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前回は勤務先への連絡の仕方を書きました。これで、連絡がつかない場合はいよいよ連帯保証人に連絡をいれます。
4.1~3で借家人に反応が無かった場合は、連帯保証人に電話する。
さて連帯保証人に電話をして電話で話せた場合も2つのパターンがあります。
自分が連帯保証人であることを「自覚している場合」と「自覚していない場合」です。
「自覚をしている場合」は簡単です。
1週間以内に借家人に代わって家賃を支払うか、1週間以内に借家人に家賃を返済するよう説得することを依頼します。
この場合も第2話同様に決して怒らずに冷静に要件を伝えます。
「借家人△△様に、お電話をさせていただき、さらに督促状を出させていただき、勤務先にもご連絡をさせて頂きましたが、平成〇〇年〇月分の家賃をお支払いいただけず、また連絡をとることすらできません。つきましては、まことに恐縮ですが、契約書どおり、連帯保証人である□□様に家賃の代納を平成〇〇年〇月〇〇日までにお願い致します。もしくは、借家人△△様に家賃のお支払いをするようにお話いただけないでしょうか?」
(△△は借家人の名前、□□は連帯保証人の名前)
連帯保証人が1週間以内に支払えない場合は第2話同様に1週間以上なら念書、1ヶ月以上なら覚書を取ります。(第2話同様、実印、印鑑証明は必須。覚書の場合は公正証書にすることをお勧めします。詳細は「家賃滞納 ~住宅編~ 第2話 電話催促の方法【立退き】」をお読み下さい。)
連帯保証人から取る念書及び覚書はこちらからダウンロードできます。
連帯保証人に滞納家賃の返済を請求することは、問題なく出来ます。しかし、連帯保証人に、今後、家賃を滞納したり、滞納家賃を期日までに支払わなかったりした際の契約解除を求める約束を取り付けたとしても強制執行権は脆弱です。そもそもの契約が貸主と借家人で行われているものですから、連帯保証人は債務は負うけど、契約解除権は持っていないからです。しかし、連帯保証人に一応、約束させておくことで、借家人を説得させる方向性に動いてもらうためにも一文を入れておく効果はあります。
ただし、この時点で、連帯保証人から借家人が「海外旅行」や「短期(1~2週間程度)の入院」を教えてもらった場合は、借家人が戻ってくるのを待ちます。
問題は「自覚していない場合」です。
ここで、「連帯保証人」と「保証人」の違いについて少し解説をしておきます。
「連帯保証人」と「保証人」の決定的な違いは、「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」の有無です。連帯保証人には「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」がありません。(民法452条、453条、454条)
催告の抗弁権
債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。(民法452条本文)
つまり、借家人が家賃を滞納したときに、貸主が保証人に滞納家賃を催促したときに、保証人が、「まずは、借家人に催促してくれ!」と言う権利です。
検索の抗弁権
債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。(民法453条本文)
つまり、貸主が借家人に滞納家賃の催促をしても、滞納家賃を支払ってもらえないから、保証人に滞納家賃を請求しても、保証人が借家人に滞納家賃を支払う能力があることを証明した場合、貸主は借家人の財産を差押えるなどの手続きを行わなければならず、安易に保証人から滞納家賃を回収できないということです。
ところが、「連帯保証人」にはこの2つの権利がありません。
保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利を有しない。(民法454条本文)
つまり、貸主は借家人が家賃を滞納した時点で連帯保証人に請求する権利を持っているのです。
ところが、連帯保証人になる人の多くは、このことを知らずに、
『借家人が支払えなくなったら家賃を払えばいいのだろう・・・』
