償を負わなければならない。
そして、法的整合性の問題がもっとも重要なテーマになってくる。ある意味、法的整合性さえ、整えておけば、上記の様な問題は一気に解決できるのだが、それを殆どの物件が行っていないのが実態である。
この手の空き家となっていて、リフォームをして貸し出そうとする住宅の殆どが完了検査を受けていない。完了検査を受けていない理由は様々なのだが、戸建て住宅の場合、築20年以上のものとなると慣例的に完了検査を受けなくても良いと言う雰囲気があった。もちろん、建築基準法的には非合法であることは間違いないのだが、当時は完了検査を受けなくても大きな問題には発展しなかった。
では、完了検査を受けていない建物を賃貸に出してはいけないかというと、そうとまでは言いきれない。詳しくは『違法建築を賃貸してよいか?』を読んで頂きたい。
しかし、完了検査を受けていないこと知っていながら、故意に隠したり、完了検査を受けていないのに「既存不適格である」などという虚偽を重要事項説明などですれば、宅地建物取引業法に抵触する。また、特定行政庁によっては、重要事項説明時に完了検査受領の有無を記載することを推奨しているところもある。完了検査受領の有無の調査が特別に難しいかというと、そうでもなく、その物件の管轄する特定行政庁の確認申請などを管理する建築指導課(呼び方は各行政庁によって違う)に行って『台帳記録証明』というのを貰って来れば(実際には数百円掛かる)、確認申請から完了検査、合法的に増築などを行っている場合にはその確認申請や完了検査まですべて記載される。また、完了検査時の建築概要も解るので、完了検査後に違法な増改築などがされていないかなどのチェックにも使える。
※どこの行政庁でも「台帳記録証明」ないし「台帳記載証明」で通用するが、行政庁によっては出てくるものが単に「証明書」などとなっている場合もある。
違法建築に関して明らかでないような場合、この完了検査受領の有無も該当するのだが、重要事項で説明する義務があるかどうかは微妙である。もちろん、完了検査を受けていないのに受けているかのごとく重要事項に記載すれば違法だが、なにも記載していないというのは虚偽とは言えない。違法建築は列挙事項(必ず書かなければならないこと)では無いので書かなくても良いと言う考え方もある。判例では、買主や借主が知らないことにより明らかに不利益を被るような重要な情報であった場合には重要事項説明義務違反になる。だから、完了検査を受けていないことで明らかな不利益を被らなければ、この不動産会社は何ら瑕疵が無いこととなる。しかし、その情報を知っていたのに記載しないことは重要事項説明違反になる。
では、その不動産会社が知っていたかどうかだが、不動産会社は当然に
「知らなかった」
と主張するのが普通である。そして、その不動産会社が「知っていた」という証拠を押さえるのが難しいのが一般的である。
建築士が入っていないで、建設業も持っていないような小さなリフォーム会社が、施主と現場で打合せして、体裁だけを整えたのなら仕方がないが、今回のように、最初から建築家と称する建築士が入って、リフォームの設計をして、それを所有者に提案し、何百万、いや1000万円以上のリフォームをするのに建築士が完了検査受領の有無を確認しないとは考えにくい。もし、確認しない建築士がいるとすれば、その様な輩に設計を依頼したこと自体が残念なことである。
一般的に建築士がリフォームの設計をする場合、その建物の既存不適格部分を確認する。また、開口部などをいじる場合には当然に採光計算や換気計算を確認するだろうし、キッチンなどをいじる場合には、台所の壁の不燃、準不燃などを確認する。その為には、その建物が新築当時に合法的な建物だったかの確認が必要となるのだが、もっとも簡単な方法が完了検査受領の有無である。もちろん、完了検査を受領していてもその後に違法改造、違法増築などがあるかもしれないので、完了検査を受領しているからといって、その建物の遵法性を確認できたとは言えないのだが、これをやらないと始まらない。
ということは、このリフォームを依頼された建築士は完了検査受領の有無を知っている可能性が高く、この事実を知った時点で依頼者にこの事実を告げることとなる。つまり、不動産会社が知らないとは考えにくいということになる。また、建築士が台帳記録証明を取得していれば、その証拠が特定行政庁に記録として残るはずである。
では、完了検査を受けていないことが解った場合、それを重要事項で説明することとなるが、その建物の遵法性が確認できていないという事実を知ったら、借り手は付くだろうか?もちろん、完了検査を受領していないことが違法であると言うことを知らない借主もいるだろうが、重要事項説明にそれを書いた以上は、その事実を説明する義務が生じるので借主はそれを知ることとなる。そんなことを気にしないという人もいるとは思うが、それによって借りないという人も出てくるだろうし、少なくとも借りる人の幅を狭くし、となれば必然的に賃料も安く設定しなければならなくなってくるものもあるだろう。
また、万が一の事態が発生した場合には、仲介をした不動産会社だけでなく、貸主にも瑕疵担保責任を負わなければならないし、リフォームの程度によっては設計した建築士も建築士法や民法の不法行為などに問われる可能性もある。
この様に安易に空き家をリフォームして賃貸して良いとは言えないのである。
建築基準法適合状況調査について
・ 完了検査を受けていないため、検査済証が無い
・ 完了検査を受けていないため、融資を受けられない
・ 完了検査を受けていないため、耐震診断や耐震工事の補助が受けられない
・ 完了検査を受けていないため、用途変更や増築ができない
上記の様なことで、お困りの場合は、リデベまでお気軽にお電話をください。