既存不適格と違法建築 旧耐震ビルの利用検討

カテゴリ:ブログ / 不動産投資
連載シリーズ 【 既存不適格と違法建築 旧耐震ビルの利用検討 】 第 9 話 / (全 18 話)

前回は一般的な戸建て住宅の事例を書きました。

今回は増築ではない、悪質な違法建築の例です。

おそらく、私が遭遇したもっとも悪質な事例です。

私が収益不動産を取り扱うようになって、3年が過ぎた、平成18年の春頃でした。その頃になると、都心の不動産価格はかなり、高騰をし始めていました。何の問題もない更地を都心の一等地で買うことが、相当に難しくなってきていました。

その頃、ある物件情報が飛び込んできました。

物件概要は・・・

その頃、ある物件情報が飛び込んできました。

物件概要は・・・

住所:〇〇区△△町1-1

地番:〇〇区△△町一丁目200番1

最寄り駅:JR××線□□駅 徒歩3分

       東京メトロ▲▲線□□駅 徒歩3分

土地面積:630㎡(190.57坪)

容積率:600%

用途地域:商業地域

専有面積:2550㎡(771.37坪)

建物概要:鉄筋コンクリート造地上6階 昭和52年築 検査済なし

家賃収入:300万円/月(現状)

価格:15億8000万円

※場所はビルが特定できてしまうので伏せます。丁目、番地はいずれも架空です。〇〇区は東京23区の主要5区のどこかです。

という内容でした。

昭和52年築ですから、築29年のオフィスビルです。

しかも、テナントが2フロアしか入っていないし、検査済が無いわけですから、15億8000万円と聞くと物凄く高く感じるかもしれません。

仮に、1、2階と同じ家賃で3~6階を埋めたとすると900万円/月の家賃収入ですから、年間収入が1億800万円です。表面利回りで6.83%ということになります。

やはり、築年数や検査済がないということを考えるとリスクが大きい物件です。

しかし、私はこの物件に飛びつきました。

その頃のこの物件の周辺の土地の相場はすでに1500万円/坪前後になっていました。この物件、土地の単価に換算すると、

15億8000万円÷190.57坪=829万円/坪です。

相場の半値とは行かないまでも、6割以下です。

1、2階のテナントは定期借家契約で残存期間が1年ですから、確実に1年で退去させることが出来ます。

建物の解体費を高く見積もって10万円/坪としても、8000万円弱です。解体期間を約3ヶ月とすると、1年3ヵ月後には、16億6000万円(約873万円/坪)でこの土地を更地で手に入れることが出来ます。

ここで、容積率制限最大の建物を作れば1140坪の建物ができる筈です。当然、共有部分などもありますが、それでも専有面積は1000坪を超えると考えられます。

1140坪のオフィスを作るのに当時は、9億円程度で出来ました。

そして、この近辺の新築オフィスの家賃は27000円/坪程度でした。

収入

1000坪×27000円/坪×12ヶ月=3億2400万円/年

支出

15億8000万円(物件代金)+8000万円(解体費)+9億円(建築費)+1億円6000万円(諸経費)=27億2000万円

表面利回り11.91%です。

この頃、新築で違法性がなく、フル稼働している都心のオフィスビルならば、確実に表面利回り6.5%程度で売却できます。

想定売却価格は

3億2400万円÷6.5%=約49億8000万円

ということで、建築期間を1年としても2年半後には、22億6000万円の儲けになります。

『ここまでの利益が出るならば、現在いるテナントに5400万円程度(家賃の1年半分)の立退き料を払って、早く退去してもらって、事業期間を短くする方がいいかな・・・』

などと頭の中で描いていました。

ここまでの、計算を5分程度で終わらせて私は、すぐに物件を見に行くことにしました。当然ですが、この程度のことは、別のデベロッパーでも瞬間的に判断していると考えられるからです。先を越されまいと急ぎました。

ここまで読んだ方は、この建物の検査済がない、つまり完了検査を受けていないことが違法建築かと考えると思います。もちろん、この建物が完了検査を受けていないことは違法です。

しかし、私はこの建物を壊してしまう予定なので、この際、この建物が違法であることは、あまり大きな問題ではなかったのです。

ここから、もっと大きな違法建築の事件に発展して行きます。

次回は、私が現場を見に行ったところから書きます。

・既存建物を買うときに違法建築物かどうかを判断するのは、なかなか難しいものです。ですから、既存建物を買う前に是非、リデベにご相談ください。

・違法建築物を既に買ってしまって、お困りの方もリデベにご相談ください。(場合によっては、違法建築を解消できます。)

・既存不適格建物に関して、不安をお持ちの方もリデベにご相談ください。

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既存不適格と違法建築 品確法と中間検査

カテゴリ:ブログ / 不動産投資
連載シリーズ 【 既存不適格と違法建築 品確法と中間検査 】 第 8 話 / (全 18 話)

前回までは、マンションや商業ビルでの違法建築について、書きましたが、今回は一般の住宅についての違法建築について書きたいと思います。

本来は、カテゴリーにもあるように不動産投資を目的とした人向けに記事を書いていますが、住宅を購入しようと思う方も違法建築を気にしていると思うので少しだけ触れておきます。

最近の一般的な戸建て住宅は違法建築が非常に少なくなったと感じています。

「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(平成11年6月制定)が施行されてから、施工業者の瑕疵担保保険への加入が義務となりました。

それまでは、一般的な戸建て住宅というのは、確認申請を出した後、検査を受けるのは完了検査だけです。つまり、壁の中がどうなっているかなどのチェックは一切ありません。

これは、工事監理者(建築士)に任されていたのです。

まだ、設計を行った建築士と施工会社が別々の場合は、建築士が工事監理をちゃんとやっていれば、上棟が終わった時点(建物の構造が組みあがった時)にチェックを行ったりすれば、ある程度のチェックは出来ました。