程度にしか、考えておらず、また、多くの場合は1ヶ月分ぐらいの家賃なら、なんとか替わりに支払えると考えています。しかし、多くのケースは何ヶ月も家賃を滞納して金額が膨らんでいることの方が多いです。それどころか、
「俺は、頼まれたから保証人の印鑑を押しただけだから知らないよ!」
などという態度を取る連帯保証人も多々います。それが、借家人の親兄弟でもそういう態度を取る人すらいます。
こうなると連帯保証人に督促状を出しても意味がないので、借家人と連帯保証人に内容証明を送る手続きを取ります。
そして、連帯保証人に電話連絡がつかない場合は、連帯保証人に督促状を出します。
次回は連帯保証人への督促状の出し方を書きます。
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家賃滞納対策 連帯保証人への督促状 【立退き】
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前回は、連帯保証人への電話の掛け方、電話連絡ができた場合の念書、覚書の書き方を書きました。今回は、連帯保証人に電話連絡がつかなかった場合の督促状の出し方です。
5.連帯保証人に電話連絡が付かない場合、連帯保証人に督促状を出す。(この場合も内容証明の必要はなし。)
連帯保証人に電話連絡がつかなかった場合、督促状を出します。第3話「家賃滞納対策 借家人への督促状無料ダウンロード【立退き】」でも、書きましたが内容証明郵便ではなく、簡易書留で出します。
連帯保証人への督促状はこちらから無料ダウンロードできます。
第3話でも書いたように、内容証明郵便だと、相手も身構えてしまいます。そこで、簡易書留にします。普通郵便でなく、簡易書留にする理由は、相手が受け取ったかどうかの確認が取れるからです。
受け取らなかった場合は、「不在」、「受取拒否」、「転居」が考えられます。
「不在」だったときに、借家人の場合、貸している物件内での事故を警戒する必要性がありましたが、連帯保証人が同居していることは、まず無いと考えられるので、その心配はありません。
しかし、最初に賃貸借契約を締結してから時間が経っていると
・ 連帯保証人が亡くなっている場合がある。
というケースが考えられます。連帯保証人でもっとも多いのは、借家人の親です。借家人が学生ならともかく、社会人だったりすれば、その親は当然ですが、それなりの年齢になっていたりするはずです。
また、亡くなっていなくても、年を取って療養施設や老人ホームに入っていたという事例もありました。もちろん、単に長期外出という場合も考えられます。
ここで、ちょっと複雑な話ですが、実際にあった話を書きます
連帯保証人は借家人の父親でした。借家人が家賃滞納をして、督促もしたが滞納状態が解決できない、連帯保証人にも連絡がつかないという時点で貸主から相談を受けました。
そして、調査してみると、連帯保証人である父親は家賃滞納の始まる3ヶ月前に亡くなっていました。
さらに、調べてみると、その連帯保証人の相続人は借家人(息子)ただ一人だったのです。
連帯保証債務は相続されます。つまり、借家人の債務の連帯保証債務を借家人が背負うという意味の解からない話になっていました。
つまり、借家人=連帯保証人という事態になっていたのです。結果的には滞納家賃は回収できず、その借家人との契約を解除して退去してもらいました。
こういう事態を避けるためにも、家賃滞納が始まったらすぐに行動を取らなければなりません。
受取拒否は、前回も書いたように連帯保証人としての自覚が無いものと考えられます。
このことから、「不在」「受取拒否」だった場合には、次のステップである、借家人と連帯保証人に同時に内容証明郵便に移行します。
督促状に応じてきた場合でも、支払いに1週間以上掛かるようであれば念書を1ヶ月以上掛かる場合であれば覚書(できれば公正証書にする)を作成します。(連帯保証人から貰う、「念書」、「覚書」は、「家賃滞納 連帯保証人への念書・覚書の無料ダウンロード」からダウンロードできます。)
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前回、連帯保証人への督促状の出し方を書きました。
