違法建築物を不動産業者は説明しなくてよいのか?(売買編)
先日、当社のところにこのような相談が舞い込みました。
「契約して、手付金を払った物件ですが、契約後に、『検査済証』が無いことが解りました。これは違法建築だと思うので契約を白紙解除(※2)したいのですが、相手は手付解除(※1)でしか応じないと言って、手付金を返してもらえません。手付金を放棄するしかないでしょうか?因みに仲介業者はいませんが、売主そのものが、不動産業者(法人)です。」
※1手付解除…支払っている手付金を放棄して、契約を解除すること
※2白紙解除…契約そのものが無かったことにすること。当然、手付金は返還されます。
この情報だけだと実は非常に難しい話です。
この情報だけだと、検査済証が無いことを、売主が知っていたかが争点になると考えられます。(宅地建物取引業法47条)
と言うわけで、契約書、重要事項説明書、クライアントが役所で取得した建築計画概要(どのような確認申請をしたか)、台帳証明(完了検査を取得しているかどうか)を送って貰いました。
さらに、当社の方で、土地、建物の登記情報を取得しました。
登記情報では、敷地面積は150㎡、建物は1階が87.5㎡、2階が88㎡、3階が91.5㎡とあります。また、建物が登記されたのは昭和62年です。
本物件の場所は、建蔽率60%、容積率200%の都市計画法上の第一種住居専用地域エリアです。道路幅員は4.5mです。
そこで、気が付いたことがありました。
1.契約書と重要事項説明書に書かれていること
1)「本物件は『既存不適格』である。」と書かれていること
2)「建蔽率と容積率がオーバーしているが、これは既存不適格によるものであるため、再建築の際には、同等の建物は建てることができない。」と書かれていること・
3)「建蔽率(1.0%)オーバー、建物は(4.0%)オーバー。」と書かれていること。
と書かれています。
2.台帳証明と建築計画概要をみると
1)台帳証明を見る限り、やはり完了検査を受けていません。つまり検査済証はありません。
2)建築計画概要をみると、敷地面積は165㎡、建築面積92.8㎡、延べ床面積は269.4㎡とあります。
まず、『既存不適格』とは、その建物が建てられた時(厳密には確認申請を取得した時)の法律には、合致している建物であるが、その後、建築基準法及び関連法規、条例等が変わってしまったために、現行法に抵触してしまっている建物のことを言います。
この建物は、完了検査を受領していないので、すでに建築基準法に抵触しているので、既存不適格ではありません。
では、既存不適格によって、建蔽率や容積率がオーバーしているかどうかです。
ここで問題となるのは、昭和62年以降に建築基準法によって建蔽率や容積率が変わった点は2つあります。
・マンションなどの共同住宅の共有部分の容積率参入の緩和
・道路幅員による、容積率の規制
この2点です。つまり、容積率は、規制が厳しくなることもあります。しかし、建築基準法で建蔽率が厳しくなると言うのは、聞いたことがありません。
考えられるのは、都市計画法や地域条例の変更により、規制が厳しくなった場合です。
しかし、都市計画法で建蔽率が緩和されるケース(住宅系地域から、駅や幹線道路の拡張などで商業系地域に変わる)ことは考えられますが規制されるケースは稀です。唯一、考えられるとすれば、都市計画区域外から、都市計画区域に変更になったケースです。
そこで、本物件の所在するA市役所の建築指導課に問い合わせてみました。
案の定、都市計画法の変更も条例による建蔽率の規制も昭和62年以降はありませんでした。
ここで、電話でA市役所の建築指導課の担当に、なぜ、このような質問をするのかを聞かれました。理由を説明すると、面白い返事が返ってきました。
「たしかに、この物件は完了検査を受領していませんね。しかし、それは手続き上の不手際があっただけで、違法建築とまでは、言い切れません。」
実は、この類の回答は、多くの役所の若い担当が同じことを言います。そこで、私は聞き返しました。
「違法建築だとか、違法建築物という言葉は、建築基準法に定められている用語ではないが、どういう定義で、その言葉を使っているのでしょうか?私は、その建物が同法に抵触している建物かとどうかが、違法建築であると認識していますがちがいますか?」
その担当は
「その認識で間違いないと思います。」
と回答しました。私は
「では、本物件について、同法7条1項から5項に抵触しています。また、同法第99条に第7条に関する罰則規定もあります。これをもってもこの建物は違法建築ではないと言えますか?」
若い担当は、建築基準法第7条を電話の向こうでぶつぶつと唱え始めました。そして・・・
「い・・・違法建築で間違いありません。しかし、既存不適格でないとまでは言い切れないかと・・・」
もう、これ以上、この担当をいじめても仕方がないので、ここら辺で辞めておきました。しかし、これで本物件の所在するA市役所も本物件が、建築基準法に抵触する建物であることは認めたことになります。(もちらん、担当者の名前も会話の内容も録音されています。)
しかし、これだけでは売主である宅建業者が、完了検査を受けていない違法建築物であったかを知っていたかどうかは解りません。
実際問題、宅建業者であれば、その建物が完了検査を受けているかどうかを調べるぐらいのことは当然にやらなければならないのですが、宅地建物取引業法第35条(重要事項説明)には、違法建築の記載事項が明記されていません。最近では、どの役所でも、それを調べることを勧めていることから、訴訟に持ち込めば、同法35条の記載事項に明記されていなくても
