違反建築が発覚した時の対応
既存の建物で違反建築が発覚すると、突然、役所の職員がやってきたり、消防署員がやってきたり、違反建築であることの通知が来たり、役所に呼び出されたりと様々なパターンがあります。
また、既存の建物に増改築や用途の変更を行っている場合で違反があったり、無届だったりすると、突然、工事の中止命令が出たりすることもあります。
この場合、絶対にしてはいけないことは、その
行政指導(場合によっては行政処分)を無視しないこと!
無視を続けると、最終的には建築基準法第9条第1項(もしくは第10条第2項)に基づき、違反状態を是正する命令が来て、さらには同法第9条第13項の規定で建物に「使用禁止」と書かれた紙を貼られ(標識の設置)、さらには行政のホームページに違反の事実が公表されたりします。
行政(役所や消防署)が、行政指導をしてくるということは、それなりに違反である根拠を押さえているケースが多いです。その為、行政指導を無視していけば、行政はより精密な調査をして、さらには、行政指導を超えて、完全に法令に則った行動をしてきます。行政が法令に則った行動をすると行政も後には引けなくなるので、違反者側も法令に基づいた行動をしなければならなくなります。
では、行政から違反に関する、行政指導や行政処分が来た場合、どうするか?
違反建築に関して行政と交渉のできる一級建築士に依頼するしかありません。
※ 違反に関する行政指導でその建物を除去(解体)するのであれば、一級建築士に相談しなくても問題はありません。二級建築士や木造であれば木造建築士に相談するのでも構いませんが、違反建築対応ができる建築士でないと意味がありません。
ここでよくあるケースが
建築基準法関連法令や条例に対する行政指導や行政命令に対して、弁護士に相談する。
というパターンですが、建築士法第21条で
「建築物に関する法令又は条例の規定に基づく手続きの代理その他の業務」
は建築士の占業とされています。
もちろん、本人が建築基準法等に相当詳しくて、建築士を代理に立てなくても自分で対抗できるというのであれば、行政と直接やりとりすることも可能です。
また、行政指導というのは、行政手続法に基づくものなので、その手続きの正否を問うのであれば弁護士に相談するのでも構いません。
ただ、本当にそれが建築基準法に違反しているのか、また技術的な話になると、結局、前述の建築士法第21条が出てくるので弁護士から建築士に依頼をするということになったりします。
ここで、建築基準法及び関連法令や条例に関する、行政指導と行政処分の違いについて説明をしておきましょう。実例をあげて説明をします。
第二種中高層住居専用地域に地下1階地上3階の建物を適法に作った建築主がいました。その場所は都市計画法上、第二種中高層住居専用地域なのですが、周辺は海外の高級ブランド店や流行のアパレルショップ等が立ち並ぶ場所で、商業的価値の高い場所でした。
その建物の3階は、簡易なシャワーユニットと、ミニキッチン、トイレ(いわゆる住宅三点セット。これがあれば住宅として確認申請ができる。)が設置される計画で実際に完成時には取り付けられていました。
ところが、その建物の地下1階から地上3階までを1人(法人)の賃借人が借りて、地下1階から地上3階までを店舗として利用しようとしました。
第二種中高層住居専用地域では3階以上では店舗や事務所に利用することはできません。
その賃借人は、悪意があったわけではなく、店舗の内装が終わって、開店する前に消防検査を受けました。そこで、消防署が建築基準法違反に気が付きました。その当時、現場で消防署員が注意(行政指導)をしたかは不明ですが、消防署は、役所の建築指導課に通報をしました。
行政はすぐに現場を確認して、建物所有者及び店舗の経営者である賃借人に、
「3階を店舗として利用してはダメですよ!」と注意をして、さらに使ってはいけない法律根拠(建築基準法第48条第4項違反)を書面で渡しました。ここまでは、行政指導です。
ところが、建物所有者も賃借人もそれを無視して、そのまま開業しようとしたのです。
店舗が開業したところで、役所は建築基準法第9条第1項により、3階の店舗を住宅に戻すように書面で命令を出しました。(ここからが行政処分です。)
さらに、建物所有者と賃借人はそれを無視して店舗の営業を続けた結果、ある日、役所がやってきて、建物の入り口に「使用禁止」という紙を貼り、その事実を公表したのです。
ちなみに、その使用禁止の紙には
「建築基準法第9条1項」によりと書かれていて、さらに、「この命令を破った物には建築基準法第98項第1項により、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。」
と書いてあります。もう、こうなってからでは手のつけようがありません。
その後、建築主である建物所有者と店舗の経営者である賃借人とで民事訴訟になりました。(裁判所で和解したところまでは、聞いていますが、和解内容までは聞いていません。)
しばらくの間、使用禁止の紙が貼られ、空き店舗になっていたのは記憶にあります。
行政指導について次の様なことを行政官にいう人がいます。
「他の建物もやっているのに、うちだけなんで行政指導なんだ!」
これが一番多いのですが、これは既に、スピード違反で捕まった人が
「他の車もスピード違反しているのに、自分だけ捕まえるのはおかしいだろ!」
と言っているのと同じです。行政指導や行政処分を受けた際に、他の事例や他の行政区の取扱いを持ち出して、交渉するのは何の意味もありません。むしろ、心象を悪くするだけです。
この様にして、心象を悪くしてから、建築士に依頼されても、その建築士は心象の悪くなった状態から交渉をしなければならなくなります。
例えば、建築士が当該違反の改善計画書などを提出していくのですが、改善に3年を掛けようと思っても、既に心象が悪くなっていると1年しか待ってくれないなどという不具合が発生します。
「そんな法律おかしいだろ!」
ということを言う方もいますが、そもそも法令ですから、国民によって選ばれた立法府や、条例であれば、同じく市民によって選ばれた地方議会によって定められているものです。法律がおかしいなら、法令の改正からしなければなりません。行政官の仕事は、法令に従って、行動するだけなので、法令の是非を言うのは無駄です。
ただ、行政官が法令解釈を間違っている場合が稀にあります。その場合もやはり、法令解釈の専門家である建築士に依頼しないと、なかなか交渉そのものが難しいことになります。
また、時々、消防署の立入検査の結果通知で建築基準法違反を指摘される場合があります。