しかし、設計施工を一括で依頼した場合などは、チェックをするのも、その施工業者に属する施工会社の社員の建築士ですから、故意に違法をやろうと思えば、自由にできてしまったのです。

例えば、本来であれば、柱と梁を結合する部分に金物で補強しなければならない部分に、金物を使っていない、本来であれば基礎部分の配筋(鉄筋)が入っていないなどが良くあった事例です。その他にも必要な地耐力が無かったなどという事例もあります。

しかし、施工業者の瑕疵担保保険加入が義務となると、瑕疵担保保険を請負う保険会社の検査というものが発生します。

この検査と言うのが、地耐力検査データの提出、基礎の配筋が終わった段階での現場検査、上棟が終わった段階での現場検査が加わったことにより、この部分で違法を行うこと自体が非常にリスクのあることになるので、この手の違法行為は非常に減りました。

当然、この法律が施行される前の中古物件の違法性を検査するのは、建築士をもってしても至難の技です。私も依頼されて検査したことがあるのですが、一度建ってしまった建物の壁体内構造や基礎の配筋までは、非破壊検査でもしない限り解りません。しかし、依頼主がそこまで、お金を掛けることはしませんので、当然ですが解らないということになります。

しかし、このような事例というのは施工会社が故意に行わないと発生しない違法建築ですが、そうでない違法建築というのがあります。

やはり、増築というケースが殆どです。

本来ならば、その部分は吹抜けだったはずなのに、その部分に部屋が出来ていると言うケースがありました。

準防火地域や防火地域において、10㎡未満の増築というのは確認申請を必要としません。だからと言って、容積率をオーバーしてよいと言うものではありません。

例えば、容積率が80%の場所で、敷地が100㎡に、延べ床面積が78㎡という建物があったとします。しかし、吹抜け部分が8㎡あったとします。そこを部屋にすると86㎡になってしまいます。この時点で容積率オーバーで違法建築物になってしまいます。

では、違法建築だと、どんな問題が発生するかということが重要になってきます。

実は、この程度の違法建築で行政に建物の使用禁止命令や是正命令が出ることはありません。ですから、個人が通常使用する分には、あまり影響がないように感じます。

※ だからと言って、やって良いということではありません。

それ以上の問題は違法建築が発覚した場合に、住宅ローンなどが使えない場合が発生します。

理由は簡単です。住宅ローンを組むということは、その金融機関がその不動産(土地、建物)を担保にしているのです。ところが、違法性の発覚している建物ですから、担保価値が認められなければ住宅ローンが組めなくなるということです。

つまり、部屋の数が増えて資産価値が上がっていると軽い気持ちで増築したのに、住宅ローンが使えない住宅になってしまった時点で売却が難しくなるというケースが考えられます。

次回は、もっと悪質と言うか巧妙な違法事例を書いていきます。

・既存建物を買うときに違法建築物かどうかを判断するのは、なかなか難しいものです。ですから、既存建物を買う前に是非、リデベにご相談ください。

・違法建築物を既に買ってしまって、お困りの方もリデベにご相談ください。(場合によっては、違法建築を解消できます。)

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既存不適格と違法建築 用途変更と構造偽装

カテゴリ:ブログ / 不動産投資
連載シリーズ 【 既存不適格と違法建築 用途変更と構造偽装 】 第 7 話 / (全 18 話)

前回までに、違法増築と完了検査前の使用による、違法建築を書きましたが、なぜ、この違法建築が多いかと言うことを整理すると・・・

・少しでも、床面積を大きくすることで、収益性の高い建物にしたい。

・少しでも早く貸すことで、早く収益を上げたい。

いずれも、金銭が関わることです。

以前、ビジネスホテルをチェーン店展開する会社が、違法増築で摘発されニュースになったことがありました。

1階の駐車場部分を部屋にして、少しでも売上を増やそうとした結果でした。

このホテル運営会社は摘発されましたが、私の知る限りでは、氷山の一角でしかありません。

ここまでに挙げた事例はいずれも、収益性を高めるための違法建築ですが、中にはイニシャルコスト、つまり建築費を下げる為に行われる違法建築もあります。

その典型的な事例が、姉歯元建築士による構造計算の偽装でした。

少しでも、使用する鉄筋を減らしたり、柱や梁を細くして、コンクリートの使用料を減らしたりと言うことで世間を騒がせました。

しかし、あれだけ世間を騒がせた事件でさえ、実は氷山の一角なのです。

姉歯元建築士は、そもそも、どうして構造計算の偽装などという大それたことをしたのかと言うと・・・

そういう世界で育ったからです。

姉歯元建築士は、某ゼネコンの社員だった時代があります。そこで、構造偽装を覚えたのです。

しかし、そのゼネコンだけが、構造偽装をやっていたかと言うと、実は多くのゼネコンが多かれ少なかれ似たようなことをやっていた時代がありました。

最近では、検査も厳しくなったので、これをやっているのを見なくなったのですが・・・

コンクリートというのは、生コン工場でセメントと骨材と水を混ぜて、コンクリートミキサー車で現場に運んできます。

多くの人が勘違いしていることですが、コンクリートというのは、紙粘土のように乾燥して固まるものではありません。

コンクリートというのは、水を加えることで化学結合をさせて固めます。そこで、水を多く混ぜるとセメントの量が少なくても、それなりのコンクリートが確保できます。当然ですが、強度は弱くなります。

これを利用して建築コストを下げる為に、現場監督が、下請け業者に水を混ぜるように指示します。この指示の仕方に野球のコーチがサインを出すように、ある仕草が決まっています。

手でコップの水を飲むような仕草をするのです。

そうすると、下請け業者がコンクリートに水を入れます。

これは建築主が儲かるというよりもゼネコンが儲かるだけの話です。

しかし、一度、水を多く入れられたコンクリートが固まってしまうと、外見だけではその偽装はわかりません。その場合はテストピースと言って、固まったコンクリートを部分的に採取して、強度試験をしなければ解りません。