『売主が目的を達成できない』(民法570条)
に該当してアウトとなることは想像できるのですが、訴訟に持ち込まなければならない煩わしさがあります。そこで、決定的なミステイクを探すこととしたのですが、ありました。
まず、この契約の契約書と重要事項説明書には、『既存不適格』と書かれていることです。
前述の通り、『既存不適格』とは、新築時には合法であったが、その後の法改正などによって、現行法に合致しなくなった建物のことです。
しかし、この建物は完了検査を受けていないことから、自動的に『建築基準法に抵触した建物』であり、『既存不適格』ではありません。
また、建蔽率と容積率がそれぞれオーバーしていると書かれていることも問題です。この売主である不動産業者は、登記情報の敷地面積と登記情報の建築面積から、建築面積と延べ床面積を算定して、建蔽率と容積率を判断しました。
しかし、登記情報の敷地面積が確認申請時の敷地面積と合致しているとは限りません。建築基準法に於いての敷地面積は、建物を建築する部分の敷地面積を言います。それは、建物が建っている地番の敷地面積ではありません。隣の地番の敷地と合わせて建てても問題はありませんし、登記情報の敷地面積が古い情報で、新たに測量した結果を使っても構いません。また、新たに測量した結果を登記するかどうかは、その時点の土地所有者が法務局に地籍公正をしたかどうかによります。
また、建物の大きさについても同じことが言えます。今回の登記情報による建物の延べ床面積は合計すると267㎡です。しかし、確認申請時に出されている延床面積は269.4㎡です。
よく勘違いされている人がいるのですが、確認申請の延べ床面積というのは、建築基準法で定められた面積です。建築基準法の所管は国土交通省です。登記情報に出ている面積は土地家屋調査士法に定められる面積です。土地家屋調査士法の所管は法務省です。
例えば、建築基準法では1/2未満しか外気に接していない外部階段は容積率対象面積になりますが、土地家屋調査士法では、外部階段は一律面積から省かれます。
ちょっと、変な感じがしますが、建築基準法とは、建物の安全性から、1/2以上の解放が無ければ、外部階段としての要件(火災時の換気、竪穴区画としての問題)を満たしていないと考えられます。しかし、土地家屋調査士法は財産権を測定しているので、外部階段は面積に含まないのです。
建蔽率や容積率というのは、都市計画法によって定められ、建築基準法によって遵守しなければならないものですから、登記情報の面積によって、建蔽率や容積率がオーバーしているということは出来ません。
この建物の場合、確認申請は合格していますが、完了検査を受領していないので、確認申請通りに建物が建てられているかどうかの判断ができません。つまり、建築基準法で言うところの建築面積や延べ床面積は不明であり、建蔽率や容積率がオーバーしているということは不明ということになります。
この2点より、売主である不動産業者は、契約書と重要事項説明書に虚偽の記載をしたことになります。
(業務に関する禁止事項)
第四十七条 宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
一 宅地若しくは建物の売買、交換若しくは賃借の契約の締結について勧誘をするに際し、又はその契約の申込みの撤回若しくは解除若しくは宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため、次のいずれかに該当する事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為
つまり、知らなかったことは書けないにしても、虚偽記載をするということは
「不実のことを告げる行為」
に該当します。
結果的には、このことを中心に当社から弁護士に依頼して、売主にこの内容証明を送ってもらいました。
それまで、
「絶対に手付解除だ」と言っていた、売主はすぐに白紙解除に応じて、手付金を全額返済しました。
週刊ビル経営に掲載されました。
週刊ビル経営に掲載されました。
週刊ビル経営は、ビルオーナーや、不動産関連のプロが購読している業界紙です。
今回は
「景気反転の今こそ考えたい ビルの空室解消法」
というタイトルで1面~3面までの特集が組まれています。
弊社での、リノベーションなどの実績などを含め、今後の空室対策について掲載されました。
週刊ビル経営 2013年9月23日 第813号 1面掲載
原状回復工事 ~入居者視点からのリニューアル~
前話(「原状回復工事 ~不動産屋が高い理由~」)で、書いた部屋の施工前の部屋の写真を見せてもらうと、フローリングは部分補修をしてワックスを掛ければ問題ないような状態です。建具を替えた理由は、フローリングを替えるときに巾木を替えるため、造作材の色が変るから建具まで替えたという理由です。
さて、この部屋で当社が提案すると、どんな提案になっていたかというと・・・
項目 | 数量 | 単価 | 小計 |
キッチン換気扇フード交換 | 1式 | 38,000円 | |
キッチンシート貼り | 1式 | 24,000円 | |
キッチン水栓交換 | 1式 | 28,000円 | |
トイレペーパーホルダー交換 | 1式 | 7,500円 | |
トイレタオルリング交換 | 1式 | 5,000円 | |
フローリング補修 | 1式 | 15,000円 | |
火災報知機設置 | 2箇所 | 3,900円/箇所 | 7,800円 |
