一級建築士の話【後編】
当社に設計の依頼がありました。
場所は名古屋です。物件は以前の記事に書いた店舗併用住宅です。
おそらく、工事費が高くても5000万円程度でしょうから、設計費を600万円以上請求すると話がこんがらがることになると思います。(せっかく、紹介してもらった人の顔を潰すことになる。)ところが設計監理までやると、最低でも名古屋を20往復ぐらいしないといけません。交通費だけでも50万円かかります。と・・・赤字必至です。そこで、知っている名古屋の設計事務所に回して、紹介料を貰おうかなぁ・・・と考えました。
しかし、名古屋でこの規模の設計を依頼されてくれる人を知らないので、東京に本社のある組織設計事務所の名古屋支店に値段を聞いてみました。工事費が6000万円程度なら20%の1200万円と言われました。
① やりたくないのか?
② 忙しいのか?
③ 世間を知らないのか?
④ 単なるボッタクリなのか?
のどれだろうと考えてしまいました。
さて、前回は偽装ネタだったので今回はちょっとマジメに・・・
一級建築士の年収ってみなさんはご存知でしょうか?
年収の前に一級建築士ってどうやったらなれるのかをちょっと説明します。
まず、受験資格ですが・・・
① 大学において建築の専門分野の学科を卒業し、実務(建築業務)を2年
② 短大もしくは専門学校で建築の専門分野を卒業し、実務(建築業務)を4年(3年の場合もあり)
③ 2級建築士を取得後、実務4年(建築業務)
※建築の専門分野を卒業しないで2級建築士を受験する場合は2級建築士の受験資格が実務7年
④ 大学院において建築の専門分野の学科を卒業
この様に建築の専門分野の学校を卒業してないと実務経験だけで最低でも11年以上が必要となります。
そして、試験ですが・・・
今年から試験内容が変わりますので、去年までの話を書くと
1次試験・・・学科4科目(計画・法規・構造・施工) 1年に1回
2次試験・・・製図実技 1次試験合格者のみ1年に1回(1次試験合格者は2次試験に落ちても翌年に限り、2次試験から受験可能)
その、合格率は・・・
去年の実例でみると
1次試験 15.1%
2次試験 41.7%
総合すると合格率8.1%です。
12~13人に1人が受かるという試験ですが、受験資格を見ればわかる通り、建築を学んできた人たちだけで受ける試験ですから、結構、大変です。10年以上連続して受験しているという人もゴロゴロいます。もっとも、合格者の大半は初受験から3~4回目ぐらいまでで取得している人が多いようです。
これだけ、取得するのが難しい資格だから、さぞかし、年収も良いだろうと思っている人も多いと思います。
ところが・・・
一級建築士の平均年齢46歳、平均年収は約640万円です。また、デスクワークの様に感じるかもしれませんが、図面を実際にCADで書いたり、現場監理という仕事は歳を取るとキツい仕事です。
これを多いと考えるか、少ないと考えるかはいろいろな意見はあると思いますが、一級建築士と宅地建物取引主任の両方を持っている私からみると、どっちがお金になるかと聞かれれば間違いなく、宅地建物取引主任と応えます。(稼ぐお金は資格では決まりませんが・・・)
さらに、今年から一級建築士の制度が変わって、取得してもすぐには設計事務所として独立開業ができなかったり、構造建築士や設備建築士などの制度が加わったりと一級建築士の環境はより厳しいものとなっています。また、新築需要が低迷しているなどから、経済的にも厳しくなっています。
それでも若い頃にはかなり憧れた資格でしたし、合格したときにはどの試験に合格したことよりも嬉しかったことを覚えています。
取得後10年以上経っていますが、未だに苦労の元が取れてないような気がします。
一級建築士は貧乏だから、せめて・・・
一級建築士の話【前編】
一級建築士と聞いて、みなさんのイメージはどんな感じでしょうか?