消防署は、消防法によって存在しているので、建築基準法について指導する権限はないのですが、消防署の査察管は、建築基準法にもかなり精通しています。消防署からの結果通知に建築基準法違反について書かれることがありますが、それについて
「消防署の言っていることだから、建築基準法は無視して、消防法に係るところだけ是正しよう」
などと言い出すかたがいます。
しかし、多くの消防庁管内の内規で
「法令に基づく、建築基準法違反を発見した場合には建築行政(特定行政庁の建築指導課)に通報しなければならない。」
というものがあります。つまり、消防署の通知に建築基準法違反が書かれていたら、その内容については建築指導課も知っているということになります。消防署の指導に従って、建築基準法違反を是正して報告すれば、そのことも建築指導課が情報を共有します。
ところが、消防署の通知に対して、建築基準法違反を是正しなければ、是正しない旨が、建築指導課に通報されます。そうすると、今度は建築指導課監察官が現場にやってきます。
今度は本当の建築基準法の監察官で、建築基準法の番人みたいな人がやってくるわけです。消防が通知した建築基準法以外の建築基準法違反まで指摘されて、余計に多くの是正を求められることになりますし、建築基準法第12条5項に基づく報告書を出すことになったりすると、その手続きの煩雑さもあり、こうなってくると請負ってくれる建築士を探すのにも往生することになります。当然に報告費用や是正費用も高額になってきます。
この様に違反建築を指摘されたら、すぐに違反建築の是正に詳しい一級建築士に相談する。口頭での行政指導レベルの段階で、一級建築士が介入すると、自主是正(所有者と建築士で責任をもって適法な状態にする)となり、今後、行政が介入してこないという場合もあります。
行政から指摘を受けたら、自分で対応しようとしないで、まずは一級建築士にご相談を下さい。
主な違反建築(違法建築)の種類
「違反建築の判別は不動産屋(宅建士)では、殆どできない。」
ということを前提に読んで下さい。
まず、建物を作る建物手順をおさらいしておきましょう。
建築士に依頼して確認申請を出してもらう。
確認申請とは建設予定地に建築基準法に適合している建物の図面を作成し、その他の書類を添付して、確認検査機関(特定行政庁や指定確認検査機関)に申請を行い、その内容が建築基準法等に適しているかを確認してもらうことです。この一連の作業が終わるまで工事に着手することはできません。
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中間検査(建物の規模によっては無い場合もあり)
これは、基礎の鉄筋工事や上棟(骨組みが組みあがった時点)で確認検査機関に確認申請の図面通りに建物が出来ているかを検査してもらう物です。
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完了検査
建物が出来上がった直後に建物が確認申請図通りに出来ているかを確認検査機関に調査してもらうものです。
まず、違反建築でよく出てくるのが、
1.建ぺい率超過
2.容積率超過
3.越境
4.建物を建ててはいけない場所に建物が建てられている。
※ 用途の違反、市街化調整区域での建築など
5.接道義務違反
6.完了検査を受けていない(検査済証)がない。
この6点です。
1~3の殆どは、建築士に相談せずに、気軽に施工会社などに依頼して、リフォームついでに増築をしてしまった時や、庭や屋上に倉庫を作ってしまったり、ベランダに庇を付けたり、駐車場や駐輪場に屋根を付けてしまったりというケースが多いです。ホームセンターで売っている様な倉庫でも一定の規模になると増築になります。
4の建物を建てていけない場所に建物を勝手に建ててしまうパターンの殆どが、市街化調整区域に勝手に建物を作ってしまうパターンです。この場合は確認申請そのものが行われてないケースが多いです。住宅の他、選挙事務所や簡易な倉庫や工場を建ててしまうケースもあります。
また、第一種低層住宅地域や第二種低層住宅地域などに、専用住宅を隠家的居酒屋みたいな形で飲食店に変更しまうパターンや、市街化調整区域で特別に許可を取って、専用住宅を建てたものを許可なく、他の用途に変えてしまうケースが見受けられます。
5の接道義務違反については3つのパターンがあります。建物というのは建築基準法に認められた4m以上の道路に2m以上(法令や条例などで厳しくなってる場合もあり)に接していなければなりません。それが出来ていないにも関わらず、確認申請を出さずに建ててしまうケース、元々は接道していたけど、道路に接道していた敷地の一部を売却してしまって、接道しなくなってしまったケース、建築基準法以前から建っている建物のケースのいずれかです。ただし、2mの接道がとれていなくても、特別な事情がある場合などで、特定行政庁が認めた場合でも、再建築する場合には認めないということが多くあります。
6の完了検査を受けていないパターンですが、最近(令和5年現在)に建てられた建物の完了検査済証取得率は約98%と極めて高く、新築で完了検査済証が無いということは、あまり見かけません。しかし、平成20年で約91%、平成11年では約45%、平成6年では約34%です。これ以前は有意なデータが手元に無いのですが概ね平成56年頃~平成6年頃は同じような完了検査率で推移していました。1970年代以前は20%前後の年もあったという状態です。
完了検査は建築基準法で必ず受けなければならないことになっており、これは建築基準法発足時(昭和25年11月23日)から変わっていませんが、特に行政が取り締まることもなく、また、以前は確認申請さえとっていれば、住宅ローンも実施されていたことから、建築主や建築士の意識が甘かったというのが実情です。
しかし、建築基準法第7条の6第1項に
「当該建築物の建築主は、第7条第5項の検査済証の交付を受けた後でなければ、当該新築に係る建築物又は当該避難施設等に関する工事に係る建築物若しくは建築物の部分を使用し、又は使用させてはならない。」
とあり、そもそも完了検査を受けないで建物を使用することは禁止されています。ただ、前述した通り、完了検査を受けていない建物があまりに多い時代があったので、完了検査を受けていない過去の建物を直ちに使用禁止とした事例は、個人的には見たことがありません。
実はここまでは、不動産の取引などで、ちょっと気がきく不動産屋さん(宅建士)でも気が付くことです。
しかし、実際の行政が取り締まっている違反建築の順位は大きく異なります。
令和2年度で行政が摘発した順位の1位から10位を見てみましょう。