スイッチプレート交換 | 6箇所 | 3,000円/箇所 | 18,000円 |
クロス交換 | 88㎡ | 1200円/㎡ | 105,600円 |
クリーニング工事 | 1式 | 25,000円 | |
工事管理費 | 1式 | 30,000円 | |
合計 | 303,900円 |
と、こんな内容でした。建物の住み心地というのは、立地や周辺環境と間取りや日当たりなどによって決定されるものです。ですから、各住戸のリニューアル工事によって、「住み心地」を変化させることは極めて難しい問題です。住み心地を変化させるためのリニューアル工事は、各住戸の工事よりも共有部分の工事によってできます。
では、当社が水周りやスイッチプレートなどの細かいものを替えたかと言うと、こういう部分は、メーカーの商品の入れ替わり(デザイン変更)が頻繁に行われるため、新築物件と比較すると劣化が激しく感じられるからです。また、水周りやスイッチなど、前居住者が触ったものの中で新規入居者が嫌悪感を感じるものはなるべく交換してあげるという効果もあります。
ちなみに火災報知機は法律の変更に伴うものです。(E社は忘れていました。)
さて、この部屋はE社が前話で提案した内容で施工した後、2ヶ月で入居者が決まりました。決まったのは、3月中旬で、もっとも入居者の入れ替わりが多い時期ですから、決まって当然なのですが、113,000円で募集して、結果的には110,000円で決まりました。
その2ヵ月後、このマンションオーナーから、再び依頼がありました。E社が施工した部屋の下階の部屋が空いたので、リニューアルの提案をして欲しいとのことでした。
こちらの部屋も状況は殆ど変り無かったのですが、フローリングは補修の必要性もありませんでした。ただし、給湯器が壊れかかっていたので、給湯器を交換しました。他の内容は、上記の内容とまったく同じです。
工事が終わったのは、6月の中旬でした。私はマンションオーナーに115,000円で募集をするように提案をしました。結果は、7月1日からの入居希望者が、115,000円で成約しました。築年数が10年のマンションですが、1LDKの周辺の新築相場が120,000円弱だったこともあったので、新築に近い賃料で決まるという自信があったからでした。
賃貸専門不動産会社は、入居者がどんな視点でものを見ているかのマーケティングは、殆ど行っていません。強いて言うならば、マイソク(物件の広告)に書ける項目を増やしたいだけです。風呂・トイレ別、エアコン付、ウォシュレット付、光回線など、とにかく項目を増やしたいだけです。そして、それに食いついてきた入居希望者をなんとか営業力で説得します。家賃を下げるのも営業力と称しています。今回の物件では
『大規模リフォーム済み』
とマイソクに書かれていました。フローリングを交換したことを大規模リフォームと言いたかったのでしょう。
このように大手賃貸不動産会社は、客付けさえできれば良いと考えており、入居者目線でのリフォームの提案は出来ません。それによって、入居者は長期に渡って賃借してくれない物件になってしまいます。
たしかに、最近はインターネットの物件検索サイトなどでも設備の選択欄があります。ですから、マイソクに書ける項目を増やすことで、インターネットの物件検索サイトでも、選ばれる可能性は高くなります。
しかし、ある程度の設備が整っていれば、後は実際の物件勝負になります。
当社は設計事務所であることの強みを活かし、戸建分譲住宅や分譲マンションなどのマーケティングデータをもとに、人気の住空間を常に研究して、それを賃貸住宅にも反映させています。
そして、費用対効果の大きいリフォームの提案を行っております。
賃貸住宅の空室対策、原状回復工事は
リデベにご相談ください。
原状回復工事 ~不動産屋が高い理由~
当社のお客様である、マンションやアパートのオーナー様から、空室対策に関する相談を受けます。その多くの物件は、立地的にかなり厳しい物件であったり、かなり老朽化している物件だったりと、その理由は様々です。
立地的に厳しい物件は、なかなか手の施しようが無いというのが実態です。また、老朽化した物件であっても、そこまでの手入れの状況次第ですが、築40年以上の物件となると、やはり、かなり厳しいものがありますが、立地的条件と物件の状況によっては、何とかなる場合もあります。
今回は、物件も平成に入ってからのもので、立地的条件も整っているのに空室がどうしても出来てしまうという物件についての問題点について検証します。
マンションやアパートと言うのは立地的条件が整っていれば、新築から築5年目ぐらいまでは、事故でもない限り、周辺相場賃料とほぼ同等であれば、それなりの入居率は見込めるはずですが、築10年を超えてくると賃料の下落が始まります。これは、築年数による経年劣化よりも、細かい設備が新しい物件と比較して見劣っていたり、室内のデザインが流行から遅れていたりするのが主な原因です。
ある賃貸マンションオーナーが、客付けと家賃の回収、共有部の清掃、退去者が出たときの原状回復を大手の賃貸専門不動産会社E社に任せていました。大手の賃貸専門不動産だけあって、それなりに入居者を付けるのですが、平均入居年数が3年弱と入居者が安定しません。
入居者の出入りが激しいのは賃貸物件のオーナーにとっては、次の入居者が入るまでの間、賃料が得られないだけではなく、原状回復工事なども少なからず出費があるはずです。
そして、この賃貸マンションオーナーから当社に入居者が安定するにはどうすればいいかと言う依頼がありました。