「先生」と言うと普通は教師や師範などのものを教えてくれる人のことを言うと思うのですが、そうでなくても「先生」と呼ばれる職業があります。例えば、『医師』なんかは普通に「先生」と言っているので私はあまり違和感はありません。
しかし、国会討論などを見ていて、代議士同士が
「○○先生は・・・」
などと、言っているとバカみたいです。
一級建築士も何故か「先生」と呼ばれる仕事の一つです。
私も一級建築士になってから、「先生」と呼ばれることが時々あるのですが、最初の頃はかなり違和感を感じました。
もう、10年以上前の話ですが『協奏曲』というドラマがありました。
詳しくはこちらを見てください。・・・『TBS Drama Archive』
主人公を木村拓也が演じていたこともあり、かなり人気のあったドラマで、私もまだ20代でした。
その頃、お客さんとクラブ(正確に言うとキャバクラ)に行ったとき・・・
お客さん「相澤さんは若いけど、一級建築士なんだよ~。」
女の子「えええ~、キムタクと一緒なんですか~?カッコイイ~」
とチヤホヤされました。
(歳がバレるし・・・)
※ドラマの中のキムタクは設計をやりますが、一級建築士ではなかったはずです。
3年ほど前の話ですが、やはり、お客さん(いつものN氏・・・N氏について詳しくはこちら
)とクラブ(正確に言うとキャバクラ)に行ったとき・・・
N氏「相澤さんは一級建築士なんだよ~」
女の子「えええ~、じゃあ、相澤さんもカツラなんですか~???」
私「はぁ?」
女の子「だって~、東スポに『姉歯建築士、髪まで偽装』って書いてありましたよ~」
私「一級建築士は全員、ハゲかい!ぼくも白髪は染めてるけど・・・」
(それよりも、女の子がどこで東スポを読むんだよ!)
と、今や「先生」と呼ばれる職業でもなくなりつつあると思います。また、ある不動産業者の大先輩に
「デベロッパーは、ある意味、見下して『先生』と呼ぶんだよな~。そう言って、安い設計費で仕事をしてもらう意味もあるかな・・・」
と言っていました。
私は両方の立場を経験していますがちょっと、悲しい話でした。
次回は一級建築士の年収などを書いてみます。
耐震偽装はしないから・・・
不動産業界の横の繋がり
不動産業界というのは人脈が非常に重要な業界です。
今日はそのような状況である不動産業者にお会いしました。
ブログを初めて今日で20日・・・
まさか、ブログで知り合った同業者の方とこんなに早くお会いするとは思いませんでした。
(しかも、私の自宅からてるみーさんの会社まで30分でした。)
てるみー@夢をかなえるライフプランナー
さん今後ともよろしくお願いします。
さて、今日はてるみーさんと大変、有意義な話をさせて頂きました。
昨今の分譲戸建の状況ですが私も、薄々は感じていたのですがてるみーさんとお話をさせていただき、「やはりそうなのか・・・」という確信をもちました。
最近、分譲戸建の業者が事業用地を買えなくて困っているという話をよく聞きます。理由は簡単です。
3月末までは景気が悪くなって体力の無い人(個人・法人)が、不動産資産を現金化した。
↓
安売りの土地が出たために、分譲戸建市場の価格は下落した。
↓
体力のある人は今はもっとも安い時期であるから売るべきではないと判断している。
(特に法人で3月決算を乗り切ったところは1年の猶予があるから慌てていない。)
↓
買主もこの景気悪化した状況が完全に回復したわけではないから、住宅価格が上昇するとは考えにくいという警戒感から、高値の土地は掴みたくない。
という現象です。
個人的な見解から考えれば、最近になって住宅市場が若干の回復傾向を示しているのは、政府の景気対策としての税制対策や値ごろ感からの買いが上向いているということなんですが、景気対策の息切れやこの状況下での需要が一巡したときに、消費者の所得が上向かなければ、もう一回、不動産市況は悪化すると考えています。
また、この7月に個人の住宅ローンを組んでいる方がデフォルトすることは容易に想像できます。特に残債が多い方からデフォルトをすることが考えられるので、築2~5年ぐらいの中古住宅が市場に出回ることが考えられます。とすれば、新築分譲住宅と中古分譲住宅の価格差から、新築の分譲住宅市場はなおさら苦しくなると考えられます。
とりあえず、3月決算を乗り切ったから、慌てて売らなくてもいいだろうと考えている方は、また今期の終わりに右往左往することになるのでしょう。その中古住宅が一巡して、さらに売りそびれた土地を持っている人がその不動産を投げれば、やっと住宅市場が上向くと考えています。
需給バランスは難しいけど・・・
てるみーさん、今日はありがとうございました。
【ハウスメーカー】タマホーム
私の頭の中では積水ハウスとダイワハウスがハウスメーカーの両雄というイメージでいたのですが、ここ、2,3年よく「タマホーム」という会社を目にします。それで調べてみたら、戸建住宅だけで言えば、もう積水ハウスを抜く勢いというから凄いです。(みのもんたのCMや野球をみられる方なら東京ドームのバックネット下のテレビで一番映るところに広告を出している会社です。)
坪25.8万という売り込みですが、これはタマホームが特別に安いわけじゃないです。一昔前にも、アイフルホームなんかもそれくらいの値段でやってました。