1位 確認申請に関する違反(建築基準法第6条違反)
これが圧倒的に多く、前述にも書いた通り、確認申請を出さずに勝手に増築をしたり用途変更をしたりするものです。ただ、これをやると、そもそも、建てて良いか、建築基準法に適合しているかの確認もしてないので、他の違反建築部分もあることが多く、複合的な違反になっていることが多いです。
2位 構造に関する違反(建築基準法第20条違反)
私自身が見ていても、構造に関する違反は大変多いと思うのですが、これについては、宅建士や一般の方では殆どの方が、見ただけでは解らないと思います。大小さまざまな違反があるのですが、増築をする際に構造の確認をせずに屋上に勝手に物を建ててしまったり、部屋と部屋の間の耐力壁に穴を開けてしまったり、場合によってはコンクリートブロックの塀の構造が違反しているケースなど様々です。建築の構造に関しては、多岐に渡って細かいルールがあるのですが、見た目で判断しにくいことや、「これくらいは大丈夫だろう」という認識が、極めて危険な行為をしているケースが多いので行政に摘発されています。
3位 避難経路と消火措置に関する規定(建築基準法第35条違反)
これも非常に多い違反です。これは3階建て以上、1000㎡以上の建物、もしくは不特定多数の人が利用する建物(店舗などの特殊建築物)に適用される法律です。特に排煙に関する規定が守られてない店舗が非常に多く、地下室を細かい部屋に仕切って使っている場合などは、ほぼ違反建築と言えます。また、非常用照明が適切な位置にない、もしくは作動していない等も多く、また、適切な通路幅員が取れていない建物が非常に多くあります。また、摘発されてないだけで、実際の繁華街の飲食店、風俗店やラブホテルなどに多くの違反が見受けられます。火事などの有事の際にはこれが守られてなくて、多くの犠牲者を出す違反行為ですが、やはり、建築士や消防署の職員以外の方以外では、なかなか気が付かない項目です。
4位 特殊建築物の防火区画(建築基準法第27条・第36条)
これは3位と同じく防火に関することですが、これも極めて違反事例の多い項目で、また、同様に摘発されていないだけで、実際には多くの違反が存在します。3位は火事などの有事の際に人が避難できる様にする法令に対して、こちらは避難する時間を確保するための法令と言っていいでしょう。火災などの際に火や煙は、我々が考えている以上に一瞬にして、人の命を奪います。特に一酸化炭素中毒は場合によっては数十秒で人の命を奪います。
火災の発生場所から他の場所に、火や煙が一定時間(避難するまでの時間)、届かないようにするための非常に重要な法律です。
しかし、第3位の規定と同様に極めて難解な法令で、一般の方には何をしていいのか、よく解らないことが多く、建築士の監理が入らないで、ご自身がDIYで作った店舗や内装工事業者にだけ任せて作った店舗などでは、多くの違反状態が見受けられます。
そもそも事務所ならば耐火構造にしなくてよかったけど、事務所を借りて、物販店舗や飲食店に改装した際に耐火構造の建物にしなければならないものを、そのまま使っているというケースもよくあります。
消防検査で消防署員に指摘されるケースもあります。最近の消防署員の方が非常によく建築基準法を理解していて、指摘してくれるのですが、消防署は消防法が管轄なので、建築基準法に関しては管轄外なので、強制力をもって行政指導を行いにくいという実態があります。
5位 道路内建築物の制限(建築基準法第44条)
これは、冒頭にあげた越境です。特に多く見られるのが空中越境です。簡単に言えば、屋外広告物やアンテナなどです。隣地に越境しているのは、エアコンの室外機や換気扇のフードや雨どいです。
実際に、道路に越境している看板はよく見かけると思います。しかし、これは、道路使用許可や屋外広告物条例などを遵守している場合に限ります。屋外広告物などは、地上から何m以上に設置しなければならない、敷地から突出して良い長さなどが、地域の条令で定められています。さらに4m以上の広告物(広告塔)は工作物の確認申請が必要で買ってに作れません。
また、建物は前述の通り4m以上の道路に接していなければなりません。4m未満の場合は、道路の中心線から2m後退しなければならないのですが、完了検査後にその後退した部分に塀を作ってしまったりすると、違反になります。
これも建築士以外の一般の方では細かい所で見落としがあったりします。
6位 防火地域及び準防火地域指定内の建築物(建築基準法第61条)
よく見かける違反です。特に多く見かけるのが、防火地域や準防火地域は隣地から、1階で3m以内、2階以上で5m以内にある開口部は、防火設備という処置をしなければなりません。例えば、建物内駐車場の防火シャッターが壊れたから撤去してしまったり、ガラスが割れたことで、本来網入りガラスにしなければならないものを普通のガラスに変えてしまったりすることで違反状態になっているケースをよく見かけます。
この法令は自分の建物が火災になった際に隣地の建物に火災が広がらないようにするためのものですが、これを守っていないために、隣地の建物を火災に巻き込んでしまったり、街ごと燃えてしまうような大火に発展するケースもあります。
違反の順位としては上位ではありませんが、摘発されにくい違反なので、実際に違反している建物は非常に多くあります。
7位 建ぺい率超過(建築基準法第53条)
これは冒頭にも書いた、庭に物置を設置した場合や、カーポートや駐輪場に屋根を掛けたことによって、建築面積が規定される面積を超過しているケースが多くあります。この場合、物置やカーポートの屋根が登記されていたりすると、確認申請面積と明らかに違うので、不動産屋さん(宅建士)の方が気が付いたりすることもできます。
わかりにくいのが、マンションなどの外部廊下やビルの屋外階段などに転落防止や外囲部からの侵入防止、外部からの視認防止のために、外部廊下の開口部を塞いでしまうケースです。外部廊下やバルコニーというのは十分な開口(平面図上で50%以上)の開口部がなければなりません。十分な開口が取れている外部廊下などは建物から1mは建ぺい率に含まれませんが、目隠しなどを設置すると、内部廊下となり建蔽率の対象になります。また、出幅のある庇などを後から付けることで建蔽率の対象となったりします。
この場合、登記面積との差が発生しないので、一般の方が見落とすケースが多いです。
8位 用途違反(建築基準法第48条)