入居者が安定することは、実はすごく簡単なことです。
『住み心地のよい住居を提供すること』
この一言につきます。
そこで、まずはそのマンションの空室を見させて貰いました。その部屋は前入居者が6年間住んだそうで、このマンションの中では長く住んでいた入居者でした。
間取りは1LDK(34㎡)です。
まず、中に入って気がついたことは、フローリングでした。新品のフローリングです。
オーナーに聞いてみると、この部屋の前入居者と前々入居者の併せて10年間フローリングを替えておらず、表面がかなり劣化していたので、E社から、
「そろそろ、原状回復工事と一緒にリニューアル工事をした方が良い」
と勧められて工事をしたそうです。
そこで、E社の提案した工事内容を見てみると・・・
建具の交換 | 3本 | 98,000円/本 | 294,000円 |
フローリング | 1式 | 350,000円 | |
造作工事 | 1式 | 158,000円 | |
クロス交換 | 88㎡ | 1,800円/㎡ | 158,400円 |
下駄箱補修 | 1式 | 15,000円 | |
クリーニング | 1式 | 37,500円 | |
工事管理費 | 1式 | 101,290円 | |
合計 | 1,114,190円 |
※建具3本 リビングと寝室の間のドア・洗面所のドア・トイレのドア
と、こんな内容でした・。
まず、気になったのは値段です。建具やフローリングは良く知っているメーカーのもので、仕入れ価格も概ねわかっていました。それだけに、あまりに高いと感じました。
しかし、高いのは当然です。
E社は、業者を手配する能力はありません。そこで、工事を別のH社に丸投げしています。H社自体もフランチャイズリフォーム会社です。H社は、通常の工務店と比較するとフランチャイズ手数料を工事費の20%取ります。さらにE社がH社の見積に25%乗せているので、大手賃貸専門不動産会社は通常の工務店に工事を依頼するよりも1.5倍も高いことになります。
これはE社に限ったことではありません。大手の賃貸専門不動産会社はどこも似たようなものです。
実際に大手の賃貸専門不動産会社にリニューアル工事を依頼して、「高い」と感じたマンションオーナーの方も多いと思います。
しかし、賃貸専門不動産会社の提案の問題点は高いだけではありません。次回は、その提案内容の問題点について考察します。
当社は設計事務所であることの強みを活かし、当社では、戸建分譲住宅や分譲マンションなどのマーケティングデータをもとに、人気の住空間を常に研究して、それを賃貸住宅にも反映させています。
そして、費用対効果の大きいリフォームの提案を行っております。
賃貸住宅の空室対策、原状回復工事、リフォームは
リデベにご相談ください。
不動産売却 消費税、増税前後の価格変化
前回、不動産業界の人でも消費税増税の反動で分譲マンションや戸建て分譲が売れなくなったと認識している人が、今は少ないと書きましたが、消費税増税になった平成9年には、消費税増税異常にインパクトのある別の大きな経済的事件がありました。
北海道拓殖銀行(拓銀)と山一證券の倒産です。
平成9年は、消費税増税後も株価こそ、堅調に推移していましたが、8月になると株価も後退しはじめ、9月の終値は増税した4月1日とほぼ同じ株価になっていました。
そして、11月になると拓銀倒産、山一證券倒産となり、7月には2万円台で推移していた株価は、12月になると1万5千円前後で推移するという状況になります。そして、平成10年には、日本長期信用銀行倒産となり、株価も1万3千円台で推移します。
拓銀の倒産は不良債権、特に不動産担保に対する不良債権比率が異常に高かったことが破綻の一端でした。その後、足利銀行が破綻しますが、こちらも同様で、バブル崩壊後、不良債権問題に苦しんだ金融機関は不動産担保の過剰融資をしなくなります。
では、その頃の不動産価格はどのように変化していたかを見てみます。公示価格を掲載しますが公示価格というのは、概ね実態を半年遅れで反映しているものです。
まずは、東京の住宅地を見てみます。
東京都中央区銀座4-2-15(商業地 容積率600%)
平成8年 10,500千円/㎡
平成9年 10,000千円/㎡
平成10年 10,300千円/㎡
平成11年 10,000千円/㎡
平成20年 21,200千円/㎡
東京都杉並区天沼3-20-21(住宅地 容積率200%)
平成8年 500千円/㎡
平成9年 492千円/㎡
平成10年 486千円/㎡
平成11年 471千円/㎡
平成20年 526千円/㎡
愛知県名古屋市千種区京命1-8-26(住宅地 容積率200%)
平成8年 216千円/㎡
平成9年 206千円/㎡
平成10年 203千円/㎡
平成11年 193千円/㎡
平成20年 177千円/㎡
大阪府大阪市天王寺区味原町3-11(住宅地 容積率300%)
平成8年 531千円/㎡
平成9年 506千円/㎡
平成10年 495千円/㎡
平成11年 474千円/㎡
平成20年 451千円/㎡
と、銀座等の極限られた商業地は、踏みとどまっていますが住宅地に関しては三大首都圏でも価格は下がっていきます。この価格は半年後の価格ですから実際に駆込み需要があったとされる平成9年でさえ、平成8年からみて価格を下げています。当然、拓銀や山一證券の倒産の影響がでる平成11年はもっと大きく下がります。
また、平成20年は実質リーマンショックの前年のミニバブルと言われたときは、一部の商業地の値段は跳ね上がりましたが、住宅地は東京の一部で平成9年より上がりましたが、その他の場所では下がっています。