住宅の価格というのは当然面積が大きくなれば高くなるし、小さくなれば安くなります。しかし、これを面積当りの値段にすると小さい方が高くなります。
原理は簡単です。どの家にもキッチン、お風呂、玄関は1個あります。最近の家は洗面台と便器は2台ずつでしょうか・・・。ハウスメーカーといえども、キッチンはキッチンメーカーから買ってきます。お風呂や洗面台や便器はTOTOやINAXなどの住設機器メーカーから買ってきます。玄関はトステムやYKKapなどのサッシメーカーから買って来ます。つまり、ここの値段はどの家でも固定というわけです。
その固定費が120万円としましょう。
40坪の家ならば固定費の部分は坪3万円になります。
30坪の家ならば固定費の部分は坪4万円になります。
20坪の家ならば固定費の部分は坪6万円になります。
その他にも営業マンなどの経費も小さい家でも大きい家でも変わりませんから、この固定費に含まれます。
フロア材や天井材に壁紙や外壁は建物が大きくなれば大きくなったり二増えるのでその部分の面積あたりの単価は変わりません。
私はタマホームで家を買ったことはないので解りませんが、ある一定の面積以下になったら急激に単価はあがってくるはずです。しかし、これは上記の理屈で仕方がないことです。
これを住宅業界では『面積差額』だとか『坪数差』と言います。
私はハウスメーカーで積算の仕事をしていたのでよく解りますが、それにしても普通に考えると坪25.8万というのはかなり安いんですが・・・実はこれにはちょっと、ずるい話があります。
ずるい話の前に一般論の説明をします。
建設業界や不動産業界で建物全体の面積を表すときに3つの面積があります
施工床面積・・・施工する部分の全ての面積でマンションの場合は外部階段や外部廊下など容積率の対象にならないところまでの全ての面積です。
建築床面積・・・確認申請の際に必要となる容積率の対象部分の面積で外部階段などは含みません。
専有床面積・・・マンションなどの場合、人の住む部分(商売の対象になる部分)の面積です。
ゼネコンなどの施工会社は容積率に含まれようが含まれなかろうが施工をするわけですから、施工床面積で話をしたがります。設計者はとにかく建築基準法に定められた床面積を算出しなければならないので建築床面積で話をしたがります。デベロッパー(不動産会社)は商売の対象になる部分しか興味がありませんから専有床面積で話をしたがります。時々、単価の話で三者が噛みあわないということがあります。
しかし、ハウスメーカーで安さを売りにしている会社はこのいずれでも無いんです。
おそらく、タマホームもそうだと思います。
例えば床も貼らない吹き抜けも面積にカウントしてるでしょうし、天井も無いし、壁も手すりの高さまでしかないベランダも床面積にいれてしまいます。上記の施工床面積よりも床面積を増やしてしまうわけです。
しかし、これはタマホームだけではなく、アイフルホームなどが昔からやっていた常套手段です。また、メーターモジュールにして希釈していくというのも常套手段です。
私はこれを随分昔から見てきたので、別にインチキくさいとも今は思いませんが、安さの秘密はこんな感じで別に本当は大して安くはありません。時々、建てているところを見かけますが、
「この施工精度ならこの値段でも当然かなぁ・・・」
などと、ハウスメーカー経験者は失笑しています。しかし、値段を取るか質を取るかは消費者の自由です。
ただ、一番心配なのはこの急成長ぶりです。
今年に入って支店を12店舗・・・。どう考えても、急成長過ぎます。一般管理費の増加が気になります。
上場してないので、そのキャッシュフローは解りませんがアーバンエステートの様にならないことを祈ります。
家の値段が高くても・・・
【事業再生ADR】ルートイン
ホテルのルートインが事業再生ADRとなりました。
この会社、取引成約までには至ってないのですが、私の検討していたビルにテナントで入るとか、もしくは他の物件を検討してもらったことのある会社です。
長野県上田市の雄なのですが・・・。
先日も書きましたが、事業再生ADRは帝国データなどに出てこないのでコマ目にニュースを見てないと見落とすことになるから要注意です。
しかし、これだけ景気が悪くなると各企業とも経費削減で出張も抑えさせるからビジネスホテルは辛いかもしれません。しかし、ここは色々なものに手を出してたし、急拡大しすぎたかもしれません。
【地上げ】~境界確認~後編
昨日は設計事務所との打合せでした。
この不景気に超大プロジェクトの計画を設計事務所と打合せしてきました。
58坪の店舗兼住宅・・・・・・・・・・・・
というわけで、前回の続きです。
さて、程なく、Aさんは帰ってきました。
書類を一式もって来ました。
Bの土地の謄本類も一式揃っています。
Aさんの土地との境界以外の方の印鑑も既に押されています。ちゃんと印鑑証明もついていました。
「ん?・・・なんでAさんの弟さんの印鑑証明が添付されてないんですかね?」
「だって、弟は印鑑登録してないもん・・・」
(はっ?弟さん・・・何歳でしたっけ・・・・)
と、言いたいのを抑えて・・・
「へ~、そうなんですか」
『・・・・・』
(ひらめいた!)