これは冒頭にも書いた通り、第一種低層住居専用地域、第二種住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種住居専用地域などで、元々は住宅だったものを隠れ家的居酒屋や古民家風居酒屋に改装してしまうケースです。ただ、飲食店の場合、ちゃんと食品衛生法を守って、飲食店の開業許可を提出する、消防法の防火対象物使用開始届を提出すれば、その時点で発覚します。しかし、最初はお知り合いだけを相手にしていたのが、徐々に不特定多数の人を相手にしてしまって、各種届出を怠ると、違反のまま継続してしまって、後に行政パトロールや消防パトロールで発覚するケースもあります。
飲食店ならば発覚しやすいのですが、物販店、動物病院、クリーニング店、塾(茶道教室や囲碁教室などを含む)なども、かなりの規制があるので注意が必要です。アパートの一室を借りて、行っている塾などで多くの違反が見受けられます。
最近、多いのがホテル(宿泊施設)やシェアハウスです。東京オリンピック前に多くの外国人旅行客が来ると見込んで、住宅を宿泊施設で貸す人が出現しました。しかし、専用住宅は不特定多数の人に貸すのには、脆弱な防火構造、消防設備です。その為、住宅宿泊事業法に適用させる為にもある程度の消防設備を備えなければなりません。しかし、住宅宿泊事業所は年間の半分の日数しか行えません(行政区によってはさらに制限がある)。その為、住宅事業法から、旅館業への切り替えを行う事業者がいるのですが、ホテルや旅館は第一種低層住居専用地域、第二種住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種住居専用地域では出来ません。
また、元々、事務所だった場所を遊技場(カラオケボックス)にするケースです。第一種住居地域では1500㎡以下の事務所が出来ますが、遊技場は面積に関わらず、第一種住居地域ではできません。
9位 屋根や外壁の構造(建築基準法第22条、第23条)
この違反は新築の適法に建てられた建物をそのまま使っている分には、通常では発生しません。ある地域が昔は防火地域や準防火地域の指定がされていなかった場所で、防火地域や準防火地域の指定がされた時に、修繕の為に屋根の全面貼替や外壁の全面貼替を行った場合や増築を行った場合に防火地域や準防火地域の仕様にしなければならないところ、建築士に依頼せずに、確認申請を怠ったためにそれに気が付かずに施工してしまうというケースがあります。
増築について確認申請を出さなければならないことを認識している人は多いのですが、屋根の全面貼替や外壁の全面貼替は、大規模な修繕に該当する為、確認申請が必要です。(ただ、塗り直すだけなら、確認申請は不要です。)
10位 容積率超過(建築基準法第52条)
これも確認申請通りに建物を建てて、それを維持していれば発生するものではありません。
多くのケースで見られるのは、容積率の緩和対象になっている部分を緩和の対象ではない状態にしてしまった場合です。屋内駐車場だった部分を部屋にしてしまったケースや、外部廊下やベランダを壁と屋根で覆ってしまったケースにより容積率の緩和を受けられなくなってしまったケースです。
また、屋上や余っている敷地に増築をすることで容積率を超過しているケースもあります。
この様に、一般的に建ぺい率や容積率など、一般の方でも気が付きやすい違反よりも、建築士など、相当な専門的な知識がないと気が付かない違反建築が多数存在します。
以前はあまり細かいことを気にせずに建物という不動産を取引できていても、徐々に不動産取引の際に建築基準法違反がないかをチェックして、違反があれば融資しないという金融機関も増えています。不動産業者の重要事項説明を見る限り、違反が無い様な建物でも多くの建物が違反状態にあるので、不動産の取引をする場合には、建築士に違反状態がないかを確認してもらうことが大切です。
建築基準法適合状況調査の流れ(検査済証の無い建物を適法化する方法)
本内容は2014年12月6日に掲載されたものの修正版です。
① 確認済証の副本と確認申請時の図面の有無を確認する。
副本と図面がある場合は②へ進む。無い場合は③へ進む
② 一般木造住宅2階建て200㎡未満の建物以外の場合は構造計算書の有無を確認する。
構造計算書が無い場合は④に進む。
一般木造住宅2階建て200㎡未満の建物、もしくは構造計算書がある場合は⑤に進む。
③ 建築士事務所(出来れば一級建築士事務所)に依頼して、現況図面の作成を依頼し、現況図面作成後に④に進む。
④ 現況図面をもとに構造計算を実施する。
⑤ ①の確認申請時の図面もしくは③で作成した現況図面が、建物が建てられた時点の建築基準法に適合しているかを一級建築士に確認してもらう。
この時点で、建築基準法に大きく違反しており、是正するのに建て直す方が、経済的に有利な場合には、建築基準法適合調査を中止する。
概ね建築基準法に適合している、もしくは軽度の違反(建て直すよりも是正する方が遥かに経済的に有利な違反)がある程度である場合には、⑥に進む。
⑥ 依頼した建築士に『建築基準法適合調査』を第三者機関に依頼してもらう。
この時点で依頼された建築は特定行政庁との協議を行い、第三者機関に議事録で報告を行う。⑦に進む。
⑦ 第三者機関が『建築基準法適合調査』を行い、『建築基準法適合調査報告書』のドラフトを作成する。
不適合箇所が無ければ、『建築基準法適合判定合格状況調査報告書』が発行されます。
不適合箇所がある場合は⑧に進みます。
⑧ 依頼した建築士に不適合箇所についての是正方法等を第三者機関と協議して貰い、不適合箇所を是正する工事を行う。その是正箇所を依頼した建築士に写真などを取って貰い、第三者機関に報告してもらう。是正完了を第三者機関が認めてもらえば『建築基準法適合判定状況調査報告書』が貰えます。
建築基準法適合判定状況調査報告書は、不適合でも貰えますが、報告書の中に『不適合』箇所の指摘が残ったままになると、その効力がありません。 この場合は違反建築物である証明書にしかなりませんので注意が必要です。
ただし、『建築基準法適合調査』が出来るようになったのは、平成26年7月2日の国土交通省発表のガイドラインからで、すべての建築士事務所が引き受けてくれる訳ではありません。
価格については、建物の規模、築年数、構造、確認済証の副本の有無、確認申請時の図面の有無、建築基準法の技術的指針への違反の程度によって大きく異なります。
まずは、株式会社リデベにお気軽にお電話下さい。
03-5389-6082
営業時間 平日午前10時~12時 午後13時~18時半となります。
なお、ご相談に御来社する際には、必ずお電話で予約を取ってください。
検査済証が無くてお困りの方へ(融資実行・用途変更や増築も出来る場合あり!)