その東京の住宅地でさえ、平成25年現在は平成11年よりも大きく下げています。前述の事例である東京都杉並区天沼3-20-21は、433千円/㎡です。
東京の一部の商業地は、人口動態が直接的に影響しないことがあり、また過剰投資の対象になることがあるので、銀座のような事態が発生します。同じような現象が起こったのは丸の内、表参道、渋谷、原宿、新宿、池袋などのごく一部のエリアに限られます。
今はマンション用地や戸建て分譲用地などの需要はかなりあるので、首都圏などで土地を売却しようとすれば簡単に売却することができます。
しかし、需要が無くなった時には、公示価格で示された価格で取引が出来ているかといえば、なかなか出来なかったりします。当然、公示価格よりも大幅に安い価格ならば、売れるのですが、大幅に安い価格で手放そうとする人は少ないので、実際には需要が無くなってくると売却すら難しくなってきます。
株と不動産投資の大きな違いは市場流通性が全然違うということです。
株は損切りしようと思えば、すぐにできます。しかし、不動産は買い手が限られるので、簡単に売却できなくなるときがあります。特に需要の少ないエリアでは売却しようと思ってもできないということも多々あります。
一昨年、当社で売却を依頼された伊豆の別荘地がありましたが、100坪で20万円にしても全く反応がなく、別荘地専門の買取業者に相談したところ、
「ただでも引き取れない」
と言われました。需要が無ければ、固定資産税や管理費を払うだけで赤字になってしまいます。そういう不動産もあるということです。
不動産投資と言うのは、売却できるときに売却して、より良い不動産に買い換えるというのが必勝のパターンです。
売却できる時期に損切りが出来なければ、次に損切りができるのは、10年も待たなければならないということも多々あります。その間に、優良な不動産に買い換えることすら出来ないというのが、不動産投資で失敗するパターンです。特に不動産をお持ちの方は、過去の不動産価格の幻想をいつまでも思い描いていたり、自分の持っている不動産がいつまでも良い場所にあると勘違いしている方も大勢います。
すでにシャッター商店街になってしまったような地方都市は見るからに需要がないので一目瞭然ですから、ここで事例を示す必要性はありませんが、例えば昔は新幹線の終点であり、東北地方の玄関口だった上野周辺の価格は
東京都台東区上野2-12-16(商業地 容積率600%)
平成8年 3,880千円/㎡
平成9年 2,950千円/㎡
平成10年 2,440千円/㎡
平成11年 2,170千円/㎡
平成20年 1,910千円/㎡
平成25年 1,430千円/㎡
と、東京の商業地でありながら、一方的に価格が下がっています。この場所は不忍通りに面して、上野に至近の場所で、北側の春日通りとの間は、昔は繁華街として栄えた場所で、今でもその面影はあります。しかし、公示価格だけを見れば、リーマンショックの前のミニバブルの時でさえ、あまり需要が無かったことが良くわかります。そして、今や、容積率100%あたりの公示価格は、東京都杉並区天沼3-20-21とほぼ同じ価格ですから、すでに商業地としての使命を終えて、今後はマンション用地に変貌して行く場所と考えられます。
不動産をお持ちの方は、買換え特例などを上手に活用して、優良な不動産への買換えをお勧めします。
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※リデベの不動産査定は、当社から査定をされた方の個人情報を出さずに査定します。
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不動産売却の時期 消費税増税後の住宅需要
平成9年の3月末には平成8年度4回目のボーナスが出ました。この年、4回目のボーナスが出るときに当時、私が勤めていた会社の副社長(当時71歳)がボーナス支給に当って、全社員の前で
「去年は消費税増税前の駆込み需要で予想以上の売上をあげたが、今年はその反動が必ずあるだろう。生産部門は一層のコストダウンに努め、消費税増税分以上に価格を下げる努力をして、営業部門は、それを如何に顧客にアピールするかを考えなければならない。以前の消費税導入(※)は、バブル景気に向かう中で影響は軽微だったが、今回は違う。」
と言いました。(※「以前の消費税導入」:1989年4月1日に日本で始めて3%の消費税が導入されたこと)
しかし、社員は前年のあまりに好調な売れ行きや、以前の消費税導入の時にあまり影響が無かったことから、楽観する雰囲気が漂っており、その副社長の言葉をちゃんと受け止めていなかったと記憶しています。
しかし、副社長の言ったことは、見事に的中することとなります。
平成9年度上期(4月~9月)分の事業用地は、ほぼ平成8年度下期以前に入手したものが多く、前回書いたように用地取得部門は、事業用地を必死になって買っていましたから、当面の事業用地は確保されていました。
建設会社というのは、作り続けないと存続できません。工場等がないので生産調整が簡単だと思っている人が多いのですが、建設会社には専属の職人がいます。職人は社員ではありませんが、仕事の発注を辞めると職人は食べていくことができなくなります。これは現場の職人だけではなく、仕入れている材木屋や畳業者や襖業者などの大手ではない建材業者にも同じ事が言えます。
だから、事業用地がある以上、作るしかないということもありました。