今回は、連帯保証人が督促状にも応じて来なかった場合の方法として、内容証明の書き方と出し方を説明します。(「内容証明書」の雛形はこちらからダウンロードできます。)
内容証明の書式や意味については、「【立退き】内容証明」に書いていますので、こちらをお読み下さい。
6.1~5で連絡が付かなければ、借家人と連帯保証人同時に内容証明を出す。
ここで、重要なことは内容証明とは、『家賃を回収するため』の貸主と借主との間でできる、第三者を介入させずにできる最終手段です。家賃回収が目的であり、内容証明を送付しても反応が無ければ、第三者(弁護士)を介して、家賃を回収するという方法になります。
ただし、弁護士を介しても相手に支払い能力がない、もしくは破産宣告をされてしまえば、訴訟の結果如何によらず、家賃は回収できません。
簡単に言えば、無いものは回収できない。
ということになります。そして、無いものは回収できないので、今後も家賃の支払える見込みは無いと考えられるので、その賃借人には退去してもらうということになります。殆どはこちらになります。
内容証明を送付するということは、裁判所を経由して、強制執行により賃借人に退去してもらうということになります。
第1話「家賃滞納対策 ~住宅編~ 【立退き】」でも書きましたが、内容証明の送るタイミングは、概ね初回の家賃滞納から1ヶ月ぐらい経ってからです。
ポイントは次月分の家賃が振り込まれたかの確認をしてからということになります。
例えば、「家賃の振込みは前月末日までとする」と契約書で定められていたとします。とすると7月1日の時点で家賃が振り込まれていなければ、家賃滞納が始まったことになります。そして、7月分の家賃が振込まれていないで、8月1日の時点でも家賃が振り込まれてなければ、8月分の家賃も振込まれていないので、2ヶ月分の家賃の滞納が始まったということになります。
このタイミングを見てから内容証明を出します。
2ヵ月分の家賃を滞納しているということは、余程、経済的に困窮していると考えられます。つまり、一切の債務に対して返済が出来ないか、一部しか返済できないという状況です。
もしくは、状況がよく、わかっていない借家人とも考えられます。家賃の優先順位が解かっていない借家人とも考えられます、
「家賃を滞納しても、1年ぐらいは、大家さんが待ってくれた。」
「大家さんからの督促を無視しても、半年ぐらいは待ってくれた。」
「家賃を支払っても、そんな簡単に立退きはされない。」
などという話がインターネットなどで氾濫しています。別に家主が賃借人に対して、家賃の滞納を許すのは家主の自由です。(督促状もなしで、あまり許していると贈与税の問題が発生します。)
通常の借金(例えば、クレジットカードやキャッシングローン)の場合は無担保ローンですから、請求されても、債権者も気長に督促をしていくしかありません。最後は一気に差押えを行いますが半年以上の時間が掛かります。今は、まともなキャッシングローンは暴力的な取立てを行わないので、債務者は差押えさえされなければ怖いものは無いでしょう。ましてや、差押えられる財産が無ければ、開き直ることもできます。
また、光熱・水道・通信費ですが、これを滞納すると、真っ先に止められるのは、電話です。携帯電話も同じです。次は、電気・ガスです。電気・ガスは、事業者にもよりますが2ヶ月分ぐらいを滞納すると止められます。水道は、なかなか止められません。しかし、止めるだけで、督促状は来るものの、未納金の回収には殆ど来ません。つまり、放置しておいても、電気やガス、水道が使えなくなるだけということです。
そして、次が税金です。そもそも、収入が無くなっていて、生活保護申請でもしていれば、税金や年金・保険の支払いも無くなるのですが、そうでなくても、こちらも半年ぐらいは普通に待ってくれます。国民年金については、差押えなどは、少しずつやっているようですが、殆どありません。住民税や所得税も、はっきり言って、半年、1年は放置しても、督促状がくるだけです。(不動産を所有しているなど、財産が明らかにある場合は本当に差押えに来ます。)
「クレジットカードを止められるのは嫌だから、そちらは支払っている。」
「携帯は無いと困るから、携帯だけは払っている。」
「税金は国民の義務だから・・・」