「あ、Aの土地の謄本ありますか」
「あるわけないじゃない・・・」
(さすがに今回は準備悪いなぁとは思わず・・・)
「じゃあ、ちょっとパソコンで取りますね。」
「・・・いやらしいわねぇ・・・・」
(って、別にあんたの謄本見てもいやらしくないだろ!)
と、声を大にして言いたいのを抑えて・・・
「Aの土地はAさん、お一人の名義になってますね!」
「当然じゃない!」
「じゃあ、弟さんに代理委任状渡しました?」
「弟がハンコウ押したのを知ったのだって昨日なのに、委任状なんか渡すわけないじゃない!」
『勝った』
心の中で雄叫び!
「じゃあ、この家屋調査士に電話させてもらっていいですか?」
「いいけど、無駄じゃないの?」
(じゃあ、頼むな!)
と・・・怒鳴りたいのを抑えて、家屋調査士のY氏に電話しました。
「おたく、Aさんの土地とBの土地の筆界確認した家屋調査士のYさんですか?」
「ええ、うちがやらさせて貰いましたが・・・。なにか?」
「AとBの土地の境界確認は無効じゃないですか?Aの土地の所有者はAさんであって、Aさんの弟にはなんの権利もないですよ。」
「ええ、ただAの土地の謄本見たら、Aさんは海外にお住まいなので親類の方に代理でハンコウを貰いました。」
「あのさぁ・・・Yさんもプロでしょ?海外に住んでるから、代わりって通用するんですか?代わりなら代理委任状が必要でしょ。」
「・・・・。いや、じゃあ、Aさんの弟さんが私にまるで権利者のごとく、押印したということはAさんの弟さんの詐欺行為ですよね。」
『釣れた!』
心の中でガッツポーズ!
「じゃあさぁ・・・この弟さんからハンコウ貰ったって言ってるけど、印鑑証明どうした?他の境界にはご丁寧に印鑑証明が全部揃ってるけど、ここだけ何故か印鑑証明がないですね?」
「あ、Aさんの弟さんが実印持ってないって言ってたんですよ」
「本当にAさんの弟が押印したって証拠出して下さいよ。」
「・・・・」
『チェックメイト』
心の中で静かに一言!
「Yさんの立場も解らないでもない。しかし、焦りすぎたかな・・・。でも、心配しなくていいよ。あなたの依頼主が怒らない様にしてあげるよ。ただ、二つ、頼みがあるんだけど・・・。Yさんが請け負った、Bの土地の所有者から、今、この土地売買の話が進んでいる金額を教えてもらってよ。それと、Bの土地の所有者の電話番号を今すぐに教えて。」
すぐに、家屋調査士から電話が掛かってきました。値段もご丁寧に調べてくれました。
私はすぐに、Bの土地の所有者に電話しました。
「Bの土地の件なんですけどね。話が二つあるんですよ。まず、AとBの土地の境界確認については無効です。Aの土地の所有者は押印してません。それと、AとBの境界確認が出来てない状態で○○○○万円でBの土地を買いたいと言っている方がいるんですけどどうですか?」
※この金額は当然ですが先に進んでいた話に上乗せしています。
Bの土地の所有者はさすがに突然の電話で驚いたのでしょう。
「どちらから、この土地の売買の話を聞いたんですか?」
「家屋調査士のYさんとは旧知の仲でして、たまたま、話を聞いたんですよ。」
Bの土地の所有者は結構、話の解る方でした。AとBの境界の確認が取れていないことをちょっと説明したらわかってくれました。
こちらもAとBの境界が確認できてなければ現況有姿で売れないということは必死に境界確認をしていることから想定済みです。
また、Bの土地の所有者には、この家屋調査士Y氏のおかげでもっと高い金額で売れたと思わせることでY氏の面子も保ちました。Bの土地の所有者もちょっとでも高く売りたかったのでしょう。喜んで乗ってくれました。
しかし、その先に話が進んでいた方との契約が3日後だったというのは、後から知った話でした。本当にギリギリセーフでした。
みなさんも、実印を気軽に押さない様に注意してください。
実印を持ってなくても・・・
事業再生ADR
みなさんは事業再生ADRという言葉をご存知ですか?