最近の建物では、このテストピースの強度試験の結果が明示されている建物もありますが、この結果が残っている建物は、築10年以内の建物が殆どで、地区10年以内の建物であっても、テストピースによる強度試験を行ってない建物も多々あります。

次回は、一般的な戸建て住宅の違法建築の事例を書きます。

・既存建物を買うときに違法建築物かどうかを判断するのは、なかなか難しいものです。ですから、既存建物を買う前に是非、リデベにご相談ください。

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既存不適格と違法建築 完了検査の未受領

カテゴリ:ブログ / 不動産投資
連載シリーズ 【 既存不適格と違法建築 完了検査の未受領 】 第 6 話 / (全 18 話)

前回の事例で違法増築の事例を書きましたが、違法建築の殆どが違法増築です。

もっとも、これより、もっと多いのが完了検査そのものを受けていないというケースです。特に平成初期までの建物には完了検査を受けていない建物が異常に多いのが実態です。

これは建築主、建築士や施工会社の問題というよりも、行政機関が甘かったことによることに起因している部分が大きいと感じています。

完了検査済証の有無を確認するのは簡単です。売主がよくする言い訳が、

「完了検査を受けて合格しているが完了検査済証を無くしてしまった。」

というパターンです。手抜きの仲介業者だと、売主のその言葉を信じて、「検済あり」などと物件概要書に書いてきます。

しかし、その仲介業者に完了検査済書の複写を求めると、

「売主が無くしてしまったそうで・・・Confused

と、たどたどしい言葉が帰ってきます。

この時点で概ね完了検査を受けてないなと思うのですが一応、関単に裏が取れるので確認します。ただ、本当に完了検査済証を無くしている所有者もいます。

特に、それが個人の場合で、土地を相続してアパートやマンションを建てた・・・という、不動産投資の専門家では無い人の場合、本当に無くしてしまっていたりします。実際に私の知っている限りでも、そういう方が多数います。

では、どうやって完了検査を受けているか、また、完了検査に合格しているかを調べるかと言うと・・・

その建物を所管する行政の建築指導課に行けばいいだけです。例えば、その建物が東京都千代田区にあるならば千代田区役所の建築指導課に行きます。そして、物件の住所を言って、そこにある建物が完了検査を受けているかどうかの確認をとります。

行政機関にもよりますが完了検査を受けている場合は300円~500円で証明書も発行してくれます。

では、完了検査を受けていない建物が建築技術的に全て違法かというと、そうでもありません。

※技術的に建築基準法に違反していなくても、完了検査を受けていない時点で違法です。技術的に建築基準法に違反していなくても、

完了検査を受けていない最大の理由は、完了検査を受ける前に、その建物を使用してしまっているケースです。

建物というのは当然ですが下にある階から作っていきます。例えば10階建の建物で10階部分までの外装工事が終わってしまえば、まだ上層階の内装工事が終わっていなくても足場を外すことは可能です。そして、その時には既に1階は出来上がっているというケースが殆どです。

そうすると、1階を早く貸して、賃料収入を得たいと思って、上層階の内装工事が終わっていないうちに、1階を使用しはじめてしまったりするのです。

完了検査を受ける前にその建物を使用してしまうと、完了検査を受けることが出来なくなります。この時点で、技術的には何ら問題の無い建物でも、完了検査を受けられない故に建築基準法違反ということになるのです、

因みに完了検査未了の建物は建築基準法第7条に定められていて、その建物は使用してはいけないことになっていますので、技術的なことを満たしていても違法建築ということになります。

例えば、マンションで1,2階が出来ているが、上層階が出来ていない建物で、2階部分をモデルルームに使うというのも立派な建築基準法違反ということになります。もっともこのケースの場合は「検査機関に発覚すれば」という条件がつきます。まず、一定の大きさの建物の検査というのは、基礎の配筋が終わったときと、建物が完成したとき、あとは行政機関によって違いますが1階の配筋が終わったときを検査します。つまり、1階の配筋が終わった後、建物が完成するまでは検査機関は原則としてチェックしにきませんから、モデルで使用していた痕跡が残っていなければ、「発覚しない」ということになります。ただし、このケースの場合、発覚すると建築主はもとより、施工会社もそれなりのペナルティを受けますので注意が必要です。

上記の2件のケースもいずれも私が見たことのあるケースです。

次回からは、もう少し、悪質な違法建築の事例について書きます。

・既存建物を買うときに違法建築物かどうかを判断するのは、なかなか難しいものです。ですから、既存建物を買う前に是非、リデベにご相談ください。

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既存不適格と違法建築 違法建築のチェック

カテゴリ:ブログ / 不動産投資
連載シリーズ 【 既存不適格と違法建築 違法建築のチェック 】 第 5 話 / (全 18 話)

さて、第3章、第4章で私が収益不動産に関わった経緯を書いてきました。

今回は、私が収益不動産に関わった経緯と、その不動産が違法状態に陥り、その後の経過を書きます。

社内で相談できる人は皆無で、私はその物件を紹介してくれた仲介業者に出向き、状況を説明しました。すると、その仲介業者は

「あれ、これ完全な違法物件だね。気がつかなかった、ゴメンね。じゃあ、ゼロ契で停止条件に違法建築が認められた場合は白紙解除って入れよう。Pray

と提案してくれました。

(※ゼロ契:契約時の手付金を支払わないこと。手付金を支払った場合、契約解除になると手付金は支払い側に戻すことが前提だが、一度、相手に渡った金銭を戻せる保証は無いため、リスクが大きい場合には手付金を支払わない契約のこと)

そのまま、停止条件に「違法建築が認められた場合には白紙解除」を特記事項に入れて契約をして、白紙解除で事なきを得ました。

この物件が白紙解除になった時には、既に私は4物件目の購入に差し掛かっていて、1件の白紙解除によって失った会社に対する利益を取り返す案件を複数持っていたので余裕もありました。