「将来、年金だけは欲しいから・・・」
などなど、家賃を滞納しているのに、他の債務に対しては支払っている借家人がいます。
私の経験した借家人の中に、家賃滞納をして、携帯、電気、ガスも止められていて、税金、年金の督促状も来ているのに
「新聞代だけは、ちゃんと支払っていた。」
という意味不明の借家人がいました。余程、新聞を読むのが好きだったのでしょうか・・・。
これが、債務を処理していくときの優先順位が解かっていない借家人のパターンです。もっとも、借金だらけの生活を繰り返してなければ、この優先順位を解かっている人はあまりいないはずです。
では、家賃の優先順位はこの債務のどこに位置されているかというと、家主の意思次第です。
家主が徹底している場合は、3ヶ月の家賃滞納で裁判を経て、借家人は現在の住居を失うことになります。つまり、契約解除をされて立退かなければなりません。
どんなに、電気代を払っても、住居を失えば、電気を使う部屋が無くなるということを理解していないということです。
ここで、他の債権者が色々なものを差押える前に動くということが大事です。ですから、家賃滞納が3ヶ月に達した時点で裁判所からの呼び出しが掛かるタイミングを逸しないようにします。
その為に、2ヶ月目の家賃を滞納した時点で内容証明を送ります。
ただし、ここで、考えておかなければならないのは、滞納3ヶ月目から、裁判に持ち込んで、家賃滞納を理由に賃借人と契約解除に持ち込むのには、概ね2~7ヶ月を要します。そして、裁判所の命令にも応じなくて、裁判所が強制執行するのに1ヶ月かかるということです。そして、借家人は支払い能力がない場合が殆どなので、滞納家賃の回収はほぼ不可能です。そして、強制執行の費用は家主負担(※1)になります。そして、弁護士費用、裁判費用が掛かります。
※1 強制執行の費用は、本来は「強制執行される側=借家人」に支払い義務が、あるのですが、借家人に支払い能力が無い場合は、強制執行を依頼する家主の支払いになります。というわけで、実質的には家主負担になることが殆どです。
こう考えると、例えば家賃が8万円/月の東京のワンルームマンションの場合
訴訟前の3ヶ月の滞納家賃 8万円×3ヶ月=24万円
訴訟後の滞納家賃 8万円×4ヶ月=32万円(平均値)
強制執行までの家賃 8万円
訴訟費用(印紙代+郵便費用) 2万4千円
執行までの裁判所への支払い 9万3千円
強制執行費用 23万円
弁護士費用 63万円(平均値)
と、このように回収できない家賃が64万円、裁判~強制執行までに掛かる費用が105万7千円と、約170万円の損失が発生します。
ですから、本当に借家人が滞納家賃を支払えなくなった場合には、裁判所を介さずに、早々に退去してもらう交渉に入る方が得です。
できれば、督促状を送った時点で、内容証明を送らずに、すぐに立退き交渉に入る方が得策です。内容証明を送った後に交渉をするのが得策でないのは「【立退き】内容証明」で書いているので、そちらをお読み下さい。
交渉に成功すると、上記の170万円が100万円~110万円ぐらいで済み、さらに、4ヶ月ぐらい早く、別の賃借人に貸し出すことができることを考えれば、さらに32万円得ということになります。つまり、裁判に持ち込むよりも、実質的な被害は、約4割で済むということになります。
もちろん、交渉に成功すればであって、この交渉術が重要になってきます。これは、私の経験からの話ですが、まず、この類の交渉は家主(個人)がやっても成功しません。特に
「私が大家だ。」
と思っている家主の方が交渉すると概ね失敗します。交渉するのは家主の自由ですが、交渉がこじれて、賃借人との関係が悪化してからだと、専門家に相談しても時間も費用も掛かることになります。
借家人に直接交渉するのであれ、第三者に依頼するのであれ、専門家に相談することをお勧めします。
また、くれぐれも家賃滞納をしている借家人の部屋に借家人が不在の時に勝手に入って、荷物を外に出して、鍵を替えてしまうなどの乱暴なことはやってはいけません。ゼロゼロ物件などで問題になっており、このようなことをすると、借家人に訴訟を起こされたとき(※2)に確実に負けます。
※2 保護団体や無料相談などがあるので、借家人に弁護士費用等が無くても、簡単に訴訟を起こされたり、行政指導の対象になったりします。