まずは、建物のあるエリアの所轄の行政庁に問い合わせて「建築確認台帳」で検査済証が発行されているかの有無を確認してください。
「検査済証がなくてもあきらめないでください!」
検査済証がなくても融資を受ける方法はあります。
検査済証がなくても増築・用途変更を行う方法はあります。
1.検査済証とは?
検査済証とは、まず、建物を建てる前に、建築基準法やその他の関連法令に合致しているかどうかを図面にします。そして、その図面通りに建てられているということを、行政や国土交通省指定の民間確認検査機関が検査して、合格したものに発行されます。
2.検査済証はいつ発行されるのか?
検査済証は、建物が出来てから4日以内に検査の申請をして、申請到達後7日以内に検査を受けなければなりません。また、この間、建物の使用もできません。(引越しなどで家具を入れるのも使用とみなされます。)したがって、建物を利用して、しばらくしてから、検査済証が無いからと言って、検査を依頼することはできません。
3.検査済証がなくて金融機関から融資が受けられない場合
平成30年4月1日より、不動産売買の際、重要事項説明書に検査済証の有無の記載が義務付けとなりました。それ以前から、各金融機関とも検査済証の無い建物に対しての融資が大変、厳しくなり、場合によっては融資が実行されないことが増えてきました。
そこで、平成26年7月2日に発表された「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」(国土交通省)というものがありますが、これはハードルが高く、特に建物を利用している状況では、なかなか検査ができなかったりします。また、このガイドラインはそもそも、検査済証のない建物の増築や用途変更を可能にするために策定されたもののため、かなり厳しい検査をするので、かなりの費用が掛かります。しかし、金融機関はそこまでのものを求めていないことが多く、当社から、遵法性を明らかにした証明書でも、融資実行がされたことは多数あります。この証明書については金融機関の求めてくる内容によって異なるので、一概にいくらで出来るとは言えませんが、木造1戸建てであれば、税別50万円~(平均税別100万円前後)で出来ます。
4.検査済証がなくて用途変更や増築ができない場合
前述の通り、検査済証が無いとガイドラインを利用して調査をするか、建築基準法第12条5項による調査を必要とします。ただし、法第12条5項の調査は、行政が提出を求めないと行うことができません。したがって、基本的にはガイドラインになる場合が多くなります。(当社では、ガイドラインの検査も法第12条5項の検査もどちらも経験があります。)
このガイドラインに従った構造の調査の場合、破壊検査(建物の一部を壊して、鉄骨や鉄筋の接合部を露出させる)や非破壊検査(建物の構造をレントゲンで撮る)などの調査をするので、建物の規模によりますが、最低でも税別200万円~となります。
5.検査によって違反箇所が発見された場合
検査済証のない建物の多くは、当社の経験によると、検査を受けない何らかの理由が存在することが多く、その殆どが建築基準法に違反していることが多いです。違反箇所は是正するしかありません。しかし、場合によっては、物理的に是正ができない、もしくは是正をすることが経済的に困難なケースもあります。
6.新築時の図面があるかどうかが鍵
当社に依頼される場合で新築時の図面が全くないというケースがあります。後日、不動産会社が作った様な間取り図は、建築図面ではないので殆ど役には立ちません。この場合、図面の復元が必要になりますが、地中杭など再現が、かなり困難な図面もあります。建築図面が全くない状態からでも、用途変更や増築を行った実績はありますが、費用も時間も図面がある場合よりも掛かります。
7.まずはお手元にある資料を揃えてお電話ください。
前述の通り、実際の調査となると、かなりの費用が掛かります。そこで、お手元にある資料を揃えて、お電話でご相談ください。お電話での相談は無料で行っております。
そこで、可能性がある場合には予備調査(現地調査・行政調査・約10万円~)を行い、実際に調査に掛かる費用などのお見積り及び工程表を作成させて頂きます。
検査済証が無くて融資(ローン)が受けられない場合の救済方法
以前は、検査済証※が無くても簡単に融資を受けられましたが、最近では、検査済証が無いと言うだけで、融資を受けつけてくれない金融機関が多くなってきています。
ここでは検査済証が無くても、融資が受けられる方法を書きます。
Point 検査済証とは
検査済証とは、建物の工事が完了してから未使用の状態で4日以内に、工事完了届を行政機関等に提出し、提出後、1週間以内に建物を検査してもらい、確認申請許可通りに建物が建てられていることが確認された建物に発行されるものです。
検査済証がない建物について『手続き上の問題があるだけで、直ちに違反建築(違法建築)とは言えない。』と言う方がいますが、違反建築(違法建築)とは、一般的に建築基準法に抵触している建物のことを言います。完了検査を受けていないということは、建築基準法第7条に抵触しているので違反建築(違法建築)であり、罰則規定もあります。
まったく、融資が受けられないかというと、平成26年12月現在では、金融機関によっては受けられるケースもあるようです。ただし、やはり融資条件などは厳しくなっています。
以前は、検査済証が無くても融資が受けられたのに、なぜ現在は融資が受けられないかというと、平成2年以降、減りつつはあったものの、完了検査を受けないで建物を使用してしまうケースが後を絶たなかったために、平成15年頃に国土交通省から、各金融機関に対して検査済証の無い建物への融資を控えるお達しが出たのが最大の理由です。
ちなみに、完了検査を受け、検査済証が発行される前に建物を使用してしまうと、原則、完了検査は受けられなくなります。
特に、大手金融機関になればなるほど、コンプライアンスが厳しくなっているので融資を受けることが難しいのが現状です。ただ、小さな信用金庫だと、登記さえしてあれば融資を受け付けてくれる事例もありますが、今後は無くなると考えられます。
検査済証が無くても融資が受けられる方法とは?