その証拠に平成9年の住宅着工戸数は134.1万戸と前年の163万戸から17.7%も減ったのですが、分譲住宅(分譲マンションと戸建て分譲)の着工戸数は35万戸と僅かに0.1万戸(前年比0.4%)の減で済みました。しかし、これは着工戸数であり、販売戸数ではありません。
作っても全く、売れなかったという記憶があります。在庫だけが増えていき、結局、建築コストを下げるどころか、赤字覚悟で値下げをして販売をするのですが、需要の先食いをしてしまっていること、消費者の購入意欲の減退から、価格を下げても売れなくなりました。
平成9年の下期になると楽観視していた役員や社員も状況を把握しだし、事業用地の購入を絞り始めました。価格が特別に安い土地だけを購入するようになっていきます。
私はこの頃、まだ社会にデビューして数年目でしたが、商品開発部門にいました。マーケティングデータや統計データの解析をしていたので、この頃のことを良く覚えていますが、私と同世代の同じ業界の人でも、何故、分譲マンションや戸建て分譲が売れなくなったかをしっかりと認識している人は極僅かです。
当時、この消費税増税による影響の反動で分譲マンションや戸建て分譲の売上が大きく下がったということをちゃんと認識していた当時の管理職社員や役員の方は、既に50代後半~70歳代ぐらいのはずです。
この業界の人でも消費税増税の反動を認識している人の半数以上が現役を退いているということになります。
今回の消費税増税も大きな反動が出ることは必至です。
実際に消費税増税の駆込み需要も起こっていますが、さらに金利が上昇局面に入っていることもあり、金利が安いうちに住宅を買おうという需要も重なっています。
政府はその反動を抑えるために住宅取得時の減税などを考えているようですが、需要の先食いをしてしまうと、需要そのものが少なくなるので需給バランスが崩れます。
これはエコポイント終了のときの家電でも同じ現象があったのは記憶に新しいところです。
エコポイント終了にともない、家電の売れ行きは一気に悪くなりました。家電量販店は必至の値引き競争をして、実際にはエコポイント期間よりも安く家電を買えたのですが、各家電量販店の売上は一気に悪くなりました。当然、無理な値引きもしたので利益も減ります。さらに家電各メーカーにも仕入れ値を押える要請をしますから、家電メーカーも利益が出なくなります。
家電量販店が仕入れ値を押えたのと同じように、土地価格の下落が起こります。
今の土地価格が維持、微増は、あと1年と予想されます。
不動産を売却するなら今です。
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不動産売却の時期 消費税増税前の駆込み需要
平成7年、もう18年も前のことですが、その年は随分と暗い年でした。1月に阪神大震災があり、さらに3月に地下鉄サリン事件、また政治基盤も村山内閣という連合政権で不安定でした。バブル崩壊後、弱っていた日本経済にとって、さらに追い討ちを掛けた年でした。
平成8年になると、村山政権で内定発表されていた消費税増税(3%から5%へ)に対する駆込み需要が始まります。
住宅需要も平成7年は景気の落込みなどで、平成6年の156.1万戸から148.5万戸まで減りましたが、平成8年になると、特に所得が増えている訳でもないのに、163万戸と前年比9.8%増と一気に増えました。
こと分譲住宅(分譲マンション・戸建て分譲)だけに限ってみると平成6年は37.8万戸から平成7年には34.5万戸まで減りましたが、平成8年には35.2万戸に増えました。
住宅全体が9.8%だったのに対し、分譲住宅は34.5万戸から35.2万戸だと、僅かに2%の上昇でしかありません。
よく覚えていますが、この年は「造れば売れる」というような状態で、どの現場でも抽選会が行われていました。抽選会が行われるということは、それだけ需要に対して供給不足だった状態だったのです。
販売部門の責任者が
「撃てば当たる。売って、売って、売りまくれ!」
と販売担当に発破を掛けていました。
実際に販売の営業は軒並みボーナスが上昇し、生産部門もその恩恵に与りました。しかし、会社の中で厳しい眼差しで見られていたのが、用地買取部門です。
「造れば売れる」という状態ですから、土地さえあれば、もっと造ったのですが、あまり土地が買えなかったのです。
その頃の地価はバブル崩壊後下落の一途で、土地所有者がなかなか土地を手放さなかったという経緯がありました。実際に事業用地は、個人から買取ったものは少なく、バブル崩壊で社宅、工場、倉庫などの法人が手放したものが殆どで、個人から買取ったものは相続で手放された僅かな土地だけでした。
「それだけ、需要があるのだから、土地を高く買っても売れるだろう。」
と思う地主が多かったのと、バブル崩壊直前まで信じられていた、
「土地の値段は下がることがない」
という不動産神話も手伝い、再び地価が反転上昇すると思っていた地主が多かったこともあります。
しかし、分譲住宅会社は多少利益を削って、高く土地を買取ることはありましたが、販売価格を上げることはありませんでした。何故なら、分譲住宅を買う方が値上げについて来られなかったのが原因です。買う人たちは、多少高くても買いたいのが本音だったのですが、金融機関がバブル時のような無理な融資をしなかったのです。
分譲住宅を買う人の殆どが、なんらかの住宅ローンを使います。住宅ローンを使わない人は、2割に満たないのです。ですから、販売価格を上げられず、必然的に土地の買う値段も利益を削れる範囲の中でしかあげることができませんでした。
その後、消費税増税は実際に行われることになります。