私はこの事態に陥ったことで、この物件がどうして違法建築に至ったかを調べずにはいられませんでした。勿論、調べたところで、会社の利益にはなりません。ただ、同じ徹を踏まないためということもありましたが探究心もあったと思います。

まずは、現所有者(私に対する売主)も、違法建築物だということを知らなかったことが解りました。現所有者も収益不動産として購入していました。

問題は登記情報です。建物謄本も4階建となっており、登記されている建築図面も4階の図面がしっかりとあります。最初の建築主がどのように4階で登記したかまでは正確には辿れませんでしたが、ある程度のことは解りました。

まず、確認申請図通りに3階建てで建てます。しかし、最初から4階建てにすることを意識して設計された建物です。そして3階まで出来上がった時点で完了検査を受けて合格します。完了検査済証発行後、もしくは完了検査終了直後に4階部分を増築します。最初から4階建てにすることを前提として設計されているので、違和感なく増築できるわけです。ですから、私が感じた違和感は、「なぜエレベーターが無いんだろう?」に、留まってしまい、意匠的違和感を得ることができないことに至ります。例えば、屋上に無理やり、小屋を建てれば意匠的不具合が発生するのですぐに気がつきますが、もともと違法増築を計画的に考えていると外見的判断では難しくなります。

完了検査後、4階部分が出来た時点で建物の登記を行います。建物の登記をする場合に完了検査済証の有無を法務局に提出する必要性は無く、家屋調査士が現存する建物の情報を法務局に報告して、家屋調査士が作った図面で登記することが可能です。

つまり、私が持っていた建築図面は、違法建築後の家屋調査士が作った図面です。また、法務局はその建物が完了検査済証を確認して違法性の有無を確認しないで、現存状況を登記するため、登記情報は建築の違法性を確認する手段には全くなりません。

しかも、この建物の竣工図を仲介業者が入手してくれたのですが、その竣工図がなんと、現状の4階建ての建物になっていました。しかも、完了検査済証に記載されている一級建築士事務所と施工会社の名前で竣工図が作成されています。つまり、この建物は建築主、一級建築士事務所、施工会社が違法であることを承知で4階建にしてしまったものだと言う事がわかりました。

このケースは、時間が無かったという言い訳をしても明らかに、私のケアレスミスです。

完了検査済証で『3階建』となっている建物なのにそれを見落とすというのは、あまりに酷いミスでした。しかし、このミスが発生した理由は何かを整理してみると、

1.登記簿、建物図面等の登記情報が4階建になっていた。

2.エレベーターが無いものの、不自然な形でなく4階建になっていた。

3.竣工図と確認申請図の双方を比較しなかった。もしくは確認申請図の有無を確認しなかった。

4.完了検査済証のチェックを怠った。

つまり、登記簿情報や竣工図というのは違法建築の確認には全くならないということです。よって、いかに正確な知識で物事を判断できるかということが大事かということになります。

この様に簡単なケースは、大した建築の知識が無くても、注意していれば、見抜くことができますが、もっと、専門的な知識が無いと見抜けないケースもあります。そのような場合は、やはり、一級建築士などの建築の専門家に依頼して、見てもらうことが大切です。

あっ、この時点で私も一級建築士だったので、お恥ずかしい限りです。(^^;)

この建物は、私はこの時点で買うことはなかったのですが、数年後のリーマンショック前年に再会することとなります。大手外資系保険会社から、大手外資系投資銀行へのバルク取引の中の建物に入っていたのです。

(※バルク取引:複数の建物をまとめて売買する取引)

大手外資系保険会社は、私が気づかなかったように、違法建築物ではないものと思って、保有してしまっていたのです。私は当時、大手外資系投資銀行側のアレンジャーとして物件調査担当でした。大手外資系保険会社のアセットマネージメント会社の担当者は、以前、私が見た資料と同じ資料を持って、その合法性を説明しましたが、当然ですが私に一蹴されます。

結果的には、大手外資系保険会社がその美容歯科医院に立退き料を支払った上で、4階部分を撤去して、確認申請時の状況に戻すという大工事を行いました。

この物件の単体取引では、ありえない工事費が掛かりましたが、300億円級(物件数で13棟)の同時取引でしたから、成立した工事でした。

このケースは極めて巧妙に3階建を4階建にしているケースですが、もっと乱暴に屋上にプレハブを増築している建物は沢山あります。

3~4階建ての商業ビルや雑居ビルが立ち並ぶ街で、ちょっと建物の屋上部分を見てみると、明らかに不自然な最上階がある建物を見つけることができます。時々、屋上を見てみると面白いかもしれません。

次章からは『完了検査』を受けているのに、『違法建築』という事例をもう少し紹介していきます。

・既存建物を買うときに違法建築物かどうかを判断するのは、なかなか難しいものです。ですから、既存建物を買う前に是非、リデベにご相談ください。

・違法建築物を既に買ってしまって、お困りの方もリデベにご相談ください。(場合によっては、違法建築を解消できます。)

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既存不適格と違法建築 検済と謄本の記載内容の違い

カテゴリ:ブログ / 不動産投資
連載シリーズ 【 既存不適格と違法建築 検済と謄本の記載内容の違い 】 第 4 話 / (全 18 話)

さて、前回の続きです。

この物件を買うのに一つだけ慌てる理由がありました。

前述の通り、ライバルが少なかったので、外部に対して慌てる必要性は無かったのですが、問題は社内でした。

ハウスメーカーであり、収益不動産を始めて2年目の会社です。社長を筆頭に収益不動産に対する認識はほぼ皆無ですし、まだ、大きな利益を上げている部署でもありません。

これまで戸建て分譲用地の取得で数万円/坪~100万円/坪前後の不動産しか取得してこなかった会社ですから、土地だけで数百万/坪などという不動産を扱ってこなかった会社の役員を説得するのは容易ではありませんでした。