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家賃滞納の督促として、内容証明を出すということは、
これで家賃回収が出来なかった場合には、
『法的手続きに入る。』
ということになります。
法的手続きに入った場合の費用や解決までにかかる時間は
に書いています。内容証明を出す前に
必ず、『家賃滞納 内容証明の出し方 【立退き】』をお読み下さい
内容証明書を書く場合のポイント
・余計な感情は書かない
・解かりやすく書く
よく、「貴殿の行為には、はなはだ遺憾である。」とか「貴殿の行為は社会的道義に反しており・・・」などの感情的な文章を書く人がいますが、内容証明に対する反論ならともかく、請求する内容証明に感情を書くのは文字数の無駄であり、また主旨がボヤけるだけです。内容証明は単なるお手紙なので、書くのは構いませんが、無意味ということを念頭に置かなければなりません。
内容証明は単なるお手紙ですから、格好をつけるのは自由ですが、その必要はありません。相手が請求されていることを認知しているという証拠にはなりますが、法律家の真似っぽいことをする必要もありません。よく、語尾を「××すべし。」などと書く人がいますが、意味がありません。また、「民法第××条の〇〇により・・・」とか「商習慣の観点から・・・」などと、知ったか振りをして、素人が妙な法律用語を並べる必要性もありません。
このように感情論を書いたり、格好をつけたりすると、相手が、貴方の送った内容証明を法律の専門家に見せたときに、笑いのネタにされるだけなので辞めましょう。
内容証明を出すタイミング
・ 借家人に督促状を送って、借家人が督促状の「受取拒否」を行った場合
・ 連帯保証人に督促状を送っても、「不在」、「受取拒否」、届いたが「連絡が無い」「期日までに入金」がない場合
詳しくは、家賃滞納対策 内容証明の出し方 【立ち退き】をお読み下さい。
内容証明(家賃滞納)、内容証明(家賃滞納_連帯保証人)の
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に書いていますのでこちらをお読みください。
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前回は、借家人への督促状の出し方を書きました。
これで反応が、ないといよいよ連帯保証人に連絡しなければならないのですが、その前に1つ、やってみることがあります。
3.督促状に対して1週間程度、反応が無かった場合は、勤め先に連絡する。(ただし、勤め先などに、借家人が家賃滞納をしていることを告知することは不可。)
職場に連絡をするというのは、気が引けるのですが、これは借家人に督促をするという意味合いよりも、3つのことを確認するためです。
・ 出勤している場合
ここで本人と話すことができれば、無理にその場で督促をしなくても、
「通知を出しておりますのでお読み下さい。」
という程度にしておきます。職場の他の人に家賃滞納をしているということが、知れ渡ると職場にいられなくなったりします。また、出勤しているが、離席中、外出中、接客中などで本人が電話に出られない場合も、決して他の社員に借家人が家賃滞納をしていることを伝えてはいけません。その場合は
「〇〇から、電話があった旨をお伝え下さい。」
(〇〇は貸主の名前です。)
程度にしておきます。
いずれにせよ、督促状を送っていて、支払いもなく、連絡も無い状況です。すでに他の借金があるなど、経済的に困窮している可能性があります。しかし、会社に在籍しているということは、給与は貰えているはずです。後々、その給与を差押える可能性もあることから、本人が会社にいられなくなるようなことをする必要はありません。
勤務先に電話をして、本人と話せずに2~3日待って連絡が無い、もしくは家賃の入金がなければ、連帯保証人に電話をします。
・ 在籍はしているが、「本日はお休みを頂いております。」と言われた場合
この場合は、自分が借家人に対する家主である旨を明かします。その上で家賃を滞納していると言わずに