民事再生や会社更生はよく聞くので、よく知っていると思います。
民事再生について・・・『民事再生法-Wikipedeia』
会社更生法について・・・『会社更生法-Wikipedia』
我々の不動産・建設業界というのは毎日、どこかの会社が倒産しないかが気になる業界です。というのも、単なる野次馬根性でチェックしているだけではなくて、それが取引先だったりするからです。
その会社に債権があれば当然ですが大騒ぎです。
しかし、債権が無くても重要な取引先を失えば自分達にもダメージがあるからです。
この2年間の間に多くの同業者が倒産していきました。
よく、帝国データか東京商工リサーチをそのままコピペして1行だけ自分の感想というブログを見ます。本当に取引先だったりして、ショックを受けているブログもあれば、単なる野次馬まで色々あります。まぁ、著作権の問題を置いておけば、みんながそれだけ関心を持っているんだなぁ・・・と思います。
私はそのブログで倒産情報をチェックすることはないですが、帝国データや東京商工リサーチの倒産情報は夕方に必ずチェックしています。
そこに取引先の名前が出ると
「やっぱり・・・」
と思うこともあれば
「ええええ~~~~」
と驚くこともあります。
その様な倒産情報は破産、民事再生、会社更生など、いずれも裁判所が絡んでくる倒産情報です。
しかし、実質上の倒産にも関わらず、そこに情報が出てこないことがあります。
それが『事業再生ADR』です。
今年になってコスモスイニシアが初めて事業再生ADRを申請したことで有名になりました。
つい先日は日本エスコンが、やはり事業再生ADRを申請しました。
では事業再生ADRについて簡単に説明すると
会社更生や民事再生と違って、裁判所ではなく民間の第三者(企業再生のプロ)が介入するということが決定的に違います。
その他に、この申請した後の債権は申請する前の債権より優先権があるため、申請後に融資を受けやすいとか独立行政法人中小企業基盤整備機構の保証を受けているのでやはり、融資が受けやすいなどのメリットがあります。
詳しくは経済産業省:こちらのサイトから条文がPDFで見ることができます。
しかし、自力再建が出来なくて、一部の債権を放棄させていることは事実で、実質上の倒産です。
スキームと裁判所介入か民間介入かという違いだけと言っても良いでしょう。
結局、これで再生できなければ、民事再生なり会社更生なりに移行していくわけです。
今後、この手法の再生が多くなるかもしれませんが、取引している会社は要注意です。
まだまだ累卵之危にある会社もありますが、倒産の噂のあった、不動産屋がだいぶ無くなってきました。ゼネコンの方が実質的な体力(有利子負債が少ないなど)があることもありますが、一般管理費が多いので仕事量が減って真綿でクビを締められるかのごとく消えていくでしょう。
不動産屋は即死でゼネコンは苦しみ喘いで死ぬという感じでしょうか・・・
景況感が回復基調にあるというニュースもありますが、本当に早く回復してくれればいいなぁと思います。
日経平均大幅安でも・・・
前場終値303円26銭安
【地上げ】~境界確認~前編
日本社会に於いて、印鑑は大変重要な役割を果たします。実印と印鑑証明・・・これさえ揃えばということが多々あります。
今回はそんな印鑑に纏わる話です。
去年の暮れに私にAさんがやってきました。Aさんは都内のある地主さん(おばさん)です。
(その時、Aさんは悠々自適に海外で暮らしていました。今もですけど・・・)
「相澤さん、ちょっと聞いてよ!」
「どうしました?」
(この人、ヒステリックだから関わりたくないんだよなぁ・・・)
「ほら、私が以前から欲しがっていた、Bの土地あったでしょ!」
「あ~、2通り沿いの駐車場の土地ですか?」
「そうそう、あの土地、売りに出たのよ!」
「良かったじゃないですか?」
(どう見ても、怒っているので、この発言は火に油を注いでいます。)
と、私は現地も見て解っているのですが、皆さんには解りにくいと思うのでまたまた絵を描いてみました。