そこで、収支計画で

「これだけ儲かる!Big Smile

という資料は、もちろんのこと、諸々の資料や物件の写真を揃えたプレゼン資料を作ります。そして、それを役員が全員集まる取締役会で説明しないと物件が買えないという状況でした。ところが、その取締役会が隔週木曜日と決まっています。その日は、その取締役会のある火曜日でした。いくら、のんびりできると言っても、次の取締役会となると物件の有無は保証できません。

そこで、まず資料を揃えます。もともと、しっかりした仲介業者なのである程度の資料は揃っていたのですが、次に上げるものを明日までに用意してくれと仲介業者に頼みました。

・ 建物図面

・ 完了検査済証の二面~四面(つまり、完了検査済証の全て)

・ 境界確認書

・ 越境物に関する覚書(この物件の隣地から越境している物があった場合、建直す際には越境しないという取り交わし)

そして、売主に対して、次のことを確認してほしいことも確認しました。

・ 土壌汚染があった場合に契約を白紙解除にすること(既存建築物があるので土壌汚染を除去するのは難しいため、契約を白紙解除にします。)

・ アスベスト、PCB(ポリクロロビフェニルという物質で建物の場合、変圧器などに使用されている場合があります。)が使用されている場合は、売主責任で除去もしくは契約の白紙解除にすること。

この仲介業者は、さすがにしっかりしていました。私がこの程度の要求をしてくることは解っていたのか、水曜日の夕方までには全ての資料と条件が揃いました。

事務員の女性とその資料を10部作る作業で21時までかかりましたが、あとは取締役会で上手く説明できれば終わりと考えて、残業して手伝ってくれた事務員に一杯奢って帰宅しました。

取締役会当日です。

取締役会というと、中堅社員にとっては重いものです。

しかし、私は前の部署が商品開発という仕事をしてきていたので、新商品のプレゼンや特許出願、商標登録などで取締役会は、ほぼ日課という感じでしたし、収益不動産に関しては素人集団の役員ですから、こちら側のプレゼン次第だと考えていて気楽なものでした。

経営企画部長(取締役会の議事進行係)に呼ばれ、役員会議室に入り、前日に作った資料を各役員に配布しました。

まずは物件の収益性の説明です。

収益不動産の価値を適正に判断できる役員ではありませんから、会社としてどれだけ利益が上がるかの説明から入ります。戸建てを1戸の利益の数十棟分を一気に稼げる利益に役員は目の色が変ります。内心、

「釣れたな!Baffle

と思いました。

後は、添付資料を朗読するだけでした。

そして、『完了検査済証』に書かれている内容を読みました。

「・・・・設計:A一級建築士事務所、施工:B建設、建築面積〇〇㎡、1階床面積・・・・3階〇〇㎡!」

そこで、私は言葉が詰まりました。

完了検査済証に4階の床面積どころか、4階が存在しないのです。

建物は4階建てです。建物図面も4階まであり、4階も登記されています。しかも、謄本でも4階建てになっているのに、『完了検査済証』では4階に関する記載がありません。

すぐに脳裏に・・・

「しまった・・・違法増築だ!・・・Confused

と思いました。いくら手馴れた取締役会とは言え、さすがに焦りました。

もう、役員は皮算用で頭がいっぱいです。ここで引き下がることも出来ず、そのまま読み切りました。写真の説明もしましたが、『完了検査済証』と写真の整合性が取れていないことに誰も気がつきません。4階のテナント属性を説明しても誰も気がつきません。

取締役会はそのまま終わり、本物件を買うことにつて全会一致で承認を得ることができてしまいました。取締役会で承認された物件ですから、契約しない訳にもいかない状況に追い込まれました。まさか、こんなケアレスミスを自白する勇気もありませんでした。

またまた、ちょっと長いので

次回も『私が収益物件に関わった経緯』の続きを書きます。

・既存建物を買うときに違法建築物かどうかを判断するのは、なかなか難しいものです。ですから、既存建物を買う前に是非、リデベにご相談ください。

・違法建築物を既に買ってしまって、お困りの方もリデベにご相談ください。(場合によっては、違法建築を解消できます。)

・既存不適格建物に関して、不安をお持ちの方もリデベにご相談ください。

株式会社リデベはプロも御用達の不動産・建築の総合コンサル会社です。
店舗物件、テナント賃貸、投資、空家対策、開発、地上げ等、貴方の問題を解決します。
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既存不適格と違法建築 検済のある建物

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連載シリーズ 【 既存不適格と違法建築 検済のある建物 】 第 3 話 / (全 18 話)

前章では、私がなぜ、収益不動産に関わったかを書きました。

今日は、私が当時、未熟だったが故に慌てた話を書きます。

最初に収益不動産の取得をした頃は、前述の通りで『IRR』の意味は解るし収支計算はできるけど、収益不動産という意味での実務経験はゼロです。

誰でも最初と言うのはあるかもしれませんが、社内では既に中堅的な立場にありますから、『初心者です』という顔もできません。

最初の物件は開発案件で、土地から取得して、建築して収益不動産に仕上げるというものでした。その物件の契約が終わらないうちに二件目の案件が飛び込んできました。この二件目の案件は既にテナントのついている可動物件で渋谷区にある物件でした。

仲介業者からの物件資料を見ると、

築10年、検済あり(「完了検査済証あり」という意味)と書かれています。

添付資料として、公図、謄本、敷地測量図、そして『完了検査済証』の一面(表紙)、テナントリスト等がありました。適当な仲介業者だと、ここまでの資料はこちらから請求しないと出てこないのが普通ですが、この仲介業者は今でもお付き合いがありますが、かなり、しっかりしています。

利回りも悪くなく、将来的には単純転売でも充分に利益が出そうでしたし、そのまま保有して会社で保有するのも悪くない案件だと思いました。

翌日、物件調査に行くことにしました。

リーマンショックの前年辺りは物件概要書が来た次の日には、既に他者から買付証明が入ったということも多々ありました。実際に2007年頃になると午前中に物件概要書がFAXされてきて、1時間で物件調査をするか判断。その頃は1日に10件以上の物件概要書がFAXされてきます。もちろん、全部は見られないので、良さそうな物件を見に行きます。