それは、村山政権という不安定な政権から、自民党公明党だけによる橋本政権という強力な政権誕生によるものでした。
この部分だけを見ると、平成25年現在とかなり似ていました。
土地の値段が反転上昇するのは10年後のことで、上昇と言っても僅かな期間であり、この時の消費税増税前の地価に戻ることはありませんでした。
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まずは、電話催促の方法です。
第1話で書きましたが、「支払日を忘れていた。」、「家賃支払日に急病などで入院してしまった。」というのも、退院後にちゃんと支払える場合は除きます。
1.家賃滞納から、1週間~2週間で借家人に電話を入れて催促をする。
1週間~2週間と書きましたが、できれば1週間で電話を掛けるのが良いでしょう。これは前回も書きましたが、家賃滞納の原因が事故だった場合に被害を最小限に食い止めるためです。
ここで、書いている事故とは、借家人が交通事故にあったとか、貸室の外であった事故のことではありません。書きにくいのですが・・・
・自殺
・他殺
・病死などの孤独死
などの死亡している場合です。私は、自分が関わった物件で全てに遭遇したことがあります。亡くなった方には気の毒な話しを書きます。病死などの自然死の場合は事故物件にはなりませんが、自殺や他殺の場合は、その物件自体が事故物件として取り扱われることになります。
起こってしまったことは、取り返しがつかないので、被害を最小限に食い止めることが肝心です。遺体の損傷が激しくなってくると、清掃も大変ですし、同じ物件の居住者まで退去してしまいます。
このため、如何に早く発見するかが大事なのですが、だからと言って、1週間で電話連絡がつかないからと言って、鍵をいきなり開けて貸室に入るわけにもいきません。
電話で連絡が取れた場合も、いきなり怒ってはダメです。常習的に滞納をしている人の場合でも怒ってはダメです。常習的に滞納している人への対応は次回以降に書きますが、紙面を持って対応します。
まずは
「家賃の振込み(支払い)をお忘れではないですか?」
と丁寧に聞きます。そして、いつまでに支払ってくれるかの確認をとります。
携帯電話にかける場合には
「家賃のお支払いがまだのようですが、今、お時間よろしいですか?」
と聞きます。ここで、相手が
「今は都合が悪い・・・」
という旨のことを言われた場合には、いつまでに折り返し電話をくれるように伝えます。相手が仕事で打合せ中などの場合、家賃滞納の話は他人には聞かれたくないですし、強引にその話をすると信頼関係を損ねたり、営業妨害になったりする場合もあります。
この時に支払期日が1週間以上、待ってほしいという場合には、「念書」を取ります。
念書の雛形はこちらから無料ダウンロードできます。
念書の取り方ですが、出来れば、ちゃんと会って念書に、署名捺印をしてもらいます。この時のポイントは、念書を書いた日の日付といつまでに、支払うのかの日付を必ず記入します。
そして、捺印ですが、絶対に実印を使ってもらい、印鑑証明も貰います。また、連帯保証人にも、署名捺印を貰います。こちらも実印と印鑑証明を貰います。
どうしても会って念書に署名捺印が貰えない場合、例えば、家主が賃貸物件から離れた場所に住んでいる場合などの家主側の問題で会えない場合、借家人が仕事などで、どうしても会いに来られない場合などは、無理せずに、簡易書留に念書と送付状、それに返信用封筒(簡易書留にして切手も貼っておきます。)を入れて送ります。送付状には、本人の署名捺印、連帯保証人の署名捺印、各々の印鑑証明を添付して送り返す旨を書きます。
ここまでやると、念書を作る前に大体の人は支払ってくれるのが普通です。
というのは、連帯保証人に家賃滞納がばれたりするのは、結構恥ずかしいものです。それに、印鑑証明を用意したりするのも面倒です。そして、何よりも、念書出すこと自体がプレッシャーになるはずです。
もし、支払い期日が1ヶ月を過ぎる場合は、契約書に家賃滞納の場合の損害利息も合わせて支払う旨を書く覚書にします。
覚書の雛形はこちらから無料ダウンロードできます。
もちろん、連帯保証人の実印、印鑑証明ももらいます。そして「確定日付」を公証人役場で登録します。できれば、公正証書にする方が良いでしょう。この場合は、公証人役場に借家人本人と連帯保証人にも来てもらいます。また、以前の記事(「公正証書の効力 ~立ち退きの場合~」)に書きましたが、公正証書には立退きの効力はありませ。しかし、金銭債権の強制執行権はあります。
そもそも、支払期日が1ヶ月を過ぎる場合というのは、次月の家賃よりもあとに当月の家賃を支払うという矛盾が発生します。
この時点で家賃を滞納している借家人は、相当、経済的に困窮しているはずです。ということは、仮に公正証書を作り、金銭債権の強制執行権を行使したとしても、無いものは回収できません。だからこそ、連帯保証人にも公正証書に署名捺印してもらいます。ここで起こることは・・・
1.連帯保証人が公正証書作成の前に家賃を代納してくれる。
2.公正証書作成前に連帯保証人が借家人に家賃をちゃんと払うように催促してくれる。
3.公正証書作成前に借家人と連帯保証人が話し合い、双方とも支払い能力が無いときには退去の相談をする。
一般的な考え方の人であれば、この3つのパターンになるので公正証書作成前にことが片付くはずです。
もし相手が一般的な考え方を持っていない場合や、余程、困窮している場合は、公正証書の作成に応じてきます。つまり、公正証書を作って金銭債務の強制執行をされた時点で破産する覚悟があるとか、行く場所がないからとりあえず応じているという場合も考えられます。