Aさんが欲しがっていたと地はBの土地です。2の道路に20mぐらい面しています。奥行きは6mほどで2の道路(『2通り』と呼びます。)から直接入るような月極の駐車場でした。AさんはAの土地の所有者です。1の道路はAさん名義の私道で幅員は4m、2通りは幅員22mの公道です。この場所の用途地域は商業(容積率500%)です。
Aさんの土地は1の道路にしか接道してないですから、容積率は240%です。しかし、Bの土地が手に入れば、2通りに面する事になるので容積率は500%となります。面積当りの資産価値は一気に倍以上になるから欲しいに決まってます。
また、Bの土地は奥行きが6m程度しかありませんから、大したものが建ちません。しかし、Aさんは自分の土地と合わせれば、100坪を超えます。これならば色々なものが検討できますから、Aさんは他の購入検討者よりもBの土地の評価は高く考えられるので、価格勝負になればAさんが圧倒的に有利です。
※ここで一般の方に道路幅員と容積率の関係を簡単に説明します。
道路幅員が12m未満の場合、その場所の用途が住居系の場合は
道路幅員×0.4×100=容積率
同じく商業系の場合は
道路幅員×0.6×100=容積率
になります。ただし、都市計画で定められる容積率を超えることはできません。
「それが良くないのよ!Bの土地が売りに出たと聞いたのは昨日、日本に帰ってきてからなのよ!」
「しかし、日本に帰ってきてすぐによく、Bの土地が売りに出てるという話を聞きましたね?どなたから聞いたんですか?」
(少し、落ち着かせるために、やんわりと、話を逸らします。)
「それが、私の弟からなのよ!」
(Aさんの弟さんはAの土地から、程近いAさん所有のマンションに住んでいます。)
「弟さんは、Bの土地が売りに出ているとよく、知っていましたね。」
「それがねBの土地の所有者が売却するに当って、境界を確定したかったみたいなの。私の気持ちも知らないで、その書類に弟が勝手にハンコウを押しちゃったのよ。それで弟がその書類の複写を私に持ってきたわけ!それで、その家屋調査士に電話をしたら、売りに出てると解ったわけ!」
「じゃあ、買えばいいじゃないですか!」
(買えないから、私のところに来た事はもうわかってるんですが・・・)
「私だってそう思ったわよ。それで家屋調査士に誰に電話をすれば良いか聞いたら、仲介業者を教えてくれたの。それで電話したら、『もう他の方と話が進んでいて・・・』と言って私には売れないって言うのよ!」
「はぁ・・・」
(それで、どうしろと・・・)
「なんとかならない!」
(私じゃなく、売主にでも相談してくれ・・・)
と言いたいところを抑えて・・・
「とりあえず、筆界確認書の複写を見せていただけますか?」
「じゃあ、家に取りに行ってくるわ!」
(準備悪いなぁ・・・)
もっともAさんの家はここから、徒歩15分です。
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今日はこれから打合せに行かなくてはならないのでこの話は明日に続きます。
中途半端だけど・・・
【地上げ】~接道~
『立退き屋』だとか『地上げ屋』と聞いて、良いイメージを持つ人はいないと思います。私もまったく、良いイメージがしません。会ってみると、やはり、あまり良いイメージの人はいません。私は自分では普通のイメージの人だと思っています。が、社員からは
「オールバックにしないでください!怖いからというより、一緒に歩いてると自分も仲間だと思われるのが嫌だから!」
と言われます。
設計の仕事をしているときにも同じ身なりだったんですけど、やっていることと身なりが重なるとあまり良いイメージにはならないのでしょう。ちなみに、立退きの話の時にも書きましたが、地主さんを脅したり、不法占拠をして地上げをする人もいないことはないですが、今どき、そんな地上げをする人って、かなり古い人です。
もちろん、私はそんな地上げの仕方はしません。格好悪いですし・・・。すぐに逮捕されちゃうし・・・。
さて、色々な地上げをしてきましたが、今回は後始末の話です。しかも、私が地上げに失敗した数少ない話です。
ちょうど、3年ほど前の話です。梅雨の季節でやはり、雨の降る日でした。
私の知り合いの分譲住宅業会社に勤めるM氏から電話がありました。
「もしもし・・・あのさぁ、前から買おうと思っていた、○○町の土地!やっと買えたよ!」