最初は、部長にこれが良さそうだから、これを見に行くと報告してから出かけていたのですが、もう、そんな悠長なことを言っていられません。事後報告もいいところでした。そして物件調査に行き、仲介業者に他社の動向を確認。

他者から買付が入りそうだと聞けば、会社に電話して、事務の女性にすぐに稟議書を準備させ、部長に状況を電話で話し、部長が稟議書を持ちまわりで役員から承諾を得て、私が会社に戻ったところで買付証明をFAXという慌しさでした。

当時は収益不動産そのものを本格的にいじっている法人が少なかったので、このペースで充分でしたが、問題は私の能力にありました。

物件を見に行くと、綺麗なビルです。私鉄ではありましたが、おしゃれな若い人が沢山いて賑わっている駅から、徒歩3分。1、2階のテナントは、当時、流行り始めていた外資系のアパレルの店舗、3階はそのアパレルの事務所兼バックヤード、4階は、美容歯科医院でした。

お客さんのふりをして、アパレルに入ると、特に違法的な使い方をしているようにも見えません。消防設備もしっかり見えますし、非常灯や誘導灯が隠れていることもありません。

一番の問題はそのアパレルショップに自分がいることで

『店内にいる若い女性のお客さんとは明らかに雰囲気が違うCrying

ことでした。

さすがにテナント内部の写真は撮れません。(今のようなスマホや携帯電話のカメラの精度はなく、物件の写真はデジカメで撮っています。)

そこで、外部から、それも堂々ではなくこっそりと写真を撮りました。その時には稟議書に添付する資料や写真の構成、役員へのプレゼンテーションのことなどを考えていました。

ただ、物件を見たときに少しだけ、違和感を持ちました。

4階建てで小奇麗なビルで、フロア面積もそれなりにあるのに3階が事務所で4階が美容歯科医院なのにエレベーターが無いことでした。つまり、4階まであがるためには階段を昇るしかなかったということです。しかし、

「賃貸面積を少しでも増やしたかったんだろう」

と、考えてしまいました。

ちょっと、長いので続きは明日、また書きます。

・既存建物を買うときに違法建築物かどうかを判断するのは、なかなか難しいものです。ですから、既存建物を買う前に是非、リデベにご相談ください。

・違法建築物を既に買ってしまって、お困りの方もリデベにご相談ください。(場合によっては、違法建築を解消できます。)

・既存不適格建物に関して、不安をお持ちの方もリデベにご相談ください。

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既存不適格と違法建築 収益不動産を扱うまでの経緯

カテゴリ:ブログ / 不動産投資
連載シリーズ 【 既存不適格と違法建築 収益不動産を扱うまでの経緯 】 第 2 話 / (全 18 話)

前記事は、簡単な違法建築の見方を書きましたが、今回は予告どおり、なぜ、私が収益不動産を扱うようになったかを書きます。

私がまだハウスメーカーにいる時のことでした。私は既に一級建築士を取得して7年ほど経っていましたが、ハウスメーカーの技術系部署にいたので実務では、殆どが一戸建てしか経験がありませんでした。それなのに、ある日、突然、収益不動産の部署に異動になりました

まだリーマンショックまで7年ほどあり、収益不動産に手を出す会社としては早かった方でしたが、ハウスメーカーですから、収益不動産に関する専門家はおろか、殆どの社員が木造2階建てもしくは、せいぜい3階建ての戸建てしか経験がありません。収益不動産と言えば、木造2階建てのアパートぐらいです。

そこで、外部からも人を雇ったりもしたのですが、8割以上はプロパーの社員で構成される部署です。その部署が立ち上がった時には収益不動産の収支計算さえ、自分達ではできず、監査法人の子会社に依頼して作ってもらうという有様でした。

その部署が出来て、1年が経ち、私が呼ばれることになりました。私はその当時、商品開発系の仕事をしていて、パテント関連が主要業務でした。

最初は異動の話ではありませんでした。私が異動になる年の3月のことでした。その部署の次長から、メールが来ました。

添付されていたのは、監査法人の子会社が作った収支計画表でした。その次長からのメールは、

「『IRR』の意味は解るんだが、どうゆう根拠で計算されているかが解らないから教えてほしい。」

という内容でした。

私もその当時は『IRR』という言葉は聞いたこともありませんでした。添付されているファイルは、PDFファイルだったので計算根拠も解りません。

そこで、私が

「わかりません。」

と返信していれば、私は今でも、そのハウスメーカーの技術系の部署にいたかもしれません。もっとも、今の妻と子供もいないことになってしまいますが、妻と子供のことを考えなければ、その方が幸せだったかもしれません。

ところが、そのPDFファイルがもともとはExcelで作られていることは、すぐに解りました。解った理由は、セルの配置が如何にも表計算ソフト特有のものであり、当時の表計算ソフトの主流がExcelであったこと、そのPDFファイルの画質、容量、一文字ごとを選択できることから、紙をスキャンしたものではなく、なんらかのソフトから直接、PDF印刷をかけたものだと解ったからです。

そこで、自分のExcelを開いて、F1キー(Excelのヘルプ)を立ち上げ、そこに『IRR』と入力してみました。すると何と『IRR』という関数があります。御丁寧に外部リンクでマイクロソフトのサイトに飛び、『キャッシュ フローについて考える: Excel で NPV (正味現在価値) と IRR (内部利益率) を計算する』という解説付きです。

もっとも専門用語で当時は一部解らないものもありましたが、『IRR』の計算根拠とその意味は1時間もかからずに概ね理解することができました。そして、その計算根拠をその次長にメールすると、次の日には、同じPDFファイルをExcel化して欲しいという依頼が来ました。

しかし、当時の私は、不動産、特に不動産に掛かる税金関係は全然解りませんでしたし、当然、自分の業務だけでも普段から、22時より前に家に帰れることが稀だった状態だったので、