「△△様と連絡が取れなくて心配しており、失礼かとは思いましたが職場にお電話させて頂きました。△△様は、ご入院されているなどではないでしょうか?」
(△△は借家人の名前です。)
と、聞きます。最近は個人情報の問題などもあるので、素直に教えてくれない可能性もありますが、その場合でも、ここは上司の方に電話を替わってもらうなどをして食い下がってでも事情をある程度、聞きます。この場合、私が使う嘘は
「実は消防の検査があるのですが、連絡がとれなくて・・・。」
と言います。(ここは嘘も方便です。)
ここで会社が休んでいる事情を把握していれば問題ありません。仮に急な入院をしている、海外旅行に行っているなどの場合も事情が把握できます。
会社が状況を把握していない場合もしくは、把握してないと受け取れる場合は、この時点で1度、物件を見に行った方が良いでしょう。事故で連絡ができない状況が考えられます。もし、この時点で会社が状況を把握してないとすれば、1週間以上無断欠勤をしていると考えられます。それを放置している会社ですから、その時点で信用がおけません。第1話でも書きましたが、自分で行けない場合には管理会社、賃貸借契約をした不動産会社などに行ってもらいます。異常を感じた場合にはすぐに合鍵等で開けてはダメです。警察に連絡して警察官立会いで合鍵を使います。本人が部屋にいて、助けを求めている場合は、警察に電話、消防署に電話(救急車の手配)をします。
・ すでに退職している、もしくはそもそも、その会社には在籍していなかった。
家賃滞納においてもっとも多いのがこのパターンです。そもそも、入居時の会社に勤めていて、その当時の所得(給与)を貰っていれば、家賃を滞納しなければならない状態に陥ることは少ないはずです。もっとも、博打(株やFXなども含む)や異性にお金をつぎ込んで借金をしてしまう場合もありますが、この時勢ですから、会社そのものが倒産していたり、リストラになっていたりと退職しているケースもあります。
また、家賃保証などに加入していないと、入居審査時にその会社に在籍している確認をしていないケースというのもよくあります。家賃保証に加入すると、家賃保証会社が入居審査でその会社に電話して在籍確認をすることが殆どです。
これは家賃滞納で発覚したのではないのですが、某大手賃貸専門不動産仲介会社が、入居させた借家人で、入居時の職業は「看護士」という女性がいました。夜勤が多いのは、看護士だからだと思っていたのですが、実際には飲食店(キャバクラ)に勤めている人でした。発覚したのは、借家人が勤める店のお客さんにストーカーに遭い、その部屋にストーカーが不法侵入した事件で発覚しました。
他にも知人に頼んで、入居審査の時だけ、その会社に在籍させてもらったことにしていた。という事例もあります。
このように入居時に虚偽の申請をしている場合も多くあります。
このような場合は、収入が少なかったり不安定だったりするので、家賃滞納が多くなります。
入居時の会社の在籍確認が取れなかった場合には、すぐに連帯保証人に電話をします。
次回は連帯保証人への電話催促の方法を書きます。
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今回の問題は、家賃を滞納された側、つまり、賃貸物件の所有者(家主)側からの話です。
ですから、家賃を支払えなくなって困っている人からすると、少しきつい話になっているかもしれません。
家主にとって、家賃滞納は非常に頭の痛い問題です。賃借人が家賃を滞納するのには、色々、理由があります。今回は「支払日を忘れていた。」、「家賃支払日に急病などで入院してしまった。」というのも、退院後にちゃんと支払える場合などは、考えないことにします。
今回の家賃滞納は、故意に家賃を支払わないケースです。
「故意に家賃を支払わない」
と書くと、家賃の支払い能力があるのに、支払わないというように聞こえますが、経済的に家賃の支払い能力が無くなった場合でも同じです。
家賃滞納を防ぐ方法は・・・
1.賃借人の属性をしっかり調査しておく。
・ 職業
・ 収入、給与所得(所得証明、源泉徴収表など)
2.しっかりした連帯保証人の確保
・ 賃借人との関係(友人、愛人などの知人よりも親族であること)
・ 年齢(65歳未満であること)
・ 収入(家賃を保証できる定期収入があること)