別に違法なことをするわけでもなく、特別な裏技を使う訳でもありません。
『建築基準法適合状況調査』
というのを行い、それによって建築基準法に適合していることが確認できると、
『建築基準法適合状況調査報告書』
の全ての箇所が適合になれば、検査済証とは違いますが、同等の効力を発揮します。
では、どの様な流れで行われるかと言うと『建築基準法適合状況調査の流れ』(←をクリック)を見てください。
検査済証が無くて融資や住宅ローンが受けられなくてお困りの方は是非、リデベにご連絡ください。
確認済証や検査済証が無い場合に増築や用途変更の方法
先日(平成26年5月17日)の記事、『違法建築と既存不適格 検査済証が無いと増築や用途変更はできないか?』で、
Q.検査済証が無くても増築や用途変更はできるか?
A.原則的にはできません。
と書きましたが、出来る可能性が出てきました。というのは、特別に建築基準法や関連法規が変わったわけではないのですが、平成26年7月2日に国土交通省より、
『検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合調査のためのガイドライン』なるものが発行されました。
これにより、下記のような建物でも、増築や用途変更ができる可能性が出てきました。
1. 検査済証がない建物(建築当時の建築基準法の技術的指針を遵守していること)
2. 確認済証がない建物(建築当時の建築基準法の技術的指針を遵守していること)
3. 確認済証取得時の図面が無い建物
今までだと1と3でも、木造2階建て200㎡未満の建物以外は、増築や用途変更が不可能2の場合だとすべて不可能と法的に解釈されていました。(建築基準法を棒読みすると、「出来ない」とは書いていませんが、出来るための条件を整えることが不可能と解釈されていた。)
ただ、この状況では、日本の既存建築ストックが有効活用されず、さらには耐震化なども進まないことから、1~3のような状況にある建物でも、「合法的に」増築・改築・大規模な修繕・大規模な改修が出来るようになりました。また、このように建物をいじる為だけではなく、「建築基準法適合調査」に合格することで「検査済証」があるのと同等と評価されることで、今まで金融機関が融資の判断基準にしていた検査済証の有無も変わってくると考えられます。
ただ、ここで注意しなければ、ならないことがあります。
① その建物が建てられた当時の法律に適合していること
② 今後は、違法増築等に対して厳しく対処してくると考えられること
この2点には注意が必要です。
特に②です。そもそも、検査済証が取得されていない建物は平成11年の段階で約50%あったと考えられています。その後、民間機関に確認申請業務が移行され、かなり改善されました。つまり、完了検査を受領しないことに対して、行政期間が甘かったという判断もできます。それにも関わらず、増築もダメ、大規模な修繕や模様替えもダメとも言いきれず、黙認していた観もあります。
しかし、このガイドラインが出てきたことによって、物理的には、検査済証が無くても、合法的に増築等が出来るようになったので、今後は違法増築等に対して、行政機関が黙認することもなくなってくると考えられます。
検査済証が無い場合であっても、確認申請済証や確認申請図面、構造計算書がある場合で確認申請図面通りに建物が建っている場合には比較的に容易に適合調査ができると考えられますが、確認申請図面が無い場合や確認申請図面通りに建物が建っていない場合などは、まずは現況図面の作成を行い、新築時の建築基準法の技術的指針に適合しているかのチェックが必要となります。
建物の図面というのは、建っていない建物の図面を作成するよりも、建っている建物の図面を復元する方がはるかに大変ですし、現在の法律に適合している図面を描くより、新築時の法律に適合しているかのチェックの方が大変です。
ですから、確認申請図面が無い場合には新築時並みの設計費用が掛かってしまうことにはなりますが、それにより、増築が可能になったり、財産価値が回復するのであれば、一考の余地があると考えられます。
確認申請済証や検査済証がなくてお困りの方は
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不動産売却 消費税、増税前後の価格変化
前回、不動産業界の人でも消費税増税の反動で分譲マンションや戸建て分譲が売れなくなったと認識している人が、今は少ないと書きましたが、消費税増税になった平成9年には、消費税増税異常にインパクトのある別の大きな経済的事件がありました。
北海道拓殖銀行(拓銀)と山一證券の倒産です。
平成9年は、消費税増税後も株価こそ、堅調に推移していましたが、8月になると株価も後退しはじめ、9月の終値は増税した4月1日とほぼ同じ株価になっていました。
そして、11月になると拓銀倒産、山一證券倒産となり、7月には2万円台で推移していた株価は、12月になると1万5千円前後で推移するという状況になります。そして、平成10年には、日本長期信用銀行倒産となり、株価も1万3千円台で推移します。
拓銀の倒産は不良債権、特に不動産担保に対する不良債権比率が異常に高かったことが破綻の一端でした。その後、足利銀行が破綻しますが、こちらも同様で、バブル崩壊後、不良債権問題に苦しんだ金融機関は不動産担保の過剰融資をしなくなります。
では、その頃の不動産価格はどのように変化していたかを見てみます。公示価格を掲載しますが公示価格というのは、概ね実態を半年遅れで反映しているものです。
まずは、東京の住宅地を見てみます。
東京都中央区銀座4-2-15(商業地 容積率600%)
平成8年 10,500千円/㎡
平成9年 10,000千円/㎡
平成10年 10,300千円/㎡
平成11年 10,000千円/㎡
平成20年 21,200千円/㎡
東京都杉並区天沼3-20-21(住宅地 容積率200%)
平成8年 500千円/㎡
平成9年 492千円/㎡
平成10年 486千円/㎡
平成11年 471千円/㎡
平成20年 526千円/㎡
愛知県名古屋市千種区京命1-8-26(住宅地 容積率200%)
平成8年 216千円/㎡
平成9年 206千円/㎡
