【経緯】外伝7【立退き】
さて、昨日の話の続きです。
私はRさんとUさんの関係を聞かなくてはなりません。いくら、Uさんが連帯保証人でも、Uさんが家賃を払っていて、この部屋に住んでいるので、そこの関係だけはちゃんと確認しなければなりません。
聞くのイヤだなぁ・・・と思いつつも仕事だし・・・止むを得ず切り出しました。
「あの・・・Rさんと正式にはどんな関係はなんでしょうか・・・?」
「あ~ん?奥さんみたいなもんだって言っただろ。」
「いえ、『みたい』ではなく、『正式』にはどんな関係なんでしょうか?」
「あんたには関係ないんじゃい」
(って、「じゃい」ってどこの方言なんじゃい)
と、どうでも良いことを思いつつ・・・
「いえ、さすがにご家族や血縁でもない方にいろいろなお話をする訳にもいかない訳でして・・・」
と言うと、意外に素直に答えてくれました。
「俺はRの雇用主じゃい」
(あれ?Rさんってそう言えば職業が書いてなかったな・・・)
「あの、どういう、お仕事なんでしょうか?」
「聞きたいんかい?じゃあ、教えてやろう。Rはな、ジャパユキなんじゃい。」
「『じゃ・ぱ・ゆ・き』・・・」(懐かしい、響き・・・)
(はい、そこの貴方、『ジャパユキ』と聞いて解る方!アラフォー+αですよ)
ジャパユキが解らない方はこちらを参照してください。→『ジャパゆきさん』Wikipedia
(って・・・ぜんぜん、奥さんじゃないじゃん!)
でも関係が解れば良いだけです。だって、こちらは、これからもRさんに幸せにここに住んで頂く事が目的ではありません。立ち退いて貰うのが目的です。まぁ、一応、雇用関係ということもあるみたいですが、UさんがRさんを見捨てるとも考えにくい雇用関係だろうと思いました。だって、UさんにとってRさんは大事な稼ぎ手と思われたからです。それと、Uさんみたいな方は話が早いんです。この時は解っていなかったんですが経験を重ねるうちに住んでいる場所に愛着が無い方というのは金銭的に解決がしやすいんです。Rさんは長いこと住んでいるので愛着はあるかもしれませんがUさんがここに愛着があるとは考えにくい状況です。
しかも、Uさんは私が切り出さなくてもちゃんと解っていました。
「で、いくらくれるんじゃい」
「えっ」
「だから、立退き料、いくらくれるんじゃい」
この頃の私はまだ立ち退き初心者です。もじもじ、していると・・・
「条件は2つじゃい。Rの次の住む場所を探すことと家賃の10倍じゃい。」
(らっきーーーーー)
家賃の10倍の立退き料って高いと思うか安いと思うかはそれぞれだと思います。プロの方からすれば普通と思われるでしょうし、素人の方からすれば、高い!と思うとおもいます。もっとも月額家賃にもよりますが、今回は十分予算内でした。読者の方には立退き料の考え方が解らないと思われますのでここで立ち退き料の考え方をちょっと書いておきます。
・ 引越し代:家賃の1ヶ月分
10万円の部屋の引越し代は概ね10万円と考えます。もちろん実際にはその人の荷物の量によります。
・ 次の住まいの初期費用:家賃の6か月分
現在の住まいの家賃が10万円なのに次の住まいの家賃が30万円ということはその人の収入が突然増えるわけもないので、概ね同じぐらいの家賃と考えます。そうすると、敷金2ヶ月礼金2ヶ月(関東の場合は礼金があります。関西だと敷引きです。もちろん、物件によってはこれがゼロで済む場合もありますし、4ヶ月以上掛かる場合もありますが住居系の場合にはこれぐらいで考えておきます。)仲介手数料1ヶ月。それに火災保険だの鍵交換費用などで1ヶ月ぐらい(実際には5万ぐらいでしょうが面倒くさいので1ヶ月としちゃいます。)
・ 迷惑料:1ヶ月~
実際に、引っ越すと知り合いに住所変更のお知らせをしたり、金融機関や免許証の住所変更など、面倒な手続きがあります。その他にも最近では次の住まいでプロバイダーとの再契約やケーブルテレビの加入など人によってはやらなくてはいけないことが沢山あります。もちろん、精神的な保証という意味合いもあります。
と考えれば概ね8ヶ月ぐらいは掛かります。
しかし、住居系の賃借人は賃貸人から「老朽化の為、立て直しますから、退居してください」と言われると、借家法をよく解っていないことがあり、慌てて次の部屋を探して、出ていってくれる方もいます。私の経験から言うと3割ぐらいの方は立退き料を支払わないで済みます。また、7割以上の人が上記の内訳以内で退居してくれます。
問題は残りの3割の人です。
この人たちはかなりゴネます。不動産屋や法律関係にちょっと詳しい知り合いがいたりして入れ知恵をされると、その入れ知恵をされたところから、さらに多目に請求してきます。不動産屋や法律関係に詳しい人の場合はあまり法外なことは言ってこないことが多いです。
実際にはこちらは、全員に退居してもらわなければならないですから、なんとしても出てもらわなければなりません。実際には上記の様な理屈が通じない相手もたくさんいます。その場合は大変になります。
時々、立退きを実際にやったことの無い不動産鑑定士や弁護士が杓子定規にバカな立退き費用を算出したりしますが、私は(やれるもんなら、それでやってみろ)と思います。
さて話を戻すとRさんの場合は金銭的には十分に予算内だったわけです。(しかもSさんの立退き料ゼロだったし・・・)詳しくはこちらから
問題はRさんの次の住まい。職業(本当のことを言えるわけもない)、本当に就労ビザを持っているのか?(あとで解りますが持っていません)、フィリピン人、連帯保証人がUさん(血縁じゃない上に普通の人じゃない)
部屋を探すのは相当、大変でした。
私がなかなか部屋を探せないでいると上司が・・・
「入管行って、チクッてこい!」
この上司、意気込みで土地を買えちゃう上司(詳しくはこちら
)なんで言うことは極めて短絡的です。
・ Uさんが仮に一緒に逮捕されても、仲間になにをされるか解らない。
・ こちらが立退きを目的として居住者を入国管理局に引渡したことがマスコミにでも取り上げられたらただじゃすまない。(一応、上場会社でしたし・・・)
さすがに上司には、このことを言って理解してもらいました。
その後、3ヶ月ぐらい掛かって、なんとか部屋を見つけることができました。
このマンションは他にも立退きで苦労することはあるのですが、ネタとして話せることはこんな感じです。
ちなみにこのマンションはすでに解体されてありません。本当は再開発しようとしたのですが、更地の段階でどうしても売ってくれという不動産デベロッパーが出てきたので売却してしまいました。そのデベロッパーは既に休眠状態ですが・・・。
このテーマでのこのマンションはこれぐらいで終わりにします。
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