「良かったじゃないっすか」
(ん?自慢話かな?)と思いつつ、社交辞令でそう言うと・・・
「それが困ったことになったんだよ。」
さて、私はこのM氏とは前から知り合いで、今回のこの物件のことは前から聞いていました。
話が解りにくいので、まずは下の絵を見てください。
事前に見せてもらっていた、公図を簡単に絵にすると、下の絵の様になります。
※公図・・・土地の境界や建物の位置を示すものです。一団の土地の様に見えても実際には何区画にも分かれている土地だったりするのですが、それが公図を見れば解ります。ちなみにこの区画の単位は『筆』です。
M氏はAの土地を買いました。面積は250坪ぐらいの土地です。
目的は宅地を分割して分譲住宅を作って売る予定で購入しています。
Aの土地はBとCの土地の所有者でもあるJさんです。
BにはJさんの子供夫婦が住んでいますが土地はJさんのものです。CにはJさんが住んでいます。Aの土地はJさんとJさんの子供夫婦が庭として使っていました。M氏はBとCの土地も売却して欲しかったのですが、それはどうしてもJさんが嫌だということで買えませんでした。
D~Hはそれぞれ、Dさん~Hさんが持っていました。
1~4はアスファルト敷きの道路状になっています。
1と4は幅員が8m、2と3は幅員が6mでした。
この絵だけだとなんの問題もないかと思われます。
「どうしたんですか?」
「接道してないんだよ・・・」
「はぁ?そんなこと、ちゃんと重説に書いてあったでしょ。」
「俺、Jさんから直接買ってるんだよ。仲介はさんでないから、重説ないんだよ」
M氏はこの業界で30年近くはやってるベテランです。たしかにM氏はいい土地を見つけて、直接、所有者に交渉してきます。だから、安く買えるというのがM氏の持論でした。
「ということは、2の土地は一見、道路に見えるけど道路じゃないんですか?二項道路でもないんですか?」
※二項道路・・・幅員4、未満の道路でも建築基準法施行前からある道路で行政から認められている道路のこと。建築基準法42条2項に定められる。この場合、すでに6mあるので私が「二項道路」というのは間違いで、「私道」と聞くのが正解である。
「そうなんだよ。3の土地も2の土地もHさんのものだったんだよ。」
たしかに業者が個人から、買うのに重説なんか作りません。
(それにしても隣接地の謄本上げて、役所に行って道路状況を調べるの当たり前だろ!)
と、言いたいところを抑えて・・・
「じゃあ、Hさんに2の土地を売ってもらう様に交渉してきたら?」
「それがさぁ、Hさんの土地にはアパートが建っていて、謄本に出ているHさんの所に行ってもHさんいないんだよ。それで、困って相澤に電話したわけだ。」
「じゃあ、とりあえず謄本送ってください。」
FAXされてきた謄本を見ると・・・たしかに2はHさんの土地でした。○○町の役所の道路課に行ってみると、たしかに2の土地は道路でもなんでもありません。ちなみに3の謄本を取り寄せると、やはりHさんの土地で役所では道路にはなっていませんでした。
Mさんが既にやったことですが2の土地の謄本に書かれてあるHさんの住所△△町に行ってみました。
普通に家が建っています。表札はHさんとは全く関係のない名前です。
とりあえず、無駄と思いながらも、その家を尋ねると
「ここは借家なんだよね。でも、貸主はHという名前じゃないよ。」
(じゃあ、誰だ・・・)
事務所にもどってパソコンで、△△町のHさんの土地の謄本を取ってみてやっと解りました。
Hさんは平成元年に亡くなっていました。そして、HさんからHさんの子供?と思われる人に登記され、Kさんに売却されています。あの手この手で調べて、Hさんは相続人がご子息しかいないことまでは解りました。
○○町の土地はHさんの名義のまま、相続による名義変更が行われていなかっただけなんです。
そこで、△△町のHさんの相続人の登記されている住所を見ると・・・・
『ハンガリー国ブダベスト市』
諦めました。
私はM氏にその旨を伝えました。
「どうしよう・・・」
「その、住所に手紙でも書いてみてはどうですかね?」
「日本語でいいかなぁ・・・」
「日本人だから、たぶん大丈夫じゃないですか?」
(どうせ、ハンガーリ語なんか書けないだろ!)