「これをExcel化するのには1ヶ月以上の時間を頂かないとできません。」

とメールをしました。もっとも1ヶ月以上と書けば、さすがに他の人に依頼するなりするだろうと思ったのも事実です。すると、その次長からの返信はありませんでした。私はオリジナルCADソフトの積算連動(CADソフトで書いた図面から、使う資材の数量を自動的に拾い出すこと)の開発などもやっていたこともあり、それまでも、他部署からExcelや他のソフトの使い方について質問のメールが来ることが、度々あったのであまり気にもしていませんでした。

ところが、3月という時期が悪かったのかもしれません。その返信をした翌週の金曜日でした。もうすぐ桜が咲くかなと思っていたので、3月も終わるころだったと記憶しています。自分の部署を管轄する役員から呼び出されました。来期(4月)から、収益不動産の部署に行ってくれという内容でした。私は、気持ち的には、物凄く抵抗感がありました。その会社は異動の際などは割りと社員の意見を聞いてくれるのですが、役員に対してはさして抵抗をしませんでした。私は、

「サラリーマンが異動を拒絶するときは辞表を出すとき」

ぐらいに考えていました。そして、私は収益不動産の部署に行くことになりました。そこで、私の仕事は、その収支計画表を始めとして、最終的には仲介業者からの物件概要書の情報を入力すると建築コスト、固定資産税評価額、平均賃料などを自動的に計算するソフトの開発や、大規模小売店舗立地法に対応した、建築ボリューム、建築コストや駐車場台数の自動計算ソフトの開発などを行うことでした。

しかし、収益不動産が儲かり始めると、開発担当の手が足りなくなりはじめ、すでに一級建築士を持っているというだけで、開発絡みの仕事も手伝うようになり、ほどなくして用地取得や収益不動産の取得、異動した最初の年の終わりごろには立退きまでやらされる始末でした。

しかし、実務を経験しながら開発したソフトは、精度も高く、非常に評判がよく、当時、ある大手の仲介会社から1000万円で使用権を買いたいと言われた程でした。(売りませんでしたが・・・)

その後、大規模小売店舗立地法に対応したソフト開発をしていたように、大型のショッピングモールや、ついにはJVではあったのですが、JRターミナル駅前の再開発事業まで手がけるようになっていきます。

それが、収益不動産を私がやるようになった経緯です。

次回は、収益不動産を買うようになった私が直面する問題を書きます。

・既存建物を買うときに違法建築物かどうかを判断するのは、なかなか難しいものです。ですから、既存建物を買う前に是非、リデベにご相談ください。

・違法建築物を既に買ってしまって、お困りの方もリデベにご相談ください。(場合によっては、違法建築を解消できます。)

・既存不適格建物に関して、不安をお持ちの方もリデベにご相談ください。

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店舗物件、テナント賃貸、投資、空家対策、開発、地上げ等、貴方の問題を解決します。
まずは1本、お電話ください。些細な疑問にも答えます。プロ、アマ、一般の方、すべて歓迎。
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既存不適格と違法建築【収益不動産】

連載シリーズ 【 既存不適格と違法建築【収益不動産】 】 第 1 話 / (全 18 話)

収益不動産を購入を考えている方や、収益不動産をこれから建築されようとお考えの方、また、すでに収益不動産をお持ちの方は是非、お読み下さい。

私の会社は設計事務所(一級建築士事務所)でもありますが、不動産屋(宅地建物取引業者)でもあります。

ブログの過去の記事を読んで頂いている方は、御存知の通り、私は、ハウスメーカーで設計、積算や商品開発などの技術系部署を経て、収益不動産のための用地取得や開発の部門に行き、その後、アレンジメントの会社の役員になり、今の会社を立ち上げました。

さて、今回は収益不動産を取得するときに注意しなければならない点として、タイトルの『既存不適格』と『違法建築』について書きます。

まず、『違法建築』については、読者のみなさんも御存知の通り、建築基準法や地方自治体が定める条例等に対して『故意』に違反している建物のことを指します。

『既存不適格』というのは、一般の方はあまり聞きなれない言葉かもしれません。『既存不適格』とは、その建物が建てられた時の建築基準法や条例に対して合法ではあったが、その後、建築基準法や条例が変ったことによって、その変更になった部分に対して適合してしなくなってしまった建物のことを言います。

簡単に言えば、建築主や施工業者もしくは設計者が『故意』に違法行為をしているものを『違法建築』で、合法だったのに法律の方が変ってしまったものを『既存不適格』と言いますが、結果的には、どちらも現在の建築基準法には適合していないということになります。

しかし、この二つには大きな違いがあります。

もちろん、故意に違法行為をしているのだから、その時点で犯罪行為になる訳ですが、実は日本の建物は違法建築物だらけだったりします。そして、この違法建築物は、是正処置命令や、あまりに酷い場合は行政処分として使用禁止命令、もっと酷い場合には建築主や設計者、施工業者に刑事罰が課せられる場合もあります。

しかし、実態は行政もほとんど放置しているのが実態です。これには財産権の問題や既にその建物が使用されている場合に、その使用者の権利の問題があって、一度、違法建築物が使用され始めると、それを是正するのは難しいからです。

では、違法建築でも一度、建って使い始めてしまえば、問題ないかというと、そうでもなかったりします。建物というのは何十年も使うことが殆どです。ところが、その間に建築基準法や条例、消防法などが時代の流れでどんどん変っていきます。そして、後述しますが、その法に適合するようにしなければならない状況が発生した場合に、『違法建築物』の場合、その是正に掛かる費用の全額を所有者が負担しなければならないというケースが殆どです。

では既存不適格はというと、殆どの場合が、現行の法律に是正しなくても犯罪行為にはなりません。一部の消防法などに抵触する場合は、何らかの手を加えないといけない場合がありますが、極めて軽微なものが多く、どうしても大規模な補修を必要とするような場合は行政から助成金等がでる場合が殆どです。最近で言うと、軽微なものは居室、台所や階段室に火災報知機を設置しなければならないというものです。これは居住者がホームセンターで1個、2000円~3000円のものを買ってきて自分で付けることも可能ですから軽微な事例です。