平成10年 203千円/㎡
平成11年 193千円/㎡
平成20年 177千円/㎡
大阪府大阪市天王寺区味原町3-11(住宅地 容積率300%)
平成8年 531千円/㎡
平成9年 506千円/㎡
平成10年 495千円/㎡
平成11年 474千円/㎡
平成20年 451千円/㎡
と、銀座等の極限られた商業地は、踏みとどまっていますが住宅地に関しては三大首都圏でも価格は下がっていきます。この価格は半年後の価格ですから実際に駆込み需要があったとされる平成9年でさえ、平成8年からみて価格を下げています。当然、拓銀や山一證券の倒産の影響がでる平成11年はもっと大きく下がります。
また、平成20年は実質リーマンショックの前年のミニバブルと言われたときは、一部の商業地の値段は跳ね上がりましたが、住宅地は東京の一部で平成9年より上がりましたが、その他の場所では下がっています。
その東京の住宅地でさえ、平成25年現在は平成11年よりも大きく下げています。前述の事例である東京都杉並区天沼3-20-21は、433千円/㎡です。
東京の一部の商業地は、人口動態が直接的に影響しないことがあり、また過剰投資の対象になることがあるので、銀座のような事態が発生します。同じような現象が起こったのは丸の内、表参道、渋谷、原宿、新宿、池袋などのごく一部のエリアに限られます。
今はマンション用地や戸建て分譲用地などの需要はかなりあるので、首都圏などで土地を売却しようとすれば簡単に売却することができます。
しかし、需要が無くなった時には、公示価格で示された価格で取引が出来ているかといえば、なかなか出来なかったりします。当然、公示価格よりも大幅に安い価格ならば、売れるのですが、大幅に安い価格で手放そうとする人は少ないので、実際には需要が無くなってくると売却すら難しくなってきます。
株と不動産投資の大きな違いは市場流通性が全然違うということです。
株は損切りしようと思えば、すぐにできます。しかし、不動産は買い手が限られるので、簡単に売却できなくなるときがあります。特に需要の少ないエリアでは売却しようと思ってもできないということも多々あります。
一昨年、当社で売却を依頼された伊豆の別荘地がありましたが、100坪で20万円にしても全く反応がなく、別荘地専門の買取業者に相談したところ、
「ただでも引き取れない」
と言われました。需要が無ければ、固定資産税や管理費を払うだけで赤字になってしまいます。そういう不動産もあるということです。
不動産投資と言うのは、売却できるときに売却して、より良い不動産に買い換えるというのが必勝のパターンです。
売却できる時期に損切りが出来なければ、次に損切りができるのは、10年も待たなければならないということも多々あります。その間に、優良な不動産に買い換えることすら出来ないというのが、不動産投資で失敗するパターンです。特に不動産をお持ちの方は、過去の不動産価格の幻想をいつまでも思い描いていたり、自分の持っている不動産がいつまでも良い場所にあると勘違いしている方も大勢います。
すでにシャッター商店街になってしまったような地方都市は見るからに需要がないので一目瞭然ですから、ここで事例を示す必要性はありませんが、例えば昔は新幹線の終点であり、東北地方の玄関口だった上野周辺の価格は
東京都台東区上野2-12-16(商業地 容積率600%)
平成8年 3,880千円/㎡
平成9年 2,950千円/㎡
平成10年 2,440千円/㎡
平成11年 2,170千円/㎡
平成20年 1,910千円/㎡
平成25年 1,430千円/㎡
と、東京の商業地でありながら、一方的に価格が下がっています。この場所は不忍通りに面して、上野に至近の場所で、北側の春日通りとの間は、昔は繁華街として栄えた場所で、今でもその面影はあります。しかし、公示価格だけを見れば、リーマンショックの前のミニバブルの時でさえ、あまり需要が無かったことが良くわかります。そして、今や、容積率100%あたりの公示価格は、東京都杉並区天沼3-20-21とほぼ同じ価格ですから、すでに商業地としての使命を終えて、今後はマンション用地に変貌して行く場所と考えられます。
不動産をお持ちの方は、買換え特例などを上手に活用して、優良な不動産への買換えをお勧めします。
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※リデベの不動産査定は、当社から査定をされた方の個人情報を出さずに査定します。
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不動産売却の時期 消費税増税後の住宅需要
平成9年の3月末には平成8年度4回目のボーナスが出ました。この年、4回目のボーナスが出るときに当時、私が勤めていた会社の副社長(当時71歳)がボーナス支給に当って、全社員の前で
「去年は消費税増税前の駆込み需要で予想以上の売上をあげたが、今年はその反動が必ずあるだろう。生産部門は一層のコストダウンに努め、消費税増税分以上に価格を下げる努力をして、営業部門は、それを如何に顧客にアピールするかを考えなければならない。以前の消費税導入(※)は、バブル景気に向かう中で影響は軽微だったが、今回は違う。」
と言いました。(※「以前の消費税導入」:1989年4月1日に日本で始めて3%の消費税が導入されたこと)
しかし、社員は前年のあまりに好調な売れ行きや、以前の消費税導入の時にあまり影響が無かったことから、楽観する雰囲気が漂っており、その副社長の言葉をちゃんと受け止めていなかったと記憶しています。
しかし、副社長の言ったことは、見事に的中することとなります。
平成9年度上期(4月~9月)分の事業用地は、ほぼ平成8年度下期以前に入手したものが多く、前回書いたように用地取得部門は、事業用地を必死になって買っていましたから、当面の事業用地は確保されていました。
建設会社というのは、作り続けないと存続できません。工場等がないので生産調整が簡単だと思っている人が多いのですが、建設会社には専属の職人がいます。職人は社員ではありませんが、仕事の発注を辞めると職人は食べていくことができなくなります。これは現場の職人だけではなく、仕入れている材木屋や畳業者や襖業者などの大手ではない建材業者にも同じ事が言えます。