例外的に将来に支払う見込みがあるケースがあって応じてくる場合もあります。
つまり、公正証書の作成に応じてくるようなケースは、要注意の事態と考えてよいでしょう。心の中で、この借家人の退去準備をしなくてはならない時と考えられます。
その場合には、公正証書に
・ 期日までに支払えなかった場合は賃貸借契約の解除に応じる。
・ 合意解約の和解調書に応じる。
などの文言を付け加えます。もちろん、公正証書でこの文言に対する強制執行権はありませんが、裁判になった場合は、ほぼ確定的な証拠になります。
この覚書を案文として、公証人役場に持って行くと、公証人が公正証書を作ってくれます。案文は、公証人役場にもよりますが、事前に持っていくかFAXで送ります。
次回は電話連絡がつかなかった場合を書きます。
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前回は、電話で連絡がついた場合の対応を書きましたが、電話で連絡がつかない場合にどのように対応するかを書きます。
2.電話で連絡が付かなかった場合は、すぐに督促状を出す。(この場合は内容証明の必要はなし。普通郵便でも良いですが、簡易書留の方が良い。)
督促状については、こちらから無料ダウンロードできます。
まず、注意しなければならないのは、電話で連絡がつかないからと言って、相手に家賃を支払う意思がないとは限りません。
・単純に支払うことを忘れていた。
・月末から海外旅行や里帰りに行ってしまった。(ゴールデンウィークや年末年始が多いです。)
・急病、事故などで入院してしまった。
どのような事態であれ、借家人は家賃を支払う義務を免除されることは無いのですが、なにもこの程度のことで、あまり怒る必要はありません。
それよりも、この時点で
「内容証明郵便を出す。」(下記どおり、N.Gです。)
と言う不動産屋や弁護士などがいます。内容証明郵便の趣旨を知っている人からすれば、内容証明郵便とは、『単なるお手紙』です。しかし、普通は内容証明郵便で手紙を受け取ったことの無い人がほとんどです。ですから、内容証明郵便によって、賃借人との信頼関係が崩れる可能性があります。(詳しくは、「【立退き】内容証明」をお読み下さい。)
では、何故、普通郵便でなく、簡易書留で出すかです。これは、相手が受け取ったかどうかを確認するためです。相手が受け取ったかどうかを確認するのにはいくつかの理由があります。
督促状を出す場合には、封筒に『督促状在中』と赤字で書きます。これにより、開封しなくても中身が督促状であるということが借家人は解かるからです。
1.相手が受け取らなかった場合
受け取らない場合も2種類があります。「不在」と「受取拒否」です。簡易書留と内容証明で不在や受取拒否について、「到達したものとみる」か、否かの議論がありますが、今回は主旨からずれるのでその件については省略します。
「不在」の場合も二つのケースが考えられます。書留の場合、「不在通知」が入ります。それを見て反応しない場合と、それ自体を見ていない場合です。いずれにしても、「不在」扱いになりますが、この場合は、借家人に急いで連絡をつけなければなりません。前回も書いたとおり、事故の可能性を考えなければならないからです。そこで第1話で書いた3の手順に進みます。
「受取拒否」の場合は、賃貸人や管理会社からの郵便が家賃督促だと解っていて受け取らなかったと考えて良いでしょう。受取拒否ということは、事故の心配はありません。受取拒否の場合は、相手が家賃を支払う意思が極めて薄いか無いものと受け取って構いませんから、第1話で書いた3~5までの手順を飛ばして、一気に借家人と連帯保証人の双方に内容証明を送ります。
ただし、内容証明を出すということは、それに応じなかった時に訴訟しか手段がなくなるので、この時点で、まずはプロに相談することをお勧めします。
※訴訟になった場合の費用等については「家賃滞納対策 内容証明の出し方 【立退き】」に書いていますので、こちらをお読み下さい。
2.相手が受け取った場合
通常は、ここで連絡があるはずです。そこで、家賃をいつまでに払ってくれるかを確認します。もし、支払いまでに1週間以上かかる場合には、第3話の念書を、1ヶ月以上かかる場合には第3話の覚書を作成します。(「念書」と「覚書」の雛形は「家賃滞納 借家人への念書・覚書 雛形 無料ダウンロード」の最下部から無料ダウンロードできます。)
もし、ここで連絡がない場合は、簡易書留そのものを開封していない可能性もあるので、第1話で書いた3の手順に進みます。
ここで考えておかなければならないのは、滞納家賃の回収だけではありません。
「受取拒否」や「受け取ったのに連絡がない」場合は、この借家人に退去してもらうことを考えておかなければなりません。
希なケースですが、督促状を出すと、弁護士名で「受任通知」が送られてくる場合があります、これは、相手が家賃だけではなく、他の債務もあって、支払い不能に陥って、弁護士を通じて債務整理に入ったということです。この場合の対処は後述しますが、「受任通知」を受け取ったあとは、絶対に借家人に対して、督促状を送ったり、督促の電話を掛けたりしてはいけません。(このケースは、殆どが、数ヶ月の家賃滞納をしているか、家賃滞納を繰り返している場合です。)
次回は、督促状に反応がなかった場合の勤務先への連絡方法を書きます。
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