大規模なものでは、東日本大震災後、東京を中心として主要幹線道路沿いにある旧耐震の建物(昭和56年4月より前に建てられた建物)に耐震診断を実施して、現在の耐震基準を満たしていない場合は耐震補強工事を行わなければならないというものです。この場合は、規模にもよりますが何千万円もかかる場合もありますが、行政によっては、その殆どが助成金で賄えたり、少なくとも50%以上は助成金で賄うことができます。

さて、収益物件を取得する場合に注意しなければならないのが、この『違法建築物』です。前述のように、何らかの法改正でその建物を是正しなければならない時に自己負担になってしまえば、その場合は大きな出費となります。また、それを是正しないで問題が発生すれば所有者責任を免れることはできません。当然、そのことを理解している人が殆どなので、市場での流通性も低く、転売することも難しいのが現実です。

では、違法建築を見抜く手段として、一般的に行われている手法はというと、『完了検査済証』の有無です。この『完了検査済証』があって、完了検査に合格していることが確認できれば、その建物が建ったときに違法ではなかったということが確認できます。

この『完了検査済証』さえあれば、その後、その建物が規定の検査、例えば消防法の定める定期検査や、建築基準法施工令によるエレベーターの定期検査などを受けていなくても、これから、その検査を受けて問題がなければ、『検査済書』は発行されるので問題はありません。

ところが、これでは完全とは言えないケースもあるのですが、プロでもこの程度の確認していなくて後で往生するケースがあります。高額な物件の取引の際で、買い手がしっかりとした法人の場合には、その建物が違法建築物ではないかのレポート(エンジニアリングレポートと言います。)を一級建築士事務所に依頼します。高額な物件の場合、規模も大きいのでその調査費用も数十万~100万円以上になる場合もあります。

次回はなぜ私が収益不動産の取得に関わることになったのかを少し書いてみたいと思います。

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日本の将来を占う(不動産業界篇2)

カテゴリ:ブログ / 不動産投資

以前のブログで、
住宅着工戸数が10年後に50万戸、20年後には15万戸になると書きました。

今回は、次回の予告通り、その根拠を書こうと思います。

実は私がダラダラと書く前に、この記事を読んで頂ければと思います。この記事は富士通総研が、統計的に見た日本の空き家率の記事です。そこに、日本の将来の住宅着工戸数のヒントがあります。

空き家率の将来展望 ―現状のままでは20年後に25%近くに―

この記事を読んでみると、日本の住宅着工戸数を半減させても、空家率が上昇していくことがわかります。ここまでは、極めて論理的な予測であり、信頼の置ける予測です。

さて、現在の住宅着工戸数は約80万戸ですから、約40万戸にしても、空家率が増えていくということになります。つまり、半分にしたとしても実質的には供給過多な状態が続くということです。

ここで、前回の私の記事で予測した10年後の労働者平均手取所得ですが、現在の約80%になっています。当然に、これは平均です。現在の住宅を購入できる層の所得が80%に減っているという訳ではありません。

高所得者の社会保障還元率は増えるにしても、所得格差が拡大していることが想像されます。しかし、それにしても、3000万~4000万の新築マンションや戸建を30年前後のローンで買うことのできる層(30歳代前半で年収500万円前後)は、大幅に減っていると考えられます。

しかし、人が家に住まないということはありません。貸家にしろ、持ち家にしろ、ホームレスにでもならない限り、家に住むことになります。

そこで、この中古住宅市場の登場です。当然に耐震化の遅れなどから、全ての中古住宅が使えるとは限りませんが、コストとのバランスで新築の需要の相当数が中古に流れることは容易に想像がつきます。

ただ、10年後となれば、まだまだ旧耐震の建物が多かったりします。例えば、私の住んでいる場所の近くには昭和30年代に建てられた公営住宅の建替えの計画もあります。

恐らく、公営住宅をはじめとして、この10年前後で旧耐震の建物が建替えられたり耐震補強が行われるでしょう。また、10年後に長期金利はやや上昇しているものの、不動産価格が所得以上に下落していると考えられます。

為替次第では材料費の下落も考えられますし、この日本の経済動向で人件費が下がっていれば、建築コストそのものが下がります。

そういう意味においては、この10年の間も確実に新築の着工戸数は減るものの半分になるとは思えません。

ところが、この旧耐震の工事が一巡すると・・・。今から20年後というのは、2032年です。この頃になると昭和に建てられた住宅も相当、減っていると思います。とすると、住宅の寿命もかなり延びていることから、それこそ新築の需要が殆どなくなっている筈です。

さらに、前回の私の予想で、この頃になると日本の長期金利は大幅に上昇しています。景気が好転していないにも関わらずです。

とすれば、新築住宅の購入層はもっと大幅に減ることになります。
すでに大手不動産会社(マンションデベロッパー)の再編が始まっているように、今後はハウスメーカーやゼネコンの再編もあり、業界の大幅な縮小が予想されます。

逆に大手や新鋭の会社が中古住宅をリフォームに算入することになり、現在の様なリフォーム詐欺業者などは駆逐されると予想されます。

ただ、ここで中古住宅や貸家の取引が活発になるからと言って、不動産業界が明るくなるわけではありません。これは新築と中古・貸家を併せた総数は減るからです。人口が減るのに住宅の総数の需要が増える訳はありません。

中古住宅や貸家の取引に向けて、なにか特徴の無い不動産業者は淘汰されていくことは必至です。ましてや、地上げをして、マンション業者に土地を卸したり、転売を中心にしている業者などは、時間の問題で淘汰されるでしょう。

不動産の売却なら、リデベにご相談下さい。

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その為、他の仲介業者、デベロッパー、買取業者からの営業など査定をされた方にご迷惑を掛けることはございません。

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