だから、事業用地がある以上、作るしかないということもありました。
その証拠に平成9年の住宅着工戸数は134.1万戸と前年の163万戸から17.7%も減ったのですが、分譲住宅(分譲マンションと戸建て分譲)の着工戸数は35万戸と僅かに0.1万戸(前年比0.4%)の減で済みました。しかし、これは着工戸数であり、販売戸数ではありません。
作っても全く、売れなかったという記憶があります。在庫だけが増えていき、結局、建築コストを下げるどころか、赤字覚悟で値下げをして販売をするのですが、需要の先食いをしてしまっていること、消費者の購入意欲の減退から、価格を下げても売れなくなりました。
平成9年の下期になると楽観視していた役員や社員も状況を把握しだし、事業用地の購入を絞り始めました。価格が特別に安い土地だけを購入するようになっていきます。
私はこの頃、まだ社会にデビューして数年目でしたが、商品開発部門にいました。マーケティングデータや統計データの解析をしていたので、この頃のことを良く覚えていますが、私と同世代の同じ業界の人でも、何故、分譲マンションや戸建て分譲が売れなくなったかをしっかりと認識している人は極僅かです。
当時、この消費税増税による影響の反動で分譲マンションや戸建て分譲の売上が大きく下がったということをちゃんと認識していた当時の管理職社員や役員の方は、既に50代後半~70歳代ぐらいのはずです。
この業界の人でも消費税増税の反動を認識している人の半数以上が現役を退いているということになります。
今回の消費税増税も大きな反動が出ることは必至です。
実際に消費税増税の駆込み需要も起こっていますが、さらに金利が上昇局面に入っていることもあり、金利が安いうちに住宅を買おうという需要も重なっています。
政府はその反動を抑えるために住宅取得時の減税などを考えているようですが、需要の先食いをしてしまうと、需要そのものが少なくなるので需給バランスが崩れます。
これはエコポイント終了のときの家電でも同じ現象があったのは記憶に新しいところです。
エコポイント終了にともない、家電の売れ行きは一気に悪くなりました。家電量販店は必至の値引き競争をして、実際にはエコポイント期間よりも安く家電を買えたのですが、各家電量販店の売上は一気に悪くなりました。当然、無理な値引きもしたので利益も減ります。さらに家電各メーカーにも仕入れ値を押える要請をしますから、家電メーカーも利益が出なくなります。
家電量販店が仕入れ値を押えたのと同じように、土地価格の下落が起こります。
今の土地価格が維持、微増は、あと1年と予想されます。
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不動産売却の時期 消費税増税前の駆込み需要
平成7年、もう18年も前のことですが、その年は随分と暗い年でした。1月に阪神大震災があり、さらに3月に地下鉄サリン事件、また政治基盤も村山内閣という連合政権で不安定でした。バブル崩壊後、弱っていた日本経済にとって、さらに追い討ちを掛けた年でした。
平成8年になると、村山政権で内定発表されていた消費税増税(3%から5%へ)に対する駆込み需要が始まります。
住宅需要も平成7年は景気の落込みなどで、平成6年の156.1万戸から148.5万戸まで減りましたが、平成8年になると、特に所得が増えている訳でもないのに、163万戸と前年比9.8%増と一気に増えました。
こと分譲住宅(分譲マンション・戸建て分譲)だけに限ってみると平成6年は37.8万戸から平成7年には34.5万戸まで減りましたが、平成8年には35.2万戸に増えました。
住宅全体が9.8%だったのに対し、分譲住宅は34.5万戸から35.2万戸だと、僅かに2%の上昇でしかありません。
よく覚えていますが、この年は「造れば売れる」というような状態で、どの現場でも抽選会が行われていました。抽選会が行われるということは、それだけ需要に対して供給不足だった状態だったのです。
販売部門の責任者が
「撃てば当たる。売って、売って、売りまくれ!」
と販売担当に発破を掛けていました。
実際に販売の営業は軒並みボーナスが上昇し、生産部門もその恩恵に与りました。しかし、会社の中で厳しい眼差しで見られていたのが、用地買取部門です。
「造れば売れる」という状態ですから、土地さえあれば、もっと造ったのですが、あまり土地が買えなかったのです。
その頃の地価はバブル崩壊後下落の一途で、土地所有者がなかなか土地を手放さなかったという経緯がありました。実際に事業用地は、個人から買取ったものは少なく、バブル崩壊で社宅、工場、倉庫などの法人が手放したものが殆どで、個人から買取ったものは相続で手放された僅かな土地だけでした。
「それだけ、需要があるのだから、土地を高く買っても売れるだろう。」
と思う地主が多かったのと、バブル崩壊直前まで信じられていた、
「土地の値段は下がることがない」
という不動産神話も手伝い、再び地価が反転上昇すると思っていた地主が多かったこともあります。
しかし、分譲住宅会社は多少利益を削って、高く土地を買取ることはありましたが、販売価格を上げることはありませんでした。何故なら、分譲住宅を買う方が値上げについて来られなかったのが原因です。買う人たちは、多少高くても買いたいのが本音だったのですが、金融機関がバブル時のような無理な融資をしなかったのです。
分譲住宅を買う人の殆どが、なんらかの住宅ローンを使います。住宅ローンを使わない人は、2割に満たないのです。ですから、販売価格を上げられず、必然的に土地の買う値段も利益を削れる範囲の中でしかあげることができませんでした。
その後、消費税増税は実際に行われることになります。
それは、村山政権という不安定な政権から、自民党公明党だけによる橋本政権という強力な政権誕生によるものでした。
この部分だけを見ると、平成25年現在とかなり似ていました。
土地の値段が反転上昇するのは10年後のことで、上昇と言っても僅かな期間であり、この時の消費税増税前の地価に戻ることはありませんでした。
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