M氏はHさんのご子息に手紙を出しました。
・
・
・
・
・
M氏は今でも返事を待っているそうです。
Mさんに返事が来なくても・・・
【住宅】これからの住宅市場を考える。
今日は土曜日なので、ちょっと、まじめな考察を書いてみます。
(先週の土曜日に何を書いてたかを突っ込まないでください。)
一昨年ぐらいまでの景気はどこに行ったのか?というぐらい落ち込んだ景気ですが、これは住宅市場や不動産市場、建設市場に限った話ではありません。住宅も景気が良くなれば、また売れるようになってくることは間違いないのですが、もう少し、マクロ的に考えてみようと思います。
私は自分のサイト
のプロフィールにもあるように、あるハウスメーカーで商品開発をしていたことがあります。
もう、10年近く前の話になります。商品開発は必ず市場調査をしたりするのですが、私たちが開発する商品は今年売れる商品の開発ではありません。女性の水着が常に来年以降のもののデザイン開発をしているのと一緒です。住宅の新商品のサイクルは水着の様に毎年毎年変わるものではないので、そのスパンはかなり長いものとなります。
当時(ちょうど2000年頃)、日本の住宅市場は賃貸住宅、マンション、分譲住宅、注文住宅を合わせて110万戸+αぐらいを生産していました。最近は姉歯問題などもあって100万戸を割っているのが現状です。当時の私が姉歯建築士が登場することは、まったく予期できなかったのですが、2010年頃には100万戸割れというのは予想していました。ちなみに2030年には50~70万戸(約半減)と予想していました。
実はこれ、景気のアップダウンはまったく無視して算出しています。
簡単に言うと、住宅取得世帯数と住宅寿命からはじき出した数字なんです。この数字を見たときに、「当然だろうなぁ」と思われる方も多いと思いますが・・・大変なことなんです。
現在、100万戸を割ったわけなんですが、これによって、どれだけの建設会社が倒産しているのでしょう。
実際には住宅市場だけの問題ではありません。公共事業の圧縮、リーマンショックによる金融機関からの融資制限など複数の要因が重なっているのは事実です。しかし、住宅市場の占める建設業界の割合というのはとてつもなく大きいことは間違いがありません。
しかも、このエコブームです。エコブームじゃなくても二酸化炭素排出制限のある中で近い将来に、
『築○○年未満の建物を解体、再開発する場合は知事の許可を取らなくてはならない。知事は相当の理由が無い限りは許可してはならない』
などという法律ができるかもしれません。(できる様な気がします。)出来た方が自然だし、そのものには反対はしません。
不動産業界も再開発があまり行われなくなれば、大きな利益を上げることはできません。当然です。建築業界と不動産業界というのは表裏一体です。
行政も200年住宅などと意気込んでいますが、建築基準法で200年住宅にすることを強制するか、200年住宅にすることで上がった分のコストに対して、融資などの優遇制度が上回らない限り、なかなか上手くいかないでしょう。太陽光発電が伸び悩んだのと同じ結果になる様な気がします。国や識者と言われる人たちの理想は消費者の財布の中身をちゃんと考えてないことが殆どです。
ここで、業界として考えなければならないことは、中古住宅市場です。
既に私がブログで書かなくても中古市場の重要性に関してはGoogleで『中古住宅』で検索してもらえればいくらでも出てきます。中古住宅とリフォーム市場。ここに活路を求めることになるのでしょう。
しかし、ゼネコンもハウスメーカーも物凄く古い体質の会社が多いのが実態です。これだけ、公共事業依存度が高く、その上、未だに賄賂と談合を繰り返す業界です。企業統合もできない。方針転換もできない。下請けに押し付けることでしか利益を上げられない体質。今日の借金を返す為に受注を続ける。そして、体力勝負の上にバタバタと倒れていくのでしょう。恐竜が滅びる様に・・・。
そして、不動産業界も再開発ではない市場に行かないといけません。この体質をどこかで改めないと同じようにバタバタと倒れることになります。
仮に前述の様に中古住宅やリフォームに活路を求めたとしても今までの様な売上げを上げることができる市場ではなくなります。やはり、相当数の出遅れ組みが消えていくことにはなるのでしょう。
10年も前に考えていたことですが改めて考え直して行こうと思っています。
こんな、内容だけど、