・ 契約時に連帯保証人と連絡をしておく(連帯保証人の責任を説明しておくこと)
ここさえ、ちゃんとしていれば、まず家賃滞納問題で困ることは無いはずです。しかし、上記の条件をクリアできることが少ないから問題が発生します。なぜ、上記の条件をクリアできないかは、簡単です。
条件を全てクリアできる賃借人が少ない=空室問題にぶつかる
からです。余程、条件の良い物件は、クリアできるかもしれませんし、超高額物件などは、上記以上に厳しい条件が付されている場合もありますが、一般的な物件では上記の条件でさえ厳しいという場合が多々あります。
そこで、家賃保証などを利用することをお勧めしますが、家賃保証も完璧ではありません。保証会社が倒産した事例もあります。個人的には、余程のことが無い限り、「一括借り上げ」(サブリース)は利用するべきではないと考えています。また、賃借人との関係をある程度、築き上げられて入る方が、家主にとっても賃借人とっても、後々の対応が楽になります。
ここを読まれている方は既に、家賃保証も利用せずに、家賃滞納問題に直面していることかと思います。また、賃借人との信頼関係も築けていないという方が多いと思います。
では、家賃滞納に直面してしまったらどうすれば良いかを書きます。
結論から書くと
- 家賃滞納から、1週間~2週間で賃借人に電話を入れて催促をする。
- 電話で連絡が付かなかった場合は、すぐに督促状を出す。(この場合は内容証明の必要はなし。普通郵便でも良いですが、簡易書留の方が良い。)
- 督促状に対して1週間程度、反応が無かった場合は、勤め先に連絡する。(ただし、勤め先などに、賃借人が家賃滞納をしていることを告知することは不可。)
- 1~3で賃借人に反応が無かった場合は、連帯保証人に電話する。
- 連帯保証人に電話連絡が付かない場合、連帯保証人に督促状を出す。(この場合も内容証明の必要はなし。)
- 1~5で連絡が付かなければ、賃借人と連帯保証人同時に内容証明を出す。
特に1~4までは間髪入れずにやります。家賃滞納から2~3週間で、4までを完了させます。これは家賃滞納の原因が事故であった場合に被害を最小限に食い止めるためです。4が終わった時点で、賃借人にも連帯保証人にも連絡が付かない場合は、物件を見に行く方が賢明です。自分で行けない場合は、管理会社、賃貸借契約をした不動産会社などに行ってもらいます。異常を感じた場合にはすぐに合鍵等で開けてはダメです。警察に連絡して警察官立会いで合鍵を使います。
1~6までを、家賃滞納から、1ヶ月~1ヶ月半でやらなければなりません。
そして、ここまでで、賃借人もしくは連帯保証人と話し合いができれば、家賃回収か立退きは2~3ヶ月でできるはずです。ここまでは、弁護士に頼らないでやった方が賢明です。余程、良い弁護士を知っているのであれば別ですが、インターネットで検索した程度で知り合った弁護士はもっての他です。弁護士に親しい知人がいるとか、信頼できる人からの紹介などがあれば、最初から弁護士に依頼するのでも良いでしょう。
これで、ダメなら訴訟ということになります。
訴訟自体も自分で出来ないことは無いですが、手続きも面倒ですから、ここからは弁護士に任せた方が良いでしょう。
多くの家賃支払日は前月末日頃になっていると思います。例えば6月分の家賃の支払いが滞納されるのは、5月末日です。ということは、6月10日~15日には、電話を入れることになります。そして、内容証明を送るのは7月10日~15日頃になります。これで2~3週間待って、家賃が支払わなければ、8月分の家賃も期日に支払われなかったということになります。
判例では概ね3ヶ月の家賃滞納で契約解除が認められます。(1日でも家賃滞納は契約そのものには抵触しますが、それで訴訟を起こしても立退きは認められません。)
つまり、最短で事態解決をするためには、家賃滞納から1~2週間で賃借人に連絡することが大事です。連絡が遅くなれば、家賃が回収できても賃借人に滞納癖が付きますし、回収できなかった場合に損失も拡大します。
次回以降で、1~6の作業を具体的にどうすれば良いのかを書きます。
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